Document

病原体と寄主と
の関係
アナウサギ(Oryctolagus cuniculus)
粘液腫症ウィルスによる駆除
1859年に元来オーストラリアにいなかったアナウサギ
(Oryctolagus cuniculus)が導入されその後爆発的に増え害獣化
した。1950年これを防除するために粘液腫症ウィルスが導入された。
最初,ウィルスは感染したウサギの99%を殺すほど毒性は高かった
が,10年間で毒性が弱まり平衡に達した。
これは,ウィルスを媒介する蚊(蚊以外にノミによっても媒介される)
は,死んだアナウサギの血は吸わず,毒性の強いウィルスはあまり
に早くウサギを死亡させて他個体に媒介されにくいためと,
毒性があまり低い系統のウィルスは繁殖力が低いためであった。ま
た,ウサギの方も抵抗力を発達させた。
II.拡散共進化の例
1.植食性昆虫と植物
アルカロイド,カラシ油配糖体,テルペノイド,タンニン等
の二次代謝物質は植食性動物(特に昆虫)に対する防御手段
として役立っている。
蝶の寄主植物の範囲は,植物側の防御物質の発達と,昆虫側
のその物質の解毒機構の発達によって決まり,昆虫は,さら
に,その二次物質を寄主植物識別の手がかりとするように進
化した。
モンシロチョウの成虫と幼虫はカラシ油配糖体を基に寄主植物を
認識。
2.捕食者と被食者
貝の大きさ
大きい貝ほど抵抗力がある。
これは,また,捕食者が
大きい貝を食べれられるようになった
可能性を示す。
石炭紀
三畳紀
白亜紀
中新世
岩などに固着していない巻貝の割合
オルドビス紀 シルリア紀 デボン紀
石炭紀
二畳紀
三畳紀 ジュラ紀
白亜紀
新第三紀
殻口が狭いまたはその内面が厚くなった巻貝の割合
変異の保持機構
I. 遺伝子型間に適応度の差はない
II.突然変異-選択の平衡
III.超優性(overdominance)
IV.多面発現・連鎖
V.環境の異質性
VI.環境の変動
VII.頻度逆依存の選択
I. 遺伝子型間に適応度の差はない。
多くの分子レベル(タンパク質)の変異は,適応度と関係が
ないと考えられている(そうでない例もたくさんあることが最
近分かってきた)。
→中立説(木村資生):進化的変化の内かなりの部分を,中
立突然変異および機会的浮動によるものとする考え。⇔選
択説
ただし,この考えは,集団が十分大きいとき以外は,ある遺
伝子がずっと一定であることを保障しない。
(分子時計は中立説を理論的根拠とする)
II.突然変異-選択の平衡
劣性致死遺伝子の平衡頻度(q)
u = q2
左辺=加入率,
右辺=除去率
u =10-6~10-5 突然変異率
III.超優性(overdominance)
ヘテロ接合体の適応度が,劣性ホモ,優性ホモのどちらの適応度よりも高い
マラリア非汚染地域
優性ホモが一番子孫を残せる(適応度が高
い)。
マラリア汚染地域
優性ホモはマラリアのため子孫を残すチャ
ンスが減る。
ヘテロ個体が一番子孫を残せる(適応度が
高い)
劣性ホモ:大人になるまでに死亡
IV.多面発現・連鎖
一つの遺伝子が適応度に影響を及ぼす2つの形質に関与し,
ホモになったとき,一方の形質については適応度を上げるが,
もう一方の形質については適応度を下げる場合,変異が維持さ
れる可能性がある。
ショウジョバエ,
羽化後早い時期に多くの卵を生む形質の個体は,早く死ぬ形質も
持つ。
V.環境の異質性
オオシモフリエダシャク
オランダゲンゲ
++の遺伝子型
のみがシアン化水素を
出す:ナメクジの摂食
を阻害。
++は霜,サビ病に弱い
ナメクジ密度
VH very high
H high
L low
VL very low
VI.環境の変動
嘴が太くなる選択
が働いたことを示す
嘴が細くなる選択
が働いたことを示す
ダーウィンフィンチ
(ガラパゴス諸島に生息する
アトリ科の鳥)
VII.頻度逆依存の選択
ミズムシ
隠蔽色の程度
個体群動態(Population Dynamics)
1.制限のない個体群成長--指数的成長(exponential
growth)
a.世代に重なりがない場合(昆虫など)
指数的成長(exponential growth)
…n
Year
0
1
2
3
4
5
6
Population size
2
4
8
16
32
64
128
…2n+1
0.3
0.6
0.9
1.2
1.5
1.8
2.1
…0.3(n+1)
Log10
size
population
N = λtN0
(1.1)
ここで
λ, 純増殖率(net reproduction rate per generation)
N0,t = 0における、個体群の大きさ(個体数)
t, 経過世代数
指数的成長(exponential growth)
b.世代に重なりがある場合
環境が一定ならば、各年齢にお
ける産子数と死亡率は変化せず、
安定齢構成に達してrは一定とな
る。
dN
 rN
dt
 (b0  d 0 ) N
N, ある時点における個体数。
t, 時間。単位時間の長さは任意に設定できるが、それに伴って rの値
が変わる。
r, 内的(自然)増加率(intrinsic rate of (natural) increase)。
b0, 個体あたりの出生率。1個体が単位時間あたり産む平均子供数。
d0, 個体あたりの死亡率。単位時間あたり個体あたりの平均死亡数
この微分方程式を解いて、
N = N0exp(rt)
2.制御のある個体群成長--ロジスチック的成長
a.世代に重なりがある場合
ロジスチック式(logistic equation)
dN
N
 rN (1  )
dt
K
(1.3)
K, 環境収容力(carrying capacity)
K
N
( K  N 0 ) exp(  rt )
1
N0
K

1  exp( a  rt )
(1.4)
exp(a) = (K - N0)/N0
シグモイド曲線(sigmoid curve;
sigma(ギリシャ文字のS)-oid(接
尾語(状の))。
dN
N
 rN (1  )
dt
K
○ ゾウリムシの例
餌の供給は毎日行なわれ、老廃物が溜らないような工夫がされている。
注:野外では,環境収容力(多くは、餌の供給量で決まる)は一定でなく、場所によって、年に
よって変わる可能性がある。また、餌供給が無かったり、老廃物の除去が無かったりした場合
は、環境収容力に達した後、急速に個体数は減少する可能性がある。
世代に重なりがない場合のロジスチック式(Royama 1992)
Nt+1/Nt = rt = exp[Rm(1 - Nt /K)]
(1.6)
Rm =lnλ=ln(密度効果がないとき実現される増
殖率)
世代に重なりがある場合のロジスチック式
dN
N
 rN (1  )
dt
K
(1.3)
0 < Rm ≦ 1 Kに単調に近付く
1 < Rm < 2
Rm = 2
Kに振動しながら近付く
2つの値を振動する
2 < Rm
2に近いときは、周期変動,離れる
と特定の周期のない不規則な変動(カオスと呼
ばれる)となる。周期変動からカオス変動への
分岐点は2.7と3.0の間にある
Nt+1/Nt = rt = exp[Rm(1 - Nt /K)]
演習2(4点) 式(1.6)でK = 1000, No=10として, Rm=0.5, 1.5, 2.5,
3.5のときのNtの変化をt=50まで計算して,その結果をグラフにして
表わせ。
エクセルなどのグラフ作成ソフトでグラフをつくったのち,それをMSWORD(Windows)に貼り付け,そのWORDファイルを送ってくださ
い。word file名と件名はreport+演習番号+学籍番号+姓(ロー
マ字)としてください。例えば,学生番号504522の大橋君の場合,
report2504522ohashi.docです。wordファイルの第1行の右に課
題番号、学籍番号、名前を必ず書いてください。締め切りは2
週間後。
送り先は,[email protected]です。