精神障害者と虐待

平成27年度 障害者虐待防止権利擁護研修 施設コース
ミニ講座 ~精神障害者の対応~
精神障害者と虐待
繰り返される虐待
精神科領域では、いまだに精神科病院における虐待が後を
絶ちません。
精神障害者の社会復帰施設は、昭和58年の宇都宮病院に
おける暴行死事件を受けて、閉鎖された空間から地域での
生活を支援することを目的に法的に整備されてきました。
しかし、最近でも埼玉県で、東松山病院、埼玉江南病院、西
熊谷病院、埼玉県立精神医療センターなどで、患者が暴行
や性的な対象として被害を受けています。
具体的な虐待(1)
(1)統合失調症やうつ病などの病気の症状によって、意欲や集中力
が低下してしまうことがあります。抗精神薬を服用していることに
よる副作用で、同じような状態に陥ってしまう場合もあります。
➡周囲から、「なまけている」「やる気がない」とみられて、できないことを
を非難されることがみられ、事業所では本人のペースを待てないという
場面も見られます。ひどい場合には、暴言や暴力という形で本人は心理
的に追い詰められてしまうことも・・。
(2)経済的な虐待を受けていることもあります。具体的には、障害年金を家
族が管理し、本人には少額のお金しか渡さないとか、生活保護のお金を
家族が着服してしまっているというようなことでみられます。(居住系の施
設に入居した後に、わかることが少なくありません)。施設で管理している
者が着服したというケースも報告があります。
具体的な場面(2)
(3)性的虐待は経済的問題と比較して、顕在化しにくい側面を
もっていいて、虐待は身近な人によって、閉鎖的な環境で引き起
こされています。身近な人は、家族であったり、利用している事業
所の職員だったり、本来はその人を守る立場だと認識されている
人が加害者になっています。
(4)密室性以外にも、被虐待者である精神障害者が認知思考障害に
より状況を判断する力が不十分で虐待を虐待だと認識できない
ことで虐待が顕在化しにくいことがあります。
本人が虐待だと認識している場合においても、報復を恐れて申し
出ることができなかったり、社会性の乏しさからどこにどう訴え出
ればいいのかが分からないというような状況で発見が遅れてしま
うことがあります。
被害妄想への対応
○職員に嫌がらせを受けているなど、職員が被害妄想の対
象になることがあります。
➡訴えの内容には耳を傾けます。ここで被害妄想だと“たか
をくくり“本人の訴えに向き合わないことが虐待とも言えま
す。被害妄想であったとしても、職員が被害妄想に対象と
なる誘発言動(引き金)があったかも。
その場合、その言動の有無と修正および適切な支援の検
討を行なうことが大切です。
根拠がない妄想であれば受療への促しとなります。
精神科病院で虐待を受けた経験を持つ方に出会うこともあります。
専門家への不信感が被害妄想と重なって、ずっと本人の生活を苦しめている
事例もありました。