20151212 SSW(1).

認定社会福祉士研修認定番号:20130002
スクールソーシャルワーク
第1講義:
スクールソーシャルワークとは
~子どもの育つそれぞれの環境・学校~
中部学院大学人間福祉学部
准教授 宮嶋 淳(みやじま じゅん)
JUN Miyajima 2015.12.12.
1
忘れてはならぬ初心
子どもは、だんだん人間になるのではなく、
すでに人間なのだ
子どもの権利条約の精神的な父:ヤヌシュ・コルチャックの言葉
子どもの権利の実現こそ、平和的な生存への礎
になる
子どもと向き合うおとな側の姿勢:指導・保護・管
理関係の見直しが求められている
喜多明人「子どもの権利条約批准20周年と子どもNPO」より
日本子どもソーシャルワーク協会
【活動理念】
• わたしたちは、不登校・ひきこもりの子どもたち、犯罪の被害者
として、または、加害者として、犯罪に巻き込まれた子どもたち、
親の虐待を受けた子どもたち、いじめに悩む子どもたち、先が
見えずに深夜徘徊するこどもたち、リストカットを繰り返すこども
たち、たくさんの子どもたちと出会ってきました。
• こどもたちとの出会いをとおし、今の「子どもたちの問題」、それ
は、実は子ども問題でなく、「大人、社会の問題」であると強く感
じます。
• 子どもたちは、「できる」こと、「する」ことを求められ、「そのまま
でいる」こと、「そのままである」ことを認めてもらえないでいます。
JUN Miyajima 2015.12.12.
3
• 「そのままでいい」と言われないことは、自分の存在価値を認め
てもらえないことであり、自信を失います。
• 今、自己肯定感がもてない子どもたちがたくさんいろいろな形で
自分の危機のサインを送っているのです。
• 一方で、出会う子どもたちが「そのままである」ことを認めてくれ
る大人の存在、自分を「受けとめてくれる大人」との出会いをとお
し、自己肯定感を取り戻し、再び自分の力で成長をはじめていく
姿も見てきました。
• 子どもたちにとって必要なのは、「受けとめ手」としての大人の存
在です。
• わたしたちは、協会のさまざまな活動をとおして、地域社会に子
どものそばに寄り添い、耳を傾け、子どもを受けとめていく存在
をつくり、そして、こどもたちが出会える機会をつくっていきたいと
考え、活動を展開していきます。
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4
倫理規定~「私たちは・・・」
• 子どもの権利条約、児童憲章の趣旨に沿って活動し、子ども福
祉の向上に努めます。
• 子どもが自らを愛し、自分を大切に思い、そして、自己の未来
に希望を持つことを希求します。
• 子どもの権利を尊重し、子どもが家庭、学校、地域で権利の主
体として成長していくための援助を展開していきます。
• 子どもの利益を最優先します。
• 子どもの自尊感情を大切にします。
• 子どもの自己決定を尊重します。
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5
• 子ども固有の価値を尊重し、子どもに自らの価値観を押しつけま
せん。
• 子どもが自ら成長していく力に寄り添い見守ります。
• 差別、暴力を否定します。
• 子どもの今あるがままを受け入れることから援助を進めます。
• 自己の価値観を知るとともに自らの内面に注意を払い、自己を
常に省みます。
• 常に地域にある社会資源を活用していきます。
• 自らの援助に限界があることを知り、子どもの援助のための人
的資源と手を結び、援助活動を進めます。
• 援助の過程で知り得た事柄について、外部に漏らしません。
• 自己研鑽を惜しみません。
• 子どもの援助をする専門家である前にひとりの人間として子ども
とともに社会にあることを優先します。
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ソーシャルワークとは何か
• ソーシャルワーク
• ソーシャルワーカー
International Federation of Social Workers (IFSW)
• 社会福祉士
• 認定社会福祉士
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7
ソーシャルワークとは
• ソーシャルワーク専門職は、人間の福利(ウェル
ビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、
人間関係における問題解決を図り、人々のエンパ
ワーメントと解放を促していく。
• ソーシャルワークは、人間の行動と社会システム
に関する理論を利用して、人々がその環境と相互
に影響しあう接点に介入する。
• 人間と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠
り所とする基盤である。
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8
ソーシャルワークとは
社会福祉援助活動
社会福祉援助実践
従来
社会福祉援助技術
相談援助
社会福祉援助実践
(社会福祉制度を活用する取り組み)
人 (子ども・親)
環境 (社会)
社会福祉援助技術
ケースマネジメント
相談援助
関係調整
社会福祉援助活動
プランニング
ソーシャルワーカー
ソーシャルワーク
(人間のWell-beingを目的とするすべての取り組み)
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9
ソーシャルワークの人間観
• 根本的価値 ・・・ 人権と社会正義
• 中核的価値 ・・・ 人間の社会性、変化の可能性
• 手段的価値 ・・・ 援助関係(バイステックの原則)
(ゾフィア・T・ブトゥリム
『ソーシャルワークとは何か』川島書店)
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10
今後のソーシャルワークの発展方向
方法・技能
目 的
知 識
価値・倫理
社会的承認(制度的任用・社会的認知)
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11
日本型ソーシャルワーカーとは
• 1988年創設の「社会福祉士」
=ジェネリックなソーシャルワーカー
• 1998年創設の「精神保健福祉士」
=精神病院や精神障害者施設のSWr
=スペシフィックなソーシャルワーカー
• 重複資格取得者多数
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12
社会福祉士に求められる役割
• 福祉課題を抱えた者からの相談に応じ、必要に応じてサービス利
用を支援するなど、その解決を自ら支援する
• 利用者が尊厳を持った自立生活を営むことができるよう、関係する
様々な専門職や事業者、ボランティア等との連携を図り、自ら解決
することのできない課題については当該担当者への橋渡しを行い、
総合的かつ包括的に援助していく
• 地域の福祉課題の把握や社会資源の調整・開発、ネットワークの
形成を図るなど、地域福祉の推進に働きかける
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13
ニーズとは・・
• 個人的な問題が、社会的に承認される過程を経て
ニーズとなる
• ニーズ生成プロセス
非認知→要求(感得→表出)→承認
• 生成プロセスにおいて、
エンパワメント ・ コミュニケーション ・
葛藤 ・ 合意 ・ 承認の相互作用がある
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14
人間の欲求(5段階説)への着目
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15
自己実現へ向かうための土台
=自 尊 感 情
• 基本的自尊感情(BASE)は、成功や優越とは無関係の感情。
あるがままの自分自身を受け入れ、自分をかけがえのない
存在として、丸ごとそのままに認める感情。良いところも悪い
ところも、長所も欠点も併せ持った自分を、大切な存在として
尊重する感情。この感情こそが、自尊感情の基礎を支える大
切な感情。比較ではなく絶対的な無条件の感情。
• 社会的自尊感情(SOSE)は、上手くいったりほめられたりする
と高まり、失敗したり叱られたりするととたんにしぼむ。状況
は状態に支配される感情。他者との比較による相対的な優
劣による感情。社会的自尊感情がつぶれたときに、心を支え
てくれるのが、基本的自尊感情。
近藤卓『子どもの自尊感情をどう育てるか』ほんの森出版
自尊感情の4つのタイプ
基本的自尊感情
Basic Self Esteem
SOSE
BASE
sB
SB
sb
Sb
SBタイプ・・自尊感情の2つ
の部分がバランスよく形成
されている
sBタイプ・・社会的自尊感
情が育っていない:のんび
り屋、マイペース
sbタイプ・・自尊感情の2つ
の部分が両方とも育ってい
ない:孤独、自信がない
Sbタイプ・・社会的自尊感
情が肥大化している:頑張
り屋の良い子、不安を抱え
ている
社会的自尊感情
Social Self Esteem
スクールソーシャルワークとは何か
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18
子どもたちの問題とSW視点
いじめ
・何が問題か ≒何が起こっているのか≒アセスメント、診断
・どのような構造やしくみか ≒関係者や関係機関
≒法律、施策・制度
≒家族、学校、教育委員会、行政機関、子育て機関
・どうしたら対応できるのか ≒どのような機関・組織・人が機能すれば良いのか
≒教育、サポート、コントロール
・どうしたら防げるのか
≒社会資源、社会関係資本、社会資源開発
≒当事者の確定と予測。 記憶と記録
≒つながり、忘れない(風化させない)
≒時世を意識化
・このサイクルのなかで、SSWはどのような役割を果たせるのか
≒効応性の高いアプローチの、段階的活用
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19
スクールソーシャルワークとは
• 学校をベースに、子どもの最善の利益、福祉の価値の元にソー
シャルワークを展開する。
• ソーシャルワークとは、人と環境の関係性に着目し、様々な資源
やサービス、法律等を資源・ツールとして活用し、そのおかれた
関係の改善を図る。
• 様々なシステムに変革を起こす。
• 問題を抱えた児童生徒に対し、当該児童生徒が置かれた「環境
へ働きかけ」たり、関係機関等のネットワークを活用したりする中
で、多様な支援方法を用いて、課題解決への対応を図っていく。
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20
スクールソーシャルワーカーの選考基準
(文部科学省)
•
•
社会福祉士や精神保健福祉士等の福祉に関する
専門的な資格を有する者が望ましい
福祉や教育分野における専門的な知識・技術を
有する者又は活動経験の実績等がある者のうち、
次の業務内容を適切に遂行できる者
1.
2.
3.
4.
5.
問題を抱える児童生徒が置かれた環境への働きかけ
関係機関等とのネットワークの構築、連携・調整
学校内におけるチーム体制の構築・支援
保護者、教職員等に対する支援・相談・情報提供
教職員等への研修活動
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21
SSWr活用事業の変遷
•
•
•
•
•
•
•
H19.
H20.
H21.
H22.
H23.
H25.
H27.
一部の地方公共団体が単独で事業展開
10分の10委託モデル事業
3分の1の補助事業
多様な形態のSSWの登場
子どもの貧困対策の推進に関する法律
いじめ防止対策推進法
「チームとしての学校の在り方と今後の
改善方策について」
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22
平成24年度 スクールソーシャルワーカー活用事業 実施結果(概要)
区 分
種 別
H24
人
H23
%
人
%
1、SSWrとして雇用された実人数
784 100.0
722 100.0
①都道府県教育委員会(教育事務所含む)
226
28.8
212 29.4
②市区町村教育委員会
322
41.1
295 40.9
③小学校
173
22.1
121 16.8
2、教育機関ごとの
SSWrの配置人数 (複 ④中学校
95
12.1
115 15.9
数回答)
⑤高等学校
13
1.7
4
0.6
⑥教育支援センター(適応指導教室)
30
3.8
17
2.4
⑦その他の教育機関
10
1.3
15
2.1
①社会福祉士
331
42.2
292 40.4
②精神保健福祉士
182
23.2
166 23.0
③その他の社会福祉に関する資格
95
12.1
105 14.5
3、SSWrの有する資格
④教員免許
331
42.2
279 38.6
(複数回答)
⑤心理に関する資格
148
18.9
137 19.0
⑥その他のSSWの職務に関する技能の資格
31
4.0
33
4.6
⑦資格を有していない
64
8.2
58
8.0
21,351
16,562
①小学校
12,220
9,115
うち、小~継続者
14,500
13,043
4、支援の対象となっ ②中学校
た児童生徒数
8,586
7,226
うち、中~継続者
1,922
610
③高等学校
638
282
うち、高~継続者
①児童家庭福祉
14,037
43.5 10,950 40.8
②保健・医療
4,438
13.7
4,201 15.6
③警察等
1,126
3.5
1,282
4.8
5、連携した機関等
④司法・矯正・更生保護
445
1.4
385
1.4
⑤教育支援センター等
6,215
19.2
4,462 16.6
⑥その他の専門機関
2,969
9.2
2,460
9.2
⑦地域の人材や団体等
3,057
9.5
3,118 11.6
32,287 100.0 26,858 100.0
①不登校
9,727
23.8
7,824 26.0
②いじめ
914
2.2
416
1.4
③暴力
912
2.2
736
2.4
④虐待
2,475
6.0
1,870
6.2
2,332
5.7
1,400
4.6
6、継続支援対象児童 ⑤友人関係の問題
生徒の抱える問題と支 ⑥非行・不良行為
2,094
5.1
1,436
4.8
援状況
⑦家庭環境の問題
9,828
24.0
7,560 25.1
⑧教職員等との関係
1,545
3.8
1,018
3.4
⑨心身の健康・保健
3,038
7.4
2,265
7.5
⑩発達障害等
5,220
12.7
4,013 13.3
JUN Miyajima 2015.12.12.
⑪その他
2,860
7.0
1,577
5.2
40,945 100.0 30,115 100.0
23
SSWrの強みを生かす技法
マッピング
• ジェノグラム(家系図)
• エコマップ(生態地図)
– 実践の「可視化」によって、アカウンタビリティを果たす
↓
他者への説明責任
問題に、何をインプットしたら、
どのようなアウトプットが得られるのかを説明する責任
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24
事例より
様々な問題が絡む不登校ケース
対象生徒:中学2年生男子
高2
中2
小1
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3歳
25
学校
担任
母
クラス
頼りにならない
メート
友達
いじめ?
本人
父
弟
3歳
弟
小1
JUN Miyajima 2015.12.12.
兄
高2
26
カウンセラー
学校
担任
母
クラス
メート
頼りにならない
友達
いじめ?
本人
父
暴力
弟
3歳
週末はたいてい
一緒に遊んでいる
暴力
弟
小1
JUN Miyajima 2015.12.12.
兄
高2
27
カウンセラー
母方の
実家
学校
担任
母
クラス
父方の
メート
頼りにならない
友達
実家
いじめ?
本人
仕事
療育
父
週末はたいてい
一緒に遊んでいる
近所の
暴力
弟
3歳
暴力
弟
小1
JUN Miyajima 2015.12.12.
おじいさん
兄
高2
とても熱心
に将棋を教
えてくれた
28
子どもの「生きる」を支える
保育所
幼稚園
小学校
中学校
高等
学校
大学
・今、何が必要か
・継続的に何が必要か
・将来的に何が必要か
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29
SWの様々なアプローチ
•
•
•
•
•
•
•
•
クライエント中心
エコロジカル
行動理論
認知理論
危機介入
問題解決、課題中心
エンパワメント、ストレングス
家族システム理論
JUN Miyajima 2015.12.12.
30
ストレングス視点
• 子どものストレングス(強み)に着目する
・本人・・・朝、起こされずに起きて来た!!
・家族・・・食事の後、片づけが出来た!!
・学校・・・係りの仕事を自分から進んで!!
・地域・・・資源回収に参加した!!
・その他
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31
ナラティブ・アプローチ
•
社会構造主義の考え方をソーシャルワーク実践に応用した
•
「意味をつくりだす主体 」は利用者自身である
•
利用者が語る内容にこそ、利用者の本当の姿があると確信する
•
「物語(ナラティブ)としての自己」を尊重する
•
利用者の問題の本質はワーカーが決めるのではなく、利用者本人
が決めるものである
•
利用者の自己決定のための手段として、利用者本人が語るストー
リーを理解することを重視する
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ナラティブ・アプローチの技法
• 利用者のこれまでのナラティブから脱出するよう聴き届ける。
• ワーカーから指針はぜず、かつ、新たなナラティブの構築プロセス
や構築にも、ほとんど提供しない。
• 指令や技術の提供はせず、プロセスを利用者本人が描く、教育的
実践。
• アセスメント自体が進行的で絶えず変化するプロセスであるとみな
す。
• ワーカーが関わるすべての期間中、常に変化を期待している。
• 実践における「アセスメント」段階と「トリートメント」段階とを区別をし
ない。
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33
SW=システム構築で社会を変える
• 人から出発⇒ ニーズ承認のための運動
• ニーズ承認プロセス
社会的承認⇒制度としての承認⇒法整備
⇒運用上の妥当性⇒点検・評価・改善
• 新しい制度・施策ができ、適切に運用できる
仕組みができること=SWでいう社会改革
JUN Miyajima 2015.12.12.
34
チームアプローチの重要性
• “一人”の支援には限界がある
一人では、本当に必要な支援が
提供できていないかもしれない
• 多角的な視点からものごとを見ること
(学校で把握している子どもの状況だけでは十分な情報とはいえない)
↓
SOSやニーズの発見、
提供できるサポートの網の目が細かくなる
(チームアプローチ)
JUN Miyajima 2015.12.12.
35
JUN Miyajima 2015.12.12.
36
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37