A型肝炎とE型肝炎

A型肝炎とE型肝炎
3班
Photo:The Internet Pathology Laboratory for Medical Education
http://www-medlib.med.utah.edu/WebPath/webpath.html
A型肝炎
A型肝炎
過去の流行と現状
・全世界に分布
東南アジア、アフリカなどの途上国を中心に
全世界的に見られている。
過去の流行と現状
・発生の様相
衛生環境が劣悪な地域では乳幼児期の感染が主で
肝炎発生率も低く流行もない
↓
都市部などでの上下水道などの整備
↓
感染率の低下、感受性者の蓄積
↓
・最近の流行
流行
→1988年に中国上海市で約30万人例の大流行
生活環境がさらに整備されると大流行の発生が止まる
過去の流行と現状
・最近の日本のA型肝炎発生状況
①年間500人前後の患者報告数
②主要な感染源は牡蠣や海産物等の飲食物
A型肝炎の感染経路(複数回答あり)
不明
23.0%
その他(他、無記載)
1.2%
その他(患者との接
触)
2.0%
牡蠣
21.9%
牡蠣以外の海産物
5.5%
飲食物(その他)
1.2%
性行為
0.4%
飲食物(内容無記
載)
27.0%
飲食物(内容不明)
18.0%
過去の流行と現状
・最近の日本のA型肝炎発生状況
③罹患年齢では高年齢化が認められる
A型肝炎国内感染例の年齢分布
18
男性
女性
16
14
報告数
12
10
8
6
4
2
0
4歳
0~
9歳 14歳 19歳 24歳 29歳 34歳 39歳 44歳 49歳 54歳 59歳 64歳 69歳 74歳 79歳 84歳 89歳 94歳 99歳 歳~
5~ 0~ 5~ 0~ 5~ 0~ 5~ 0~ 5~ 0~ 5~ 0~ 5~ 0~ 5~ 0~ 5~ 0~ 5~ 100
1
1
2
2
3
3
4
4
5
5
6
6
7
7
8
8
9
9
過去の流行と現状
・最近の日本のA型肝炎発生状況
④約1割が海外渡航からの帰国者
A型肝炎の国外感染地域
無記載
8%
中国・台湾
29%
その他
17%
東南アジア
4%
インド・インド近
郊
42%
→殆どが中国、インド、東南アジアでの感染
過去の流行と現状
・最近の日本のA型肝炎発生状況
⑤発生には季節変動がある
A型肝炎の月別報告数
60
50
40
30
報告数
20
10
0
月 月
12 年1
2年 03
00 20
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月
2
日本では秋に少なく、冬から春、初夏にかけて多い
病原体
・ピコナウイルス科ヘパトウイルス属のHAV
・培養細胞において増殖性であるが、培養細胞を用いた患
者糞便検体からのウイルス分離には長期間かかる
・肝臓に強い親和性を持っているが、ウイルスの増殖によ
り細胞を殺すことはない
→肝炎は宿主免疫反応を介して起こる
精製A型肝炎ウイルスの電顕写真
病原体
・耐性
・耐熱
他のピコルナウイルスに比し耐熱性が強い(60℃では
10時間でも不活化は不完全)が、85℃では瞬時に不活化
される。また、乾燥にも強い
・耐薬剤
エーテルなどの脂溶性物質、界面活性剤、蛋白分
解酵素などに耐性がある
・失活方法
オートクレーブ(121℃30分)、塩素剤、ヨード剤、
ホルマリン、UV照射など
疾患の状態
・感染
食物や飲料水から経口的に生体内に侵入
↓
腸管から吸収
↓
肝臓で増殖、急性肝炎発症
↓
ウイルスが血中に遊出、胆汁と共に糞便中に排泄される
(暴露後1週間あたりから、2~4週間続く)
↓
二次感染、集団感染
疾患の状態
・臨床症状
・潜伏期は2~6週間
・発熱、倦怠感などに続いてGOT、GPTが上昇
↓
食思不振、嘔吐などの消化器症状
黄疸、肝腫大、濃色尿、灰白色便
↓
↓
まれに劇症化、死亡
⇒
写真へ
1~2か月の経過の後、
回復する
他の肝炎と比べて肝炎症状(発熱、頭痛、筋肉痛、腹
痛)が強いのがA型肝炎の特徴
予防と治療法
・一般に、診断では血中のIgM-HAV抗体を確認する
*細胞培養によるウイルス分離は長期間かかるため不適
・治療
・入院は絶対適応ではない
入院適応:劇症肝炎、血液凝固障害、脳症など
・A型肝炎に特異的なウイルス治療法はない
→対症療法と感染伝播の予防が主となる
・胆汁鬱滞を起こす薬物、肝代謝を受ける薬物は避ける
・ほとんど自然寛解する
致命率は青少年で0.1%、40歳以上で1.1%
予防と治療法
・予防
①集団予防
上水道整備、適切な塵芥処理、衛生観念向上など
②院内予防
余分な接触を避ける、手洗い励行、食物、排泄物
等の処理に注意する
→汚染の疑いがある場合は煮沸、ホルマリン、
塩素剤の使用やUV照射を行う
③個人予防
蔓延地域への旅行者に対してISG(Immuno
Serum Globlin)0.02ml/kg i.m.を1回投与
長期旅行者には0.06ml/kg i.m.を5か月毎に投与
予防と治療法
・予防
④不活化HAVワクチンの投与
1992年に開発。1994年に国産ワクチンが認可
1回目---(2~4週間後)---2回目---(6か月後)---3回目
3回で5年以上の免疫が維持可能
2回だけの投与でも、6か月以上の免疫が得られる
⑤法的対応
4類感染症として全数把握の対象となる
医師は診断7日以内に保健所長に届け出る
予防と治療法
・A型肝炎ワクチン
グラクソ・スミスクライン社
Havrix、$29.75/回
感染した際にかかる治療費
$433-$1,492(小児)
$1,817-$2,459(成人)
↓
予防したほうがお
得?
右のような既充填式の
注射器で提供
E型肝炎
E型肝炎
過去の流行と現状
・世界での分布
東南アジア、アフリカ、中南米、中近東などに
多く分布している
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過去の流行と現状
・最近の流行例
地区など
発生歴年
発生例数
備考
メキシコ
(2地区)
1986
1986
94例
129例
ネパール
(カトマンズ)
1987
約1万例
インド
(サウスデリー)
1986~87
155例
インド
(カンプール)
1991
7万9千例
中国
(ウイグル自治区)
1986~88
12万例
水を消毒せずに飲む習慣
あり
インドネシア
(シンターン)
1987
1991
数千例
河川の水を飲用水として
使用
バングラデシュ
(ダッカ)
1987
数不明
糞便による上水道汚染が
原因
過去の流行と現状
・流行について
最初の報告は1955年、インドのニューデリー
→29000例、原因は糞便による上水道の汚染
中央アジアでは秋に多く発生
東南アジアでは雨季の洪水の後に多く発生
・日本では
散発的に発生し、大半は輸入感染症とされてきた
しかし最近、全く渡航歴のないE型肝炎患者が出現
→日本にもHEVが土着?
過去の流行と現状
・日本での発生報告
イノシシの生レバーの摂食が原因と見られるE型肝炎
での死亡例がある
→動物から人間に感染:人畜共通感染症?
市販の豚レバーの1.9%からHAV遺伝子を検出
10人のE型肝炎患者のうち、9人が発症2~8週前に
生、又は加熱不充分な豚レバーを食べているという報告
→生レバーから感染のおそれ
生の鹿肉を食べてE型肝炎を発症したという報告もある
病原体
・カリシウイルス科“E型肝炎様ウイルス属” 暫定的な分類
(
)
のHEV
・直径約38nmのエンベロープを持たない小型球形、一本鎖
RNAを遺伝子として持つ
・各種サルが感受性を示し、その胆汁中に多量のウイルス
排泄→有用な研究材料として使用
HEV粒子の電顕写真
疾患の状態
・感染
経口的に感染し、腸管、門脈を経由して、肝臓に到達
↓
肝細胞で増殖し、糞便、胆汁、肝に検出される
↓
糞便中に排泄されたウイルスが再び感染源となる
糞便に汚染された飲料水を介した経口感染が殆ど
食物を通して伝播することはあまりない
HEVは物理的に脆弱で、増殖力も弱く、糞便中に
排泄されるウイルス量も少ない
→ A型肝炎と違い感染力は弱く、2次感染はまれ
疾患の状態
・臨床症状
・潜伏期間は平均6週間
→A型肝炎よりも長い
・腹痛、食欲不振、嘔気、嘔吐などの消化器症状など
褐色尿を伴った強い黄疸が出現
↓
↓
妊婦では劇症肝炎に
移行しやすく、致死率
20%にもなる
12~15日間続いた後、通常
発症から1か月を経て完治
致死率は1~2%であり、A型肝炎に比べて10倍
予防と治療法
・診断は血中IgMを検出するのが最も確実
→組み換えバキュロウイルスで作成したHEV中空粒子を
抗原として用いて、ELISA法により測定
中空粒子の3次元構造
E型肝炎の臨床経過
予防と治療法
・治療
・基本的に対症療法しかない
・安静が必要な場合があるが、食事制限は不要
・アルコールや肝毒性のある薬剤は避ける。
・劇症肝炎になった場合は・・・
→肝性脳症や感染症、凝固異常に対処
予防と治療法
・予防
①手洗いを励行し、飲食物は加熱してから食べる
②流行地域では、特に飲料水や非加熱食品に注意
→E型肝炎流行地域へ旅行する際は、清潔の保証が
ない飲料水(氷入り清涼飲料を含む)、非加熱の貝類、
自分自身で皮をむかない非調理の果物・野菜をとらな
いように注意する
③ 国内産でも野生動物の生肉、生レバーなど避ける
感染例:2003年北海道で、E型肝炎の発生あり
この時、市販されていた豚レバーからE型肝炎ウイ
ルスの遺伝子が検出されている
→ハム・ソーセージ等の加熱済み食品は感染の
心配はない
予防と治療法
・予防
④ワクチン
ワクチンは現在開発中
⑤法的対応
4類感染症として全数把握の対象となる
医師は診断7日以内に保健所長に届け出る
3班
A型肝炎とE型肝炎
疾患の状態
・臨床症状
濃色尿
黄疸眼
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