ミクロ経済学I (2) 機会費用と見えざる手 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2016年4月20日 夏休みと試験前に家でゴロゴロの違い 何かを選択するには便益と費用が発生 一日をダラダラ.家でごろごろ過ごす費用は? 夏休み期間中と比べ試験直前に家でゴロゴロ過 ごす人は少ない 両者の費用は違うと思いませんか? 費用とは金銭的な物だけを意味するのではない 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 2 真の費用とは何か? 上映時間が2時間でチケット代が1500円の 映画 映画を見に行く真の費用は映画のチケット 代1500円ではない その1500円で何が買えるか,加えて2時間の 上映時間で何ができるかが真の費用 お金の他の用途や時間の使い道は多い その中で何が大事か? 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 3 真の費用は機会費用 真の費用を機会費用といいます.機会費用は 欲しいモノを手に入れるために諦めなければなら ないもの 正確には,あるものの機会費用とはそれに代る選 択肢の中で一番価値の高い用途の価値である 選択できるものを良い順に並べる 最善,次善,3番目に良い物,… 実際に選択するのは最善.利己的なので当たり前 選択しなかったものの中で最も良いのは次善 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 4 試験前に家でゴロゴロする費用は 選択するのは最善だから、その機会費用は次善 試験直前にダラダラ過ごす費用は大学の優良な成 績である 直感的に機会費用の概念を理解して普通の人は ちゃんと勉強して試験に通る 試験前にノンビリ過ごすことの費用は大きい 時は金なり 2016/4/20 (フランクリンの格言) ミクロ経済学I 2 5 問題 石川遼はなぜ大学に進学しなかったのか機 会費用の概念を用いて説明しなさい 解答 遼が大学に進学したら諦めた物の最大の価 値は何だろうか?それはゴルファーとして の賞金や名声だろう.大学の学位を得ても ゴルファーとしての価値はない.遼にとっ て大学進学はとても高い機会費用を有する 選択であったので進学しなかった. 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 6 ぶら下がり健康器,ビリーのDVD 高額な健康機器は今は物置の飾り物.もったいな いと思う? 通常費用と見なさない物も考慮する機会費用 新たに登場するサンクコストは費用とは考えない 問題 私「新しい健康器具が欲しい」 母「前に買ったビリーは数回使っただけ.折角大 金出して買ったんだからビリーしなさい!」 どう答えればよいのだろうか?経済学的に説得 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 7 サンクコスト 解答: ビリーへの支出はサンクコストである.それは 無視して他のダイエットをすべき ここでサンクコストあるいは埋没費用とはもう 既に支出してしまった金額であり現在のどんな 選択によっても取り戻すことができない支出 今選択を迫られた時にはサンクコストは無視す るのが合理的だ! 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 8 どのくらい食べる? 皆さんは一週間に何個ケーキを食べている? 機会費用とサンクコストはある選択の費用 ケーキを何個食べる.何時間勉強する.量の問題 何かをもう少し行うか或いは少し減らすかの決定 を考えよう ケーキをもう一個食べる 美味しい 支払わなくてはいけない価格,少し太る もう少し何かをすると損得両方が変化する 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 9 限界費用 まずは損の変化と得の変化を区別する. あるものを増やしたときにかかる追加的な 費用を限界費用という ケーキをもう一個食べた時の限界費用は ケーキの価格 問題 朝もう一時間寝ている限界費用は何? 解答 もう一時間寝ると授業に遅刻.成績低下が もう一時間寝ることの限界費用 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 10 限界費用/2 問題 もう一時間アルバイトを続ける限界費用 解答 もう一時間働くと疲れる,疲れがもう一時 間働くことの限界費用 このように行動の変化により費用の追加が 生まれる 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 11 限界便益 ケーキをもう一個食べた時に美味しいと感じ るのが限界便益だ あるものを増やしたときに得られる追加的な 便益を限界便益という 問題 1. 朝もう一時間寝ている限界便益は何? 2. もう一時間アルバイトを続ける限界便益は 解答 1.さらに頭すっきり良い気分 2.アルバイト料が増加してお金持ち 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 12 限界費用と限界便益 1. 2. ケーキの例ではケーキ支払い価格が限界費用 さらに美味しいと感じるが限界便益 寝る 限界費用=もう一時間寝ると授業に遅刻 限界便益=もう一時間寝ると頭スッキリ アルバイト 限界費用=もう一時間働くと疲れる 限界便益=もう一時間働くとお金が増える 最も満足するケーキの量はどの位だろうか? 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 13 美味しいケーキ 練習直後,真央は1000円を出してもケーキが 欲しい → 限界便益は1000円 ケーキの値段は100円 → 限界費用は100円 真央はもう一個ケーキを食べる 限界費用<限界便益 真央はケーキを食べ過ぎて10円くらいの満足 しかない →限界便益は10円 真央はもうケーキを食べない 限界費用>限界便益 最も良いケーキの量はどのくらいだろう? 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 14 限界費用と限界便益を比較 1. 限界費用<限界便益 →ケーキを増やした方がよい 1. 限界費用>限界便益 →ケーキを減らした方がよい 最も適した活動水準は? 限界費用と限界便益が等しい時に実現 個人や企業あるいは社会にとって最も適した (望ましい)選択を最適と言い表す 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 15 英語の復習 費用とは英語で cost 限界を英語で marginal 限界費用を英語で marginal cost 便益を英語で benefit 限界便益を英語で marginal benefit 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 16 今できない事を将来できるようにする 理想のプロポーションのため運動やダイエット 夏に留学するためアルバイトしてお金を貯める 今を我慢して将来の良いことを実現する 投資(とうし) 工場の建設,機械設備の購入,企業を買収 将来の生産能力の拡大のために現在の資金を投じ る活動 労働・工場・機械設備のように生産のために用い られる財やサービスを投入物または生産要素という 株式を購入することも投資という 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 17 まさかのために 朝バナナ,マイクロ,酵素,ダイエット食品etc ダイエットしたが効果がない 明日の天気,株価,将来は正確に予測が不可能 何が起こるか分からないことをリスクがあるという 投資の成果は確実に得られるとは限らない 釈迦が指摘した逃れることのできない事: 生,老,病,死 何もしなくてもリスクは存在 積極的に自分に投資しリスクを回避し幸せを掴め! 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 18 賢い意思決定のまとめ 選択には便益と費用が伴う.両者を区別する 真の費用である機会費用で考える 取り戻せないサンクコストを無視する どれだけの決定では限界費用と限界便益を比較 限界費用と限界便益が等しくなる水準が最適 二つの忍耐 今できないことを将来できるようにするために投資する 何が起こるか分からないリスクに気をつけろ 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 19 数学のけいこ 大谷は前月タイ焼きを1000個焼いた.今月は 1100個を焼く.今月は何個増加した? 1100-1000=100 来月は900個の予定.今月と比べ何個増加した? 900-1100=-200 200個減った 符号の意味 プラス=増加 ,マイナス=減少 ,ゼロ=変化なし 変化量=変化後の量-変化前の量 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 20 0から1への 変化は+1 数学のけいこ/2 左に行くと減少 右に行くと増加 -3 -2 -1 0 1 2 3 1から-2への変化は-3 4 3 2 1 0 -1 2016/4/20 0から1への変化は+1 上に行くと増加 4から-1への変化は-5 ミクロ経済学I 2 下に行くと減少 21 交換 人は一人では生きていけない 新潟で取れたお米を食べる 北海道産のサケを食べ フランス製のバックで通学 他人との役割を分担をする必要が出てくる 自分にできない事を他人にやって貰う 取引によりできる事に変える 様々な人々が様々な財を作ってそれを交換 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 22 自発的な交換 利己的でも経済活動が上手く機能している要因 一言で言うと市場における自発的交換があるから 自分の労働力を売って所得を得て好きな物を買う 売買契約は強制的に結ばれてはいない 売り手と買い手の両者が勝者 身分制社会や社会主義経済が上手くいかない理由 は自発的な交換ができないから 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 23 社会が豊かになる鍵=分業 アダム・スミス (経済学の創始者)のピンの例 (『国富論』意訳) 技能を身につけていないピン作りの職人は,精いっぱ い働いても,おそらく1日に1本のピンを作ることもで きなかろうし,20本を作ることなど,まずありえない であろう.ところが,現在,この仕事が行われている仕 方をみると,作業全体が1つの特殊な職業であるばかり でなく,多くの部門に分割されていて,その大部分も同 じように特殊な職業なのである.ある者は針金を引き伸 ばし,次の者はそれをまっすぐにし,3人目がこれを切 り, (中略),ピンを白く光らせるのも,また別の仕事で ある. 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 24 経済学の基本問題 利己的な個人が自発的に特定の活動を行い 不得意なことは他人に任せる 自分の成果と欲しいものを市場で交換 そこで疑問が出てくる 1. どのような財がどれだけ生産されるのか 2. 財はどのように生産されるのか 3. 財は誰に与えられるか 4. 誰がこうした経済的決定を行うのか 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 25 コンビニエンスストアーの例 駅前のビルのオーナーが空きスペースをどうする か考えている 考えてコンビニを出店することを決意 コンビニ会社が商品を取り揃え,運輸会社が輸送 食料品メーカーが中国に工場を建設 数多くのメーカーが沢山の商品を作る 学生がコンビニでアルバイトする 駅を利用する人々がコンビニで物を買う 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 26 問い コンビニの例で4つの問題のどこに当てはまる か? 1. 種類と数量:多くの商品 ,取り揃え 2. 方法:中国に工場,コンビニ出店 3. 配分:駅前で物を買う人々,学生アルバイト 4. 意志決定:全員自分の意志 オーナーが儲かり,そして駅前が便利に 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 27 見えざる手により社会の利益が高まる アダム・スミス『国富論』 生産物の価値が最も高くなるように労働を振り向ける のは,自分の利益を増やすことを意図しているからにす ぎない.だがそれによって,その他の多くの場合と同じ ように,見えざる手に導かれて,自分がまったく意図し ていなかった目的を達成する動きを促進することにな る.自分の利益を追求する方が,実際にそう意図してい る場合よりも効率的に,社会の利益をたかめられること が多いからだ. 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 28 見えざる手と公共の福祉 我々は利己的である コンビニの店長も利用者も自分のことを優先 各個人が思い思いに決定を行っている 何をするにもトレードオフの関係が出てくる 他人との財やサービスの交換する 市場の「見えざる手」によって利己心による 活動が公共の福祉を促進させる原動力となる 経済学ではこの見えざる手を分析する 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 29 復習 機会費用は真の費用 ある選択の機会費用とはそれをすることに よって諦めなければならないもの サンクコストとはもう既に支出してし まった金額であり現在のどんな選択によっ ても取り戻すことができない支出 ある活動を増やしたときに追加的にかかる 費用を限界費用という ある活動を増やしたときに追加的に発生す る便益を限界便益という 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 30 復習/2 現在の利益を我慢して将来の利益を獲得する活 動を投資という 将来何が起こるか分からないことをリスクがあ るという 将来起こるリスクは出来るだけ避けたい トレードオフは他人との交換を促す 経済学の4つの問題 1.何をどれだけ作る,2.どうやって作るか, 3.誰に与えるか,4.誰が決めるのか 2016/4/20 ミクロ経済学I 2 31
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