経営学Ⅰ 財務 財務管理 • 会社は株主や銀行などから資金を調達し原材料、生産設備を購入し、労 働者を雇う。次に、これらの原材料を使い製品を製造する。製造された製 品に利益を付加して販売される。現金販売であれば現金が会社に入る が、掛売りであれば、この売掛金が回収されるまで現金は会社に入らな い。現金から、製品、売掛金、現金に戻る流れを運転資本の流れという。 設備投資 投資家 $ 資金 銀行 原材料 製造 製品 従業員 現金 顧客 $ 経営者 $ 売掛金 投資資本 • 生産設備などの固定資産は長期間にわたる製造過程において、 少しずつ消費される。製品の1つ1つが製造過程を通過するごとに、 生産設備のような固定資産の一部が失われていくようなものであ る。実際、設備投資は投資した段階で現金支出が行われるが、会 計上は投資支出額をある一定期間に割り振る。これを減価償却と よび、製品原価の一部を構成する。こうして現金が固定資産に投 資されていくのを投資資本の流れと呼ぶ。 億円 年目 現 金 設備 一年目 一億円 製品 設備 二年目 一億円 製品 設備 三年目 一億円 製品 設備 四年目 一億円 設備 製品 利益留保 • 会社は運転資本の流れと、投資資本の流れを通じて生まれだされ た現金を支払利息、税金の支払い、借入金の返済、株主への配 当の分配に当てた後、その残りの現金は会社内に留保される。企 業が長期にわたり成長すると、現金が蓄積され、企業価値あるい は株価が上昇することが期待される。 財務管理 増 資 ・ 減 資 負 債 に よ る 資 金 調 達 ・ 返 税 金 の 支 払 い 利 子 の 支 払 い 配 当 金 の 支 払 い 済 現金(キャッシュ) 売掛金の回収 売掛金 信用販売 生産 在庫(棚卸資産) 減価償却 投資 固定資産 現金販売 資金調達 • 借入による資金調達 – 間接金融 • 個人=>銀行=>企業 – 金利、借入金額、借入期間 • 通常企業が金融機関から借入する場合、金利、借入金額、借入期間が決められる。会計上 借入期間が1年以上のものを長期借入金、1年以内を短期借入金とよぶ。 – 証書借入 • 通常企業が金融機関から長期借入するとき証書を作成する。 – 手形割引 • 企業が顧客から受け取った手形(将来の特定日に支払うことを約束して振り出される)を金融 機関に買い取ってもらう。このとき、満了日までの利息分は差し引かれる。 – 当座借越 • 当座預金口座にある金額以上の小切手を発行したとき銀行が当座繰越限度額内であれば貸 し出す。 – 企業間の信用を利用して資金の貸し借りを行う • 買掛金 • 支払手形 資金調達 • • • • • • 株式・社債による資金調達 社債は企業が長期的な資金を調達する手段で、金融市場の発行市場で資金調 達される。社債の購入者は満期まで利息を受け取ることができる。利率は固定金 利と流動金利がある。 企業は株式を発行することで資金調達できる。資金の提供者は企業の株式を購 入することで株主になる。株主の権利として、1)利益配当請求権(配当を受ける 権利)、2)議決権(株主総会で会社経営に関する重要な案件を決議する権利)、 3)残余財産分配請求権(会社が解散するときに残った資産を受け取る権利)を 得る。 株式には普通株と優先株がある。普通株は先の3つの権利を保有する。優先株 は普通株よりも高い残余財産分配権を有するが、議決権を持たない。 社債・株式には発行市場と流通市場がある。発行市場では資金を必要とする企 業が新規に社債・株式を発行し資金を調達する。流通市場では社債・株式を保有 する投資家が他の投資家と債権を売買する市場である。 株式と社債の違いは、株式は満期が無く、利益があれば配当を株主に分配する。 社債には満期があり、利益があるなしに関わらず利息を払わなくてはいけない。 資金調達 • 企業内部からの資金調達 – 企業は毎年利益を蓄積している。これを利益の内部保留とよぶ。こ れは、売上から費用を差引いた利益から、さらに法人税、配当など を差引いたものである。企業が新規投資を行うときこの資金が用い られる。この内部保留は株主のものであるから、通常この新規投資 が負担するリスクにおおじた期待収益率が要求される。 – 減価償却による余裕資金 0年度 1年度 2年度 3年度 -500万 -500万 -500万 減価償却 -300万 -300万 -300万 製造費用 -500万 -500万 -500万 売上 1000万 1000万 1000万 利益 200万 200万 200万 余裕資金 300万 300万 300万 新規投資 900万 現金 -900万 資本コスト • 企業は必要な資金を借入金、株式・社債発行、あるいは 内部留保金のいずれかにより調達することができる。企業 はいずれの方法を使用したとしてもその資金の使用コスト を払わなければならない。たとえば、銀行からの借り入れ であれば金利が資本コストとなる。 • 銀行からの借入金に対して企業はその業績のいかんにか かわらずその金利を支払う義務がある。さらに、返済期限 に債権者に返済できなければ会社の倒産ということもあり 得る。株式発行や内部保留金による資金調達では、株主 に対する配当は企業の業績がよければ多く支払えるが、 業績が悪い時は支払わない。企業側からすると内部保留 金や株式発行はリスクの低くい資金調達方法であるが投 資家からすれば企業のリスクを負担しているので高い収 益率を期待する。 財務報告 • 企業会計とは組織の活動を係数で(通常は貨幣額で)補足し、様々な人 が投資した資金が現在どのような状態にあるのか示すことである。 • 企業会計は、企業活動を二面的に把握する複式簿記機構を前提にして いる。 • 通常企業は株主の拠出により現金を調達することから始まり、それを製 造活動に投下し、製品を販売することで現金を得る。回収した現金を次 の製造または商業活動に投下して企業活動を展開していく。企業活動の 拡大に伴い信用取引を取り入れたり、新たな資金調達も行う。このような 企業資本の循環を、複式簿記機構に基づいて、企業活動を把握し集計 及び要約した表は財務諸表とよび、その主要な表は損益計算書と貸借 対照表である。 • 損益計算書は企業の経済活動により利益が出ているのか、それとも損 失が出ているのかを計算している。一方、貸借対照表の左側では資産、 つまり企業が保有する経営資源を表している。右側では負債及び資本を あらわしている。 財務報告 貸借対照表(期末の残高表)12/31 資産 企業資本の待機状態 現金 負債+資本 企業資本の調達源泉 XX 企業資本の行使状態 原材料の未費消分 XX 機械設備の未費消分 XX 借入金(銀行等から) XX 資本金(株主から) XX 損益計算書(期間損益計算)1/1~12/31 資産 収益 企業資本の調達源泉 売上(顧客から) 企業資本の行使状態 原材料の費消分 XX 機械設備の費消分 XX XX 損益計算書 • 損益計算書では、営業すなわち企業の本業活動によってどれ だけの利益をあげたのかの計算を行う。 • 本業での製造活動または商業活動による収益と、財務活動 による収益とを区別するために、営業と営業外に区別し、さら に、経常性ととくべつなものに分けている。 名称 内容 記号 売上高 売った商品等の金額 ① 売上原価 売り上げた商品等の仕入額 ② 売上総利益 粗利ともいわれる直接的な利益 ③ 販売費及び一般管理費 営業活動のコスト ④ 営業利益 本業の利益 ⑤ 営業外収益・費用 金融関係の収支 ⑥ 経常利益 通常の経営活動での利益 ⑦ 特別利益・損失 臨時的な取引の収支 ⑧ 税引前当期純利益 最終的な利益 ⑨ 法人税等 利益に対する課税 ⑩ 当期純利益 税引後のもうけの手取り額である可処分利益 ⑪ 算式 ①-② ③-④ ⑤-⑥ ⑦-⑧ ⑨-⑩ 貸借対照表 • 一般の事業会社の貸借対照表では、通常、資産を流動資産と固定資産 とに大別し、負債も流動負債と固定負債とに大別する。流動性とは換金 可能性を示し、流動性が高い場合には現金への変形の近さを示している。 このように大別する理由は、買掛金や借入金の返済能力や資金上の安 全性を確認するためである。これは、投資家や銀行にとって重要な情報 となる。 貸借対照表 12/31 流動資産 流動負債 現金預金 XX 支払手形 XX 受取手形 XX 買掛金 XX 売掛金 XX 売買目的有価証券 XX 長期借入金 XX 社債 XX 固定負債 固定資産 機械設備 XX 資本金 XX 建物 XX 資本剰余金 XX 土地 XX 利益剰余金 XX 投資有価証券 XX 当期末処分利益 XX 投資 • 最適な投資とは、投資金額と資本コストの合計金額を上回る資金を生み 出す可能性があるものに投資をすることである。たとえば、会社が銀行 から一億円を資金調達し、その資金をインターネット投資に使うとしよう。 この投資は一年後に確実に一億二百万円の現金収入を生み出すとする。 その場合銀行の金利は1%とする。そして、最も確実な投資(例えば国債 の購入)で期待できる収益率も1%であるとしよう。インターネット投資も 将来、確実に期待した現金を手に入れることができるからリスクはゼロで ある。一年後、インターネット投資は投資金額と銀行の利息の合計であ る一億百万円を上回る現金収入を得ることができるからこの投資は報わ れる。 • インターネット投資で生み出される一年後の純現金収入を現在の価値に 直すには以下の数式を使用する • -投資金額+現金収入÷(1+金利)=純現在価値 • -一億円+一億二百万円÷(1+0.01)=99万円 • つまりインターネット投資は現在の価値で99万円あるといえる。 • 参考:もし現金収入の1憶2百万円が2年後であったならこの投資は適当 か答えよ。 損益計算書:ウォルト・ディズニー・カンパニー 損益計算書 売上高 娯楽映画 テーマパーク及びリゾート 消費者製品 (単位:100万ドル) 1995年 1994年 1993年 6,001.5 3,959.8 2,150.8 12,112.1 4,793.3 3,463.6 1,798.2 10,055.1 3,673.4 3,440.7 1,415.1 8,529.2 4,927.1 3,099.0 1,640.3 9,666.4 3,937.2 2,779.5 1,372.7 8,089.4 3,051.2 2,693.8 1,059.7 6,804.7 原価及び費用 娯楽映画 テーマパーク及びリゾート 消費者製品 営業利益 娯楽映画 テーマパーク及びリゾート 消費者製品 本社活動 一般管理費 支払利息 投資及び利息収益 ユーロ・ディズニー投資の損益 税引前・会計基準変更前利益 法人税 会計基準変更前利益 会計基準変更による累積的影響額 開業準備費 退職後手当 法人税 純利益 発行済み普通株式及び普通株相当株式の平均数 1株当たり金額 会計基準変更前利益 会計基準変更による累積的影響額 開業準備費 退職後手当 法人税 1株当たり利益 1,074.4 860.8 510.5 2,445.7 856.1 684.1 425.5 1,965.7 622.2 746.9 355.4 1,724.5 183.6 178.3 -68 293.9 -35.1 2,116.7 736.6 1,380.1 162.2 119.9 -129.9 152.2 -110.4 1,703.1 592.7 1,110.4 164.2 157.7 -186.1 135.8 -514.7 1,074.0 402.7 671.3 1,110.4 -271.2 -130.3 30 299.8 1,380.1 530.4 545.2 544.5 2.60 2.04 1.23 2.04 -0.50 -0.24 0.06 0.55 2.60 チェック項目 1. 収益性の程度 2. 収益性の動向 3. 利益の構成 貸借対照表:ウォルト・ディズニー・カンパニー (単位:100万ドル) 9月30日に終了した会計年度 1995年 1994年 資産の部 現金預金及び現金預金等価物 1,076.5 186.9 投資 866.3 1,323.2 売掛金 1,792.8 1,670.5 棚卸資産 824.0 668.3 映画・テレビ(原価) 2,099.4 1,596.2 テーマパーク、リゾートその他資産(原価) アトラクション、建造物及び設備 8,339.9 7,450.4 減価償却累計額 -3,038.5 -2,627.1 5,301.4 4,823.3 進行中プロジェクト 778.4 879.1 土地 110.5 112.1 6,190.3 5,814.5 ユーロ・ディズニーへの投資 532.9 629.9 その他資産 1,223.6 936.8 総資産 14,605.8 12,826.3 負債及び資本の部 負債 買掛金及びその他未払費用 未払法人税 借入金 前受ロイヤリティ及びその他前受金 繰延法人税 負債 資本 優先株資本金(額面0.10ドル) 授権済 発行済 普通株資本金(額面0.25ドル) 授権済 発行済 留保利益 為替換算調整額 差引:自己株式(原価) 資本 負債及び資本合計 2,842.5 200.2 2,984.3 860.7 1,067.3 7,955.0 1億株 2,474.8 267.4 2,936.9 699.9 939.0 7,318.0 1億株 0 0 12億株 5億7540万株 5億6700万株 1,226.3 945.3 6,990.4 5,790.3 37.3 59.1 8,254.0 6,794.7 -1,603.2 -1,286.4 6,650.8 5,508.3 14,605.8 12,826.3 チェック項目 1. 会社には支払い能力があるか 2. 会社の資産には十分な流動性があるか 3. 資産の構成はどうなっているか 4. 資金調達の構成はどうか 経営指標 • 投資家が投資する際、当該企業がいかなる 収益力を持ち、企業価値がいくらであるかを 知ることは重要である。その際、絶対的な金 額だけでなく、比率指標にして、期間比較、同 業種間比較することでその情報が得られる。 例えば、ある経済新聞では規模、収益性、安 全性、成長力といった財務指標を使用してい る。 財務指標 • 収益性の財務指標:ROI、ROE、ROA – ROI(Return on Investment)投下資本利益率 • • • • 調達した資金をどれだけもうけにつなげたか見る ROI(%)=経常利益÷投下資本×100 投下資本とは、借入金、社債、自己資本の合計 率が高いほど良い – ROE(Return on Equity)自己資本当期純利益率 • 株主の出資金である自己資本をどれだけもうけにつなげたかを見る • ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100 • 率が高いほど良い – ROA(Return on Asset)総資本経常利益率 • 全ての資本に対して、どれだけもうけにつなげたかをみる • ROA(%)=経常利益÷総資本×100 • 率が高いほど良い 財務指標 • 安全性の財務諸表 – 流動比率 • 短期の支払能力を見るもの。比較的すぐに返さなくてはならない 債務に対し、比較的すぐ現金化できる資産をくらべたもの。100 をきるようであれば、支払が滞る可能性があり危険な状態である。 • 流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100 – インタレスト・カバレッジ・レシオ • 支払利息の支払能力をみる指標。 • インタレスト・カバレッジ・レシオ(率)=(営業利益+受取利息配 当金)÷支払利息 • この指標は率が高いほど良い
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