6月29日(9)の資料「生産者余剰と市場の効率性」

ミクロ経済学I
(9) 生産者余剰と市場の効率性
丹野忠晋
拓殖大学政経学部
2016年6月29日
復習/1

この価格ならば買っても良いと考える金額が支払い意欲

消費者余剰は支払い意欲と実際に支払った金額の差

消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間

価格の下落によって消費者余剰は増える

元から買っている消費者は価格下落分だけ利益を得る

新たな買い手の消費者余剰は価格下落分よりも小さい
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
2
復習/2
価格PでQ単位の財を購
入したときの消費者余剰
価格
消費者余剰
P
需要曲線
数量
Q
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
3
企業の儲けと生産
 アルバイトをするとアルバイト代が貰えて嬉しい.
 しかし,疲れたり他の活動ができなくなる
 企業は財を販売することによって収入を得る
 しかし,財を生産するには費用がかかる
 ここで考えている費用は既に学んだ機会費用の概念
で捉えたもの.
 生産のために諦めたものの価値が機会費用
 収入が費用を上回れば生産を行う
 真央のアイスショーの費用が2000円とする.
 収入が4000円出演する.1000円だと出演しない
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
4
生産者余剰
 収入から費用を差し引いた残りが企業の利益
 この残り即ち余剰が生産者余剰
 真央はアイスショーを一回出演するか考えている
 アイスショーの価格が収入になる
 アイスショーの価格が7000円ならば真央の余剰は
7000-2000=5000 (円)
 この5000円が真央の生産者余剰だ
 真央の他に羽生,鈴木明子,高橋大輔,村上佳菜子
 各々の費用は違うときに販売の決定や余剰は?
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
5
アイスショーの売り手と費用
売り手
2016/6/29
費用(円)
真央
2000
羽生
3000
鈴木明子
5000
高橋大輔
7000
村上佳菜子
10000
ミクロ経済学I 9
6
アイスショーの費用のグラフ
費用(円)
10000
8000
明子の大輔の費用
羽生の 費用
村上の費用
費用
真央の
費用
費用を
低い順に並べる
5000
3000
2000
枚数
1
2016/6/29
2
3
4
5
ミクロ経済学I 9
7
アイスショーのチケットは何枚売れる
 各人の費用を小さい額から並べた
 価格>費用→
 価格<費用
販売を増やす
→ 販売を控える
 価格が高ければ沢山販売できる
 実際に売れる枚数(数量)
→ 価格=費用
 価格が7000円だったら何枚売れる?
 売り手の費用から供給表を作る
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
8
価格帯
9000から7000
費用 売り手の数
売り手
7000
4
真央,羽生,明子,大輔
7000からら5000 5000
3
真央,羽生,明子
5000から3000
3000
2
真央,羽生
3000から2000
2000
1
真央
0
いない
2000未満
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
9
価格と販売量
費用(円)
価格から販売量が分かる
供給曲線と同じ機能
10000
3枚は売る
8000
7000
5000
価格は7000円
4枚は売らない
3000
2000
枚数
1
2016/6/29
2
3
4
5
ミクロ経済学I 9
10
費用と供給量
費用(円)
10000
8000
7000
5000
真央,羽生,明子が供給
明子の
費用曲線の枠線が供給曲線
羽生の 費用
費用
真央の
費用
価格は7000円
3000
2000
供給量
枚数
1
2016/6/29
2
3
4
5
ミクロ経済学I 9
11
供給曲線(価格から数量へ)
価格
P
供給曲線
数量
Q
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
12
供給曲線=限界費用曲線

最後の一個の費用が収入(価格)よりも下回る或いは
等しいときに販売する

価格と費用が一致している費用を持っている売り手
は限界的売り手.その販売個数が市場での供給

価格=費用→販売量

これは供給曲線と同じ.販売しようとする数量

この費用曲線は各数量から1単位増えたときに増加
する費用.これは限界費用と同じ.限界費用曲線と
もいう.
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
13
生産者余剰

生産者余剰は売り手の収入から生産のための費用を
差し引いた額である
生産者余剰=収入ー費用
 生産者余剰を英語で
 生産者余剰を記号
Producer Surplus と言う
PS で省略して表す
 真央の生産者余剰を正確には個別生産者余剰という
 市場全体の生産者余剰を総生産者余剰と呼ぶ
 生産者余剰は個別生産者余剰と総生産者余剰の両方
の意味でしばしば使われる
 どちらなのか自分で判断
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
14
費用と生産者余剰
費用(円)
 羽生のPS=7000-3000=4000
総生産者余剰
10000
8000
7000
5000
 真央のPS=7000-2000=5000
 明子のPS=7000-5000=2000
真央 羽生 明子
のPS のPS のPS
価格7000円
供給曲線
3000
2000
供給量
枚数
1
2016/6/29
2
3
4
5
ミクロ経済学I 9
15
生産者余剰の計算

価格が7000円の時のPSの計算

真央の個別生産者余剰=7000-2000=5000

羽生の個別生産者余剰=7000-3000=4000

明子の個別生産者余剰=7000-5000=2000
総生産者余剰=5000+4000+2000=11000

個別を全て足し合わせると総生産者余剰になる

グラフにおいて生産者余剰は供給曲線と価格線及
び縦軸の間の領域で表現できる
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
16
供給曲線と収入/2
価格
供給曲線
7000
四角の面積=収入
数量
0
2016/6/29
3
ミクロ経済学I 9
17
供給曲線と費用
価格
供給曲線
7000
台形の面積=費用
数量
0
2016/6/29
3
ミクロ経済学I 9
18
生産者余剰=収入ー費用
収入
=
2016/6/29
-
費用
生産者余剰
ミクロ経済学I 9
19
供給曲線と生産者余剰
価格
供給曲線
生産者余剰
7000
数量
0
2016/6/29
3
ミクロ経済学I 9
20
価格の上昇の効果
 時給が上がると嬉しい.生産者余剰でどう表現?
 アイスショーの価格が9000円に上昇した
 真央のPS=9000-2000=7000
 真央の生産者余剰は5000円から2000円分増加した
 羽生のPS=9000-3000=6000
.PSは2000円分増加
 明子のPS=9000-5000=4000.PSは2000円分増加
 既存の売り手は価格上昇分だけ余剰が増加
 新たに高橋大輔が販売する
高橋大輔のPS=9000-8000=1000
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
21
価格上昇と生産者余剰
費用(円)
真央の生産者余剰の増加
羽生の生産者余剰の増加
明子の生産者余剰の増加
大輔の生産者余剰
新しい価格9000円
10000
9000
8000
7000
5000
元の価格7000円
供給曲線
3000
2000
新しい供給量
枚数
1
2016/6/29
2
3
4
5
ミクロ経済学I 9
22
価格上昇後の生産者余剰
費用(円)
真央のPS
羽生のPS
明子のPS
大輔のPS
10000
9000
8000
新しい価格9000円
5000
供給曲線
3000
2000
新しい供給量
枚数
1
2016/6/29
2
3
4
5
ミクロ経済学I 9
23
価格の上昇は既存と新規の生産者
への効果をもたらす
 既に売っている人には均等に価格上昇分だけの生
産者余剰が増える
 価格上昇によって新たな生産者が現れる
 新たに発生した生産者余剰は価格上昇分よりは小
さい
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
24
価格上昇,供給曲線,生産者余剰
価格
新価格 P’
既存の売り手の生 新たな売り手の生産者
産者余剰の増加 余剰の増加
D
元価格P C
A
供給曲線
E
B
元の生産者余剰
数量
0
2016/6/29
Q
ミクロ経済学I 9
Q’
25
消費者余剰と生産者余剰
価格
供給曲線
消費者余剰
P
生産者余剰
需要曲線
数量
Q
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
26
経済厚生

経済学では自由な競争は効率をもたらすと考える

価格制限は余剰や不足をもたらした.そのような事
態がないだけでなくある種の優れた点を持つ
経済厚生あるいは総余剰とは取引をしている全て
の主体の望ましさを表す
買い手と売り手がいた
総余剰は消費者余剰と生産者余剰の和
政府がある場合はそれに政府税収をさらに加える




需要曲線と供給曲線の交わる点である完全競
争市場の均衡では総余剰が最大化される
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
27
総余剰あるいは経済厚生
価格
総余剰
供給曲線
P
需要曲線
数量
Q
2012/6/28
経済学入門 11
28
市場経済の効率性
 経済全体を考える総余剰はお金のやり取りは問題
ではない

消費者余剰=買い手の価値-支払った金額

生産者余剰=受け取った金額-売り手の費用

総余剰=消費者余剰+生産者余剰
=買い手の価値-支払った金額+受け取った金額-
売り手の費用
=買い手の価値-売り手の費用
 経済全体では費用を上回る価値が創出されたかど
うかが重要である
2012/6/28
経済学入門 11
29
効率と公平
 総余剰が最大化された状態を効率的という
 反対に非効率であれば経済主体の間で取引をするこ
とによって余剰を増やす余地がある
 言い換えればこれ以上取引をしても利益がもう生ま
れない状態が効率的な状態である
 様々な価格は所得分配を変える
 他に公平性(衡平性)を考える事もある
 効率性はパイをどれだけ大きくするか
 公平性はパイをどのように平等に分けられるか
 公平性を評価する方が難しい
2012/6/28
経済学入門 11
30
均衡価格と取引量
イチロー,ダル,マー君が需要
費用(円)
10000
真央,羽生,明子が供給
需要曲線
供給曲線
8000
均衡価格5000円
5000
均衡点
3000
2000
均衡取引量
枚数
1
2012/6/28
2
3
4
5
経済学入門 11
31
 イチローCS=5000
均衡点の総余剰
 ダルCS=3000
費用(円)
 マー君CS=0
 真央PS=3000
10000
 羽生PS=2000
8000
 明子PS=0
5000
 総余剰
=5000+3000+3000+2000
=13000
3000
2000
取引量
枚数
1
2012/6/28
2
3
4
5
経済学入門 11
32
均衡取引よりも過小
費用(円)
 価格8000円,一枚
 イチローCS=2000
 真央PS=6000
 ダル,マー君は購入
10000
しない.羽生,明子
は供給しないとする
 総余剰=8000
 競争均衡の総余剰
よりも小さい
8000
5000
3000
2000
取引量
枚数
1
2012/6/28
2
3
4
5
経済学入門 11
33
均衡取引よりも過大
費用(円)
 価格4000円,4枚
 イチローCS=6000
 ダルCS=4000
マイナス
 マー君CS=1000
10000
 内村CS=0
8000
 真央PS=2000
5000
 羽生PS=1000
4000
3000

明子PS=-1000
 大輔PS=-4000
 総余剰=9000
2000
枚数
1
2012/6/28
2
3
4
5
経済学入門 11
 競争均衡の総余剰
よりも小さい
34
競争均衡の総余剰は最大化される
 競争均衡の総余剰=13000
 過小な生産の時の総余剰=8000
 過大な生産の時の総余剰=9000
 他の取引量でも競争均衡の総余剰を上回ること
はできない
競争均衡は総余剰を最大化させるという
意味で望ましい性質を持っている
2012/6/28
経済学入門 11
35
総余剰あるいは経済厚生
価格
取引量を減らした時の総余剰
需要曲線
供給曲線
P1
価値が費用を上回る
から生産を増やした
方が良い
価値
費用
数量
Q1
2012/6/28
経済学入門 11
36
総余剰あるいは経済厚生
価格
需要曲線
総余剰
マイナス部分
P2
P
供給曲線
価値
費用
Q2
2012/6/28
価値が費用を下
回るから生産
を減らした
方が良い
経済学入門 11
数量
37
なぜ均衡点で総余剰は最大か?
 需要曲線と供給曲線の交点では価値(支払意欲)と費
用が等しい
 これは総余剰を最大化させている.なぜか?
1.
均衡取引量よりも過小な生産では,価値が費用を
上回る.増産は総余剰を増やすことを意味
2.
均衡取引量よりも過大な生産では,価値が費用を
下回る.減産は総余剰を増やすことを意味

均衡点では生産量を増やしても減らしても総余剰
は増えない.よって総余剰は最大になっている
2012/6/28
経済学入門 11
38
復習/1
価格
供給曲線
消費者余剰
総余剰
P
生産者余剰
需要曲線
数量
Q
2016/6/29
ミクロ経済学I 9
39
復習/2





消費者余剰は取引による消費者の利益
生産者余剰は取引による生産者の利益
消費者余剰は需要曲線と水平な価格線の間
生産者余剰は供給曲線と水平な価格線の間
価格の上昇によって生産者余剰は増える

元から売っている生産者は価格上昇分だけ利益を得
る

新たな売り手は価格上昇分よりも小さい生産者余剰
が発生する
総余剰は消費者余剰と生産者余剰の和
均衡点では総余剰が最大化される


2016/6/29
ミクロ経済学I 9
40