明治大学情報科学センター編 人間と情報 情報化社会を生き抜くために 1 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 目次 はじめに 第1章 情報の量と意味 1. 情報は数えられるか 2. 情報という用語のあいまいさ 3. 情報伝達の図式化 4. 情報の意味の相対性 5. 意味は状況・文脈で決まる 6. コンピュータ翻訳の難しさ 7. マスメディアにおける文脈 8. ニュースの穴 9. ホームページ情報の文脈 10. ホームページ情報の浅さ All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 2 はじめに 情報化社会の不安 大量の情報によって押しつぶされてしまうので はないか? 原因:情報産業に対する理解不足ではない 原因は人間のほうに内在 情報流通が中核的な社会に関与する人間の 不安の解消が必要 社会は人間が形成するという主体的な意識の 喚起が必要 コンピュータは人間の道具としての存在である 3 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 第1章 情報の量と意味 4 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 情報は数えられるか 専制君主X氏のコイン投げ 表がでれば宣戦布告 裏が出れば平和条約 スパイのY氏にとっての情報の量は? 表が出れば関連諸国に知らせねばならない 裏が出れば緊急の行動は必要ない 伝達される情報は1bit(0か1)情報の最小単位 戦争か平和かは情報の最小単位なのか? 受け手(スパイ)が活用できる情報もできない情 報も同じ1bitなのか? 5 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 情報という用語のあいさまいさ コンピュータ技術者の「情報量」=データ コンピュータのCPUが一度に処理できるデータ量 携帯電話が1秒間に伝送できるデータ量(32kbps) フロッピーに記録できるデータ量(1MB) 人間や社会に関する議論ででてくる「情報」 =「内容のある情報」意味の重要性 情報がどのくらいの価値をもつか 情報=意味や価値のある情報 量として数えられるものは「情報」ではなく「データ」 6 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 情報伝達の図式化 情報伝達のモデル 二つの玉子がパイプで結ばれた形状 玉子の大きさに比べてパイプは非常に細い 玉子は受け手と送り手がそれぞれ保有している知識 情報伝達が可能なとき双方の知識はおおよそ共通 データ形式→状況・文脈→社会・文化(中から外へ) 送られるデータは共通知識のもとで意味をなす 共通知識に比べ送られるデータはわずか 送り手はデータに意味をこめる工夫が必要 受け手はデータから意味を汲み取る想像量が必要 コンピュータ技術者の「情報量」 =玉子部分を切り離してパイプの部分のみを対象 7 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 情報の意味の相対性 情報の意味=パイプ部分だけでなく玉子部分の考察! 受け手にとっての意味 受け手のもつ背景知識により受け取る情報の重大さは大 きくことなる 情報はデータ自体が絶対な意味をもつのではない 受けて・送り手に依存した相対的意味をもつ 「54321」と「65535」はどちらが意味があるか? 意味は受け手が自分が持っている知識に基づいて生成 送り手が送ったのとは違った意味を独自に生成 「立入禁止」はは入れる 探す価値のあるものがその中にあることを意味する 物理的には入れないところには書く必要も無い 物理的には入れるが制度的に入れない 情報がないのに情報がある 便りがないのがいい知らせ All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 8 意味は状況・文脈で決まる • 水はナスの細胞の中にある • 私はキツネ(おとぎ話か蕎麦屋の会話か) 状況・文脈が流動的な概念の意味を固定する 一つの言葉が多くの意味を持つ(言語の多義性) →文脈によって指示対象を限定するしかない 文脈が不要な多義性のない状態は理想か? 無限個数の名称が必要 われわれにはそうした言語は習得不能 社会制度・文化風習にも注目が必要 外国文学の例 =外国の歴史・文化・宗教がわからないと作品が理解で きない 9 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. コンピュータ翻訳の難しさ 1980年代=自動翻訳のブーム→下火 状況・文脈に基づく判断がコンピュータには理解 不能 言語間の翻訳は単なる単語の置き換えではない hot water →water は「水」か「湯」か 指示語や代名詞の扱い 「54321」に人間がなぜ反応するのか 「私の右前方にあるもの」=人間にとっての「右前方」 •人間の知能は結局のところ機械には実現できない •人間の理解力は機械の能力を上回っている こうした議論は正しいのか? 10 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. マスメディアにおける文脈 マスメディア: 広く一般市民に向けて情報を伝達するメディア 情報媒体だけではなく情報の送り手を含める 「メディアはメッセージである」(マクルーハン) われわれはメディアに向かいあうとき、メディアに応 じた特有の構え(スタンス)をなす 新聞:漠然とした信頼感 テレビ:映画に似た白々しさ ラジオのディスクジョッキー:近親感 メディアに対する特有の構えが文脈 その文脈を通してメディアの内容をうけとる メディアそれ自体が何らかのメッセージをもつ All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. 11 ニュース性の穴 報道=マスメディアの大きな機能の一つ 客観性を旨とする 真に客観的な報道はあり得ない 編集過程に必ず主観性がはいる 意識的に特定の情報を提供しない 受け手に偏った印象を抱かせる ニュース性=ニュースの取捨選択 ありそうも無いことこそニュースになる 犬が人を噛んだ/人が犬を噛んだ 取り上げられたことをよく起きることだと思い込む →めったいないことをよく起きると思い込む危険 12 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. ホームページ情報の文脈 •ホームページ 画像などを含んだテキストによって構成される パージの集まり ページはリンク情報によって他のページを関連 付けられる→ハイパーテキスト •WWW ホームパージがインターネットを関して結ばれ、 膨大な集合体を形成 •ハイパーテキストの構成=段階構造 参照単位はページごと=文脈の破壊の危険 どこからどうリンクが貼られるかわからない 13 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo. ホームページ情報の浅さ 読み手の事前知識は期待できない 直接的で明瞭な表現に限定されがち 時間的順序関係がほとんどない(新聞との違い) 「一見さん」ばかりが大勢来る世界の想定が必要 文脈性の低い、文化の厚みの無い希薄な内容 ホームページの自動翻訳 ★ホームページ情報の厚みを増すために! ページの参照関係への留意 •読み手に文脈を与えるWWW空間作りが必要 •読み手も参照関係への留意が必要 14 All Rights Reserved, Copyright© 2001, S.Kondo.
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