熱帯大気中の二次元積雲対流の数値計算 -初期の大気湿度に対する感度-

熱帯大気中の二次元積雲対流の数値計算
-初期の大気湿度に対する感度地球および惑星大気科学研究室
今関 翔
本発表の目次
序論
数値計算の概要
結果と考察
結論
序論:積雲対流とは
・ 水の相変化を伴う鉛直対流 (空間スケール: O (1 km)~O (10 km), 時間スケール: O (1 hour) )
・ 地球大気の鉛直構造を決定する上で重要なものの一つ
・ Riehl and Malkus (1958): 熱帯収束帯におけるエネルギー収支解析
・ 積雲対流による熱輸送が, 熱帯大気の全熱エネルギーの鉛直分布の維持に関わる
・ 湿度の水平非一様な分布との関連性
35°N
赤道
70°E
赤道付近の雲画像 (2010/01/01)
http://weather.is.kochi-u.ac.jp/sat/ALL/
35°S
150°W
序論:研究内容
・ 初期の大気湿度に対する積雲対流の発達の感度実験
・ 地球流体電脳倶楽部 deepconv プロジェクト(http://www.gfddennou.org/library/deepconv/) の一環として開発した, 二次元雲対流モ
デルを用いた
・ 湿度ゼロの乾燥した層を与える
・ 大気境界層~対流圏中部で感度を見る
・ 水平領域の半分を乾燥させる
序論: 研究の目的と背景
目的
・ 乾燥した領域を含む大気湿度の下での積雲対流の発達の構造を研究する
背景
・ 環境の湿度場が積雲対流の発達に影響する
・ Derbyshire (2004): 自由対流圏の湿度に対する感度実験
・ Takemi (2007): 大気境界層 と自由対流圏の湿度に対する感度実験
本研究では,
「自由対流圏の乾燥によって深い (背の高い) 対流の発達が抑制される
(Derbyshire, 2004)」
という乾燥した湿度場の影響に焦点を当てた実験を行う
Derbyshire (2004) での相対湿度の鉛直分布
25 %
15
自
由
対
流
圏
10
高
度
[km]
5
2
0
20
0
40
60
80
100
相対湿度 (%)
・乾燥した層を与える高度が 2 km 以上
に固定されていた
Takemi (2007) での相対湿度の鉛直分布
13
対流圏界面
10
乾燥を与える領域の初期の相対湿度の鉛直分布
30
~
~
7
6
高
度 5
[km] 4
3
2
1
0
0
40
60
80 90
相対湿度 (%)
20
z
高
度 5
初期の湿度
ゼロ
Hd
[km]
0
0
序論: 先行研究における問題点と実験設定
20
40
60
80
100
相対湿度 (%)
・ 自由対流圏を乾燥させても
0 km
256 km
x
512 km
・ 一定の高度以上の初期の大気湿度をゼロにする
深い対流の抑制は見られなかった
・ 水平領域の半分 (0 km~256 km) を乾燥させる
・自由対流圏の乾燥の度合いが小さい
・ 乾燥させる層の下限: 1 km~7 km
Hd
数値計算の概要: モデルの基礎方程式系
二次元準圧縮方程式系 (Klemp and Wilhemson, 1978)
変数は
水平一様な基本場
とそこからの偏差
に分けて扱っている
運動方程式
熱の式
圧力方程式
凝結成分の混合比の保存式
・ 乱流過程
・ Klemp and Wilhemson (1978) の
1.5 次のサブグリッドスケール乱流モデル
・ 雲物理過程
・ Kessler (1969) の暖かい雨のバルクパラメタリゼーション
・ 物理過程 (I)
・ 地表面からの運動量・熱・水蒸気フラックスあり
・ 物理過程 (II)
・ 水平一様な放射冷却およびニュートン冷却あり
・ 境界条件
・ 水平方向は周期境界条件, 鉛直方向は対称境界条件
・ 時間積分
・ モード別時間分割法
数値計算の概要: 計算設定
・ 計算領域: 水平領域 (x) 512 ㎞, 鉛直領域 (z) 30 ㎞
・ 積分時間: 216000 sec (60 hour)
・ 格子間隔: 水平方向 500 m, 鉛直方向 250 m
・ 時間ステップ: 音波関連項 0.5 sec, 音波以外の項 5 sec
・ 初期条件: 高度 300 m に振幅 0.3 K のランダムな擾乱を与える
・ 基本場: 熱帯域の海洋における気温と相対湿度の観測値 (Yamasaki, 1983)
を使用する. 気圧は上記の値と静水圧の式から求める
*1
結果と考察(Hd = 4 km 実験)
*1 Hd: 乾燥を与える高度の下限
t = 18000 sec の雲水混合比の偏差
30
[kg/kg]
乾燥領域
非乾燥領域
3.6×10^-3
・ 高度 10 km~13 km まで
20
z
[km]
10
4
0
0
100 200
x
300 400 500
[km]
2.5×10^-3
2.0×10^-3
1.5×10^-3
1.0×10^-3
6.0×10^-4
到達する深い対流が生じている
0
z = 9875 m での雲水混合比偏差の x-t 断面図
[×10^4 sec]
0
深い対流が生じたタイミングを見る
4
・ 乾燥領域と非乾燥領域との深い対流の
発生時間のずれ → 深い対流の発達の抑制
8
t
12
(Hd = 2 km, 3 km 実験でも同様)
16
(Hd = 1 km 実験では深い対流が生じない)
20
0
高度4 km 以下に乾燥した層を与えると,
100
200
x
300
400
500
[km]
深い対流の発達が抑制される
結果と考察(Hd = 4 km 実験)
z = 4125 m での雲水混合比偏差の x-t 断面図
*
t = 15000 sec~30000 sec で時間平均した
[×10^4 sec]
0
[kg/kg]
水蒸気混合比の偏差と風速場
乾燥領域
[kg/kg]
2
0.008
0.006
0.004
0.002
4
[km]
0
-0.002
-0.004
-0.006
-0.008
z
200
x
250
300
[km]
2.5×10^-3
2.0×10^-3
6
1.5×10^-3
8
乾燥領域
10
0
100
200
非乾燥領域
300
*
15000 sec~30000 sec
x
400
500
[km]
1.0×10^-3
6.0×10^-4
0
非乾燥領域で雲活動が活発であり,
乾燥領域では深い対流が抑制されていた時間帯
0
150
t
3.6×10^-3
[m/s]
乾燥領域と非乾燥領域をまたぐ循環と, Hd = 4 km 以下での水蒸気の減少
・ 非乾燥領域における活発な雲活動の結果生じた循環によって, 乾燥した層が低高度側に
拡大した → 深い対流の抑制の加速
・ 湿度ゼロの層によって乾燥領域での深い対流の発達が抑制されることと関係
詳細は確かめられていないが, 最終的に深い対流が発達する要因は, 地表からの水蒸気フラックスと
熱フラックスによって熱エネルギーが供給されていたからだと思われる
結論
本研究では, 自由対流圏に湿度ゼロの層を水平非一様に与える数値実験を行い,
以下の結論が得られた
Derbyshire (2004) や Takemi (2007) では示されなかった高度においても, 深い対
流の発達の抑制が見られる
・ 高度 3 km と 4 km (乾燥した層の下限)
水平非一様な湿度場の下で生じる, 深い対流の抑制が加速される構造がある
・ 乾燥領域と非乾燥領域をまたぐ循環が生じ, 乾燥した層が低高度に拡大する
・ 高高度側に存在する乾燥した層によって, 深い対流が乾燥領域で抑制される場
合に生じると考えられる