CAGEの枠組み:活用例 ・C:文化的(Cultural) ・A:政治的(Administrative) ・G:地理的(Geographical) ・E:経済的(Economic) な隔たり ■業種レベルで考える五つの重要な 応用例:①~⑤ 1 ①差異の顕在化 ・衛星放送会社:「スターTV」の事例 ・ビジネスモデル:アジアのエリート層に英語番組 を放送 (衛星放送=地理的な隔たりの減少) →失敗。原因は? ・文化的な隔たり(視聴者による現地語コンテンツ の選好)を無視 ・制度的な隔たり(テレビ業界への政治的制約) への無頓着さ ■CAGEの枠組みの全ての側面に注意を払い、鍵と なる差異をはっきりさせることが重要! 2 ②外来種であることの負荷の理解 多国籍企業=ハンディキャップ の場合を考える ・韓国における美容化粧品業界の事例 ・仏:ロレアル、米:プロクター&ギャンブル →世界の主要市場ではトップ ・韓国のみ例外 →トップは現地企業:アモーレ・パシフィック なぜなのか? CAGEの枠組みを用いて原因を探る 3 多国籍企業が勝てなかった原因 ・文化的な隔たり:韓国人の嗜好とグローバルな 製品ラインナップとのミスマッチ ・制度的な隔たり:関税、製品規制、国内製品推奨 キャンペーンなどの障害 ・経済的な隔たり:訪問販売という外国企業に不利 な「メイン販売経路」の存在 ■多国籍企業にとって“不慣れな現地の環境で戦う際 の不利な条件”を洗い出し、分析 することは、事業拡 大を狙ううえで考慮すべき重要な点である! 4 ③自然な所有者の特定と海外の競 合者との比較 ・CAGEの枠組みを使えば多国籍企業の国ごとの相 対的位置をより細かに見ることが可能 ・例:カストロ体制後のキューバで勝つのはヨーロッ パ企業orアメリカ企業? ヨーロッパの優位 ・スペイン:言語、植民地的つながり(文化的隔た り:低) 5 アメリカの優位 ・地理的な近さ(地理的隔たり:低) ・マイアミ周辺:第2外国語としてスペイン語を使用 (文化的隔たり:低) ・カストロ体制以前のアメリカによる経済独占(経 済的隔たり:低) 著者による分析結果:アメリカ企業の勝利 →つまり、キューバに対してアメリカは“自然 な所有者”である ■自然な所有者としての優位を理解するとともに、そ の他の戦略によって簡単に覆るものであることも認 識しておく必要あり! 6 ④市場の比較 ・CAGEの枠組みを使ってある会社の観点から市 場を比較することが可能 ・例:韓国のトップ化粧品企業アモーレ・パシフィッ クから中国とインドの市場を考える インドと比べた中国の優位点 ・地理的な近さ(地理的な隔たり:低) ・民族的な類似点、歴史的なつながり、文化的な 影響の強さ(文化的な隔たり:低) ■この場合、中国がインドよりいくつかの点で有利で ある。同時に韓国にとってインドがいかに難しい市場 であるかを理解できる! 7 ⑤隔たりで割り引く ・隔たりの影響を測るための数量的アプローチ ・一般的に企業は国別ポートフォリオ分析(一人当た りの所得、消費額、市場規模など)を行う ・著者は上記の市場規模の尺度のみを基本的構成 要素とすることに批判的 →市場規模の数値を「隔たりの尺度」で割り算する 大雑把だがそれほど隔たりの概念は大切 8 ファーストフードチェーン:ヤム・ブランズの事例 ・海外事業の収益性が低かった ・展開する21ヶ国のうちの上位7ヶ国で海外売上高 の3分の2を占めていた →主要10ヶ国に減らすことを決定。どれにすべきか? 各国の市場規模をしかるべき隔たりの数値で割っ て調整する ・地理的な隔たりの大きさ ・国境を共有しているか ・経済的な共同体に加盟しているか ・同一言語を使っているか etc. 9 ・これらを考慮してメキシコを分析した結果、考慮しな い場合と比較して市場機会が大きいことがわかった ・実際にこの企業はメキシコ市場に力を注いでいる ・その他:通常のポートフォリオでは大きくない中国の 市場も隔たりを考慮すると大きくなる →事実ヤム・ブランズは中国で成功 2つの欠点 ・有効度が状況によって異なること(本部と対象との 隔たりの大きさが異なるほど有効) 10 ・市場分析というものはあくまで事業を成功させる ための一部分であること(その他のポジショニン グや戦略も必要不可欠) ■隔たりを調整する試みは重要である。ただし、競 争上のポジショニングやその他の戦略の要素といっ た分析を補完するものであることを留意する必要が ある! ※競争上のポジショニングおよびその他の戦略の 要素については第3章にて説明 11 第2章のまとめ 1.セミ・グローバル化した市場では、国ごとの差 異と類似点の両方を考慮する必要がある 2.クロスボーダーでの経済活動において“差異が 及ぼす影響”は“類似点のそれ”より大きい 3.隔たりは国ごとの類似点よりも差異の度合いを 測るのに優れた尺度である 12 4.隔たりは重要な4要素で構成されるCAGEの枠 組みで検討すべきである 5.国ごとの隔たりの重要性は業種の特徴によっ て異なるため、CAGEの枠組みは業種レベルで 最もうまく機能する。 6.CAGEの枠組みを活用することで、広い範囲 での応用が可能である 13 結論 ■大切なのは差異の存在だけでなく、差異自体 の大きさが国ごとに違っていること ■CAGEの枠組みはさまざまな尺度からそれぞれ の国ごとの隔たりの違いを測るものである ■国際戦略を構築するには隔たりの概念だけでは 不十分である。CAGEの枠組みによって、グローバ ルな状況を描き出し、その中でどう行動するかを決 めるために国境を越えるとことで得るものと失うもの に対する理解を深める必要がある 14
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