小企業金融分野における協力 ~ベトナムのおける経験から~

小規模企業金融分野における協力
~ベトナムにおける経験から~
国民生活金融公庫
国際交流室
2005.2.10
1.国民生活金融公庫の協力分野
(仮
説)
銀行などフォーマルな金融機関からの資
金調達が困難な層への融資
中小企業金融
一部の優良中小企業
・小口融資
・膨大な件数
・無担保融資
小規模企業金融
小規模企業
国民公庫
融資スキーム
*「地方・農村開発」、「開発金融」との関わり
マイクロファイナンス
貧困層・農民
低所得事業者
信用調査の
重視
2.ベトナム社会政策銀行(VBSP)の概要
2003年12月31日現在
設
立 2002年10月4日(首相令による設立)、業務開始は2003年1月1日
業 務 内 容 貧困者や小規模企業などに対する社会政策的な融資
・1995年に設立された「ベトナム貧困者銀行」を新しい政策金融機関
として改組
設立経緯
・ベトナム貧困者銀行および他機関の社会政策的な融資制度を継承
・今後、雇用創出に貢献する小規模企業への融資を拡大していく予定
資 本 金 1兆5,150億ベトナムドン(約103億円)(全額政府出資)
支 店 等 61支店、548取引所(※)
従 業 員 5,675人(※)
融 資 残 高 10兆3,480億ベトナムドン(約705億円)
※2004年4月現在の数値
2‐2.VBSPの設立経緯
第1条
(2002年10月4日付首相決定)
貧困者及びその他の政策受益者に対する信用供与政策を実行するため、1995年9月1日付ベ
トナム国家銀行総裁決定(230/QD-NH5)に基づき設立された貧困者銀行を組織変更すること
により、社会政策銀行を設立する。
《VBSPに継承される主な融資制度と現行の問題点》
<VBSP>
<ベトナム貧困者銀行>
【貧困者融資スキーム】
→実質的にベトナム農業開発銀行の
一部門的位置付け
<労働省>
【雇用創出プログラム】
→実施機関は国営商業銀行、国庫
<ベトナム国家銀行>
【教育資金貸付プログラム】
→実施機関はベトナム工商銀行
(承継)
【課題】
◎VBSP職員は直接融資業務に携わ
る経験に乏しい。
(従来の雇用創出プログラム)
・融資判断において、企業内容の分析ではなく、
要件チェックの方に力点がおかれている。
・信用調査において、企業内容を十分に分析でき
ていない。
・一定金額以上の融資に対しては、経営内容に関
わらず、必ず担保が必要になる。
(従来の教育資金貸付プログラム)
・貧困世帯出身者ということや、学生本人を借主
としていることから、回収が滞りがちとなり、不
採算となっている。
2‐3.参考:ベトナムの金融セクター
参考2
ベトナムの銀行セクター
銀行名
設立
目的、融資先
規模
その他
中央銀行
ベトナム国家銀行
(State Bank for Vietnam: SBV)
中央銀行としての
機能
電力、建設等イン
フラ分野への融資
が中心
貿易決裁業務で高
いシェア
工業、商業、サー
ビス業への融資
農業、商業への融
資
支店数 106
従業員 6,300
国営商業
銀行
ベトナム投資開発銀行
1957 年
(Bank for Investment and Development of
Vietnam: BIDV)
ベトナム外国貿易銀行
1963 年
(Bank for Foreign Trade of Vietnam: VCD)
ベトナム工商銀行
1988 年
(Industrial and Commercial Bank of Vietnam: ICB)
ベトナム農業・地方開発銀行
1988 年
(Vietnam Bank for Agriculture and Rural
Development: VBARD)
開発支援基金
(Development Assistance Fund: DAF)
2000 年
支店数 61
従業員 2,200
ベトナム社会政策銀行
(Vietnam Bank for Social Policies: VBSP)
1996 年
公共性の高い分野
への中長期融資お
よび債務保証
貧困者、小規模事
業者への小口融資
合資銀行
(39 行) アジア商業銀行、東アジア
商業銀行など
合弁銀行(4行) インドビナ銀行、VIPパ
ブリック銀行など
外国銀行
(26 行)
株式会社の形態で国営企業や国営商業銀行、民間企業、個人等からの出資により設立され
る。特定の地域や産業を対象とした業務を行っている銀行が多い。
四大国営商業銀行がそれぞれ、インドネシア、マレーシア、韓国、タイの銀行と合弁で設
立している。
1992 年から外国銀行の支店開設が認められている。
政策金融
機関
民間銀行
政府の管理下に置かれており、
「金融省」的
な存在。
元々は国家予算を原資として国営企業に融
資していた機関。現在は国営企業への融資
が 75%。
支店数 23
元々は外貨管理業務などを行う国策銀行で
従業員 2,800 あった。現在は国営企業への融資が 77%。
支店数 104
顧客からの預金が主な原資となっている。
従業員 12,000 国営企業への融資は 60%。
支店数 1,568 農民がおもな融資対象であり、国営企業へ
従業員 22,372 の融資は 25%。
支店数 61
従業員 1,000
首相府が所管する機関。国内では、郵便貯
金、社会保険等を原資とする。ODA資金
の転貸業務も行う。
「ベトナム貧困者銀行」としてベトナム農
業・地方開発銀行の傘下にあったが、2003
年に分離し、組織を変更した。
3.VBSPに対する技術協力の経緯
VBSPによ
る実践段階
公庫の審査ノウハウを伝授(2年間)
▼現在
03.2
事
前
調
査
03.6
覚
書
締
結
・全支店長
・全融資担当
課長
03.10
第
1
回
現
地
セ
ミ
ナ
ー
04.2
第
1
回
日
本
招
聘
研
修
04.5
中
間
評
価
・幹部ミッション
頭取など
・中核支店長、本店企
画部門
04.10
05.2
第
2
回
現
地
セ
ミ
ナ
ー
第
2
回
日
本
招
聘
研
修
(予定)
05.5
最
終
評
価
・融資担当課長など
・オブザーバー支店
長
03.2
03.6
03.10
04.2
04.5
04.10
事
前
調
査
覚
書
締
結
セ第
ミ1
ナ回
ー現
地
招第
聘1
研回
修日
本
中
間
評
価
セ第
ミ2
ナ回
ー現
地
▼現段階 (予
05.2
05.5
定)
招第
聘2
研回
修日
本
最
終
評
価
03.2
03.6
03.10
04.2
04.5
04.10
事
前
調
査
覚
書
締
結
セ第
ミ1
ナ回
ー現
地
招第
聘1
研回
修日
本
中
間
評
価
セ第
ミ2
ナ回
ー現
地
▼現段階 (予
05.2
05.5
定)
招第
聘2
研回
修日
本
最
終
評
価
VBSP取引先企業視察
部品加工業
縫製業
4.技術移転の具体的内容
(1)セミナー形式による実践的手法の伝授
-ケーススタディなどにより極力具体的なイメージ
を与える。
-常にインタラクティブに、やり取りを大切に理解を
深める。
-セミナーの内容を使って参加者が各支店職員へ
の研修ができる内容にする。
(2)ケーススタディ
(問題点)
1 相手のレベルが具体的に分からない。
2 適当な案件が少ない。
(対応策)
1 2パターン:財務分析ができるもの
数字を把握するための実践的
手法に関するもの
2 日本のケースのモディファイと新規の作成
(3)ロールプレイング
-インタビュー形式の調査の実体験
-VBSP用調査様式=解答用紙として使用
(4)双方向の効果
インタラクティブなやり取りの効果
-理解度合いの把握
-ベトナムの実態の把握(金融、小企業、商習
慣)
-相互理解、信頼関係
(参考)公庫支店長の参加
1
2
3
4
幹部ミッションの好感触
経験者の重み
皮膚感覚での共感
内部的な理解、経験
実態の把握
実態調査
研修中の
情報収集
関支
係店
書・
企
類業
収調
集査
事具
例体
の的
発融
表資
03.2
03.6
03.10
04.2
04.5
04.10
事
前
調
査
覚
書
締
結
セ第
ミ1
ナ回
ー現
地
招第
聘1
研回
修日
本
中
間
評
価
セ第
ミ2
ナ回
ー現
地
研修実施
の表明
ディセミネーション
の状況
支
店
・
企
業
調
査
融
資
の審
発査
表の
現
状
▼現段階 (予
05.2
05.5
定)
招第
聘2
研回
修日
本
最
終
評
価
研修事例の
報告
研修事例の
報告
・普及状況アンケート
・本店ヒアリング
・支店調査、研修視察
5.評価
(方法)
・中間評価と各セミナー時における状況確認
(結果)
・二次研修の状況
全支店で実施。約半数の職員が参加
・その他の効果
支店独自の取組み(様式策定など)
6.VBSP(職員)の実態
• 未経験職員が多数(急激な膨張)
• 知識の偏在
• 体系化の必要性
• 「教え方」の必要性
7.実施のポイント
(1)理論・総論の対極(現場感覚)
「理論はもう十分」 「頭でっかち」
「独特の調査手法」 「真摯な取組み姿勢」
(2)同じ視線での取組み
「信頼関係」 「職場での経験:貸してやる=教えてやる」
(3)現地に適合した題材
「製麺業」 「木工製品」 「バナナチップス」 「餅菓子」
(4)教え方を教える
「内部研修でそのまま使える資料」「そのまま使える教え
方」
*怪我の功名?=やらせる効果
(5)経営陣も含めた意思統一
組織としての取組みの担保