第2部 今次金融恐慌

フレデリック・ソディ論
80年前世界大恐慌のときを振り返って
平成21年1月14日
桂 木 健 次
桂木健次プロフィール
1957.3 福岡県立 修猷館高等学校 卒業
1963.3 九州大学 法学部政治学科 卒業
1970.10 九州大学大学院 経済学研究科博士課程中途退学
1970.11 九州大学 経済学部助手
1977.12 富山大学 助教授
1983.4 富山大学教授
1988-1993 (財)地球産業文化研究所 兼任
1993.4 金沢大学総合大学院(後期博士課程) 併任
1996-1998 北陸地域情報ネットワーク協議会会長 併任
1938年 満州生まれ
2004.3 富山大学 教授(経済学部) 定年退官
2004.4 福岡工業大学 社会環境学部 社会環境学科 教授
学
位: 経済学修士(九州大学)
所属学会: 環境経済政策学会
環日本海学会
経済学史学会 ほか
1
桂木健次 主な研究業績
1. 青木卓志;桂木健次「地域環境における公益機能:森林環境税からのアプ
ローチ」富山大学紀要.富大経済論集52(2),213-245,2006.11(富山大学経
済学部/富山大学)
2. 桂木健次「経済学は環境研究とどう向き合ってきたか:フレドリック・ソディの金融
改革提唱の現代的意義」高多理吉[ほか]編著『社会環境学への招待』,821 2006.6(ミネルヴァ書房)
3. 桂木健次;中村理恵子;熊谷博夫「Fredrick
Soddy,Chemist,Economist,and Ecologist:His Concern about the
Sustainable Development and Monetary Reform」富山大学紀要.富大
経済論集51(3),467-480,2006.03(富山大学経済学部/富山大学)
4. 桂木健次;木村眞実「環境情報開示の発展:富士フイルムの環境報告書」
富山大学紀要.富大経済論集51(2),207-224,2006.02(富山大学経済学部
/富山大学)
5. 桂木健次「環境からの豊かさ計算」桂木健次[ほか]『[新版]環境と人間の
経済学』,20-39,2005.3(ミネルヴァ書房)
2
桂木健次 主な研究業績
6. 桂木健次;章竟「中国における循環経済理論と実践についての研究」福岡工
業大学研究論集37(1)59-71,2004.09(福岡工業大学[編]/福岡工業大学/
福岡工業大学)
7. 桂木健次教授略歴・著作目録、富山大学紀要.富大経済論集49(3),627629,2004.03(富山大学経済学部/富山大学)
8. 桂木健次「市場経済に関する学史的系譜と環境論の位相」富山大学紀要、富
大経済論集49(3),599-608,2004.03(富山大学経済学部/富山大学)
9. 夏広譜;桂木健次;増田信彦「中国における環境会計の導入について:日本の
環境会計の現状を参考にして」富山大学紀要.富山経済論集49(2),443481,2003.11(富山大学経済学部/富山大学)
10. 金堅;桂木健次「図們江開発構想と環境問題」富山大学紀要.富大経済論集
49(1),241-280,2003.07(富山大学経済学部/富山大学)
3
桂木健次 研究テーマ等(1)
研究テーマ
環境経済学(主にマクロ経済指標)
研究内容
環境経済指標とマクロ・ミクロ経済とのループ
所属学会
経済学史学会、環境経済政策学会、北東アジア(環日本海)学会、経済教育学
会、エントロピー学会
学会及び社会活動状況
環日本海(北東アジア)学会2007-8 大会総会議長、エントロピー学会世話人、
NPO 法人河北潟湖沼研究所副理事長
学術論文
関連項目
(1)学術著書
3編
(2)教科書
1編
(3)査読付論文
0編
(4)国際学会論文 1編
(5)紀要・研究会資料解説等 10編
(6)国内学会発表 8編
(1)科研費採択 (代表者 0件、その他 3件)
(2)科研費申請 (代表者 0件、その他 4件)
(3)その他補助金採択 (代表者 0件、その他 0件)
外部資金
関連項目
(4)その他補助金申請 (代表者 0件、その他 0件)
(5)共同研究 (代表者 0件、その他 0件)
(6)受託研究 (代表者 0件、その他 1件)
(7)奨学寄付金 (代表者 0件、その他 0件)
4
桂木健次 研究テーマ等(2)
(1)特許出願 (代表者 0件、その他 0件)
(2)特許審査パス (代表者 0件、その他 0件)
その他の業績項目
(3)著作権 0件
(4)学会賞等の受賞 0件
(5)実用新案パス 0件
(6)ゲストスピーカー 3件
■ 学術著書
・ [編著]高多・野上・林・桂木『社会環境学への招待』(ミネルヴァ書房,2006.6)
・ Japan Environmental Council,The State of the Environment in Asia, 52005/2006,Springer,2005
・Kazue, Tazaki (Edit.)”Heavy Oil Spilled from Russian Tanker “Nakhodka” in 1997”,21st Century
COE Kanazawa University,2003
■ 教 科 書
・ 『新版 環境と人間の経済学』(桂木・増田・藤田・山田編著)同上/2005.
■ 国際学会論文
・ [共著]K. Katsuragi, R. Nakamura, H. Kumagai, "F.Soddy's Concern about the Sustainable
Development and Monetary Reform",Poster Session P-14 in EcoBalance 2006.11 (Tsukuba, JPN)
■ 紀要・研究会資料解説等
・エコロジー経済学における貨幣論:ソディとデイリーを中心に(畠瀬和志・桂木)エントロピー学会誌『えんとろぴい』
第61 号(2007.11)pp.15-20
・「地球温暖化問題における世代間公正の政策原理−ハーマン・E・デイリーのエコロジー経済学に基づいて−」
(畠瀬、桂木)福岡工大環境科学研究所『環境研究発表2008 予稿集』2008.3
・[共著] K. Katsuragi, R. Nakamura, H. Kumagai, “Fredrick Soddy, Chemist, Economist, and Ecologist:His
Concern about the Sustainable Development and Monetary Reform”,富大経済論集 Vol.51-3,2006.3
・[共著]青木卓志・桂木,『地域環境における公益的機能―森林環境税からのアプローチ―』, 富大経済論集,Vol.52-2
・ 木村眞実・桂木健次「環境情報開示の発展―富士フィルムの環境報告書―」富山大学経済学部
『富大経済論集』Vol.51-2、pp.35052、2006.2
5
桂木健次 研究テーマ等(3)
・ ハーマン・E・デイリー著(新田功他訳)
『持続可能な発展の経済学』 ,エントロピー学会『えんとろぴい』
Vol.57,pp149 -150
・ 中国における循環経済理論と実践についての研究」
(桂木・章竟 共著)福工大「研究論集」 第37巻
第1号,2004.9
・ 桂木健次「経済学は環境研究とどう向き合ってきたか :フレドリック・ソディの金融改革提唱の現代的意義」 ,
同上『社会環境学への招待』 ,2006, ミネルヴァ書房
・ 夏広譜・桂木・増田信彦「中国における環境会計の導入について :日本の環境会計の現状を参考にして」
富大経済論集 49(2),2003.11
・ 金堅・桂木「図們江開発構想と環境問題」富大研究論集 49(1),2003.7
■ 国内学会発表
・ 「エコロジー経済学における貨幣論(素稿)
」
(畠瀬、桂木)エントロピー学会東京セミナー ,2007.9
・ 「エコロジー経済学における貨幣論(発表稿)
(畠瀬、桂木)エントロピー学会第25回シンポジウム ,2007.10
・ 「環境経済学の源流にふれて」経済学史学会西南部会 101 回報告,2006.7
・ 新田功〔ほか〕訳・ハーマン・ E・ディリー著「持続可能な発展の経済学」2005, みすず書房刊の書評(桂木)
エントロピー学会誌『えんとろぴい』 No.(2006.4)
・ 桂木健次・熊谷博夫「フレドリック・ソディの経済学研究と物理学:核エネルギー開放をどう危惧したか」
エントロピー学会『えんとろぴい』第56号、 pp.24 -28、2005.11
・ 「環日本海地域における環境協力型社会システムの構築課題」
(沢野・龍・金・桂木ほか
編著『アジア環境白書 (2003 -2004) 』東洋経済新社,2003(English Version: Chapter2
共著) 日本環境会議
-1 Northeast Asia _Region
Building base on Environmental Cooperation,2005.3)
・ "Environmental Damages Valuation and I/O Matrix : Overview of the Oil Spilled Accident by
NAKHODKA(Russian Tanker) 1997"
(中村・大野・桂木共著)Kanazawa Univ,2003
・ 「サハリン-1」プロジェクト第1段階 環境への影響の評価(第6冊 第9章 石油流出の影響および発生後の
対策)
(桂木監修、清水正俊・後藤和夫訳)
( 科学技術振興機構(JST) 受託研究)2004.7
6
桂木健次 研究テーマ等(4)
■ 科研費採択
・ 増田信彦・桂木健次・近藤康之・時政勗 基盤研究(C)
(2)地球環境への影響を考慮する日本の環境経済
勘定の作成と持続可能性に関する研究 12630029 計 107 p 平成 14 年 3 月
・ 時政勗・増田信彦・桂木健次 基盤研究(C)
( 1)中国・日本の地域別環境汚染排出構造の比較的研究
14530026 計 218p 平成 16 年 3 月
・ 時政勗・増田信彦・桂木健次 基盤研究(C)
( 1)国際的環境保全型多部門経済における持続可能性の
研究 12630022 計 109p 平成 14 年 3 月
■受託研究
・ 科学技術振興機構(JST) 受託研究:油流出事故の危機管理システムに関する研究 (2003 ~2005)
沢野班:日本が構築すべき自己変革型社会システムの提案(露語文献邦訳) 2004.7
■ゲストスピーカー
・「環境経済学の源流にふれて」経済学史学会西南部会 101 回報告,2006.7
・ 他1件
7
第 1 部
フレデリック・ソディ
8
第1部 Frederick Soddy
フレデリック・ソディ
Frederick Soddy
フレデリック・ソディ(Frederick Soddy, 1877年9月2日 –
1956年9月22日)はイギリスの化学者である。放射性元素の
研究で、アルファ崩壊・ベータ崩壊などを見出した。1921年
に原子核崩壊の研究、同位体の理論に関してノーベル化学
賞を受賞した。
経歴と主な業績




オックスフォード大学を卒業し、1900年からカナダ・モントリオールにあるマギル大学で、アーネスト・
ラザフォードと共に放射線の研究を行った。
1903年、ウィリアム・ラムゼーとラジウムの原子核分裂によってヘリウムが生成されることを確認した。
1904年から1914年までグラスゴー大学で、ウランが核分裂することによってラジウムが生成されるこ
とを示した。また放射性元素が、化学的性質が同じで原子量が異なる同位体を持つことを示した。後
に非放射性元素も同位体を持つことも示した。元素がα線を放出して、原子番号の低い元素にかわる
こと(アルファ崩壊)ベータ線を放出して原子番号の大きい元素になること(ベータ崩壊)を示した。
1914年 スコットランドのアバディーン大学、1919年オックスフォード大学の教授となる。
1921年 ノーベル化学賞受賞。

 1933年 貨幣論Money versus Man を手始め経済改革の著書 出版

1936年
六球連鎖の定理を発表。
出展:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
9
第1部 Frederick Soddy
直近のソディ研究(1)
藤堂史明
「フレデリック・ソディ『富,仮想的な富そして負債:経済学の逆
説への解決策』1章,3章における基礎的分析概念について」
本稿では,Frederick Soddy, WEALTH, VIRTUAL WEALTH AND DEBT ―
THE SOLUTION OF THE ECONOMIC PARADOX, 1926, Allen and
Unwin Ltd. について,価値に関する基礎概念や分析の視角,経済学へのアプ
ローチについて論じた第1章および第3章について翻訳する。
なお,同書の第6章を中心とした富と仮想的富についての論考は,藤堂(2006
) 1を参照のこと。本稿はソディの,経済学における貨幣的富の概念に対する批
判の基礎となる序盤部分である。
新潟大学経済学会: 新潟大学経済論集.No.58(2008.3)
10
第1部 Frederick Soddy
直近のソディ研究(2)
畠瀬和志・桂木健次
エコロジー経済学における貨幣論:ソディとデイリーを中心に
ケネス・ボールディング、ニコラス・ジョージェスク=レーゲンを源流とするエコロジー経済学が日本で
紹介されるにあたり、これまでは熱力学の法則と経済現象の関係についての議論が主に紹介されてき
た。しかし、エコロジー経済学の分析の対象は、物理現象と経済現象の関わりにとどまらない幅広い
領域を持つ。本稿では、エコロジー経済学における貨幣論の取り扱いを論じる。貨幣的な現象は、物
理現象とは直接関わりを持たないため、一見、環境問題とは関わりがないように見える。しかし、熱力
学の法則を初めて経済学に適用したフレデリック・ソディの経済学が貨幣論と金融改革論を中心に展
開されている通り、エコロジー経済学はその始まりにおいて貨幣論と関係を持っていた。
本稿では、まず第2 節においてフレデリック・ソディの貨幣論、第3 節においてハーマン・E・デイリー
の貨幣論を概説する。第4 節では、これらの貨幣論が環境問題とどのように関係しているかを考察す
る。第5 節では、環境問題を貨幣論から捉える上で重要である割引率に関する議論を紹介する。第6
節では、割引率の設定方法に関して考察を行う。第7 節では、以上の考察をまとめて結論とした。
畠瀬和志・桂木健次「エコロジー経済学における貨幣論:ソディとデイリーを中心に」
11
第1部 Frederick Soddy
ソディ経済学のポイント(1)
金融経済と実体経済との乖離構造の「見える化」
ソディが描いたバーチュアルな富という金融資本制経済批判
兌換停止後の銀行からの与信で創られる信用貨幣部分は、実在的資産
の価値である貨幣金に相対する信用部分を超えており、それを上回る現物
の富(actual wealth)としては、実際には存在しない。また、管理通貨制での
国家勘定では、中央銀行が発行する通貨は完全な「紙幣性」を帯びた「流通
手段」として機能的には「国家紙幣」に代位している。流通する貨幣(通貨)
は、他の個人への移転によって、富への需要と交換可能な国民的負債(
national debt)の一形態となっている。その価値ないし購買力は、富の正
数または実数ではなく、富の負数または財政赤字(政府が発行した国債)を
担保にして創られてされている。この欠損総額は、コミュニティの<虚構上の
富>の信用貨幣部分であり、あたかも実際に所持している以上の富を所持
しているかのように、その額で自分の生産物を交換する必要を強いられる。
続く・・・
12
第1部 Frederick Soddy
金融経済と実体経済との乖離構造の「見える化」
ソディが描いたバーチュアルな富という金融資本制経済批判
現代的経済社会の富とは、実在的富
と虚構的な信用経済が産み落とした富
の重層的構成」という指摘である。ソデ
ィは、信用経済的に創成された富の部
分がその実体的・物質的制約を離れて
経済計算として虚構的に機能している
として、それが物理学(熱力学)でいう
閉鎖された空間では外部との物質や熱
、仕事のやり取りがない限り熱(そして
エネルギー)の総量に変化はないという
ことを示している質量均衡の法則(エン
トロピー第一の法則)に則した実在的な
富部分を見えなくしている。
実在的富と信用経済が産み出す虚構的富
Cf. Soddy, Vi,rtual Wealth,Fig.1 The Principle of Virtual Wealth
13
第1部 Frederick Soddy
ソディ経済学のポイント(2)
市場超克のプログラムをもつ経済学
『富・虚構(Virtual)の富・負債の経済学』(1926初版)
の「22の提言」
経済学者の無視したところを正すために、ソディは富の
物質的側面を敢えて強調。当時の経済学者の中で、ソディ
をまともに評価したひとりがナイト(Frank H.Knight)。
G-レーゲンによる物質的土台と経済学との理論的再統
一およびソフトエネルギー・パスを水素社会に展望する資
源エネルギー問題解決への重要性についての現下の認識
から、ソディの先駆的な貢献は誰の目にも見える。ソディは
彼の時代より70年も先を走っていたことになる。
14
第1部 Frederick Soddy
ソディ経済学のポイント(3)
世代間分配の経済学
現世代の人間が欲望を充足するために、将来収益から富を前受けで引き出し、そ
の負債で支えられているのが貨幣制経済である。しかし、前受けされ現在剰余として
蓄積されたこの部分が、いかなる物質的な意味でも将来世代の収益へと変わりうる
ものではなく、それはただ「社会的な協定」、すなわち市場システム制度のもとでの帳
簿尻の「負債」として、将来収益への転嫁を余儀なくされる、とソディはいみじくも指摘
した。負債とは、物理的地球バランスでいうと、「将来の太陽光で生成されるべき将来
収益への注文書である。負債が複利の法則に従うにしても、将来の太陽光から得ら
れる実質(real)エネルギー、すなわち先取特権である負債に相応した将来の実質所
得(real future income)は、長くは複利式では増加しえない。」ここでは次世代の資
力、資源、エネルギー、そして途上国の開発余地から先取り・横取りしているというこ
とが先進国の現世代には「負債」として記帳されるということが語られているのである
。
15
第 2 部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
16
貨幣制度の用語の説明
金地金本位制(金本位制)
中央銀行券の金貨への兌換(紙幣と正貨を引き換える事)の代わりに、
金塊への兌換を認めた1925年から1931年までイギリスで採用された本
位制。国内の金貨流通を廃止しすべての金を国際収支の最終決済の
ために中央銀行の外貨準備に集中。
管理通貨制度
行政権の支配できる領域で、経済の交換媒介である通貨の総量・総額
を、政策目標(物価の安定、経済成長等)に合わせて調整できる。
⇒ 経済成長が実体経済を膨張させる。
金の保有量の増加以上に経済が成長し通貨が発行されると、金との
兌換保証できなくなり、1930年代の世界恐慌によって破綻した。戦後
しばらく国際決済で中央銀行同士が金1オンス35USドルで交換したが、
1971年に廃されてUSドルが基軸通貨になった。
17
第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
IMF体制構築選択に際して登場した代替提案
●バンコール (Bancor)
英語のbank(銀行)にフランス語のor(金)を組み合わせた造語
実現はしなかったケインズの提案した国際決済通貨
廃止した金本位制に代わり、金など30種類の基礎財をベースにして国際的
に通用する通貨を発行するというもの。→合意をとりつけることができず。
● ゲゼルの通貨論
一次産品の標準バスケットの価格変化に見合う通貨を基軸通貨にする
(必ずしも”地域通貨論”ではない)
● ソディの改革案(イギリス労働党への政策提言)
金本位制の廃止
生活必需(勤労者家計の生活)財の指数に基づく基軸通貨に取替え
18
第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
今次金融危機の回避にはどういう選択肢が可能か
NYダウ平均ベーシックチャート(1995年来の取引株式量の異常増加 )
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第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
今次金融危機の回避にはどういう選択肢が可能か
NYダウ平均(工業) 1927年来の推移
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第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
いまの「不況」は・・・
× 景気後退(recession)
… 一つの景気循環内の緩やかな不振期。
× 不 況 (depression)
… 景気と景気の谷間。
◎ 恐慌(クライシスcrisis)… 不況の著しい状態で、信用の崩壊、金融危機が加わる。
1.コンドラチエフの波・・・技術革新に基づく物価の長周期波動(ほぼ50年)
(1) イギリスの産業革命の波
(2) 鉄鋼業や鉄道の発展の波
(3) 電力・化学・自動車の出現の波
(4) コンピューター、通信を中心とする情報技術 (IT) の波
2.ジュグラーの波・・・設備投資調整に基づく中期景気波動(平均周期9~10年)。
「主循環」とも。1929-1930年代の大不況以来モデル的な波で発生しておらず、
2001年の景気減速局面が発生し今回が注目されている。
3.キチンの波・・・在庫変動に起因する短期の景気波動(平均周期40~50ヵ月)。
「小循環」とも。「消費の冷え込み → 在庫増
→ 生産調整や値引きなどの販売促進 → 在庫適正化」の波動
⇔ 重複して100年に一度のクライシス
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第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
金融経済面での処理の緊要な損失
(2008.12.21現在)
アメリカの金融機関だけで 9,000億ドル(=81兆円) → まだ膨らむ
推計値
民間による処理増資額
2,150億ドル
政府の公的資金用意額
7,000億ドル
サブプライムローン関連損失
3,975億ドル
証券化商品(MSB,CDO)値下がり
3,025億ドル
⇔市場価額変動如何で評価損膨らむ
【金融工学手法での物品・資産の証券化】
金融機関が有する与信機能(貸付債権)、企業の不動産等動の資産価値を証券として
組替え、第3者にポートフォリオに混ぜて売却し流動化させたもの。
(サブプライムローン等の利息や賃貸ビルから上がってくる賃貸料などが期間収益とな
り、資産保有者には資金調達、資産の圧縮や効率活用になる。証券化による資産の
小口化・定型化が進み、第3者が自由に売買できる)。
22
第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
与信により銀行が所持する貸付債権の証券化
信用貨幣②の始原:手形割引(→証券⇒証券化商品)
手形発行する者(振出人)が受取人に対し一定期日(満期日)に一定の金額を支払うこ
とを約束する。その満期前の手形を第三者へ裏書譲渡(他人に権利を渡すこと)し、満
期までの割引料(利息)・手数料等を差引いた金額で売却。 急場の資金調達。
モーゲージ担保証券(MBS)
住宅ローン債権の証券化(1970年に米国で登場)
ローン借手と金融機関がローン契約締結後、金融機関は一定発生するキャッシュフロ
ーを担保にローン債権の一定を証券として市場に売却。
借り手の破産、繰上げ返済などのリスクがあって、米国政府機関等の保障制度(デフォ
ルト時の損失補填等)が導入されていたので、AIGは潰せなかった。
資産担保証券(ABS)
貸付債権や不動産の証券化において発行される証券。
証券化の対象となる資産の保有者から特定目的会社 (SPC)が資産を譲り受けて資産
担保証券を発行。資 産を効果的に処理することが可能となる。
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第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
G20(日米欧+新興諸国)2008.11.15
「金融・世界経済に関する首脳会合宣言」の柱;
◎ 世界不況の回避
・内需刺激の金融・財政出動
・保護主義の抑制(投資制限・輸出規制しない)
◎ 金融危機再発防止 ・金融商品への規制強化
・金融監督の連携強化(新興国の参加検討)
◎ IMF改革
・資金基盤(出資金)の基盤強化:中国の申出
◎ 新たな経済体制
・ドル基軸通貨体制の見直し
・新興国の発言強化
1929-33年恐慌の時はポンドに代わってUSドルが基軸通貨
(世界貨幣:金の代替)。
今回はEUにその力が未だない。
日本円もとても無理。 ⇔ 基軸通貨の「主役」不在
金融同盟(統一)、財政・金融監督(国別)
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第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
新通貨体制(ポスト・ブレトンウッズ)としての「世界通貨バスケット構想」
新ブレトンウッズ体制概念図
林秀毅(ひでき)(新光証券
チーフエコノミスト)と共同監
視金融安定化フォーラム(F
SF)連携リ スク管理体制
(当面)
出典:エコノミスト誌12/30・1/6
25
第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
米・欧・「アジア」の特定地域通貨で構成されるバスケット
地域の通貨の平均的な価値を測る指標(Index)
実際の公的・民間取引での決済手段
EUの前史を紐解けば、
ケインズ、ソディ、ゲゼルのバスケット提言に遡及せねばならない。
http://www.rieti.go.jp/users/amu/en/index.html
(財)国際通貨研究所経済調査部 上席研究員 松井謙一郎の研究
(http://www.iima.or.jp)
本格的に欧州地域に浸透した地域通貨単位 ECU は、1979 年に域内為替変動を安
定させるメカニズム ERM(Exchange Rate Mechanism)として導入された。域内通貨
間の交換比率を一定のバンドの中に収めるため、域内の通貨から構成された通貨バ
スケット ECU(構成通貨のウェイト)が制定され通貨統合に向けた大きな進展となった。
26
ECU のバスケットウェイト
1979
1984
1989
West Germany
27.3
32.0
30.1
France
19.5
19.0
19.0
United Kingdom
17.5
15.0
13.0
Italy
14.0
10.1
10.2
Netherland
9.0
10.1
9.4
Belgium
7.9
8.2
7.6
Denmark
3.0
2.7
2.5
Ireland
1.5
1.2
1.1
Luxumbrug
0.3
0.4
0.3
Greece
0.0
1.3
0.8
Spain
0.0
0.0
5.3
Portugal
0.0
0.0
0.8
100.0
100.0
100.0
Total
出所: Apel (2000)
27
第2部
今次金融恐慌(世界同時恐慌)
アジア AMU(Asian Monetary Unit):
ドル依存体制の見直しで、アジア通貨危機でのドルペッグの教訓として、ドルのみ
に依存しないアジアとして自立的な通貨制度を模索する動きがあること。
東アジアサミット開催(東アジア共同体の構想,2005 年)
AMU 各通貨のウェイト
購買力平価で測った各国の GDP のシェアと、当該国がサンプルとして抽出
された国々の総貿易額(輸出と輸入の合計)の中に占める割合の双方の算術
平均に基づいて算出。
各々の東アジア通貨の AMU 乖離指標は AMU に対してそれぞれの通貨
がどれだけ各通貨のベンチマーク率から乖離しているかで測定。
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第 3 部
ソディ金融改革論から見える
資源・環境論
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第3部 ソディ金融改革論から見える資源・環境論
改めてソディの金融改革論
「何故、エコロジー経済学の萌芽なのか」
【 配布資料 】
・2006 経済学史学会 西南部会 報告要旨(桂木)
・1984 エントロピー学会富山懇話会 フレドリック・ソディの経済学(桂木)
・1985 中山正敏(九大物理)のコメント
・2006 F・ソディの経済学研究と物理学(桂木・熊谷)
・2007 エコロジー経済学における貨幣論:ソディとデイリーを中心に
(畠瀬・桂木)
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第3部 ソディ金融改革論から見える資源・環境論
経済学は環境研究とどう向き合ってきたか(桂木)
『社会環境学への招待』(ミネルヴァ書房刊,2006.6)第1章
国民経済から見る中央銀行発行信用貨幣のカテゴリー:
借
方
貸
方
信用貨幣①
実物取引相応
の発行
発券銀行券
(注)
貨幣金(金地金)
信用貨幣②
手形割引(証券)
与信に伴う発行
社 債
信用貨幣③
国家信用担保
による発行
負 債
国債等
(注)中央銀行当座預金・政府預金・現金・貸付金等
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第3部 ソディ金融改革論から見える資源・環境論
銀行等の持つ手形割引に端を発する顧客に対し
信用供与の与信機能がどう今回作用したか(信用貨幣②)
米投資銀行リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破たんが日本
国内の金融機関に波及した経路
大手行によるリーマン向け融資
生命損保・多くの地銀によるリーマン発行サムライ債の保有
→ 取引総額2600億円の大半が回収不能
アメリカの債券市場は、米国債以外にも、資産担保証券や社債といった民
間部門債券等、多様なリスク・リターン特性を有し、世界最大で厚みのある
市場となっており、海外の資金が大量に流入していた。
日本では、1981年以来、対外投資が対内投資を上回って推移しており、
世界最大の純債権国の地位を維持していた。
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第3部 ソディ金融改革論から見える資源・環境論
国債等を原資とする信用貨幣③
2007年度に日銀券81兆円を印刷(発行)した
(⇔政府(財務省)の負債ストックは849兆円に達した)
(単位:億円)
国債及び借入金現在高
出典:財務省「国債及び借入金並
びに政府保証債務現在高(平成20
年3月末現在)」
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第3部 ソディ金融改革論から見える資源・環境論
消費大国アメリカ市場と資産価格上昇に頼る
経済運用の終わり
アメリカ市場は住宅バブルによる過剰削減とマイナス成長による調整期へ
(グリーン・ニューディール5年)
この間日本は毎年10兆円のGDP喪失の計算
(⇒リサイクル対応型経済の新市場)
社会的規制とCSRの市場経済
アジア市場の育成
(⇒新バスケットによる通貨圏域)
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第3部 ソディ金融改革論から見える資源・環境論
財務会計とCSR(社会責任)をつなぐ環境経営会計
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ご清聴ありがとうございました。
・・・此刻不可沉默
要说些什么!
オアシス(B棟1F)でコーヒーブ
レークを用意しております。別
添資料はそちらで。