サイクロトロンにおける空間電荷力による ”round beam” 生成のメカニズムについて ビーム物理研究会 2010 於 理研仁科加速器研究センター 2010 年 11 月 12 日 理研仁科加速器研究センター 加速器研究基盤部 後藤 彰 内容 • 動機と目的 • “Round beam” 生成メカニズム 1. サイクロトロンにおける空間電荷効果 2. “Round beam” 生成メカニズムの定式化 • まとめ 動機と目的 PSI Injector II での例 (72 MeV 陽子リングサイクロトロン) • サイクロトロンでは大強度ビームのバン チは “round beam” になる • これは空間電荷効果によることがシミュ レーションでも確認されている しかし • 生成メカニズムについてはほとんどが 定性的な議論 0 mA ビームサイズは5倍に 拡大して表示 定式化を試みた 1.5 mA [Courtesy of S. Adam] サイクロトロンにおける空間電荷効果 横方向の効果 PSI Injector II 空間電荷力による発散作用 チューンシフト I= 0 mA 運動方程式 チューンシフトの大きさ : 鉛直方向チューン I= 5 mA : 粒子の質量数 : 粒子の電荷数 : 全粒子数 : 軌道半径 [U. Scryber et al., Cyclotrons‘81, p.43] 電流限界値 チューンシフトによる新たなチューンがゼロになる または 共鳴にかかるようになる 電流限界値 サイクロトロンにおける空間電荷効果 縦方向の効果 空間電荷力によるエネルギーの広がり 縦方向に広がらずに動径方向にビームバンチ が傾く ( 等時性) 空間電荷力が線型の場合 フラットトップ(FT)共振器の 位相をずらす 非線型の場合 ビームバンチの傾き(線型部分)を 補正 サイクロトロンにおける空間電荷効果 縦方向の効果(続き) PSI Ring cyclotron 電流限界値 シングルターン取出しができなくなる 条件で決まる [W. Joho, Int. Acc. School, Dubna,1988] : 全ターン数 : ディー電圧 全走行距離 サイクロトロン内の全電荷 ターンセパレーション [M. Seidel et al., Cycrotrons’07, p.157] 極端に強い空間電荷力による “round beam” の生成 PSI Injector II での例 I= 1.5 mA (72 MeV 陽子リングサイクロトロン) I= 1 mA 入射エネルギー 870 keV ビーム電流 ~2 周回周波数 5 MHz RF 周波数 50 MHz 加速ハーモニクス mA 10 入射ビームのサイズ (10 % 強度) 縦方向 動径方向 15 mm 5 mm [S. Adam, Cyclotrons ‘95, p.446] “Round beam” の生成メカニズム 空間電荷力による粒子の運動 空間電荷力 1周回の間 : 動径方向チューン : 周回角速度 : 粒子の質量 : 周回周波数 : 粒子の電荷 : 1周回の平均値 は一定と仮定 による1周回後の粒子の変位 による1周回後の粒子の変位 による1周回後の粒子の変位 “Round beam” の生成メカニズム 空間電荷力の分布と大きさ 電荷密度 1.2 入射ビームのバンチのパラメータ 1 ビーム電流 1.5 mA 0.8 RF 周波数 50 MHz サイズ(10 % 強度) 0.4 縦方向 15 mm 動径方向 0.6 0.2 0 -15 -5 5 15 縦位置(mm) 5 mm 電場強度 非線型力 15 kV/m 10 5 縦位置(mm) 0 -15 -5 -5 -10 -15 5 15 “Round beam” の生成メカニズム “Round beam” の生成 かつ 空間電荷力 空間電荷力:非線型 円筒形状 電場(kV/m) 粒子の運動の変位 “round beam” の電場強度 16 14 12 10 8 6 4 2 0 サイズ(10 % 強度) 半径 5 mm 厚さ 5 mm 0 渦巻銀河形状 2 4 6 8 10 12 14 16 半径(mm) “round beam” (円板形状) 渦運動 “round” になればそれ以後は同じ形状のまま 各粒子は渦運動をする 回転速度: v v v “Round beam” 生成の様子(再掲) 取出し後のビームサイズ PSI Injector II 20 m 下流 72 MeV, 2.2 mA 最終ターン [M. Seidel et al., IPAC’10, TUYRA03] サイクロトロンではいかに強い収束力が働いているかがわかる まとめ • サイクロトロンでは大強度ビームのバンチは “round beam” になる • その生成メカニズムの定式化を行った • “Round beam” になる理由 1. 縦方向と動径方向の強いカップリング + 等時性 粒子の運動の変位:空間電荷力に垂直 2. 粒子の運動の変位:空間電荷力の大きさに比例 3. 空間電荷力:非線型 • ひとたび “round beam” になればそれ以後はその形状が保たれる
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