発表資料

地図の重ね合わせに伴う
位相関係の矛盾訂正手法
萬上 裕† 阿部光敏*
高倉弘喜† 上林彌彦‡
京都大学工学研究科† 京都大学工学部*
京都大学情報学研究科‡
地理情報システム
• 多くの分野で地図の利用
 例: 森林管理、防災、都市計画
• 特定の管理者による統一的管理ではなく
各自が自らの地図を維持更新する分散管理
• 分散管理された地図の統合利用
 下水道、上水道、電話線、ガス管の地図と
活断層、震源分布などの地質の地図を統合して
都市計画
研究の目的
• 単純な重ね合わせでは記述形式の違いなどの
ため矛盾
• 矛盾の原因
 作成時期の違いのため古い地図と新しい
地図の間の矛盾
 地図の投影法の違いのため周辺に行くに
従ってずれが生じる
 地図作成時の誤差が含まれる
研究目的

矛盾の発見、訂正
統合対象となる地図の形式
• 対象とする地図は数値地図
• 従来の地図:画像データとして格納
 縮尺ごとの画像を保存 → データ量増大
• 現在の地図:地理オブジェクトとして格納
• 地理オブジェクトは座標データと属性情報の組
で記述
• 地理オブジェクトはクラス単位で管理され利用
者は表示、非表示を決定可能
• 地理オブジェクトで格納された地図が対象
地理オブジェクト
構成要素
• [名前] オブジェクトの名称
例: 「京都大学」、「鴨川」
• [座標] 位置を表現
点、線、ポリゴンで記述
(線、ポリゴンは点の列で記述)
• [クラス] オブジェクトの種類
 例: 「道路」、「河川」
9-intersectionモデル
• オブジェクトA、Bの位相関係の記述
• 境界∂A、内部A゜、外部A ̄を使用
• 共有点があれば1なければ0
 A B A B A B

 A  B A  B A  B

A


B
A

B

A

B






位相関係の記述形式改良
• 9-intersectionモデルは位相関係を統一的
に記述可能
• 冗長なA ̄∩B ̄の代わりに「近傍性」を追
加
• オブジェクトが十分近いと近傍性は1それ
以外は0
従来の
9-intersection
共有点の有無のみ記述
改良型
9-intersection
近くか遠くかも記述
近傍性の定義
• 「近傍性」
→ 異なる地図に含まれるオブジェクト
が同一であるか否かの判定に使用
<近傍性1の状態>
• 点/点:2点の距離がしきい値より小さい
• 点/線:点と線の距離がしきい値より小さい
• 線/線:一方の線を構成するすべての点が、
他方の線に近い
位相関係の制約定義
• 制約はクラスと位相関係で矛盾となる関係を
定義
• 名前は制約定義に使用しない
• 例、池(ポリゴン)の中に建物(点)があるのは
矛盾のとき、A∈建物、B∈池として
クラス A
建物
位相関係 クラス B
 0 1 0


池
 0 1 0
1 1 *


矛盾の発見、訂正手順
• 制約には矛盾と訂正方法が記述
1 1つのオブジェクトの近傍のオブジェクトを抽出
2 座標を用いてオブジェクト間の位相関係を9intersectionモデルで記述
3 制約を検索して矛盾を発見
4 訂正方法を参照して矛盾を訂正する
5 訂正方法が複数あるときはユーザーに提示
矛盾訂正方法の提示
• 矛盾の訂正方法をあらかじめ想定して入力す
る必要あり
• 近傍性1でクラスが同じ点同士
同一のものを示しているので一方を削除
• 点が他のオブジェクトと重なる
点を移動
• 点がポリゴンの内部でクラスが同じ
同一のものとみて一方を削除
矛盾訂正の例(ポリゴンの移動)
重心
d2
重心
d1
ポリゴンと線が重なる
d1>d2なので、ポリゴンを
重心方向にd1だけ移動
矛盾訂正の例(ポリゴンの縮小)
d
上の線と重なっているので
ポリゴンをdだけ平行移動
下の線と重なる
重心
ポリゴンを縮小する
両方の線の中間に移動
矛盾訂正の例(ポリゴンの変形)
新しいポリゴン
or
ポリゴンが
重なっている
上方のポリゴンを
変形した
プロトタイプシステム
• 国土地理院作成の1/2500国土基本図と
1/10000地形図を統合するシステム
1/2500
国土基本図
1/10000
地形図
建物はポリゴン
建物は点
大学構内に建物 大学構内に道路
1/2500国土基本図
建
物
は
ポ
リ
ゴ
ン
大
学
構
内
は
建
物
1/10000地形図
建
物
は
点
大
学
構
内
は
道
路
単純な重ね合わせ
道
路
と
建
物
が
重
な
る
同
一
建
物
が
複
数
存
在
道
路
と
建
物
が
重
な
る
同
一
建
物
が
複
数
存
在
矛盾訂正操作後の地図
建
物
が
移
動
削同
除一
の
建
物
の
一
方
を
建
物
が
移
動
削同
除一
の
建
物
の
一
方
を
記述形式の相違
• 1/2500国土基本図と1/10000地形図との
記述形式・精度の違い
1/2500
国土基本図
1/10000
地形図
投影図法
ガウス=
クリューゲル図法
ユニバーサル=
メルカトル図法
誤差
1.75m
7m
オブジェクトはあら
かじめ[名前]を持つ
オブジェクトと
[名前]は独立
[名前]属性
の取り扱い
名前とオブジェクトの関連付け
• 1/10000地形図では[名前]とオブジェクトが独立
• 両者の関連付けが必要
• クラスが同じで近傍性1のものを関連付け
いくつか失敗したが、ほぼ成功
<関連付け失敗例>
• 橋の名前  対応するオブジェクトの不在
• 大学の敷地名
境界の道路が線オブジェクトで記述
まとめ
• 地図の単純な重ね合わせによる矛盾解消
• 矛盾判定にクラスと位相関係を使用
• 応用例:別々に収集されたデータ異なる基盤
地図に保存されてる場合データを統合して1枚
の地図に表示
今後の課題
• 航空写真との統合:クラス属性は利用できない
が仮定を用いれば可能性あり
• 作成時期の違い:どちらが新しいかの判断が
困難だがメタデータなどで作成時期がわかれ
ば地図の更新などに応用可能
• どの程度矛盾解消できるか等の評価は今後
の課題