日本における 外資系保険会社の存在感 2008年2月28日(木) 格付投資情報センター(R&I) 格付本部チーフアナリスト 植村 信保 1 自己紹介 植村信保(うえむらのぶやす) 格付投資情報センター(R&I)格付本部チーフアナリスト R&Iは日本最大の格付会社 1997年以降、格付けアナリストとして生損保の経営分析を担当 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科で博士号取得予定 外部有識者として金融庁の各種委員会メンバー(健全性規制 など)に参加 参議院委員会で参考人としてスピーチ(予定利率引下げ問題) 著書は「生保のビジネスモデルが変わる」(東洋経済新報社、 2003年)など。経済誌にも寄稿多数 新聞、テレビ等へのコメント多数 2 本日のテーマ 1.外資系保険会社の存在感 2.主なプレーヤー 3.成功のポイントと今後の展望 4.質疑応答 3 1.外資系保険会社の存在感 参入規制など 現状では国内会社と同等の規制 支店形式と現地法人による参入 免許制 保険業法 金融庁による監督 支店形式でも国内に複数の拠点を持つことは可能 いずれの場合も、日本の保険会計による業務報告や情報 開示が求められ、健全性規制が適用される 1990年代前半までは外資系保険会社の存在感は 小さかった 4 1.外資系保険会社の存在感 生保 外資系生保の存在感は大きい 個人保険新契約年換算保険料の約3割を占める なかでも「第三分野」における存在感は大きい cf. 近年まで大手生損保の参入が制限されていた 2002年からの銀行を通じた個人年金販売では、預り資産 の5割以上が外資系と見られる 「自前戦略」と「買収戦略」 大手・中堅生保の信用力低下や市場ニーズの変化を捉え、 成長を続けている 買収戦略では破綻生保の買収が目立つ 5 1.外資系保険会社の存在感 損保 外資系損保の存在感は小さい ダイレクトマーケティング コマーシャル分野では国内系が圧倒的 cf. 日本でブローカー制度は普及していない パーソナル分野で一定の存在感を示しているのはAIUのみ ただし、大手損保の株主の約4割は外国人投資家 自動車保険では1997年に外資系損保が開始 都市部を中心に徐々に浸透しているものの、個人向け自動 車保険に占めるシェアは5%程度にすぎない 再保険を通じ、日本の自然災害リスクが海外へ 6 2.主なプレーヤー AIG 日本における外資系最大手 アリコジャパン 生保のアリコジャパン、AIGスター生命、AIGエジソン生命、 損保のAIU保険、アメリカンホームなど複数社で展開 中堅損保の富士火災にも出資(22.1%) 1973年に日本人向けの営業を開始 独自商品の開発とマルチチャネル戦略が特徴(営業職員、 独立代理店、銀行、通信販売) AIU保険 1946年に営業を開始した日本最大の外資系損保 国内系に比べて自動車保険のウエートが低い 7 2.主なプレーヤー AFLAC(アメリカンファミリー生命保険会社) 「第三分野」のトップカンパニー 1974年の営業開始以来、がん保険、医療保険といった 「第三分野」に特化した戦略で成功 本国よりも日本の利益が大きい Prudential Financial プルデンシャル生命、ジブラルタ生命の二本柱 グループ国際部門の利益の大半は日本の生保事業 プルデンシャル生命は質の高いライフプランナー(営業職 員)チャネルによるコンサルティングセールスで成長 ジブラルタ生命は破綻した旧協栄生命の顧客基盤(教職員 団体など)を引き継ぐ 8 2.主なプレーヤー AXA アクサ生命が中核 生保のアクサ生命、アクサフィナンシャル生命(旧ウイン タートウル生命)、ダイレクト自動車保険のアクサ損害保険 アクサ生命は買収した日本団体生命の顧客基盤を中心に、 第三分野に強みを持つ Hartford(ハートフォード生命) 金融機関を通じた個人年金事業に特化 本国では生損保ともに大手だが、日本では個人年金事業 に経営資源を集中 ハートフォード生命の設立は2000年だが、短期間のうちに 変額個人年金の資産残高で業界トップに 9 3.成功のポイントと今後の展望 成功のポイント 買収よりも「自前戦略」で成功 独自のビジネスモデル アリコジャパン、アフラック、プルデンシャル生命など、外資 系生保の成功例はいずれも自前戦略 国内系のような画一的なビジネスモデルではない (=セールスレディによる死亡保障パッケージ商品の販売) 恵まれた事業環境 中堅生保が次々に破綻し、大手の信用力も悪化 =格付けの高い外資系には追い風 「第三分野」への「逆」参入規制があった 10 3.成功のポイントと今後の展望 現状と今後の動向 大手生保の信用力回復 ここ数年でソルベンシーはかなり回復した 過去のビジネスモデルから脱却を目指す動きもある 保険流通の変革(次ページ参照) 今後の展望 「外資だから成功する」ということはない 経営の舵取りが難しくなる これまでのような高収益を上げるのが難しくなる 買収による参入が増える? 11 3.成功のポイントと今後の展望 日本の保険流通は大変革期にある 市場の変化 巨大チャネルの登場 生保新契約は10年前の3分の1の水準 「生きるための保障」へ 銀行窓販の全面解禁 郵政民営化(郵便局会社) 保険ショップ(来店型代理店)の台頭 「シンプルでわかりやすい」戦略の台頭 支払い問題の影響 比較情報の整備=保険も「比べて買う」時代に 12 END 13
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