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特定保健指導における減酒指導
知識編
分子の大きさ
アルコールと臓器障害
消化管:食道炎、急性胃粘膜病変、胃十二指腸潰瘍、肝硬変
に伴う食道静脈瘤、食道カンジダ症、胃粘膜の萎縮性変化、
Mallory-Weiss症候群、蛋白漏出・吸収不良状態
水(18)
悪性腫瘍:食道癌、口腔、咽頭、喉頭癌、大腸癌、
肝細胞癌、膵臓癌、乳癌
肝蔵、膵臓:アルコール性肝障害、アルコール性膵炎
脳神経障害:Wernicke-Korsakoff症候群、アルコール性
痴呆、アルコール性大脳萎縮、アルコール性筋症
エタノール(46)
整形外科疾患:骨粗鬆症、大腿骨骨頭壊死
循環器疾患:高血圧、アルコール性心筋症、不整脈
造血器障害:巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、血小板減少
ブドウ糖(180)
代謝障害:高中性脂肪血症、高乳酸血症、高尿酸血症
1日3合以上の飲酒者
約860万人
問題飲酒者
約300万人
アルコール依存症患者
精神科にて治療中の患者数
アルコール使用障害が原因で入院している患者
同 外来患者
約80万人
約2~5万人
約21万人
約119万人
その多くは精神科やアルコール専門病院でなく、
内科などの一般診療科で治療されている。
過量飲酒に感受性のある血液検査
1.γ-GTP活性の上昇
2.赤血球容積(MCV)の増加
3.GOT(AST)とGPT(ALT)活性の上昇
4.尿酸値の上昇
5.中性脂肪(空腹時)の上昇
6.CPK活性の上昇
アルコール性肝障害診断基準
(アルコール医学生物学研究会
2011年版)
アルコール性肝障害とは、通常は5年以上の長期にわたる過剰の飲酒が
肝障害の主な原因と考えられる病態で、以下の条件を満たすものです。
1. 過剰の飲酒:一日あたり、アルコール度数5%のビール(ま
たはカンチューハイ)でロング缶(5%)3本以上に相当する飲
酒をいいます。※ただし女性や少量の飲酒でも赤くなりやすい体質の人では、1日ロング缶2缶程度
の飲酒でも肝障害が起こる可能性があります。
2. 禁酒により、血清AST、ALTおよびγ-GTP値が明らかに
改善する。
3. B型肝炎やC型肝炎や、自己免疫性肝炎などが血液検査
上否定される。
アルコール性肝障害診断基準(2011年版)
アルコール医学生物学研究会(JASBRA) 2012
アルコール性肝疾患の経過
アルコール過剰摂取
90~100%
節酒、断酒
脂肪肝
肝線維症
治癒
断酒
30 ~ 40%
10 ~ 30%
10 ~ 20%
アルコール性肝炎
肝硬変
重症化
死亡
肝癌
なぜ飲酒すると脂肪肝になるのか?
(1) 肝臓で合成される脂肪の増加
(2) 脂肪酸酸化の低下による中性脂肪の増加
(3) 末梢から肝臓へ移動する脂肪の増加
(4) 肝臓から末梢へ移動する脂肪の運搬障害
AST, ALT, γ-GTP, TGの推移
栄養相談あり(n=19)
AST (IU/L)
栄養相談なし (n=29)
ALT (IU/L)
80
90
70
80
70
60
60
50
50
40
*
40
30
30
20
20
10
10
0
0
来院時
8週後
*
来院時
8週後
AST, ALT, γ-GTP, TGの推移
栄養相談あり(n=19)
γGTP (IU/L)
TG (mg/dL)
300
250
200
150
*
100
50
0
来院時
*p<0.05 vs 栄養相談なし
栄養相談なし (n=29)
8週後
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
*
来院時
8週後
傷病別年次推移の予測
(千人)
160
140
肝硬変
Series2
(アルコールを除く)
120
Series1
アルコール性
100
80
60
40
20
0
1996
1999
2002
2005
2008
厚生労働省統計より作図
肝硬変の成因
Horie Y, Hepatol Int, 2013
平成10年度全国統計
平成19-20年度全国統計
(n=16244)
(n=21769)
12%
アルコール性
アルコール+ウイルス性
合計
14%
12%
15%
27%
アルコール性
アルコール+ウイルス性
合計
14%
6%
20%
肝硬変の成因
HBV
HBV+AL
HCV
HCV+AL
HBV+HCV
AL
Other
2007-08(n=16224)
2012(n=9326)
AL
13.7%
ウィルス+AL 6.2%
AL Total
19.9%
AL
24.6%
ウィルス+AL 6.0%
AL Total
30.6%
堀江 義則 平成25年度厚生労働科学研究費補助金研究総合報告書(樋口班)
アルコール性肝障害の実態調査 2014
アルコール性肝硬変の予後と飲酒の影響
(%)
100
断酒継続
80
生
存
率
(88%)
60
40
飲酒再開
(35%)
20
0
0
1
2
3
4
4.4 (年)
(Yokoyama A, et al., Alcohol Alcohol, 1994)
移植の有無による非代償性アルコール性肝硬変の予後
(Child-Pugh C)
(%)
生
存
率
100
内科治療
Series1
肝移植
Series2
80
腹水
60
肝性脳症
40
黄疸
プロトンビン時間延長
20
アルブミン低下
0
0
1
2
3
4
5
6
(年)
Poynard T; J Hepatol, 1999より作図
体重過多と過剰飲酒による肝疾患脂肪率の相対危険度への影響
10
相互作用によるリスクの増加
9.53
(4.98-18.2)
アルコールによるリスクの増加
相 8
対
危
険 6
度
(
BMI(身長2/体重)によるリスクの増加
ベースラインのリスク
3.66
(1.74-7.71)
95 4
%
信 2
頼
区
間 0
)
1
1.29
(0.60-2.80)
ベースライン ベースライン ベースライン ベースライン
+アルコール +BMI+アルコール(相互作用)
+BMI
Hart CL, BMJ, 2010
アルコールと癌
食道癌 (咽頭癌、喉頭癌)
危険因子:高濃度アルコール飲料、喫煙、少量の飲酒でも
赤くなりやすい人、赤血球の大きさ(MCV)が大きい
胃癌
:飲酒との関連については、はっきりしない。
大腸癌 :飲酒との関連あり
下咽頭・食堂がんのリスクと飲酒・喫煙習慣
喫煙なし
30本/日以上
飲酒習慣なし
1倍
4倍
日本酒換算で
1.5合以上の飲酒
8倍
30倍
アルコールと健康に関する保健指導マニュアル 石井裕正 編 太平社 東京 2010
中年男性の食道がんリスク
調 120
整
オ
ッ 100
ズ
比
80
赤くなりにくい人
Serie
s1赤くなりやすい人
60
40
20
0
0
10
20
30
飲酒量
(合/週)
横山顕 成人病と生活習慣病 39; 473-478, 2009
アルコール摂取量と大腸がんのリスク
大
腸
が
ん
リ
ス
ク
大腸がん
結腸がん
直腸がん
4
3.5
3
2.5
2
1.5
1
0.5
0
アルコール摂取量(g/日)
Mizoue T, Am J Epidemiol 2008
急性・慢性膵炎発症における飲酒量別の危険度 (オッズ比)
急性膵炎
慢性膵炎
8
8
7
7
6
6
5
5
4
4
3
3
2
2
1
1
0
0
0
<40
40-79
1日飲酒量
80<
0
<40
40-79
80<
1日飲酒量
アルコールと健康に関する保健指導マニュアル 石井裕正 編 太平社 東京 2010
急性膵炎後の飲酒と合併症の頻度
飲酒状況
膵炎再発
慢性膵炎への移行 糖尿病合併
断酒
19.8%
13.6%
14.1%
節酒(時々)
18.9%
12.3%
14.2%
節酒(毎日)
36.7%
23.3%
30.0%
継続飲酒
57.7%
40.9%
37.2%
アルコールと健康に関する保健指導マニュアル 石井裕正 編 太平社 東京 2010
アルコール摂取量と各疾患のリスク
虚血性心疾患による死亡
脳血管障害による死亡
全死亡
がんによる死亡
事故死
死 1.7
亡
率 1.5
1.3
1.1
0.9
0.7
0.5
1日あたりのアルコール摂取量
◆アルコール摂取量の1単位は、日本酒は0.5合、ビール小瓶1本、ウイスキーシングル1杯に相当
Boffetta P, Garfinkel L: Epidemiology 1990;1:342.
虚血性心疾患とアルコール
1.アルコールは血小板凝集抑制作用を持つ
2.アルコール摂取は、線溶系を亢進させる。
3.アルコール摂取により、HDLコレステロール(善玉コレス
テロール)が増加し、それぞれが、虚血性心疾患の発症
頻度と逆相関する。
4.赤ワイン中には、抗酸化物質、血小板凝集抑制物質が含
まれており、このようなアルコール以外の含有物の効果も
指摘されている。
アルコール摂取量と血圧の関係
血
圧
収縮期
拡張期
1日あたりのアルコール摂取量
Criqui MH,Ranger RD,et al: Circulation 1989;80:609
節酒による血圧低下(非服薬男性高血圧患者)
mmHg)
収
縮
期
血
圧
の
変
化
(
0
-1
-2
-3
-4
Series1
3週まで節酒
3週から節酒
Series2
-5
-6
-7
-8
-9
-10
-2
-1
0
1
2
3
4
5
6
Ueshima H, et al, Hypertension, 1992
年齢別の飲酒と冠動脈石灰化の危険度
RR
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
0
60s
40s
-23
-46
ethanol (g/day)
-69
age
69 -
アルコールと健康に関する保健指導マニュアル 石井裕正 編 太平社 東京 2010
アルコール摂取量と脳卒中のリスク
脳
卒
中
リ
ス
ク
3
2.5
2
1.5
Series1
脳出血
脳梗塞
Series2
1
0.5
0
アルコール摂取量(g/週)
JPHC Studyより 津金 昌一郎 アルコールと健康 アルコール健康医学協会
アルコール摂取量とがん死亡のリスク
相
対
リ
ス
ク
2
1.8
1.6
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
アルコール摂取量(g/週)
JPHC Studyより 津金 昌一郎 アルコールと健康 アルコール健康医学協会
アルコール摂取量とがん死亡のリスク耐糖能異常ならびに
2型糖尿病の発症率
耐糖能異常ならびに2型糖尿病の発症率
人
口
1
,
0
0
0
人
30
(n=2,953)
耐糖能異常
2型糖尿病
20
×
年
あ
た
り
の
発
症
率
10
0
0
0.1-22.9 23-45.9 46-68.9
69
エタノール消費量 (g/day) (N Nakanishi, Diabetes Care, 2003;26:48-54)
飲酒量別に見た高尿酸血症患者の割合
25.0%
高
尿 20.0%
酸
血
症 15.0%
患
者
の 10.0%
割
合
5.0%
尿酸7mg/dl以上
0.0%
山中寿他 日本臨床
55:201,1997
尿酸9mg/dl以上
飲まない 1合未満 1-2合
2-3合 3合以上
1日の平均飲酒量(日本酒換算)
飲酒(アルコール)による高尿酸血症の機序
・ アルコール飲料自体の尿酸
・ 酢酸代謝に伴う肝臓でのプリン体合成促進
・ 尿酸排泄抑制 (高乳酸血症による乳酸との拮抗)
・ アルコール利尿による脱水
・ 食欲増進
飲酒による生活習慣病
アルコール
肥満
→
→
がん
高血圧
↑
脳出血 ↑
↑
高血糖
J
脳梗塞 J
J
高脂血症 ↑
心疾患 J
J
↑
糖尿病 J
J
HDL
→
↑
↓
J
:飲酒と病気のリスクとの関係が確認できない
:少量の飲酒でもリスクが増加
:飲酒によりリスクが低下
:少量飲酒でリスク低下するが大量飲酒でリスク増加
J
J
( J カーブ)
特定保健指導における減酒指導
介入編
アルコールと死亡率
ビール1.5ℓ以上
女性:1.6倍
男性:1.4倍
ビール(5%)換算 0.25ℓ未満
女性:0.88倍
死
亡
率
女性
男性
1
ビール(5%)換算0.25ℓ~0.5ℓ未満
男性:0.84倍
飲酒量
出典:Holman CD et al. Meta-analysis of alcohol and all-cause mortality. MJA. 1996.
飲酒指導のポイント
• 危険の少ない飲みかたを知ってもらう
“節度ある適度な飲酒”
• 自分の飲みかたの危険度を知る
“AUDIT”
• 飲酒量の減らし方を学ぶ
“簡易介入”
節度ある適度な飲酒
節度ある適度な飲酒(第一次健康日本21)
男性
1日平均20g程度
女性
男性の1/2~2/3
5%
4%
ビール
500ml
発泡酒
350ml
自分の飲み方の危険度を知る
~AUDIT~
Alcohol
Use
Disorder
Identification
Test
AUDIT
• 世界で最もよく使われているスクリーニングテスト
• 治療効果判定の指標としても使われる。
• アルコール依存症以外にも広く有効
• 特定保健指導でも日本酒換算で1~2合以上のアルコー
ルを「毎日」又は「時々」飲むと答えた人に活用するこ
とが勧められている。
• 日本人では15点がカットオフポイント(廣)
• 最初の3つの質問のみのAUDIT-Cもよく使われている。
AUDIT(アルコール使用障害スクリーニング)①
質問1
あなたはアルコール含有飲料(お酒)をどのく
らいの頻度で飲みますか?
0
点
飲まない
1
点
1ヶ月に1度以下
2
点
1ヶ月に2~4度
3
点
週に2~3度
4
点
週に4度以上
飲酒するときには通常どのくらいの量を飲み
ますか?
0
点
0~2ドリンク*
1
点
3~4ドリンク
(注)
○「ドリンク」は純アルコール換算の単位で、
1ドリンクは純アルコール換算で10グラムです。
○1ドリンクは、ビール中ビン半分(250ml)、
日本酒0.5合、焼酎(25度)50mLに相当します。
2
点
5~6ドリンク
3
点
7~9ドリンク
4
点
10ドリンク以上
ぴったりの選択肢がない時は
近いほうを選ぶ
質問2
*通常のAUDITは「1~2ドリンク」ですが、すべてを分類で
きるよう、「0」の場合を含めています。
質問3
1度に6ドリンク以上飲酒することがどのくらい
の頻度でありますか?
焼酎
日本酒/ロング缶
中ジョッキ/レギュラー缶
ワイン
2合(弱)
3合/3本
4杯(本)
5杯
0
点
ない
1
点
月に1度未満
2
点
月に1度
3
点
週に1度
4
点
毎日あるいはほとんど毎日
“drink”換算
お酒の種類
お酒の量
ドリンク数
(1ドリンク=アルコール10g)
ビール・発泡
酒(5%)
焼酎・泡盛
(25%)
チューハイ
(7%)
日本酒(16%)
ワイン(12%)
コップ1杯(180ml)
中ジョッキ(350ml)
0.7 ドリンク
1.4 ドリンク
レギュラー缶(350ml)
ロング缶(500ml)
1.4 ドリンク
2 ドリンク
1合
3.6 ドリンク
水割りコップ1杯
レギュラー缶
ロング缶
1.8 ドリンク
2 ドリンク
2.8 ドリンク
1合
グラス1杯(120ml)
ボトル1本(750ml)
2.3 ドリンク
1.2 ドリンク
7.2 ドリンク
AUDIT(アルコール使用障害スクリーニング) ②
質問4
質問5
質問6
過去1年間に、飲み始めると止められなかったことが、
どのくらいの頻度でありましたか?
過去1年間に、普通だと行えることを飲酒していたため
にできなかったことが、どのくらいの頻度でありました
か?
過去1年間に、深酒の後体調を整えるために、朝迎え
酒をしなければならなかったことが、どのくらいの頻度で
ありましたか?
0
点
ない
1
点
月に1度未満
2
点
月に1度
3
点
週に1度
4
点
毎日あるいはほとんど毎日
0
点
ない
1
点
月に1度未満
2
点
月に1度
3
点
週に1度
4
点
毎日あるいはほとんど毎日
0
点
ない
1
点
月に1度未満
2
点
月に1度
3
点
週に1度
4
点
毎日あるいはほとんど毎日
AUDIT(アルコール使用障害スクリーニング) ③
質問7
質問8
質問9
過去1年間に、飲酒後罪悪感や自責の念にかられた
ことが、どのくらいの頻度でありましたか?
過去1年間に、飲酒のため前夜の出来事を思い出せ
なかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?
あなたの飲酒のために、あなた自身か他の誰かがけ
がをしたことがありますか?
質問10
肉親や親戚、友人、医師、あるいは他の健康管理にた
ずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲
酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか?
0
点
ない
1
点
月に1度未満
2
点
月に1度
3
点
週に1度
4
点
毎日あるいはほとんど毎日
0
点
ない
1
点
月に1度未満
2
点
月に1度
3
点
週に1度
4
点
毎日あるいはほとんど毎日
0
点
ない
2
点
あるが、過去1年にはなし
4
点
過去1年間にあり
0
点
ない
2
点
あるが、過去1年にはなし
4
点
過去1年間にあり
症例
•
名前:山田太郎
•
性別:男性
•
年齢:48歳
•
職業:大手電機メーカー勤務(課長)
•
身長:160cm, 体重:82㎏, BMI:32.0,腹囲:90cm(保健指導判定値
:男性85㎝,女性90cm),血圧:146/90(135/85)
•
検査データ:(基準値)
•
TG:459↑ (150),HDL-Cho:41(39),LDL-Cho:85(120)
•
AST:46↑ (31),ALT:38 (31), γGTP:72↑(51),
•
FBS:116(100), HbA1c(NGSP):6.1(5.6)
•
尿蛋白:-(-)
生活歴
•
大学卒業後、電機メーカーに就職し、主に営業を担当する。35歳で係長になった
ころより、自宅で毎日飲酒(ビールロング缶2本/日)するようになる。それ以外でも
、週に2回は仕事帰りに飲みに行き、ビール中ジョッキ2杯と、日本酒3合を飲酒し
ている。それ以上飲む事はないが、一度だけ、半年前の忘年会でお酒が止まらな
くなり、ブラックアウトとなり、妻に飲み過ぎと怒られた。朝酒はなく、けがをしたり
喧嘩をするなどのトラブルや、日常生活や仕事への影響はなく、飲酒後の自責感
や罪悪感を感じたことはない。
•
体重は、大学卒業時は50kgだったが、徐々に増加し40歳頃には70㎏となる。この
頃より、健康診断で肥満と、肝機能障害を指摘されるようになる。
•
42歳、20歳から吸っていたタバコを止めたあとから、急激に体重が増加し現在の
体重となる。肥満解消のために、一時スポーツジムに通うもすぐに挫折し、現在は
たまに接待でゴルフを行う程度の運動しかしていない。
•
今回は、会社の健康診断で、血糖、脂質、血圧の3つが該当し、且つ受療しておら
ず、年齢も40~64歳に相当することより、特定保健指導の積極的支援の対象者と
して健康保険組合保健師へ紹介となった。
AUDIT計算
• 毎日飲酒:
質問1:
週に4度以上
4点
• ビールロング缶2本/日:
質問2:
3~4ドリンク
1点
• 週に2回はビール中ジョッキ2杯と日本酒3合
(1.4×2+2.3×3=9.7ドリンク)
質問3:
週に1度
• 半年前お酒が止まらなくなり、ブラックアウト
質問4&質問8: 月に1度未満
3点
1点+1点
• 妻に飲み過ぎと怒られた
質問10:
過去1年間にあり
4点
14点
AUDITでよく引っかかる点①
ドリンク数の計算が大変
簡易的に、強いお酒(日本酒、ウィスキー)や大きな容
器(ジョッキのビール、ロング缶)の1杯は2ドリンク
弱いお酒や小さな容器(ビールグラス1杯、ワイン1杯)
は1ドリンクで計算しても良いでしょう
AUDITでよく引っかかる点②
 質問5「普通だと行えることを飲酒していたた
めにできなかったことが、どのくらいの頻度で
ありましたか」
⇒二日酔いなどで遅刻・欠勤する。
⇒休日も昼から飲んでいて、子供を遊びに
連れていけなかった。
など・・・
AUDITの判定方法
質問1
点
質問2
点
質問3
点
質問4
点
質問5
点
【判定】
問題飲酒は
ないと思われる
~7点
合計
点
質問6
点
質問7
点
質問8
点
質問9
点
質問10
点
「今のままお酒と上手に
付き合っていきましょう」
と伝える(介入不要)
8~14点
【判定】
問題飲酒はあるが
依存症には至らない
(0~40点)
減酒支援
対象者自らが減酒目
標を立て、飲酒日記を
つけて減酒に取り組
むことを支援する。
15点~
【判定】
依存症が疑われる
アルコール依存症の疑
いがあるため、可能なら
精神保健福祉センター
等と連携し、専門医療機
関での治療(断酒等)に
つながるよう支援する。
【参考】一般住民におけるAUDITの点数別分布
約
8~14点
約
15点~
8~14点
15点~
5%
約
3%
1%
約
1.0%
3.4% 1.6%
0.5%
1.6%
19%
8.5%
0~7点
10.4%
8~10点
11~14点
~7点
76.1%
~7点
15~19点
96.7%
20点以上
男 性
女 性
(n=1,184人)
(n=1,363人)
出典:成人の飲酒実態調査(2003年) 樋口ら
0.2%
AUDITを全部やるのが大変な場合
• AUDIT最初の3つで
男性5点以上、女性4点以上
• 週の飲酒量が、生活習慣病のリスクを高める
量【男性280g、女性140g】を超えている
上記の対象者に減酒指導を行う
(アルコール依存症は除く)
減酒指導
~簡易介入~
•
短時間の個別カウンセリング(5~30分)
•
通常、1~数回のフォローアップカウンセリングを行う
•
対象は多量飲酒者、依存症者は専門治療が必要
•
治療の目標は、断酒ではなく減酒のことが多い
•
教育を受ければ、簡易介入は誰でも実施可能である
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ワークブックなどの教材を使用すると効果的である
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飲酒日記をつけることが推奨される
簡易介入の効果
過去7日間の飲酒量(ドリンク)
(ドリンク数)
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** P < 0.01.
介入前との比較.
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過去4週間の多量飲酒日数
(多量飲酒日数)
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** P < 0.01.
介入前との比較.
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減らすための方法
1.飲酒目標を決める
2.飲んだ量を記録する
(+血圧や血液検査の結果も記録する)
飲酒日記
• 自分の飲酒習慣を変えたいと思っている方は、毎日の飲酒を正直に記録していくことが手助けになります。
• 自分が立てた目標を記録することで、少しずつ目標に向かっていることが確認でき、励みにもなります。
• ここでまず、あなたが立てた飲酒目標を確認しましょう。
私の飲酒目標は
(
) 週目
月
日( )
月
日( )
月
日( )
月
日( )
月
日( )
月
日( )
月
日( )
飲んだ種類と量
です。
飲んだ状況
飲酒目標
達成
うまくいく目標の立て方
• 具体的な目標 (例: 1日缶ビール2本など)
• 無理はしない
・γGTPは1か月やめると約半分に減ります。
・血圧も飲酒量を減らすと3週間で約10下がります。
・3週間でぐっすり眠れるようになります。
BIの6要素(FRAMES)
要 素
Feedback
説
明
アルコール関連問題の正確な現実を、本人に
フィードバックする。
Responsibility アルコール関連問題の改善に関する責任が本
人にあることを強調する 。
Advice
明確な助言をあたえる 。
Menu
複数の飲酒行動改善方法を紹介する 。
Empathy
介入者が対象者に対して共感的態度をとる 。
Self-efficacy 飲酒行動の改善に関して、自己達成が可能であ
ることを理解させ、支援する。
ブリーフインターベンションの基本要素
FRAMES法
1) Feedback (フィードバック)
 スクリーニングテストで明らかになった飲酒及びそれに
関連した問題について
 飲酒に関連した対象者自身の危険について
 飲酒に関連する危険や害についての一般的な事柄
 対象者の悩みと飲酒が関連していれば、その関連について
ブリーフインターベンションの基本要素
FRAMES法
2) Responsibility (自己責任)
 行動に関する責任は、対象者自身にある
 飲むも飲まないも決めるのは、対象者自身である
ブリーフインターベンションの基本要素
FRAMES法
3) Advice (アドバイス)
 飲酒を続けたらどのような害が生じるかはっきり伝える
 酒量を減らしたり止めたりすれば、どのようなメリットが
期待できるかについても積極的に伝えましょう
ブリーフインターベンションの基本要素
FRAMES法
4) Menu of alternative change options (他の選択肢)
 飲酒を減らしたり止めたりするための代替え方法を提示する
 対象者には最も自分の状況に適した方法を選ばせる
 対象者は自分で選ぶことで責任を感じる
ブリーフインターベンションの基本要素
FRAMES法
5) Empathy (共感)
 介入を行う者が、理解や同情を示しながら接すること
ブリーフインターベンションの基本要素
FRAMES法
6) Self-efficacy (自己効力感)
 変わることができるという対象者の自信を高めること
 自分にできそうだという自信がある程、変化することが
できる
減酒支援のポイント
◆FRAMES
◆フォローアップ支援は2~4週間後。
必要なら追加支援
◆減酒できてなければ、再度のチャレンジを
支援