当院におけるクリカルパスの歩みと現状・これからの課題

クリニカルパス用語
について
山形県立中央病院パスマネージャー
今野 美雪
クリニカルパス小委員会
今野 美雪
2007・12・12
2009 10 13 in鶴岡
yamagata. pref.cent. hosp.
県立4病院
療育訓練
センター
yamagata. pref.cent. hosp.
山形県立中央病院の概要
クリティカルパスとチーム医療
救急救命センター
看護師の立場から
がん・生活習慣病センター
病床数
都道府県がん診療拠点病院
663床(緩和ケア病棟含)
平成14年パス導入
診療科
20科
現在153のパス
職員数
874人
実施率約45%
臨床研修指定病院
外来患者数
1050.8人(一日平均)
基幹災害医療センター
救急利用数
43.6人(一日平均)
第一種感染症指定医療機関
へき地医療拠点病院
平均在院日数
13.3日
紹介率
40.6%
病床利用率
85.6%
看護基準
7 : 1
yamagata. pref.cent. hosp.
山形県立中央病院
20年度ランキング
平成20年度 診療科別パス使用数
パス使用数5285件(前年比+940件)39.8%
1800
1648
1600
総入院数13.288人(前年比+1750人)
1400
1200
1000
800
0
706
617
600
514
393
345
400
209
198
176
174
200
128
72
38
15
8
0
0
0
0
0
0
0
0
N
I
C
U
/
G
C
U
人
工
透
析
室
皮
膚
科
短
期
入
院
心
臓
血
管
外
科
神
経
内
科
心
療
内
科
放
射
線
科
麻
酔
科
救
命
救
急
緩
和
0
内
科
泌
尿
器
科
産
婦
人
科
小
児
科
耳
鼻
咽
喉
科
外
科
整
形
外
科
眼
科
歯
科
口
腔
外
科
脳
神
経
外
科
呼
吸
器
外
科
形
成
外
科
yamagata. pref.cent. hosp.
ケ
ア
80
平成20年度 病棟別
パス年間使用率
75.4
70
使用率平均39.8%
前年比+5.1%
60
54.1
53.8
47.6
50
43.5
40.2
36.9
40
33.4
33.4
31.9
30
21.5
17.6
20
10
0
4西
4東
5西
5東
6西
6東
7西
yamagata. pref.cent. hosp.
7東
8西
8東
9西
9東
600
山形県立中央病院
平成20年度
20年度ランキング
527
パス使用数
ベスト10
500
400
349
349
315
300
284
新規ベスト10入り
おめでとう!
192
200
140
120
93
100
69
0
心
カ
テ
大
腸
ポ
リ
ペ
ク
経
膣
分
娩
小
白
児
内
性
障
気
管
支
炎 pref.cent. hosp.
yamagata.
P
B
帝
王
切
開
術
P
C
I
肺
葉
切
除
術
小
児
胃
腸
炎
パスマネージャーの仕事
• 「パス一覧」「試行パス」「修正パス」
新規パス」等パスの整理・進捗管理
• パス委員会・部会の企画運営
• コンサルテーション・アドバイス
• 研修会企画・運営
• 山形県がん診療連携協議会
地域連携パス部会 部会員
• 地域連携パスに関すること
• 各種学会発表・研修・取材等
• 電子化パスへの要望とデータ移行
• DPCデータ分析とパスの修正・整理
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日本におけるクリニカルパス
• 1993年米国から導入される
• 新しい医療管理のツールとして病院管理者の
注目を集める
• パスの目的
– 医療の質の向上
– チーム医療による医療の標準化・効率化
• 出来高払い制から定額制へ
「質を下げずに利益をあげる」・・DPCの導入!
• 患者の満足度・・患者は経過よりも「アウトカ
ム」に 注目している
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クリニカルパスの考え方の変化
• 検査や治療を効率よく組み合わせた予定表
• 治療経過中のアウトカム、タスクをあらかじ
め設定し、リスク対応、個別的対応(バリア
ンス)を可能とし 臨床データ、コストなど
を効率的に収集できる
総合医療管理ツール
(済生会熊本病院TQMセンター長 副島先生)
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クリニカルパスの概要
• クリニカルパスの定義
「医療チームが共同で作成した、患者の最良のマ
ネージメントと信じた仮説」 (Spath.P.L)
 クリニカルパスの3段階
第1段階
第2段階
第3段階
現在行っている医療ケアをまとめたもの
医療ケアを改善し標準化したもの
医療者間のコンセンサスとEBMの導入
システム改善にまで至ったもの
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当院におけるクリニカルパス導入の 目的
(平成15年4月改訂)
Ⅰ.医療の質的向上、患者に安定した医療を提供する
(チーム医療の推進)
Ⅱ.患者満足度の向上
(インフォームドコンセントの充実・患者参加型の医療)
Ⅲ.医療の標準化 (EBMに基づいた医療)
Ⅳ.在院日数の短縮
(目標14日以内)
Ⅴ.資源の効率的運用 (コストの削減)
Ⅵ.業務の効率化
(ゆとりある職場環境)
Ⅶ.セィフティマネージメントの充実
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クリニカルパスのポイント
•
•
•
•
•
•
•
標準化
EBM
暗黙知を形式知へ
チーム医療
患者・家族の満足度
質の保証から質の向上へ
パス以外のところに知恵と労力を!
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チーム医療とパス
• 医療を、医師、看護師、ソーシャルワー
カー、理学療法士、作業療法士、栄養士、
薬剤師、検査技師、放射線技師、事務部
門などの専門家からなるオーケストラと
とらえ、
それぞれのパートが協力しながらよい
ハーモニーを奏でるためには楽譜が必要
であり、その楽譜に相当するものがクリ
ニカルパスである。
(笹鹿
1997)
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医 師
患者のそばに24時間います!
看護師は
何をするの?
患者からの情報をいち早く
キャッチ!
医療相談室
患 者
地域医療部
放射線技師
栄養士
患者にとっては
身近で頼れる存在!
看 護 師
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チーム医療における看護師の役割
•
コーディネーターとしての役割
☆看護師は人数が多い
看護師は
☆褥瘡・感染・化学療法・緩和・重症集中
チーム医療に
に認定ナース
おける
☆専任セィフティマネ-ジャー ☆がん相談員
キーパーソン
☆退院調整ナース
☆パス専任ナース
•
チーム医療を推進していく原動力
☆医師をサポート・全体を見渡す目
•
マネジメント能力
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医療の標準化とクリニカルパス
医療の標準化(質の底上げ)とは??
• 1 「決めなければならない標準」
– 統一による、混乱回避のためのもの
• 2 「決めたほうがよい標準」
– 経験の活用・planの簡略化を行うためのもの
• 経験の活用=すでに経験して良いということ
がわかっているモノや方法
東京大学・飯塚悦郎
yamagata. pref.cent. hosp.
長崎 グラバー邸
さて、お待たせしました
パス用語の解説です
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本日のクリニカルパス用語
1
クリニカルパスの形式
2
適応基準・除外基準
3
アウトカム
4
クリティカルインディケーター
5
PDCAサイクル
6
バリアンス
7
DPC
8 パス大会
大雪山の紅葉
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クリニカルパスの形式
•
•
•
•
•
•
•
オーバービュー
日めくり
オールインワン
ユニットパス
ミニパス
乗り換えパス
患者状態適応型パス
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スタッフ用パス
オーバービューパス
患者用パス
オールインワンパス
日めくり式パス
3日目
タスク
2日目
オーバービュー
患者アウトカム
タスク
1日目
タスク
2日目
タスク
3日目
タスク
患者アウト
カム
患者アウト
カム
患者アウト
カム
記録
記録
記録
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1日目
記録
患者アウトカム
記録 タスク
患者アウトカム
記録
オーバービュー形式
時
入院日
ア
ウ
ト
カ
ム
・
タ
ス
ク
間
手術日
アウトカム
処置
検査
指導
薬剤
清潔
バリアンス
yamagata. pref.cent. hosp.
軸
術後1日
目
退院日
日めくりパス
アウトカム
サイン
バリアンス
タスク
アセスメント
共有情報
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インターフェロン外来スタッフ用
アウトカム
観察項目
検査内容
オールインワンパス
医師の記録
内服薬
注射薬の量
及び注射部位
看護記録
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患者用パス=入院診療計画書
医師サイン
看護師サイン
入院年月日
手術日
目標
外来で渡し入院日に持参してもらう
概
算
患者の署名
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適応基準・除外基準
すごく
大事
• クリニカルパスの運用開始にあたり、患者や諸
般の状態がそのパスに適しているか否かの標準
を記したもの。
• いかなる患者が当該パスにふさわしいか、ある
いは使用をやめるべきかを分類するに当たって、
判断がばらつかないように、あらかじめ考慮し
て明記しておくことが大切
• 各種ガイドラインや、各病院の自前の臨床デー
タを利用し、十分討議してコンセンサスを得て
おく
書いてあれば言える?
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適応基準・除外基準(例)
鏡視下腎摘出術パス
• 「適応基準」
1)腎の腫瘍であり、患腎が正中を超えない大きさ
2)腎静脈に閉塞がない
3)隣接臓器に浸潤がない
• 「除外基準」
1)HbA1c>8%
2) 麻酔科標準除外基準に相当する例
3)急性感染症
4)開腹手術になった場合
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アウトカムの分類
介入のアウトカム
タスク:やるべき
処置・検査・指導
アウトカム
患者アウトカム
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患者状態
機能
知識・理解
合併症
オーバービュー形式
時
入院日
ア
ウ
ト
カ
ム
・
タ
ス
ク
アウトカム
処置
検査
指導
薬剤
清潔
バリアンス
間
手術日
軸
術後1日
目
退院日
患者アウトカム
介入のアウトカム
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クリニカルパスにおける
患者アウトカム
• 「患者が安全に退院(転院)できると予期さ
れる状態を記述したもの」
– 異なった職種がチーム医療として1つになっ
て関わっていくために明示されたもの
– 患者が受けているケアに対して予期される生
理的ならびに心理的な反応を記述したもの
– 治療上重要なポイント(Critical
Indicator)がわかるように記載する
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アウトカムって?
みんなが講師になろう!
CD貸し出します!
パス教育ライブラリー
山形県立中央病院
クリニカルパス推進委員会
患者アウトカムって何だろう??
目標と考えればいいでしょう
患者のアウトカム:
患者の目標とする状態のこと
患者が主語で設定される
例)食事が摂取できる、傷が治癒する、平熱になる・・・
患者の究極のアウトカムは早く・楽に・安く検
査や治療が終わり健康な状態に戻りたい
アウトカムの具体的な設定
アウトカム設定の4つのカテゴリー
•Activity:生活動作・活動
社会的に必要な身体機能
(安静度・ADL・清潔・・)
Health:患者状態
患者の身体的・精神的状態
(バイタルサイン・症状・・)
Complication:合併症
リスクの高い合併症の不在
(出血・感染・褥瘡・・)
Knowledge:理解
患者・家族の病気・自己管理
に関する理解
「患者状態」のアウトカムとは?
臨床的な患者の身体的・精神的状態に関
するアウトカム(検査結果・血圧・体温・脈
拍・疼痛の状態など)
アウトカムの例
•血圧が150/80mmHg未満
•酸素飽和度が95%以上
•創部に滲出液がなく乾いている
•疼痛スケール:2以下
「生活動作・活動」のアウトカムとは?
社会的に必要な身体的機能(ADL・歩行距離・
四肢の可動範囲など)
アウトカムの例
患者が痛みを感じることなく廊下を50m歩行で
きる
杖でトイレまで歩行できる
ベッドサイドに座ることが出来る
膝を60度迄屈曲できる
「理解」のアウトカムとは?
患者や家族の理解。病気や手術に対する
理解、自己管理の方法に関する理解な
ど・・
アウトカムの例
インスリンの自己注射が自分で行える
退院後の食事制限内容を言える
医師から説明された病状が言える
「合併症」のアウトカムとは?
その治療に直接関係するリスクの高い合併症、
及び入院そのものから生じるリスクの高い合
併症の不在を示すもの
アウトカムの例
•手術創からの出血がない
•創部に感染兆候がない
•仙骨部に褥瘡がない
患者状態のアウトカム
合併症のアウトカム
理解のアウトカム
生活動作・活動のアウトカム
病棟内歩行が出来る
坐位保持が出来る
等
クリニカルパスにおけるアウトカムの重要性
アウトカムとは
患者の達成目標 = 医療チームの達成目標
アウトカムの重要性
 医療チームの目指す方向性・ケアの目標を明確にし、
統一することができる
 医療チームの目指す目標を達成目指し、チーム医療が効
果的に行われる
 アウトカムは医療の質の測定尺度になる
クリニカルパスの仕組み
日々のアウトカム
中間アウトカム
(インディケーター)
適
応
基
準
の
確
認
最
終
ア
ウ
ト
カ
ム
達
成
P
A
D
C
日々のタスク
(観察・処置
などの項目)
バ
リ
ア
ン
ス
分
析
ク
リ
二
カ
ル
パ
ス
の
成
果
PDCAサイクルを回そう!!
パスの修正を
検討する
バリアンス分析
をする
パスを作る
Act
実施
Plan
計画
Check
確認
Do
実行
パスを使う
クリティカルインディケーター
• 治療に最も影響を与えると思われる重要な
アウトカムをあらかじめ特定しておく
• 重要なアウトカムであるという認識がチーム
で共有されていることが大事
(例)
疼痛管理・胃管の抜去・尿道カテーテルの
抜去・食事開始・ドレーン抜去など
アウトカムとパスの作成手順
• 対象疾患や処置を定める
• 適応基準・除外基準を決める
• 退院(転院)基準=最終アウトカムは何
かを医師とコ・メディカルで相談する
• 退院基準を達成するための中間アウトカ
ムを設定する(クリティカルインディ
ケーター)
• 退院基準達成のために医療者の業務とケ
ア介入の内容(タスク:介入のアウトカ
ム)を相談する
バリアンスとは
• 定義
「クリニカルパスで想定された患者の標準的な経過
とずれた結果のこと」
アウトカムを明確に設定することが前提
– 「アウトカムが達成されなかった事象」
–オールバリアンス方式
–ゲートウエイ方式
–センチネル方式
バリアンスの分類
• バリアンスの分類に関する3つの概念
①正/負分類
正のバリアンス
②グレード分類
Ⅰ(変動)アウトカムに反する事象
③原因分類
A患者・家族
が生じたが、クリニカルパスの内容
には影響を及ぼさなかった事象
B医療スタッフ
Ⅱ(逸脱)クリニカルパスどおりには経
過しなかったが、クリニカルパスは使
用可能であった事象
C病院
Ⅲ(脱落)クリニカルパス使用不能と
D地域
負のバリアンス
なった事象
バリアンス分析の重要性
• パスの目的はパスを完成させることではない
• 定期的にバリアンスを分析し、パスを改定す
る
継続的に行うことでCQIを実践する
(Continuous Quality Improvement)
(継続的なケアの質の改善)
バリアンスは悪者ではない
•
•
•
•
バリアンスを早期に見つける
バリアンスは個別性
バリアンスに対し的確に対処する
バリアンスを起こさないシステム
を考えることが大切
DPC(包括医療制度)とパス
DPC(Diagnosis Procedure Combination);
診断群分類別包括評価
DPCは医療情報を標準化するためのツール
◆在院日数短縮
◆患者の重症化・業務量の増加
◆「医療ケアのばらつき」をなくす=標準化
◆医療の効率化と質の底上げ(質の保証)
パスは医療ケアの標準化をチーム医療で行う
ため、DPC導入後は特に有効である
「出来高払い」と「包括払い」の比較
方法
出来
高
払い
包括
払い
主なメリット
主なデメリット
提供した医療
行為や材料
に対して個別
に支払う
•新しい高度医療の保
険適用が容易
•患者の病状に応じた
医療の提供が可能
•診療側・受診者側双
方の理解が得やすい
•過剰投与・診療の誘
発の恐れ
•医療費の伸びを抑
制させる構造・仕組み
が弱い
•請求、審査、支払い
事務が複雑
1日当たりの
入院費につ
いて、包括的
な金額を決め
る(日本版
•過剰な診療行為の抑
制効果
•平均在院日数の短縮
化
•請求、審査、支払い事
務が簡素化される
•過少診療の恐れ
•診療内容の不透明
化の恐れ
•患者選別の恐れ(重
傷者の拒否等)
DRG/PPS = DPC)
48
パス作成支援アイテム
•
•
•
•
「クリニカルパスガイドライン」
「初めてパスを作成する皆様へ」
「パスチェックシート」
「コンサルテーションによる支援」
小児大腸ポリペクトミーパス
コンサルテーション風景