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出版業界の歴史と法規制3
8/30 5限
社会工学類経営工学主専攻4年次
野澤寛
2016/7/9
1
INDEX
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復習
出版業界の歴史、法規制
まとめ
参考
2016/7/9
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出版業界歴史(再)
•
1912(明治45・大正元)年
7月30日 明治天皇崩御。大正改元。
• 1919(大正8)年
7月 東京書籍商組合が定価販売を根幹とす
る組合規約を制定。
•
1923(大正12)年 関東大震災
• 1925(大正14)年
東京にて、朝日新聞、毎日新聞が販売店に「
定価販売即行会」を結成させる。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
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出版業界歴史(再)
日本出版配給株式会社
• 1941(昭和16)年
5月 「日本出版配給株式会社(日配)」創立。
– 国家総動員法を受け、当時240ほどの全国の取次店が
統合したもの。翼賛組織である「日本出版文化協会」が、
出版社の発行物に関して企画から部数、用紙の割当など
を統制する一方、流通に関しても「配給」と称して管理・指
導する仕組みができあがった。
このときマージン体系も見直された。取次店の雑誌のマ
ージンが6%から10%に、書籍のマージンは7%から12
%に増大。また、書店までの運賃は書店負担だったもの
が、日配の全額負担となった。これが今の委託制度にお
ける「配本」、すなわち取次が在庫を書店に割り振るとい
うシステムに繋がっている。
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出版業界歴史(再)
独占禁止法
• 1947(昭和22)年
4月 「独占禁止法」(私的独占の禁止及び公正取引
の確保に関する法律)が制定される。また施行に当
たって公正取引委員会(公取委)が設置される。
– 「独禁法」は、市場経済の発展と消費者の利益を確保す
るため、自由で公正な競争を促進し、カルテルや市場の
独占、不公正な取引などを規制する法律。経済の「基本
法」とされる。欧米の競争促進法、とくにアメリカの反トラ
スト法が下敷きになっている。当初はGHQによる強い意
向で、米国法にはない持ち株会社の禁止や、企業による
株式の持ち合いも全面禁止、など厳しい内容のものだっ
たが、日本独立後、徐々に緩和された。
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出版業界歴史(再)
日配の解体
• 1949(昭和24)年
3月 集中排除法(閉鎖機関令)により、日本出版配
給株式会社(日配)が解体。トーハン、日販の設立。
– 日配の解体が現在の2大取次であるトーハン、日販をは
じめ、日教販(教科書取次会社)、中央社のもととなった(
いずれも同年創立)。また、大阪屋、京都図書、中部図書
、北海道図書、九州出版販売の地方五社も創立。
– 「日配」は、戦時中の出版物配給&統制機関。つまり商品
物流を中央当局が管理し、統制するための、いわば国策
会社であった。この流通形態は、トーハン・日販などに引
き継がれ、この二社が取次市場で寡占化していったため
、今日の書籍流通はいわば戦時体制がもとになっている
と言える。
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出版業界歴史(再)
独占禁止法改正
• 1953(昭和28)年
9月 独占禁止法改正なる(9月1日公布)。
– 今回の改正が現行再販制の根拠に。すなわち公取委に
よる「指定商品」と、「著作物」すなわち新聞、書籍、雑誌、
音楽用レコード等について、再販価格維持行為が認めら
れた。
●独禁法改正による、いわゆる「再販制の導入」
– 独禁法の改正が行われる以前は、現在の出版物に定め
られるような意味での「定価」はなかったと言える。しかし
実際は、商品供給自体が少なく、需要も旺盛で売れ行き
がよく、値引きの必要性もなかったため、出版物はほぼ
定価販売が行われていた。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
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出版業界歴史
独禁法改正
衆議院会議録情報
第015回国会 経済安定委員会 第21号、
第015回国会
予算委員会公聴会 第2号
横田正俊政府委員
「本の定価というものについて、その値段を厳格に守らなければならぬと
いうことになりますと、若干独禁法上の問題になり得るのでございます。し
かしながら現在我々といたしましては、あれは一種の出版社の希望的な
価格であるというふうに見まして、これはあえて独禁法違反として議論して
おらぬのであります。しかしこの点はやはり法律上そういう問題は独禁法
上あえて問う必要はないのであるということをはっきり出すという趣旨で、
今回の日用品の再販売価格につきまして規定を設けるならば、あわせて
これもはっきりさせたらよいではないかという趣旨で、いわば比較的軽い
意味で適用除外規定を入れた次第でございます」
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
1953年、7月 続く第16国会で、独禁法改正案は継続審議。
• 9月 独占禁止法改正なる(9月1日公布)。
• 今回の改正が現行再販制の根拠に。すなわち公取委による
「指定商品」と、「著作物」すなわち新聞、書籍、雑誌、音楽
用レコード等について、再販価格維持行為が認められた。再
販制の「施行」は1955年から。
出版各社は法定再販など無茶だ、無理だと反発したという(『
出版新報』1955年2月25日「原案では全賛同は無理、再販
制に出版団体連合の結論」)。
「53年改正」と呼ばれるこのたびの独禁法改正は、再販契約
に関する適用除外規定の導入や、不況カルテル(24条の3)、
合理化カルテル(24条の4)なども認められ、「骨抜き改正」な
どと呼ばれた。専門家はこのあと60年代くらいまでを「独禁
法冬の時代」と呼んでいるらしい。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
2009年現在の日本書籍出版協会
の再販制に関する意見
• 出版物再販制度は全国の読者に多種多様な出版物を同一価格
で提供していくために不可欠なものであり、また文字・活字文化の振興上
、書籍・雑誌は基本的な文化資産であり、自国の文化水準を維持するた
めに、重要な役割を果たしています。
出版業界では、出版物の流通上、注文した本がなかなか読者に届かな
いといったご批判に応えるべく、流通改善のためのさまざまな方策を進め
、再販制度の弾力的運用を図っております。
今後とも、多様な品揃えを確保しつつ質の高い出版物が読者のみなさま
に早く確実に届くよう、流通改善および再販制度の弾力的運用を図って
いきたいと考えておりますので、出版物再販制度の意義と役割について
ご理解を賜りますようお願い申し上げます。
日本書籍出版協会公式HPより
• 1956(昭和31)年
版元、取次、書店の各代表からなる「再販売
価格維持契約励行委員会」結成。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
日本書籍出版協会(書協)設立
• 1957(昭和32)年
3月 日本書籍出版協会(書協)設立。
「社団法人日本書籍出版協会(略称「書協」)
は、出版事業の健全な発達 、文化の向上と
社会の進展に寄与することを目的とする団体
です」。1965年文部省により社団法人認可。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
• 1967(昭和42)年
再販本部が図書月販(ほるぷ出版)に対し、割
引販売に付き再販違反として違約金75万円
を徴収。
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• 1968(昭和43)年
出版4団体(書籍出版協会、雑誌協会、出版
取次協会、書店組合)による出版物公正取引
協議会発足。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
• 1971(昭和46年)年
1月 再販本部委員会が「定価は現物に表示せよ」と統一見
解。
かつて書籍の価格は、奥付に記載されていたが、昭和40年
代になるとカバーに定価表示するようになっていた。これは
返品本を美装して再出荷する場合に値上げしやすくするた
め。当時の物価や人件費の高い上昇率を反映したものと言
える。しかし、公取委はカバーではなく、書籍本体に定価を表
示するように要求したもの。1998(平成10)年に緩和。
• 以後、公取委は再三、奥付への定価表示を指導。定価表示
については1980(昭和55)年の「新再販制度」をうけた形で、
1984(昭和59)に出版業界団体である「再販売価格維持契約
委員会」によって自主基準が策定され、ようやく決着。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
• 1972(昭和47)年
いわゆる「ブック戦争」勃発。
• 日書連(現日本書店商業組合連合会)が書籍マー
ジンアップ(書店マージン25%)を要求して特定版元
の書籍仕入れを拒否(不買スト)したもの。書店組合
の提案マージン率は1000円未満74、2000円未満
75、3000円未満76、3000円以上78。その結果、都
内で600円未満77、1200円未満78、3000円未満
79、3000円以上81となった。また返品減少のため
の現実的かつ効果的ルールづくりを業界で取り決
めることで合意。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
• 1973(昭和48)年
11月 書協(書籍出版協会)、責任販売制案を発表。
• 前年の合意をうけて書協が、返品減少策として提案したもの
。書協の提案は、「買切り、部分委託、完全委託の条件を厳
守する」というものだったが、取次協会や書店組合との協議
は難航。結局「責任販売制」を業界ルールとすることはでき
なかった。その後「責任販売制」は間歇的に提唱されては議
論がしぼむということが、現在に至るまで何度も繰り返されて
いる。
• 当時、通産省の「取引条件適正化委員会」で出版業界の取
引条件が問題にされていた。ここでは売買形態、マージン構
成、リベート及び割引制度、委託扱いによる返品、物流の効
率化、送返品の運賃、適正配本機能、などが指摘されてい
た。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
• 1976(昭和51)年
4月 地方・小出版流通センター設立。
• 地方出版の図書を全国的に流通させることが目的。
オイルショック後、東京一極集中への反省から「地
方」の見直し機運が高まったことが背景にあるという
。当初は委託制だったが、返品が多く、一年後から
買切制に移行。
• 出版物の推定売上が一兆円を突破。
• 公取委「再販制度の観点からみた出版業の実態調
査について」と題するアンケート調査を実施。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
• 1977(昭和52)年
• 公取委、独占禁止懇話会で再販制の問題点
が指摘される。
• 再販売価格維持契約は対象となる出版物を
特定せず、その版元一社単位で包括的に行
われていること、また再販契約を締結してい
ない出版社の出版物も、結局のところ流通段
階で再販商品と一緒に扱われている点が指
摘された。
著作物再販制に疑問を持つためのサイトより
• 1979年、1月
– 出版流通対策協議会(流対協)設立。
• 同3月
– 日書連が、「出版物再販廃止反対全国書店総決起大会」
を開催して,メディアの注目を集めた。
• 1980年、10月
– 「新再販」をおこなうことで合意
「複合ポートフォリオ戦略」と出版物再販制度 : 三項関係図式から見た出版業界の変容」50p
2003、一橋大学研究年報、佐藤, 郁哉より
余談。
• 一般社団法人 出版物貸与権管理センター
– 2005年成立。
(1)出版物ごとに使用料を支払う場合
① 出版物を公衆に貸与することを業とする者(以下「貸本業者」という。)が、出版物ごと
に使用料を支払う場合の出版物1冊の使用料は、貸与の回数にかかわらず、次のとおり
とする。
区分
使用料
出版物の定価550円未満
:265円
出版物の定価550円以上1,000円未満
:480円
出版物の定価1,000円以上で 以後、500円毎 :320円加算
② ①にかかわらず、貸本業者が、同一店舗において10,000冊以上の出版物を一度に購入し
て一括して本センターに支払う場合の使用料は、貸与の回数にかかわらず、次のとおりとする。
ただし、本規定は、前回の適用時から3年以上経過しなければ適用しない。
区分
使用料
出版物の定価550円未満
:150円
出版物の定価550以上1,000円未満
:280円
出版物の定価1,000円以上で 以後、500円毎 :185円加算
(備考)
本規定の適用を受けるためには、あらかじめ「個別タイトル(ISBN)」および「冊数」のリス
トを本センターに提供するとともに、出版物購入後、3年間の個別タイトル毎の「月次貸与
回数」を本センターに報告しなければならない。
(2)貸与回数に応じて使用料を支払う場合
(1)によらず、貸与回数に応じて支払う場合の1冊1回ごとの使用料は、次のとおりとする。
出版物の定価の8%
参考
日本出版百年史年表
国会会議録検索システム、衆議院会議録情報
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/015/0788/01503140788021a.html
一般社団法人 出版物貸与権管理センター
http://www.taiyoken.jp/
日本書店商業組合連合会
http://www.shoten.co.jp/nisho/
「複合ポートフォリオ戦略」と出版物再販制度 : 三項関係図式から見た出版業界の変容
2003、一橋大学研究年報、佐藤, 郁哉
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参考
•
•
日本書籍出版協会
http://www.jbpa.or.jp/resale/index.html
•
•
出版取次協会
http://www.torikyo.jp/
•
•
書店組合
http://www.shoten.co.jp/nisho/
•
•
雑誌協会
http://www.j-magazine.or.jp/
•
•
地方・小出版流通センター
http://www.bekkoame.ne.jp/~much/access/actop.html
•
•
出版再販制度の維持と運用
http://www.jbpa.or.jp/nenshi/pdf/p63-74.pdf
•
•
法庫.com
http://www.houko.com/index.shtml
•
•
日本の古本屋
http://www.kosho.or.jp/servlet/top
2016/7/9
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