経済同友会第1041回会員セミナー 新しい時代の企業金融を考える -市場型間接金融の将来- 2004年11月10日 日本ローン債権市場協会 会長 蓑田 秀策 (みずほコーポレート銀行 常務執行役員) 1 目 次 1.はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・ 3 13 2.従来型企業金融とその直面する課題 ・ ・・・・ 16 3.課題への対応 ・・・・・・・・・・・・・・・ 19 4.新しい時代の企業金融に向けて ・・・・・・・ 2 日本ローン債権市場協会とは 英語名:Japan Syndication and Loan-trading Association (JSLA:通称ジャスラ) シンジケートローン組成に代表されるローン債権(貸付金)のプライマ リー市場、およびその売買を行うセカンダリー市場(貸出債権流通市 場)の健全な成長に資することを目的として、実務家により2001年1 月に設立された任意団体。 現在、本邦の金融機関・機関投資家などを中心とする80社強のメン バーで活動中。主にシンジケートローン組成やローン債権売買に関 する行為規範の制定等のインフラ整備を進めております。 活動成果等、詳細はJSLAホームページ( http://www.jsla.org/ )参照。 (ホームページ一番下の「一般」から入れます。「JSLA研究成果」に 今までの研究成果を掲示。) 事務局メールアドレスは [email protected] 3 市場型間接金融とは 間接金融 直接金融 市場型間接金融 資金調達の第三の柱として注目 取引水準は市場レートに基づきつつも 間接金融のメリットである柔軟な条件設定も可能 •シンジケートローン組成等の貸付債権のプライマリー市場 •貸付債権の売買を行うセカンダリー市場(流通市場) •貸付金などの債権を証券化し投資家へ販売 - 中核商品として資産担保証券(金融機関が企業や個人に貸付け た融資・住宅ローンなどの貸付金を担保とした証券)等 4 シンジケートローンとは(1) 複数の銀行が集まって(=シンジケート団) 同一の契約書に基づいて行われる 信用供与(資金の貸出・コミットメントラインの設定等) 5 シンジケートローンの仕組 複数の金融機関による シンジケート団の組成 同一の契約書による 貸出等の信用供与 ディール実行時 アレンジャー • 条件設定 • 銀行団組成 • ドキュメンテーション 調達者 期中管理 エージェント • 連絡・通知事務 • 元利払事務 参加金融機関 参加金融機関 参加金融機関 参加金融機関 アレンジャーも参加 6 シンジケートローンとは(2) <特 徴> 1 皆が同じ条件で貸出を行う 2 契約内容を当事者間で自由に定める 3 既往の取引関係に拘らない 4 取引に透明性、市場性を求められる 5 譲渡を前提としている 7 日本におけるシンジケートローン組成総額 (兆円) 25 (参考) 日銀「貸出債権市場取引動向(シ・ローン組成実績)」 ⇒ 19.1兆円 (2003年度) 20 14.7 15 11.8 11.9 13.8 9.8 1月-9月 10 4.2 5 0.2 0.5 1997 1998 0 1999 2000 2001 2002 2003 2004 暦年ベース (出典: トムソンファイナンシャル) 8 日米市場規模比較(2003年) 米国 更なる拡大 の可能性 (兆円) 400 〈フローベース〉 〈ストックベー ス〉 〈ストックベース〉 307 284 300 日本 200 130 100 日 本 米 国 米 国 104 米 国 62 15 日本 日本 0 相対調達 間接金融 シンジケート・ローン 社債 市場型間接金融 直接金融 1.基準日は年末。米国マーケット実績については、$1.00=107円で計算。 2.出典は、シ・ローン:トムソンファイナンシャル、米国相対調達:FRB、日本相対調達:日本銀行、米国社債:FRB、 日本社債:日本証券業協会、等のデータを元にJSLAが推計。 9 米国におけるシンジケートローン市場と ローンセカンダリー市場の規模推移 (十億ドル) (十億ドル) 1600 160 セカンダリー市場規模 右目盛り 1400 140 1200 120 (約110兆 円) 1000 (約11兆円) 100 800 80 600 60 400 40 シンジケートローン市場規模 左目盛り 200 20 0 0 1991 (出典) 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 プライマリー市場:トムソンファイナンシャル セカンダリー市場:ローンプライシングコーポレーション 10 アメリカのケースーーーなぜ? 銀行の負う最も大きいリスクは与信集中(元本)リスク 与信リスクの分散が、金融機関健全化の鍵を握る 日米で与信集中リスクの認識に差異 米銀 ポートフォーリオ概念 あり 集中リスク認知度 高い 邦銀 ポートフォーリオ概念 希薄 集中リスク認知度 低い 11 なぜ? 12 従来型企業金融とその直面する課題 13 従来型銀行貸出業務の在り様--メインバンク制 戦後日本の企業金融は、株式持合を前提とした大企業・銀行の相互扶助モデル ・株式持合⇒ 債権者としての認識が曖昧(株主or 債権者or サービス提供者) ・情報のメインバンクへの集中⇒その他行がリスク判断をメインへ依存 ・総合取引採算 ⇒ リスクリターンの考え方曖昧 (ドンブリ勘定) ・銀行取引約定書、土地を中心とした不動産担保 ⇒ 信用リスクの認定曖昧 ・貸出債権の満期保有、擬似エクイティー化 ⇒デット・エクイティーの境目曖昧 ・個別案件主義 ⇒ 木(個別案件リスク)を見て、森(ポートフォーリオ)を見ず 14 環境変化と従来型金融の直面する課題 <状況変化> ・金融自由化(80年代、90年代) ・BIS規制の進展 <直面する課題> ・市場を意識した経営 株式持合解消と新しい取引関係の構築 取引の透明性、客観性向上 ・銀行監督の考え方の大転換 ・不良債権問題、デフレ ・銀行の体力低下 ・メイン銀行制の変質 ・リスク分散による銀行の体質強化 集中リスク=相互扶助モデルの見直し リスクマネーの円滑な供給 多様なファイナンス手段の提供 ・企業にとっての調達手段の多様化 15 課題への対応 16 シンジケートローンを発展させ、金融を変える ○ 市場による信用リスク評価と契約化による透明な取引関係構築 →相互扶助モデルからの脱却 ○ 市場を通じたリスク分散機能により、金融機関・借入人双方がメリット享受 ・金融機関のリスク分散能力の向上 →リスクマネー供給能力増大 ・多数の投資家にアクセス →企業にとっての調達手段多様化/安定化 17 シンジケートローンを発展させるためには何が必要か ○ 金融機関・借入人双方が、従来の資金供給・資金調達の仕方を見直すこと ○ ローン債権の流通市場を創設・発展させること ・信用力を反映した適性価格の発見機能 ・リスク分散機能の強化 ○ 流通市場を支えるインフラの整備 ・情報の開示(デットIR) ・契約の標準化 ・取引ルールの整備 18 新しい時代の企業金融に向けて 19 市場型間接金融がもたらす新しい時代の企業金融 ○ 市場を通じたリスク分散機能により ⇒リスクマネーの供給を拡大 ⇒多様なコーポレートファイナンス手法を提供・享受 ○ 市場創出、発展には市場参加者全員の理解と努力が必要 ○ JSLAは、クレジット市場発展のための実務的なインフラ整備に引き続き主 導的役割を果たす所存 目指すは、質量ともに充実したクレジット市場を創出し わが国の企業金融の柱とすること 20
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