出版業界の歴史と法規制1 7/19 5限 社会工学類経営工学主専攻4年次 野澤寛 2016/7/9 1 INDEX 1. 2. 3. 4. 5. 復習 出版業界の歴史、法規制 まとめ 参考 用語解説 2016/7/9 2 出版業界の変革:近代 再販制と委託制 • 再販売価格維持制度(再販制) 出版社(メーカー)が個々の出版物の小売価 格(定価)を決めて、書店(販売業者)で定価 販売できる制度です。この制度は、独占禁止 法で認められています。(日本書籍出版協会HPより) 2016/7/9 3 補足 • 「再販売」とは何か? – ふつう、商品流通は、メーカー(製造業者)がモノを作り、そ れを卸売業者に売り、さらに卸売業者が小売業者に売り、 最後に小売店が消費者に売る、という流れをたどります。 ※1 – この「メーカー→卸売業者→小売店」という流通過程の中で 、商品を次の業者に「再び販売」するわけですから、これが 「再販売」です。そして、そのときどきの販売価格を「再販売 価格」と呼ぶわけです。 ※1 出版物の場合ですと、メーカーに相当するのが出版社(版 元)、卸売にあたるのが取次(とりつぎ)、小売店にあたるのが書 店やコンビニです。 2016/7/9 「著作物再販制に疑問を持つためのサイト」より 4 出版業界の変革:近代 再販制と委託制 • この2つの制度を盾に、近代の出版業界は発 展してきた。 再販制 委託制 企業間競争の縮小 在庫リスクを無視 した仕入れ 5 2016/7/9 ちなみに・・・ 再販制の開始は1956年(昭和31年)頃。 委託制の開始(ある出版社において)は190 8年(明治42年)。 2016/7/9 6 他国の再販売価格維持制度実施状況 国 書籍 雑誌 新聞 音楽 アメリカ × × × × イギリス × × × × フランス × × × × ドイツ △ △ △ × スウェーデン × × × × 韓国 △ △ △ × ノルウェー ○ × × × オランダ ○ ○ × × デンマーク ○ ○ × × オーストリア ○ ○ ○ × 日本 ○ ○ ○ ○ 時限再販(1年)、値幅再販(10%)、2008年廃止 2016/7/9 △は部分的に認められている。 7 「著作物再販制度に疑問を持つサイト」、「wikipedia(2009.7.18)」より作成 出版業界の歴史:1 ●江戸時代 • 版木を使った木版印刷の時代。印刷といっても一種 の版画である(プリントという意味では同じ)。板を彫 って印刷原板とするわけで、これが「板元(はんもと) 」と言われるゆえん。現在でも出版社のことを「版元 」というのは、この「板元」から来ている。 • この時代、出版社は書店も兼業であって、製造業者 でもあり販売業者でもあった。これが「書肆」と呼ば れるもの。 ※書肆=本屋 「著作物再販制に疑問を持つためのサイト」より 2016/7/9 8 2016/7/9 9 出版業界の歴史:2 ●明治時代前半 • 明治初期に活版印刷が導入された。活版印刷最初 期のベストセラーは、福沢諭吉の『学問のすすめ』、 中村正直訳の『西国立志編』など。 • 当時の書籍流通は、全国の書店が東京に本を買い つけに出かけ、これを汽車や船で地元に送って売る という形式。それら書店の中には、さらに地域の小 書店に卸す「中卸し」の役目を果たすものもあった。 「著作物再販制に疑問を持つためのサイト」より 2016/7/9 10 出版業界の歴史:3 • 1869(明治2)年 – 出版条例制定。出版の免許制と、出版者(社)に「専売ノ利」を取得さ せる規程。 • 1871(明治4)年 – 12月 日本初の日刊新聞「横濱毎日新聞」発刊 • 1874(明治7)年 – 11月 「讀賣新聞」創刊。 • 1875(明治8)年 – 新聞紙条例制定。 – 出版条例改正。「版権」の確立。 • 1878(明治11)年 – 初の書籍取次店、良明堂が発足。 「著作物再販制に疑問を持つためのサイト」より 2016/7/9 11 出版条例とは 明治政府の最初の出版(言論)統制令は、明治政府が太政官制度を採り、「 天下ノ権力総(すべ)テ之ヲ太政官 (だじょうかん)ニ帰ス」として、その下に一 応(形式的には)三権分立の体制の組織を定めた「政体書」を発表した、18 68(慶応4)年4月に発せられた「新著并(ならびに)翻刻(ほんこく=外国の 刊本を、そのままの内容で新たに刊行すること)書類(たぐい)……以後総テ 官許(かんきょ=政府の許可)ヲ不経(ふけい=手続きを経ない)候品売買 堅(かたく)被差停候事」という太政官布告であった。 ◎出版条例 – 太政官布告は、1869(明治2)年5月には、出版の許可制を設け、許可を受け た者は「官ヨリ之(これ)ヲ保護シテ専売ノ利ヲ収メシ」める“飴”を与えるとともに、 議論や機密の漏洩(ろうえい)、誹謗(ひぼう)、淫蕩(いんとう=酒色におぼれて、 生活が乱れるさま)を導くような出版には処罰する“鞭”を科す出版条例(行政官 達)に引き継がれる。 田村教授HPより 2016/7/9 12 出版条例とは • 1875年(明治8年)出版条例改正 – 「図書ヲ著作シ、又ハ外国ノ図書ヲ翻訳シテ出版ス ルトキハ三十年間専売ノ権ヲ与フヘシ 此ノ専売ノ 権ヲ版権ト云フ」 日本印刷技術協会(JAGAT)HPより 2016/7/9 13 新聞紙条例とは • 新聞紙条例 – 1875(明治8)年6月28日に布告された全文16 条からなる新聞取締条例。 1873(明治6)年10月に布告された新聞紙発行 条目(じょうもく=箇条書きにした法令・規則)が 新聞に対する政府による指導の内容が中心であ ったのに対して、同条目を改正した同条例は、当 時、政府批判の傾向にあった新聞を取り締る目 的で、これを容易にするためのその内容を整備し たもの。 田村教授HPより 2016/7/9 14 新聞紙条例とは • 1883(明治16)年4月16日に、統制を強め るため発行保証金制度、行政権による発行 禁止・停止権、新聞紙差押え権などの新設を 含んだ改正がなされた。 権力による新聞弾圧の意図は、その後一層 拡大し、1909(明治42)年5月6日、さらなる 統制の強化をみた新聞紙法に引き継がれて いった(新聞紙条例は廃止)。 田村教授HPより 2016/7/9 15 出版業界の歴史:4 • 1883(明治16)年 – 新聞紙条例改正。言論取り締まりを強化。 • 1887(明治20)年 – 「東京書籍商組合」発足。 当時は出版も販売も同じであったから、実質的には出版 社と書店の業界団体と言える。明治初期の出版業界をリ ードした。 • 1893(明治26)年 – 出版法公布。 「著作物再販制に疑問を持つためのサイト」より 2016/7/9 16 出版法とは • 出版法(出版条例) – 1893(明治26)年4月に制定された出版に関する統制 規制法。出版法も出版条例同様、書籍のほか、もっぱら 学術、技芸、統計、広告の類を記載する雑誌をも規制の 対象としたうえで、事実を曲げて犯罪を隠蔽(いんぺい)し たり、安寧(あんねい=世の中が平穏無事なこと)秩序の 妨害、風俗の壊乱(かいらん=乱しやぶること)等の内容 の文書図画を禁止し、官庁の機密に関する非公開文書 の出版を許可制とすることなどを定め、違反した場合には 、軽禁固や罰金が科せられたほか、検事や内務大臣に 仮差押え、出版差止めなどの権限を与えた。 田村教授HPより 2016/7/9 17 余談。。。 ◎再販制を打ち破る裏技 • 基本編 ; ポイントのつくショップで購入する – ビックカメラ、山田電気など・・・ • 応用編;逆輸入 を利用する – 「東南アジア圏で販売されている日本人アーチストのCDを輸入すれば、再販制度対象 外になるらしく?、通常版よりも3~5割引き程度の値段で売られています。 」(お金の 百科事典より) • 番外編;「自由価格本」を買う – ブックオフで「B★コレ! 」という名で売ってます。 ブックオフ曰く『再販指定解除の承認をいただいた商材 』を扱ってるそうです。 参考:「お金の百科事典」「再販価格制度を打ち破る裏技」「60坪書店日記」 2016/7/9 18 余談の余談。。。 • なぜそんなこと(ブックオフで自由価格本を販売する こと)が可能か、というと。。。 – 再販制は、実は「商慣習法」だから。 つまり、居酒屋でお酒を頼んだらお通しが出てくるのと同 じような事。他にはファミレスの深夜料金、欧米のチップな ど・・・ 法的な拘束力はない。 実は、お通し代や深夜料金は払わなくてもよい。 ※顧客が同意済みの場合は別。 2016/7/9 19 出版業界の歴史:5 ●明治後半 • • • 明治の後期から大正にかけて、日本の出版産業の基礎が できた。これはいわばインテリ階層や中産階級向けの、表 側の本の世界。一方、江戸時代からの錦絵や、絵草紙、読 本の世界も連綿と続いていた。これはいわゆる赤本と呼ば れる。 明治末期までは、版元と小売書店が未分化であったり、取 次を経由する場合でも、書籍・雑誌ともに買い切り制であっ た。 明治の末期に、全国の書店数はおよそ3000店くらいとされ 、大正8年で6000店、昭和初期に1万店を越えた。人口比 で言えば、この時点ですでに、現在と同じくらいの書店があ ったと言ってよい。 「著作物再販制に疑問を持つためのサイト」より 2016/7/9 20 出版業界の歴史:6 • 1895(明治28)年 – 博文館から雑誌『太陽』創刊。 • 初の総合雑誌 。広告の導入。 • 同10月 – 日本橋本銀町に広告代理店の「博報堂」創業。 • このころ雑誌は定価販売ではなく、自由価格が主流だったが、代理店 の成立により、徐々に広告料収入を前提に定価で売るというような、雑 誌の基本的な出版モデルができることになる。 • 1897(明治30)年 – 新聞条例改正。内務大臣の発行禁止・停止処分権を廃 止。 「著作物再販制に疑問を持つためのサイト」より 2016/7/9 21 出版業界の歴史:7 • 1899(明治32)年 – 版権条例、脚本楽譜条例などを統合し、「著作権法」制 定。 ●返品制(委託販売)の成立 • 1908(明治41)年 「大学館」という版元が、書籍に関し、東京市内の 書店に「返品制(委託販売制)」を実施。それまでは 、前金制や注文買い切り制だった。 「著作物再販制に疑問を持つためのサイト」より 2016/7/9 22 出版業界の歴史:8 • 1909(明治42)年 – 実業之日本社が人気雑誌『婦人世界』で「返品 制(委託販売制)」を実施。同誌は、最高31万部 まで販売して大成功となったため、返品制が注 目されるきっかけとなった。後年、講談社『キング 』の成功があったのもこの返品制システムの確 立ゆえとする論者が多い。 「著作物再販制に疑問を持つためのサイト」より 2016/7/9 23 まとめと今後の授業予定 • 出版業の歴史は古く、江戸時代から法による規制が 行われていた。 しかし、明治政府が擁立してからは出版(言論)統制 令が厳しく、出版業も束縛されてきた。一方で、政府 公認の版元は「専売の利」を得ることが出来た。 ○今後の授業予定・・・ 次回・・・委託制度成立後の出版業界を振り返る。 歴史について:3~4回 法規制とその影響について:3~4回 古書業界と周辺組織:3回 ブックオフの財務分析:3回 2016/7/9 24 参考 著作物再販制に疑問を持つためのサイト http://f29.aaa.livedoor.jp/~resalep/ ヤフーニュース:プレジデント http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20090511-00000301-president-bus_all 情報処理推進機構 http://www2.edu.ipa.go.jp/gz2/kiyaku.html 再販価格制度を打ち破る裏技 http://www.777money.com/setuyaku/seikatu/hon_cd.html http://www.777money.com/setuyaku/seikatu/hon_cd.html お金の百科事典 http://homepage3.nifty.com/bom-money/houritu/ 60坪書店日記 http://d.hatena.ne.jp/kongou_ae/20081103/1225720138 専門家紹介ネット http://shokai.net/%90%C5%96%B1%97p%8C%EA/%8F%A4%8A%B5%8FK%96@%81y%82%B5%82%E5%82%A4%82%A 9%82%F1%82%B5%82%E3%82%A4%82%D9%82%A4%81z/ GのSNS日記 http://gsns.seesaa.net/article/106147582.html 日本ジャーナリスト会議出版部会 http://www.jcj.gr.jp/shuppan/index.html http://www.jcj.gr.jp/shuppan/index.html 田村教授HP 2016/7/9 http://www.cc.matsuyama-u.ac.jp/~tamura/IRIGUTI.htm 25 太政官布告:第一次府県統合 http://www.tt.rim.or.jp/~ishato/tiri/huken/haihan1.htm レファレンスクラブ http://www.reference-net.jp/ref_case/320.html ハグカレ★カフェ http://hagakurecafe.gozaru.jp/oedo7bunka.html 再販制度と新聞特殊指定 http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/day-20090707.html はてなブックマーク http://b.hatena.ne.jp/denken/%E5%86%8D%E8%B2%A9%E5%88%B6%E5%BA%A6/ 風饗社通信 http://www.fukyo.co.jp/fk-tusin/fk0008.html マスコミ不信日記 http://blog.livedoor.jp/saihan/archives/cat_1508217.html?p=2 ウィキペディア http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%89%88%E6%A8%A9 日本印刷技術協会(JAGAT) http://www.jagat.or.jp/story_memo_view.asp?StoryID=5146 新聞記事文庫 出版印刷業 http://www.lib.kobe2016/7/9 u.ac.jp/das/ContentViewServlet?METAID=00078186&TYPE=HTML_FILE&POS=1&LANG=JA 26 用語解説 • 商慣習法【しょうかんしゅうほう】 – 商慣習法【しょうかんしゅうほう】とは、商取引に 関する「慣習法」。契約の履行期・履行場所、品 質、代金支払方法、受渡方法、受取物品の検査 方法等多くの問題について、業種別に多く存在す る。商法はもともと慣習法の形で発達し、それが 成文化されたものである。商慣習法は民法に優 先して適用される。 » 「専門家紹介ネット」より 2016/7/9 27 用語解説 • 太政官(だじょうかん) – 1868(慶応4/明治1)年4月27日のアメリカの影響を 受けた政体書で「天下の権力(他人を支配し、服従させる 力。支配者が組織・富・武力などを背景として被支配者に 加える強制力)総てこれを太政官に帰す」と定められた。 すなわち、国家権力全体を支配する組織を太政官と称し たのである。 1869(明治2)年8月15日の政体書を廃止した上での 官制改革によって太政官は、立法・行政・司法の三権に 分けられ、祭政一致の古制により太政官の上に神祇(し んぎ)官が置かれた(2官6省)。 田村教授HPより 2016/7/9 28 用語解説 • 太政官布告 – 明治1年から18年の内閣制成立まで、太政官が 公布した法令の形式を指す。太政官(だじょうか ん)とは、慶応4年から明治18年まで存在してい た最高官庁。 「レファレンスクラブ」より 2016/7/9 29 用語解説 • 読本 – 小説のことでどっちかとうと、インテリ江戸っ子が読む本で 、挿絵が入った高級な本 • 赤本 – 赤を表紙にした少年向けの絵本。江戸時代中期に流行。 • 青本 – 萌葱(もえぎ)色を表紙にした歌舞伎、浄瑠璃、軍記物などを題材とした絵本 。江戸時代末期に流行。 • 絵草紙(草双紙) – 読本はインテリ向けだけど、絵草紙は大衆的 赤本・黄表紙・青本など 一応小説ですが、絵が主体で字が少なめ ちなみに黄表紙は今で言うエロ本のこと 2016/7/9 30 「ハグカレ★カフェ」「大辞林」より
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