生体分子解析学 2016/7/9 機器分析 分光学 X線結晶構造解析 質量分析 熱分析 その他機器分析 1 2016/7/9 演習 1. C=C二重結合の伸縮運動に伴う吸収の波数は、C-C単結合の伸 縮運動に伴う吸収の波数の何倍になるか概算値を求めなさい。 ただし、C=C二重結合のσ結合とπ結合の強さが共にC-C単結合 のσ結合の強さと等しいものと近似する。 C=C二重結合のσ結合とπ結合の強さが共に、C-C単結合のσ結 合の強さと等しいので、C=C二重結合の結合の強さはC-C単結合の 2倍になる。 即ち、バネ定数が2倍: kC=C = 2kC-C 1 波数 ν = 2πc √ kC=C 1 = μ 2πc √ 2kC-C μ これより、 C=C伸縮運動の波数はC-C伸縮振動の √2 倍 2 2016/7/9 演習 2. C-H伸縮運動の波数は、C-D伸縮運動に伴う吸収の波数の何倍 になるか概算値を求めなさい。Dは2H(質量数2の水素原子)。 m1•m2 12×1 12 C-H結合の換算質量μC-Hは μC−H = m + m = 12+1 13 1 2 = m1•m2 12×2 12 C-D結合の換算質量μC-Dは μC−D = m + m = 7 12+2 1 2 = √ k 1 = 2πc μ √ 1 波数 νC-D = 2πc 波数 νC-H k √ √ √ 12 k k 1 1 = 2πc (13/12) = 2πc √ √ √ 13 1 μC−D = 2πc C−H k 1 (12/7) = 2πc k 7 12 これより、 C-D伸縮運動の波数はC-H伸縮振動の √7*13/12*12 倍 3 宿題 2016/7/9 1. C-C伸縮振動よりC=C伸縮振動のほうが高波数側に吸収がある ことを下記の言葉を使って説明しなさい。 バネ定数、共有結合 共有結合はバネのような働きをする。C=C二重結合では共有結合 が2つあり、C-C単結合のバネ2個分に近い力で結合している。 従って、バネ定数kが大きくなることに相当する。波数はkの平方根 に比例するので、C=C伸縮振動のほうがC-C伸縮振動より高波数 となる。 4 赤外光領域の分光法・物理的背景 高 γ線 A-B A 低 E (光子のエネルギー;単位: J) 波長 短 10-12 10-11 10-10 10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 (m) 長 X線 紫 外 線 分子 可 視 光 線 赤外線 マイクロ ラジオ波 波 バネの伸縮運動 B A B m1 m2 2016/7/9 結合が 伸縮する 原子は重り、共有結合はバネ 単振動 単振動:バネの動き x = −r•cos(ωt) ω: 単振動と周期が同じ回転運動の角速度 x/m r 振幅: r 0 −r t/s 周期: T (s) t/s 振動数 f(s-1) = 1/T(s) 周期 T(s) = 2π(=360°)(rad)/ω(rad/s) 出典: http://www.mars.dti.ne.jp/~stamio 2016/7/9 赤外分光法の物理 高 低 E (光子のエネルギー;単位: J) 波長 短 10-12 10-11 10-10 γ線 10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 (m) 長 X線 紫 外 線 可 視 光 線 赤外線 マイクロ ラジオ波 波 バネの伸縮運動 天井 物理学A (高校物理) k: バネ定数 単振動 m 単振動 バネの端が固定された単振動 1 振動数 ν = 2π √ k m 1 ν 1 波数 ν = λ = c = 2πc √ k m 2016/7/9 赤外分光法の物理 高 E (光子のエネルギー;単位: J) 波長 短 10-12 10-11 10-10 γ線 A-B 10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 (m) 長 紫 外 線 X線 可 視 光 線 分子 k: 結合のバネ定数 m1 低 m2 換算質量: μ 分子振動 どこも固定されていない単振動 赤外線 マイクロ ラジオ波 波 m1+ m2 1 1 1 μ = m1 + m2 = m1•m2 m1•m2 μ = m +m 1 2 1 振動数 ν = 2π √ k μ 1 ν 1 波数 ν = λ = c = 2πc √ k μ 2016/7/9 赤外光と赤外分光法 高 波長 波数 2.5×10-6 2.5×10-5 (m) 5×10-6 4000 2500 (単結合) C−H N−H O−H 2000 m2 400 (cm-1) 1500 (三重結合) (二重結合) (単結合) C≡C C=C C−C C≡N C=N C−N C=O C−O 特性吸収帯 m1 低 E (光子のエネルギー;単位: J) m1 m1 m1 指紋領域 m1 m1 m1 9 赤外分光(構造解析編) 100 2016/7/9 3300 cm-1付近の幅広くて強い吸収 50 O-H伸縮振動 3000 2000 1000 波数/cm-1 1700 cm-1付近の 強い吸収 100 50 0 C=O伸縮振動 3000 2000 1000 波数/cm-1 10 2016/7/9 赤外分光(構造解析編) C=O伸縮振動の波数 O R O O O R R 約1745 cm-1 R R N R H 約1720 cm-1 約1645 cm-1 1700 cm-1付近の 強い吸収 100 50 0 C=O伸縮振動 3000 2000 1000 波数/cm-1 11 紫外可視領域の分光法・物理的背景 高 γ線 物理現象 測定法 低 E (光子のエネルギー;単位: J) 波長 短 10-12 10-11 10-10 10-9 10-8 10-7 10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 100 (m) 長 X線 電子による X線の弾性散乱 X線結晶構造 解析 回折法 2016/7/9 紫 外 線 可 視 光 線 電子遷移 赤外線 マイクロ ラジオ波 波 分子振動 分子の 核スピンの 回転運動 反転 紫外可視 赤外分光法 分光法 蛍光 ラマン 分光法 分光法 CD, ORD 旋光度 回転 分光法 ESR 分光法 分光法 NMR 分光法 12 蛍光とリン光の化学的背景 2016/7/9 衝突や運動に よるエネルギー 放出(損失) S1 励起 最低振動準位 ΔE1 = hν1 励起 蛍光 ΔE2 = hν2 G 基底状態 最低振動準位 (一重項) 13 蛍光とリン光の化学的背景 2016/7/9 衝突や運動に よるエネルギー 放出(損失) S1 励起 一重項 最低振動準位 ΔE1 = hν1 励起 蛍光 ΔE2 = hν2 G 基底状態 最低振動準位 (一重項) 14 2016/7/9 蛍光とリン光の化学的背景 衝突や運動に よるエネルギー 放出(損失) S1 励起一重項 最低振動準位 ΔE1 = hν1 励起 振動遷移 回転遷移 衝突や運動 (禁制遷移) 電子スピン 反転 蛍光 リン光 ΔE2 = hν2 ΔE3 = hν3 励起 最低振動準位 リン光を出す 過程が遅い (禁制遷移) G 基底状態 最低振動準位 T1 長く光る (一重項) 15 2016/7/9 蛍光とリン光の化学的背景 衝突や運動に よるエネルギー 放出(損失) S1 励起一重項 最低振動準位 ΔE1 = hν1 励起 振動遷移 回転遷移 衝突や運動 (禁制遷移) 電子スピン 反転 蛍光 リン光 ΔE2 = hν2 ΔE3 = hν3 励起 三重項 最低振動準位 リン光を出す 過程が遅い (禁制遷移) G 基底状態 最低振動準位 T1 長く光る (一重項) 16 2016/7/9 蛍光とリン光の化学的背景 (禁制遷移) 電子スピン 反転 S1 励起一重項 最低振動準位 ΔE1 = hν1 励起 蛍光 リン光 ΔE2 = hν2 ΔE3 = hν3 励起 三重項 最低振動準位 リン光を出す 過程が遅い (禁制遷移) G 基底状態 最低振動準位 ΔE1 > ΔE2 > ΔE3 T1 長く光る ΔE = hν ν1 > ν2 > ν3 17 2016/7/9 蛍光とリン光の化学的背景 高 波長 振動数 E (光子のエネルギー;単位: J) 1.0×10-8 1.0×10-7 3×1016 3×1015 入射光 蛍光 リン光 ΔE1 > ΔE2 > ΔE3 ν1 > ν2 > ν3 ΔE = hν λ = c/ν 低 1.0×10-6 (m) 3×1014(Hz) 入射光 蛍光 リン光 ν1 > ν2 > ν3 λ1 < λ2 < λ3 蛍光・リン光は入射光より長波長 蛍光・リン光は入射光より低エネルギー 18 2016/7/9 蛍光スペクトル:装置 蛍光 or リン光 透過光: λ1 励起光の残り 励起光(入射光): λ1 蛍光は90°横から検出 透過光の混入を避けるため 蛍光 or リン光 λ2 色々な波長で 発光 19 2016/7/9 蛍光スペクトル測定 光源から特定波長(λ1)の取出し 蛍光 or リン光 透過光: λ1 励起光の残り 励起光(入射光): λ1 蛍光の波長掃引 励起光: λ1 蛍光 or リン光 λ2 色々な波長で 発光 20 2016/7/9 励起スペクトル測定 蛍光 or リン光 励起光の波長掃引 透過光: λ1 励起光の残り 励起光(入射光): λ1 蛍光 or リン光 λ2 単一波長(λ2)の蛍光の取出し 励起スペクトル 蛍光: λ2 λ2 色々な波長で 発光 λ1を波長掃引した時の、 λ2の蛍光強度変化 21 蛍光スペクトルと励起スペクトル 励起スペクトル (吸収スペクトル) 2016/7/9 蛍光スペクトル 励起スペクトルと蛍光スペクトルの 22 蛍光スペクトルと励起スペクトル 励起スペクトル (吸収スペクトル) 2016/7/9 蛍光スペクトル 励起スペクトルと蛍光スペクトルの 鏡像関係 23 蛍光スペクトルによる分析 2016/7/9 吸光度 (A=εcl) > 0.05 の時 定量性悪し セルの場所によって蛍光が 吸光度 (A=εcl) < 0.05 の時 定量性良し セルの場所による蛍光 蛍光強度 F = kI0Φεcl ∝ c (濃度) 24 蛍光スペクトルによる分析 2016/7/9 吸光度 (A=εcl) > 0.05 の時 定量性悪し セルの場所によって蛍光が変化 吸光度 (A=εcl) < 0.05 の時 定量性良し セルの場所による蛍光変化無し 蛍光強度 F = kI0Φεcl ∝ c (濃度) 25 蛍光スペクトル:応用 2016/7/9 1) 蛍光標識:タンパク質や核酸に蛍光プローブを結合させる 2) 細胞内物質のイメージング:蛍光標識タンパク質を用いて、タ ンパク質の細胞内局在等を調べる。 3) 蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET):分子を二種類の蛍光プロー ブで標識し、蛍光のエネルギー移動効率から蛍光プローブ間 距離を見積もることが出来る手法 26 蛍光スペクトル:応用 2016/7/9 3) 蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET):分子を二種類の蛍光プロー ブで標識し、蛍光のエネルギー移動効率から蛍光プローブ間 距離を見積もることが出来る手法 hν1 D hν2 hν1 D A 蛍光プローブ1 蛍光プローブ2 hν3 A 27 蛍光スペクトル:応用 2016/7/9 3) 蛍光共鳴エネルギー移動 (FRET):分子を二種類の蛍光プロー ブで標識し、蛍光のエネルギー移動効率から蛍光プローブ間 距離を見積もることが出来る手法 hν1 D hν1 hν2 D A hν3 蛍光プローブ1 蛍光プローブ2 蛍光プローブ1 A ν1 (ν ) 2 励起スペクトル 蛍光スペクトル ν3 蛍光プローブ2 励起スペクトル 蛍光プローブ1の蛍光スペクト ルと蛍光プローブ2の励起スペ クトルの波長に重なりがある時 に起こる 蛍光スペクトル 波長(λ)/nm 28 2016/7/9 旋光度:光(電磁波) 電磁波:電場と磁場が相互作用して空間を媒体なしに進む波動 y 0 電場成分(x-y平面) x z 29 2016/7/9 旋光度:光(電磁波) 電磁波:電場と磁場が相互作用して空間を媒体なしに進む波動 y 0 x z 30 2016/7/9 旋光度:光(電磁波) 電磁波:電場と磁場が相互作用して空間を媒体なしに進む波動 y 0 電場成分(x-y平面) x z 31 2016/7/9 旋光度:光(電磁波) 電磁波:電場と磁場が相互作用して空間を媒体なしに進む波動 y 0 電場成分(x-y平面) x y z z 32 2016/7/9 旋光度:光(電磁波) 電磁波:電場と磁場が相互作用して空間を媒体なしに進む波動 y 0 電場成分(x-y平面) y z x z 円偏光 33 演習 2016/7/9 1. 励起光と蛍光ではいずれの波長が長いか。理由も応えなさい。 宿題 (予習) 旋光性を示す化合物の特徴を説明しなさい。 (特に構造特性に着目して下さい) 34
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