07F1023 井形辰史 はじめに 2007年の世界的経済不況の影響から発 した米国自動車産業の急速な低迷、さら にはビックスリーの2社が事実上の経営 破綻に追いやられた事にたいして、それ の要因と、それによる影響を明らかにす るために調査しまとめた。 目次 ビックスリーとは? ビックスリー崩壊の要因 ビックスリー崩壊の影響 日本自動車メーカーのありかた おわりに 参考文献 ビックスリーとは? GM(ゼネラルモーターズ) Chrysler(クライスラー) Ford(フォード) GM(ゼネラルモーターズ) 本社所在地 ミシガン州デトロイト 設立 1908年9月16日 従業員数 約26万6000人(2008) 世界金融危機以前は販売台数世界一!! 主な車種 キャデラック、ハマー、シボレー etc Chrysler(クライスラー) 本社所在地 ミシガン州オーバーンヒル ズ 設立 1925年6月6日 従業員数 約 6万6000人(2008) 主な車種 クライスラー、jeep Ford(フォード) 本社所在地 ミシガン州ディア ボーン 設立 1903年6月16日 従業員数 約24万人? 主な車種 フォード、マーキュリー ビックスリーの功績 米国の自動車市場と消費者を熟知してい た。 新たな市場トレンドをつかみ新たなコン セプト車を世界に提案した。 欧州で開発された自動車を商品として成 立させたものビックスリーである。 小型トラックは世界の自動車市場にユー ティリティー性をあまねく知らしめ、自 動車市場を一新した。 GM・Chryslerの破綻 Chryslerに関しては2009年4月30日に連 邦破産法を申請し、イタリアの自動車 メーカーのFiatと提携を発表。 GMに関しては2009年6月1日に連邦破産 法を申請し、新生GMは米政府が60%、 カナダ12%出資される形で再建を目指す。 ビックスリー崩壊の要因① サブプライムローン問題 燃料価格の高騰 リーマンブラザーズの経営破綻 サブプライムローン問題 住宅向けサブプライムローンの破綻によ り米国経済が悪化。同様の方法で自動車 販売においてもサブプライムローンを活 用した新車販売が行われており、ピーク 時には年換算で200万件程度のローン提 供あった。しかし住宅向けサブプライム ローンの破綻によりローンを使用してい た販売層の販売が停止になる。 燃料価格の高騰 2008年に燃料価格高騰が起こり、その 影響から世界経済の停滞が始まる。 さらに燃料価格の高騰に伴い米国市場が 一気に小型乗用車、低燃費ハイブリット 車にシフト ⇒販売の中心である小型トラックが不振 に陥る。 リーマンブラザーズの経営破綻 2008年9月のリーマンブラザーズの経営 破綻は米国の株価を引き下げるだけでな く、世界的な信用収縮の引き金となり世 界的な経済混乱を招く結果となった。さ らに失業率の上昇や将来の雇用不安の拡 大を背景に消費者マインドが低下し、自 動車販売が一気に縮小する事となった。 ビックスリー崩壊の要因② 小型トラックブーム 収益、株価優先の経営 人材確保の問題 外注による誤解 小型トラックブーム 背景 ①原油安が続いて、燃費基準が先送りにさ れ燃費に配慮する必要がなかった。 ②運転する時の位置、ドライビングポジ ションが高く運転しやすい。 ③開発が商用車ベースなため、車体構造が 頑丈で衝突安全性に優れている。 小型トラックの販売拡大 米国における小型トラック販売は1980 年代後半から拡大し始めたが、主流とな るように本格的に拡大したのは1990年 代前半の時期である。特にこの時期は燃 料価格が低価格で安定していたためにさ らに需要が増加したと考えられる。 小型トラックの米国市場割合 ⇒ 33.6% 1997年 ⇒ 45.3% 2004年 ⇒ 54.3% 1991年 高収益をもたらすドル箱製品へ 小型トラックブームの功罪 米国で販売シェアを拡大していた小型トラッ クは低位安定していた燃料価格、リスクの大 きな販売網により支えられていた。 脆弱な条件のもとに成り立っていた事業 小型トラックブーム功罪② 小型トラックは高額だが、収益性が高い。 ⇒1990年代末に好業績あげ、潤沢な資金を獲得。 その資金をもとに世界戦略の強化、自動車他社 の買収や出資拡大、新興国地域へのプロジェク ト実施に使用。 結果として小型乗用車、低燃費ハイブリット車の 開発準備の強化に力が注がれなかった。 小型トラックブーム ~収益重視の政策~ 自動車メーカーとしての重要な 基礎体力の低下 収益、株価優先の経営 一般耐久消費財である自動車産業の部品はそれほ ど収益率が高くない。しかし株主は高収益と高利 回りを求める。それに応じる形で高収益をあげて いる製品、部品分野に投資が集中する結果となっ た。 ⇒商品の魅力に決定的だが、低利益な部品に対す る投資が抑制された。 ⇒⇒米国自動車メーカーの製品競争力のさらなる 低下をもたらした。 人材確保の問題 自動車産業に優秀な人 材が集まりにくくなっ ている。 近年では高待遇を保証 してくれるバイオテク ノロジーや、ITビジネ スの分野に集中する傾 向が強まっている。 外注による誤解 部品外注の政策は最大 のコスト削減である事 は事実だが、米国自動 車メーカーでは、部品 外注とともに、社内に あった開発機能までも 外部に移管してしまっ た。 2008年米国、ブランド別自動車 販売台数 2008年世界新車販売ランキング ビックスリー崩壊の影響 雇用、産業への影響 世界自動車産業への影響 日本自動車メーカーへの影響 雇用、産業への影響 ビックスリーが米国社会に及ばす経済的影 響は大きい。雇用、付加価値、技術革新、 外貨利益などの多大な恩恵をもたらした。 製造分野では自動車産業の発展により様々 な事柄の育成が盛んになった。使用分野で も同様に様々なサービスの発展に関係して きた。 これらのことを踏まえてみると、ビックス リーの崩壊により自動車産業や、それに関 連する産業に大きな影響があると言えます。 米国自動車産業の雇用数 世界自動車産業への影響 ビックスリーの世界の自動車産業に果たしてきた役 割は非常に大きい。 特にマーケティング分野での 役割は大きい 日欧韓の自動車メーカーが代わって うまくいくのだろうか?? 日本自動車メーカーへの影響 ビックスリーの崩壊によって米国市場に おいて販売シェアを最も拡大する可能性 が高いのが日本自動車メーカーであるこ とは間違いない。しかしそれと同時に大 きなリスクを背負い込むのもまた日本自 動車メーカーである。米国のトップブラ ンドになるということは、求められる社 会的な責任も重くなり、その分の事業効 率の低下、コスト負担の上昇分を飲み込 めるだけの体質強化が必要となる。 日本自動車メーカーのありかた 2007年には、大きな販売の拡大が見込めない 国内販売を安定成長させ、2008年には海外事 業の更なる展開が最良の経営戦略である事は 間違いなかった。 しかし今回の世界不況が事態を一変させた。 成長を続けていた海外生産は落ち込み、これ まで築き上げていた事業基盤が脆弱であるこ とが明らかになった。だが今回の世界不況は これまでの成長戦略を見直し、再構築する良 い機会だと考えられる。またこれからの米国 市場を担っていくであろう日本自動車メー カーには必要な事である。 おわりに ビックスリー崩壊には世界的不況が重 なったという事実はあるが、それだけで なく利益を重視するあまりにメーカーと して最も必要な製品力の低下など、内部 的要因も明らかたなった。 米国市場と密接な関係にある日本自動車 メーカーにとってはある意味で転機の時 期とも考えられ、今後の成長に欠かせな い出来事であっただろう。 参考文献 ビックスリーの崩壊(久保鉄男著)
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