労働経済学 男女雇用機会均等法、育児・介護休業法

労働経済学
世代効果
安部由起子
© Yukiko Abe 2016 All rights reserved
1
世代が話題になる例
•
•
•
•
世代(cohort)の重要性
均等法世代、均等法前世代、均等法後世代
団塊の世代、団塊ジュニア
就職氷河期世代、ゆとり世代
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2
労働市場の世代効果の具体的な例
• 男女雇用機会均等法施行前に学校を卒業
(入職)しているか、均等法施行以後にそれを
迎えたか?
– 均等法が、採用における男女の差別を小さくした
としても、すでに学校を卒業し入職した世代は、
その恩恵を受けられない可能性がある。
• 団塊の世代、団塊ジュニア世代
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3
就業行動の世代効果
• 数回のクロスセクション調査(repeated cross
sections)を用いると、世代ごとの行動を加齢ととも
に追うことができる。
• 就業構造基本調査(5年おきの大規模な調査、就業
形態についての詳細な調査、総務省統計局)
• 1982年-2007年のデータを用いる。
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4
クロスセクションとライフサイクル
• 年齢階級別労働力率は、多くの場合、一時点のクロ
スセクションデータを用いて示されている(次のスラ
イド)。
• しかし、世代効果(年齢を固定して世代間での労働
力率の違い)が大きければ、クロスセクション(1時点
)での年齢間の違いは、年齢の効果と世代の効果
の両方を反映することになる。
• したがって、コーホート別のデータを用いることが重
要になる。複数時点のクロスセクションデータを用い
るのは、そのための一つの方法。
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5
クロスセクションの例:
(出所:男女共同参画白書 平成23年版
http://www.gender.go.jp/whitepaper/h23/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-03-03.html)
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6
就業指標の定義
正規雇用者数
正規雇用就業率 
人口
パート ・ アルバイ ト 就業率 
その他非正規雇用就業率 
パート ま たはアルバイ ト 就業者数
人口
パート ・ アルバイ ト 以外非正規雇用者数
人口
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7
コーホート別の女性の正規雇用就業
高卒または短大卒
大卒以上
.4
.6
正規雇用就業率
.8
1
中卒
20
30
40
50
20
30
40
50
20
30
40
50
年齢
1953-1957
1963-1967
1973-1977
1978-1982
1968-1972
Source: ESS, 1982-2007 (microdata)
出所:安部 (2011) 、データは1982-2007年就業構造基本調査(総務省)
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8
パート・アルバイト就業プロファイル
(世代別)
高卒または短大卒
大卒以上
0
.2
非正規、パート・アルバイト
.4
中卒
20
30
40
50
20
30
40
50
20
30
40
50
年齢
1953-1957
1963-1967
1973-1977
1978-1982
1968-1972
Source: ESS, 1982-2007 (microdata)
出所:安部 (2011) 、データは1982-2007年就業構造基本調査(総務省)
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9
パート・アルバイト以外非正規雇用就業プロ
ファイル
中卒
高卒または短大卒
0
.2
非正規、パート・アルバイト以外
.4
大卒以上
20
30
40
50
20
30
40
50
20
30
40
50
年齢
1953-1957
1963-1967
1973-1977
1978-1982
1968-1972
Source: ESS, 1982-2007 (microdata)
出所:安部 (2011) 、データは1982-2007年就業構造基本調査(総務省)
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10
学歴・配偶関係別、正規雇用
大卒以上
高卒または短大卒
Unmarried
Married
RER
.2
.4
.6
.8
.6
.4
0
.2
0
RER
Unmarried
.8
Married
20
30
40
50
20
30
40
50
30
40
Age
1953-1957
1963-1967
1973-1977
1978-1982
Source: ESS, 1982-2007 (microdata)
50
30
40
50
Age
1968-1972
1953-1957
1963-1967
1973-1977
1978-1982
1968-1972
Source: ESS, 1982-2007 (microdata)
出所:安部 (2011) 、データは1982-2007年就業構造基本調査(総務省)
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11
学歴・配偶関係別、非正規雇用
大卒以上
高卒または短大卒
Unmarried
Married
Unmarried
.1
.2
NRER
.2
0
.1
0
NRER
.3
.3
.4
.4
Married
20
30
40
50
20
30
40
50
30
40
Age
1953-1957
1963-1967
1973-1977
1978-1982
Source: ESS, 1982-2007 (microdata)
50
30
40
50
Age
1968-1972
1953-1957
1963-1967
1973-1977
1978-1982
1968-1972
Source: ESS, 1982-2007 (microdata)
出所:安部 (2011) 、データは1982-2007年就業構造基本調査(総務省)
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大卒女性の就業世代効果
• 均等法以降、大卒女性は、40歳未満までの年齢層では正規雇用
就業の割合が高まったものの、40歳を超えるとその傾向は弱まっ
ていた。
• 短大卒・高卒・中卒の女性については、均等法以降世代でそれ以
前の世代と比べて正規雇用が増加したという事実はない。とりわ
け、平成不況後には正規雇用は減少している。
• 配偶関係別にみると、均等法以降の世代でそれ以前の世代と比
較して、正規雇用就業率が高まっているとはいえない。したがって、
女性全体で40歳未満の年齢で正規雇用就業が増えたことの理由
は、未婚率の上昇が原因であると考えられる。
• パート就業・非正規雇用には大きなコーホート効果がみられる。こ
れは大卒以外の女性に特に顕著だが、大卒の、特にパート・アル
バイト以外の非正規雇用にもみられる。
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練習問題
• (1)ライフサイクルにおける労働力率の推移を知る
ことは、どのような意味で経済学的に重要なのかを
説明しなさい。
• (2)クロスセクション・データによる労働力率の年齢
別プロファイルは、なぜライフサイクルにおける労働
力プロファイルと一致しないのか、理由を述べなさい。
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