宇宙X線の50年:(1) 牧島 一夫 理化学研究所 宇宙観測実験連携研究グループ 東京大学 理学系研究科 物理学専攻 同 ビッグバン宇宙国際研究センター MAXI HETE-2 はくちょう ぎん が てんま すざく ASTRO-H (2014年予定) 理研100+50シンポジウム 1 あすか 2012/11/27 1. 今から100年前:宇宙線の発見 1912、Hessは気球に乗り、宇宙から放射 線が降り注いでいることを発見。 宇宙線 = 宇宙のどこかで加速された 陽子など。加速源は今もって謎。 仁科博士以来、理研の物理 学研究の重要課題の1つ。 有馬元理事長:「宇宙線は 天啓である」 小柴博士:「宇宙線は貧乏人の 加速器」 2012/11/27 理研100+50シンポジウム 2 2a. 今から50年前:X線天体の発見 1895年、レントゲンがX線を発見。 1949:独から押収したV-2号ロケットにより 太陽X線が検出(米)。X線は大気で吸収。 1962:ロケット実験により宇宙からのX線 (ScoX-1)が発見される。 1970:アメリカが世界初の宇宙X線衛星 「ウフル」打上げ。本格的な研究が始まる。 R.Giacconi, 2002年に小 柴博士とともにノーベ ル物理学賞を受賞 2012/11/27 レントゲン夫人の 手のX線写真 小田稔 元理研理事長 理研100+50シンポジウム 3 2b. Sco X-1 の発見 June 1962 (Giacconi+62, Phys.Rev. Lett. 9, 439) ロケットの ペイロード Thick Window Thin Win. 月 地磁気の方向 N E S W N 予期せぬ現象を見逃さなかった著者たちは偉大。 論文では以下の驚くべき発見が述べられた: 1. 「たぶん太陽系外の源」からのX線放射 ⇒ Sco X-1, 最初の中性子星 2. 宇宙X線背景放射 3. はくちょう座領域の銀河面からもX線超過 2012/11/27 理研100+50シンポジウム 4 2c. Sco X-1 の光同定 当時、X線放射機構として考えられたもの (e.g. 早川+松岡 63; 会津, 藤本, 長谷川 & 竹谷 64) 原子から叩き出された電子 π→μ→e •シンクロトロン •逆Compton 宇宙線電子 •非熱的制動放射 •蛍光輝線 SNRなど 星間高温ガス 熱的制動放射 宇宙線陽子 小田先生と、 どれもdiffuse! すだれコリメータ XR size<20”; Gursly..小田+66 ApJL 宇宙線物理学から天文学へ 光学同定:まず岡山、次に Palomar. Sandage, .. 小田, 大沢, 寿岳+66 ApJL 2012/11/27 理研100+50シンポジウム 5 3a. 理研における研究の系譜 理研は、宇宙線と宇宙X線の両方に実績をもつ日本唯一の組織 長岡研 仁科研 研究員 湯川秀樹 朝永振一郎 放射線研 リニアック サイクロトロン RIBF 加速器基盤 播磨研 宇宙線研 山崎文男 (19521959) セ ン仁 タ科 ー 玉川 准主任 宇宙放射線研 MAXI 宮崎 和田雅美 石原 松岡勝 牧島 チーム 正泰 (1986- (2001友喜雄 (1973(1959- 1985) (1985- 1999) 2009) 基 幹 1986) 1973) 研 (不正確な部分や省略した部分はご容赦下さい) 2012/11/27 理研100+50シンポジウム 6 3b. 「てんま」シンポジウム@定光寺(1984) 宇宙線、宇宙線⇒X線、X線、X線⇒宇宙線, … 多くの交流。 これら参加者の〜1/5は理研に(客員も含め)在籍歴あり。 田奥 原田 伊 藤 鶴 槙野 田 小 山 高 太 原f 福 師 江 堂 國 枝 河 合 紀 伊 北 本 花 輪 常 深 田 早川 高原中 村 m 杉本 上 宮本 藤 本 m 宮 路 牧 島 満 松岡 田 井上 中村 佐藤 卓 山下 修 三好 西村 近藤 大橋 山上 蓬茨 小田 戎崎 長瀬 本日の講演者+座長 2012/11/27 理研100+50シンポジウム 7 理研が主導 4a. 歴代のX線天文衛星 Share with γ-ray etc. Cosmic X-ray 1970 1975 日 本 1980 1985 1990 はくちょう てんま ぎんが Space Station 1995 2000 EXOSAT (ESA) Copernicus (米英) ROSAT (独) ANS (蘭) Ariel-6 (英) BeppoSAX (伊) Ariel-5 (英) Einstein HEAO-1 M-3C 2012/11/27 Swift Rossi XTE ASTRON Mir/Kvant M-3S 2015 ASTRO-H NuSTAR Chandra 欧 州 ソ 露 2010 HETE-2 ひので Uhuru OSO-8 2005 MAXI ようこう 米 国 OSO-7 Japanese Solar すざく あすか ひのとり SAS-3 理研が参加 XMM-Newton (ESA) INTEGRAL (ESA+露) GRANAT M-3S II 理研100+50シンポジウム M-5 8 4b. アルバムより 「はくちょうWidows」(1980) 牧島の 家内 田中夫人 松岡夫人 井上夫人 R. Giacconiと小田稔(1972) 内之浦で「てんま」 打上げの指揮を執る 田中靖郎(1983) 2012/11/27 ⇦日英協力による大面積比例 計数管の「ぎんが」への組み込み (背中は牧島; 相模原, 1986) ⇧「あすか」GISを封じ切 る大橋隆哉 (東大、1991) 理研100+50シンポジウム 9 4c. 理研でのX線観測装置の開発 世界初のガンマ線 バースト専用衛星 HETE-2 (2000年打 上げ;詳細は 河合さん講演) MAXI ガススリットカメラ用の位置 感度型比例計数管(フィンランドの 企業と共同開発;2009打ち上げ) 2005年打ち上げの「すざく」硬X線検出器 では、アクティブシールド部を担当。 2012/11/27 理研100+50シンポジウム 10 5. X線観測50年の成果 可視光で見る「悠久静謐なeVオーダーの宇宙」から「激しく 変動する>keVの動的宇宙」へ、人類の宇宙観を革新した。 牧島が勝手に選んだ50年間の七大成果 1. ブラックホール(Cyg X-1) の実在を立証した (’70s〜’80s)。 2. 多くの銀河の中心に、巨大ブラックホール (106-9M◎)が存在し、 その放射の重畳がX線背景放射であることを立証 (’80~’00s)。 3. 宇宙の最優勢バリオンは、星ではなく、銀河団の高温 (107-8 K) プラズマであることを発見(‘70s)。誰も想像だにしなかった。 4. 太陽を含むほとんどの星が、表面温度より3桁も高温な超高温 のコロナをもつことを発見した (’70s〜’80s)。 5. 中性子星の半径が〜10 km であることを実証した (‘80s)。 6. 超新星残骸、宇宙ジェット、回転駆動パルサーなどで、実際に 荷電粒子が〜1016 eVまで加速されていることを立証した(‘90s)。 7. 天体の元素組成を精測し、元素合成シナリオを実証(’90〜’10s) 2012/11/27 理研100+50シンポジウム 11 6a. X線でみた宇宙の姿:高温宇宙 「ひので」衛星がX線で 見た太陽の全面画像 可視光とX線で見た銀河団 銀河たち 親分 No.2 可視光 太陽表面から顔を出した磁場 中に高温プラズマが加熱され、 閉じ込められる。 2012/11/27 同じ銀河団を、X線で見た画像。 暗黒物質の重力で閉じ込められた 大量の高温プラズマが、X線を放つ。 理研100+50シンポジウム 12 6b. X線で見た宇宙の姿:加速に迫る X線で見た「かに星雲」の姿 X線で見た1006年の超新星残骸 宇宙線の加速現場で2次粒子として発生するX線は; 1. 宇宙線(荷電粒子)と異なり、宇宙磁場で曲げられない。 2. 親の高エネルギー粒子より圧倒的多数数⇒測定精度が高い。 この1054年の超新星残骸は中心に活 発なパルサーを擁し、そこからの相 対論的パルサー風が周囲で衝撃波を 作り、粒子を〜1016 eVまで加速。全 体がシンクロトロン放射で光る。 2012/11/27 1995年に小山勝二(京大)らは「あ すか」を用い、東西の明るいリムが、 ~1013 eVの電子が出すシンクロトロ ン放射であると見抜いた。 理研100+50シンポジウム 13 7. 現在から未来へ 2005年に打ち上がった、深く狭い「すざく」(理研参加)と、 2009年に誕生した、浅く広い MAXI (理研主導) が、優れた相 補性を発揮し、世界をリード中。 ASTRO-H 2011年に世界初の硬X線撮像衛星 NuSTAR (米)打上げ (理研限定参加)。 「すざく」後継機 ASTRO-H を建造中。 - 2014年の打上げ予定, 0.3-600 keV. - 「すざく」を大きく凌ぐ感度。 - 日本は総力戦、理研を含む~25機関. - 広範な国際協力。NASA,ESA, カナダ他 宇宙X線の偏光計測も準備中 (玉川講演)。 今後にぜひご期待を。 2012/11/27 理研100+50シンポジウム 14
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