研究室内計算機システム運用と罰則規定について

最新技術セミナー
インターネットの利用のトラブルと
法規制の現状
ーネットワーク社会をめぐる法的・倫理的問
題ー
2000年2月28日
講師:近藤佐保子
(明治大学政治経済学部 講師)
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1
最近話題に上っている事例(1)
官公庁のHPの書き換え(Mainichi Interactive
2/16
より)
“道具”は大量データ 官庁サイトハッキングで手口判明
中央省庁などのホームページの不正書き換え事件で、
15件のうち6件は、ハッカーがサーバーコンピューターに
一度に大量のデータを送信して異常作動を起こさせる方
法で侵入していたことが、警視庁麹町署捜査本部の調
べで分かった。この方法は「バッファ・オーバー・フロー攻
撃」と呼ばれる手口。大量のデータを受けたサーバーコ
ンピューターからあふれ出たパスワードなどのデータを
使ってハッカーが不正アクセ用の「裏口」を作り、管理者
になりすましてホームページを書き換える。手口としては
2
広く知られているが、防ぐのは難しいという。
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最近話題に上っている事例(2)
ソフト会社へのメールによるウィルスの送信
(Mainichi Interactive 2/23
より)
ウイルス送付で少年逮捕 「PC代金を逃れたかった」
コンピューターソフト会社「ソフトバンク」の子会社に200種
類ものコンピューターウイルスを送信して業務を妨げたと
して、警視庁捜査1課と久松署は23日までに、長野県原
村の無職の少年(19)を威力業務妨害容疑で逮捕した。
コンピューターウイルスの送信による威力業務妨害事件
の立件は全国初。ネット通販の支払いを逃れるための嫌
がらせだった。
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3
問題の所在
• ネットワークの不正使用や犯罪の増加
(著作権侵害・ウィルス・不正アクセス・不正入手・
名誉毀損・猥褻など)
• 法的対応の遅れ
– そもそも法によって規制すべきか?
– 民事法の対処で足りるか、刑事法で処罰すべきか?
– 既存の法規の解釈で十分か、立法化が必要か?
ネットワーク社会の現状と法規制のあり方を検討
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4
ユーザの意識と行為
ユーザの意識
•“ID”として行為
•行為=計算機に対する命令
計算機・
ネットワーク
の潜在力
倫理的評価
• 不適切
• 非常識
粗暴犯から
知能犯へ
•準備行為の
不要性
•正当行為と
の類似性
•行為の影響力
•結果に対する自己問責性
•倫理意識の欠如
想像以上の
重大な結果
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•ゲーム感覚
法的評価
• 不法行為
• 犯罪
5
法の対立する2つの機能
法的安定性
人権保障
法は、現実に多少合
わなくなっても、なる
べく改正しないで解
釈で補う
VS
具体的正義
の実現
法は、現実に適合す
るよう、こまめに改正
すべき
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6
法的問題点の所在
社会倫理に委ねておくのが望ましくない場合
→国家の強制力
予期していなかった事態に対する法的対処
•既存の法規の解釈による解決
•立法的解決
既存の法規の
解釈による解決
立法的
解決
立法的解決は法的安定性を損なうおそれがある
•解釈ではもはやどうしても対処できないか?
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7
法と倫理
• 法とは?
数ある行為規範のうち国
家の強制力を伴って義務
付けが行われるもの
• 倫理とは?
行為規範のうち国家の
強制力を伴わないもの
新しく起きてきた社会的に不適切な行為
↓
倫理に委ねておくべきか、
法によって対処すべきかが問題となる。
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8
法的対処が問題となる行為
著作権侵害
コンピュータウィルス
不正アクセス・情報の不正入手
名誉毀損・侮辱
ポルノグラフィー
プライバシー侵害
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9
無体財産権の必要性
民法第85条(物の意義)
本法ニ於テ物トハ有体物ヲ謂フ
物とは? ⇒ 「有体物」 (排他的独占・支配が可能)
それ以外は? ⇒ 単なる債権(請求権)の対象
民法は物権と債権とを峻別
無体物である知的創造物を保護する必要性が顕在化
人間の知的創造物のうち価値を持つもの
→知的財産権・無体財産権として保護
10
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無体財産権の種類
産業目的=工業所有権
文化目的=著作権
著作権の種類
著作者の権利
著作財産権
著作者人格権
著作隣接権
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文学的および美術的著作物の
保護に関するベルヌ条約
↓
無方式主義の採用
無方式主義とは
一切の登録手続きを待たずして
著作物には自動的に著作権が発生
フリーウェアもPDSとは異なり著作権で
保護される
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12
データベース・プログラム・
半導体チップと著作権
データベース:従来から編集著作物としての保護が可能
著作権法改正により著作権法による保護を
明文化
プログラム: 従来の著作権法では保護が不可能
著作権法改正により著作権法により保護
半導体チップ:工業所有権法と著作権法の中間形態
特別法を作って保護
「半導体集積回路の回路配置に関する法
13
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律」
インターネットと著作権
データ送信と複製:データ送信は複製に該当
リンクを張る行為:複製に該当しない
私的利用の範囲:何らかの客観的関係を要する
引用の範囲:主従関係と目的の正当性で判断
報道記事と著作権:事実の伝達は著作物ではない
(現実の慣習との乖離が問題)
楽曲の著作権:多重の著作権による保護
作詞の言語著作権・作曲の音楽著作権
レコード会社・実演家の著作隣接権
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ソフトウェアと著作権
ソフトウェアの種類(著作権からの分類)
1.PDS(パブリック・ドメイン・ソフトウェア)
2.フリーウェア(フリーソフトウェア):著作権はある
3.シェアウェア:有料ソフトウェアの一形態
1CPU1ソフト条項の同一構内での適用
1997年の著作権改正以前→著作権侵害にならない
1997年の著作権改正→公衆送信権の侵害に当たる
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肖像権とパブリシティ権
肖像権(主に私人・一般人)
自己の肖像をみだりに他人に撮られたり使用されない
自己の肖像を権限無く他人が作成・公表することを禁止
パブリシティ権(主に芸能人・有名人)
自己の肖像の経済的な価値をコントロールする権利
HPに掲載されている他人の顔写真は無断転載不可
自分が撮影した他人の顔写真もHPへの無断掲載不可
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集合写真には原則として被写体全員の許可が必要
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著作権に関する国際的調整
調整機関=WIPO
(世界知的所有権機関)
先進国
自国が先に投資して
育成した文化を途上
国に無断で使われて
はこまる
→保護強化を主張
途上国
vs
先進国の文化を早く
吸収して、これに追い
つきたい
→保護強化に反対
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著作権法の一部改正(1997年)
インターネットに関するWIPOの条約に対応
(1)インタラクティブな送受信(WWW)
→ 自動公衆送信として保護
(2)1CPU1ソフト条項の同一構内への適用
→ プログラムは同一構内でも公衆送信
WIPO「著作権条約」との関係での課題
•コピープロテクトの解除装置への対策
•著作権管理情報の除去・改変への規制
•実演家の保護強化
•データベースの保護強化
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コンピュータ犯罪の変遷(1)
(1)初期のサラミ型犯罪(1960年代末)
金融システムの端数切り捨て=サラミ・テクニック
(2)トロイの木馬(1960年代末~1970年代)
→パスワードの解読・収集,データ破壊(外部から)
(3)日本での情報の不正入手の発生(1971年~)
→記憶媒体(ex.時価6千円の磁気テープ)の窃盗
(4)コンピュータ犯罪の拡大(1974年~)
→身代金誘拐などにオンラインバンキングシステムを使う
•キャッシュカードの偽造・変造
•銀行内部の者の不正操作
19
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コンピュータ犯罪の変遷(2)
(5)コンピュータ犯罪の高度化・専門化(1980年代~)
大手企業の情報技術幹部などの高度で専門的な犯罪
例:馬券偽造事件(1988年8月)
(6)コンピュータ犯罪の大衆化(1980年代~)
大衆の倫理感覚の麻痺
例:変造テレフォンカードの使用
(7)ネットワーク犯罪の急増化(1980年代末~)
インターネットの普及に伴いこれを利用
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ネットワークの特徴
(1)匿名性
(2)不特定多数性
(3)時間的・地理的無限性
(4)場所の不要性
(5)無痕跡性
規制が困難
犯罪の温床
(6)法が予期していていなかった態様
規制する法の不存在
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ネットワークの犯罪の典型例
(1)電子掲示板を利用した薬物売買
(2)同、猥褻物の販売
(3)同、海賊版ソフトの販売
(4)同、詐欺事件
(5)猥褻図画の公然陳列
(6)ネットワーク上のゲーム賭博
(7)名誉毀損・侮辱行為
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刑法の一部改正(1987年)
(1)文書偽造に関して
→ 電磁的記録の不正作出及び供用(第161条の2)
公文書等毀棄(第258条)・私文書等毀棄(第259条)
公正証書原本不実記載など(第157条)
(2)業務妨害に関して
→ 電子計算機損壊等業務妨害(第234条の2)
(3)詐欺罪に関して
→ 電子計算機使用詐欺(第246条の2)
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立法的対処が見送られた点
・不正アクセス(今回の立法で不完全ながら対処)
・情報の不正入手
(窃盗にはならない、スパイは背任も該当しない)
・ウィルスの作成・散布(それ自体は不可罰)
・「業務」にあたらない場合
・単なる私文書の毀棄
改正が小規模だった理由:反対論の存在
マスコミ(取材の自由)・労働組合関係者・日弁連
基本的改正はしない・新しい類型は作らない
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コンピュータ・ウィルス
コンピュータウィルスの定義
第三者のプログラムやデータベースに対して
意図的に何らかの被害を及ぼすように作られ
たプログラム(通商産業省告示)
(1)感染(他のプログラムに自分を書き加える)
(2)潜伏(一定期間何もしない)
(3)発病(何らかの被害をもたらす)
狭義:上記(1)~(3)の機能をあわせ持つ
広義:上記(1)~(3)の機能の一つ以上を持つ
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ウィルスに似たもの(=広義のウィル
ス)
(1)論理爆弾
•増殖しない
•潜伏していてある条件が満たされると有害な動作をする
(2)バクテリア
•潜伏も発病もしない
•1台のコンピュータ内でひたすら増殖
(3)ワーム
•ネットワークを通じ自分を複写して増殖していく
(4)トロイの木馬
•外見とことなる動作をするプログラム
•増殖・潜伏をしない
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ウィルス対策の問題点
技術的側面→いたちごっこ
ワクチン・プログラム
•特定のウィルスにしか効かない→更新が負担
セキュリティ・プログラム
•メモリへの常駐がシステムに負担
新しい態様のウィルス
ネットワーク自体を攻撃対象とする
法的側面→ウィルスの作成・散布自体は不可罰
例外的に業務を妨害すれば業務妨害
公文書や特定の私文書を破壊すれば文書毀棄
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情報の不正入手
情報は財物ではない
領得罪(窃盗罪・横領罪)での処罰は不可能
(通説・判例)
・背任罪による処罰
・不正競争防止法による対処
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有体物説 vs 管理可能性説
刑法第245条(電気)
この章の罪については、電気は、財物とみなす。
*この章: 第36章 窃盗及び強盗の罪
有体物説
刑法でも財物を有体
物に限定
245条はみなし規定
管理可能性説
刑法では管理可能なも
の(電気などのエネル
ギー)まで財物に含める
245条は注意規定
管理可能性説でも情報は財物ではない
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背任罪
特徴
•財物の領得を要件としない
•身分犯の要件(信任関係)の充足が必要
⇒産業スパイなどには適用できない
情報の不正入手に関する私見
(1)情報を財物と解するか、
(2)条文を新設するか、
どちらかの対処が必要
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不正アクセス
不正アクセスとは? (一般的な定義)
•情報システムの所有者または管理者から禁止
されているか、許可されていないのに情報システ
ムに進入し、そのデータに無権限でアクセスする
こと
・初期のハッカー=悪意のない好奇心
不正アクセス禁止法では処罰対象となる
・クラッカーの登場=侵害行為・妨害行為を行う
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不正アクセス禁止法(1999.8.6成立)
警察庁・郵政省・通産省の共管
・不正アクセスを定義
・不正アクセス行為を可罰化
1年以下の懲役または50万円以下の罰金
・不正アクセスを助長する行為も禁止
「識別機能」を無断で提供する行為(ID屋)
30万円以下の罰金
・アクセスログの保存について意見が対立
規定から除外された
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不正アクセス禁止法と行政機関の義務
・被害者への援助 ー公安委員会
・不正アクセス行為の現状について
発生状況
セキュリティ技術に関する研究開発の支援


今回の不正アクセス禁止法
→全体の整備に遅れている
情報と情報処理全体を法益として守るべき
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不正アクセス禁止法の問題点
1)目的:電気通信に関する秩序の維持
→保護法益は情報の財産的価値ではない
覗き見は禁止するが盗っていっても不問
刑法との不整合・アンバランスで奇妙な現象
2)対象の限定
ネットワークを通じてアクセスコントロールされているもの
上記の要件を書くと無権限アクセスしても不問
3)操作が逆に被害者の負担
証拠物件の押収により業務の継続ができない
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名誉毀損・侮辱
名誉毀損とは
「公然と事実を摘示」することにより他
人の社会的評価を低下させる
侮辱とは
事実の摘示をしなくても「公然と」人を
侮辱
どちらも「公然性」という要件の充足が必要
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名誉毀損・侮辱の問題点
・公然性の要件
–電子掲示板・ホームページには公然性がある
–電子メールは公然性が認められない
–ニュースグループ、MLにも認め得る
・表現の自由との対立
–萎縮効果という弊害を顧慮することが必要
私見ー双方向性の活用ー
法による積極介入によるよりも、当事者間の
反論による解決が望ましい
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猥褻に関する規制の難しさ
(1)被害者無き犯罪→処罰すべきか
(2)「猥褻」の概念が曖昧
(3)表現の自由との関係(萎縮効果)
(4)国際性→国内法の適用範囲
国際条約としての統一基準策定は困難
インターネットの猥褻は処罰になじまない
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インターネット上の問題点
(1)画像ファイルの財物性
(2)マスクソフトへのリンク
(3)猥褻罪に該当するページへのリンク
(4)海外のサーバへの送信
私見
表現の自由や国際的文化の多様性を配
慮した解決が必要
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管理者責任
出版事業者→著者と同じ責任
流通業者 →原則として責任を負わない
プロバイダーとは・・・
出版事業者 or 流通業者?
⇒アメリカでも判例の見解は分かれている
カビー事件:流通業者/プロディジー事件:出版業者
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ニフティ事件
ニフティサーブの会員であるU女史は、あ
るフォーラムの電子会議室において、別の
会員から名誉を毀損された。そこで、加害者
だけでなく、そのフォーラムのシステムオペ
レ-タと、ニフティ株式会社も、その発言を
放置したとして、その三者を相手取り、民事
上の賠償請求と謝罪広告の請求をした。
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40
法的根拠
使用者責任(民法第715条)
ある事業のために被用者を使用する者は、その
被用者が事業の執行について第三者に加えた
損害を賠償しなければならない。
・「業務の執行に付き」という要件の範囲
・責任の性質は監督上の過失か報償責任か
→使用者が責任を負う範囲の認定に影響
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41
法的規制に対する概括
法の不備が問題となるケース→ 一様ではない
(1)基本的人権や法的安定性との抵触が比較的
問題とならないケース(不正入手など)
→ 解釈ないし立法化による迅速な規制が必要
(2)表現の自由などの人権と対立関係にある
ケース(猥褻など)
→ 倫理のレベルにとどめ、自覚に委ねるべき
猥褻を取り締まり情報の財産的価値を保護しな
いのはおかしい
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42
法の不備 -法律は穴だらけ-
• 法的には立法的解決が課題
• 組織内の危機管理が重要
– 外部に対して
– 内部に対して (「8割は内部犯・・・」)
• 組織内規定の整備が必要
(ネットワークの不正行為に関する規則整備の遅れ)
– 民法・憲法および刑法の関わり
– 組織内処分の具体例
– 管理責任の回避 →管理者規定も必要
43
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組織内処分の性格
組織と被用者=民法上の契約関係
民法上の契約自由の原則
契約の内容は当事者間で自由に定める
組織は自由に組織内規則を設定
契約を結んだ被用者側には遵守義務
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44
契約自由の原則に対する制約
(憲法=法体系上の最高法規)
公的組織
憲法の直接適用
↓
憲法に反する学則
=無効
指摘組織
私人間適用はない
間接適用の可能性
民法90条
(公序良俗)違反
憲法の基本原理との抵触回避が必要
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45
憲法上の要請からの留意点
(1)表現の自由(憲法21条)
(2)思想および良心の自由(憲法19条)
(3)法定手続きの保障(憲法31条)
(4)プライバシーの保護(憲法13条)
(5)男女や民族などの差別の禁止
(憲法14条・民法1条の2)
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46
昭和女子大事件
最判昭49・7・19
(学則の憲法違反が争われた事例)
学生の学内外における政治活動を学則で制限
政治活動をした学生を退学処分
最高裁で最終的に大学が勝訴
・被告が私立大学なので直接適用がない
・社会通念上著しく不合理な制限ではない
憲法の間接適用
裁判官の判断により大学敗訴の可能性も存在
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47
組織内の不正行為が法的責任を負うケース
1.無体財産権の侵害
2.肖像権ないしパブリシティ権の侵害
3.猥褻罪(刑法174条)
4.名誉毀損・侮辱罪(刑法230・231条)
5.電子計算機等使用詐欺罪(刑法246条の2)
6.電磁的記録毀棄罪(刑法258条・259条)
7.電子計算機損壊等業務妨害罪(同234条の
2)
8.不正アクセス禁止法違反(施行後)
48
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組織内処分と法律の関係
構成員も刑事上・民事上の法的責任を負う
法的評価からの独立性
契約の自由の原則に基づいた処分規定の策定
—法の不備
—倫理問題に関する法制化の是非
法的評価への依存性
法的評価が罪刑均衡の指針
→ 刑法の法定刑のアナロジーが適切
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49
量刑の方法と根拠
憲法 > 刑法 > 組織内規則
1.法律上に同様の処罰規定があるもの
→その法定刑を参考
2.法律上に類似の規定があるもの
→類似した規定の法定刑を参考+軽重を考慮
3.法律上の規定はないが
ネットワーク社会で重大な不正行為
→他の処分の軽重と重大性を比較して決定
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50
刑法のアナロジーとしての具体的量刑
(試案)
自由刑(懲役など)の期間を使用停止期間や減給の
額等に比例
・量刑の逆転は不適切
・逆転にはネットワークの特殊性からの根拠が必要
量刑の上限と処分の種類は機関の特殊性による
ex. 一般企業では解雇・減給などがあり得る
ex. 在学年数を超える長期の利用停止
→ ・量刑の差に応じた期間の圧縮
51
・利用資格剥奪などへの転換
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処分される行為
参考条文(法律のアナロジー)
電磁的記録の改竄・破壊
公文書等毀棄罪
私文書等毀棄罪
システム運用の障害となる行為 電子計算機等使用業務妨害罪
著作権侵害
著作権法 119 条
他人の誹謗中傷行為
名誉毀損罪
侮辱罪
不正アクセス禁止法
情報の不正入手
国家公務員法
パスワードの解析・盗用
個人情報の暴露
組織の利用目的以外の行為
契約不履行
(民法上)
その他法律で処罰される行為
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52
処分される行為
処分の内容
(利用停止期間)
下限
上限
電磁的記録の改竄・破壊
1月以上 7年以下
システム運用の障害となる行為
3月以上 5年以下
著作権侵害
3月以上 3年以下
他人の誹謗中傷行為
1月以上 3年以下
パスワードの解析・盗用
1月以上 5年以下
個人情報の暴露
1月以上 5年以下
組織の利用目的以外の行為
1月以上 有期の上限
その他法律により処罰される行為 1月以上 有期の上限
利用資格の剥奪
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53
処分の軽重比較
1月
3月
1年
3年
5年
7年
10年
改竄破壊
運用障害
著作権
誹謗中傷
法の不備
パスワード
プライバシーの
重要視
個人情報
他目的
他の犯罪
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54
刑法のアナロジーとしての問題点
量刑に関する問題点
・法律上の量刑のアナロジー
アナロジーの遠近の差異(測定が困難)
→量刑の誤差
規定時の技術的な注意
行為類型の原則は故意犯・作為犯・既遂犯
過失犯・不作為犯・未遂犯的形態の処分
→罪刑法定主義からは明文化すべき
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55
組織内処分と公的判断との関係
組織外での裁判を受ける権利
ex.組織内で処分するなら提訴しないという申入れ
行為者が応訴を希望している場合が存在
・構成員の裁判を受ける機会の尊重が必要
(機会の剥奪は憲法違反の可能性)
・web上からの削除は表現の自由の侵害・
民法上の不法行為の可能性
本来的に予防と教育を目指したものが理想
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56
組織内処分の概括
•
•
•
•
法的性格=民法上の契約+憲法上の制約
罪刑均衡から法定刑のアナロジーが適切
組織の存在目的から修正
運用上の指針・方針(適度な具体性)
包括的→運用しやすいが予防効果が低い
具体的→人権保障に寄与・予防効果
但し運用しにくい
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57
まとめ
不正行為に対する法規制の当否
・倫理規範にとどめるべき場合と法規制が必要な場合
・現状の警察行政の対応には不均衡が存在
法規制は解釈か立法か?
・類推禁止により、新しい犯罪には立法が不可欠
・立法は瑣末な行政刑法でやらない→根本的改正
刑法との不均衡を回避・根本的な法益保護
法の不備は自己防衛
・徹底した危機管理
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・組織内規定の整備による教育と予防
58
情報倫理関係URL集(1)
著作権関連
著作権情報サポートセンター http://www.net-b.co.jp/cright
コンピュータウィルス・コンピュータ犯罪関連
IPA(情報処理振興事業協会) http://www.ipa.go.jp
JPCERT(コンピュータ緊急対応センター) http://www.jpcert.or.jp
警視庁ハイテク犯罪対策センター
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/soudan/haiteku/haiteku1.htm
サイバーポルノ関連
電脳世界の刑法学 http://w3.scan.or.jp/sonoda/
民間の個人情報信用センター関連
全国銀行個人信用情報センター http://www.zenginkyo.or.jp/pcic/pcic.htm
JIC http://www.upunet.or.jp/JIC/index.html
CIC http://www.cic.co.jp
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情報倫理関係URL集(2)
不正アクセス禁止法案関係
警察庁 http://www.npa.go.jp/
郵政省 http://www.mpt.go.jp
通産省 http://www.miti.go.jp
日弁連 http://www.nichibenren.or.jp/
多言語・多文化主義関連
東京大学L/P(言語と力)フォーラム http://lp.iss.u-tokyo.ac.jp/
その他全般にわたる参考URL
明治大学法学部法情報学ゼミ(夏井高人研究室)
http://www.isc.meiji.ac.jp/~sumwel_h/
岡村久道 HOME PAGE http://www.law.co.jp/OKAMURA/index.html
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付録 -本の紹介-
文科系のための情報学シリーズ
明治大学情報科学センター編(培風館)
使いこなそうコンピュータ
道具としてのインターネット
インターネットコミュニケーション
人間と情報
Visual Basic プログラミング入門
以下続刊
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