賃貸マンション・アパート オーナー様向け 収益物件不動産の有効活用 ~知らなきゃ損する法人所有による不動産管理術~ <講師紹介> エフピーマトリックス株式会社 代表取締役 吉田隆一 コンサルタントファーム(株式会社エフアンドエム)にて中小企業経営者を対 象にした税務・社会保険関係のコンサルタント業務に従事する。平成13年 に独立し、現在は銀行・証券会社・生命保険会社・不動産会社等を対象に 営業企画・コンテンツ制作支援事業およびWEB配信による税務、法務関連 教育研修コンテンツの制作事業を中心に活動中。 エフピーマトリックス株式会社 なぜ賃貸マンション、アパート等は法人型所有でなければならないのか 個人が所有する賃貸物件を管理させ る目的で設立した不動産管理法人 個人 法人 所得税 不動産管理法人 現在では税務上ペーパーカン パニーと見なされる可能性が 高く、認められ難い手法となっ ている。 (不動産所得) 不動産管理手数料 個人が所有する賃貸物件を法人義で 所有させる法人化 個人 法人 所得税 法人税 (不動産所得) 収益物件を 個人から法人所有へ 法人としての実体を明確にす ることにより、税務上様々な特 典を受けることができる。 不動産運用の基本原則① 不動産運用は、空室リスクが全てを決める! では、空室リスクは何で決まるのか? ⇒ 立地が全て! ただし、賃貸物件の老朽化も入居率に影響を与えてしまう! 老朽化 入居率の低下 大規模修繕の資金難 不動産運用悪化スパイラル 家賃の引下げ 物件価値の低下 不動産運用の基本原則② 所得税 (不動産所得) 法人成り 法人税 所得分散 相続税 不動産管理のみを目的とした法人の問題点を検証 オーナー 所得税 (不動産所得) 不動産管理 料を支払う 法人 設立 ・オーナーが不動産管理の名目で管理料を法人に支払う しかし、会社として業務に実態がない法人に多額の管理 料を支払うことは、税務上認められ難い! 論点は「業務に実態がない法人」! オーナー 収益物件を 法人へ売却 法人設立 そもそも、実態のない管理業務が問題なのであって、法人そのものが問 題なのではない。 そこで、不動産収益を個人の所得でなく、法人の所得にする! 収益物件を個人から法人所有にするメリット ~その1 税率比較の検証~ 法人税の実効税率 利益 400万円以下 税率 控除額 22.86% 400万円超 ~800万円未満 24.55% 800万円超 38.37% 所得税・住民税の合算速算表 0万円 67,600円 1,173,200円 課税所得金額 税率 控除額 195万円以下 15% 0万円 195万円超 ~ 330万円以下 20% 97,500円 330万円超 ~ 695万円以下 30% 427,500円 695万円超 ~ 900万円以下 33% 636,000円 900万円超 ~1800万円以下 43% 1,536,000円 1800万円超~4000万円以下 50% 2,796,000円 4000万円超~ 55% 4,796,000円 参考:相続税の速算表 平成26年12月31日まで 課税標準 税率 控除額 1000万円以下 10% 0円 1000万円超 ~ 3000万円以下 15% 50,000円 3000万円超 ~ 5000万円以下 20% 2,000,000円 5000万円超 ~ 1億円以下 30% 7,000,000円 1億円超 ~ 3億円以下 40% 17,000,000円 3億円超 50% 47,000,000円 平成27年1月1日~ 課税標準 1000万円以下 1000万円超 ~ 3000万円以下 3000万円超 ~ 5000万円以下 5000万円超 ~ 1億円以下 1億円超 ~ 2億円以下 2億円超 ~ 3億円以下 3億円超 ~ 6億円以下 6億円超 税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55% 控除額 0円 50,000円 2,000,000円 7,000,000円 17,000,000円 27,000,000円 42,000,000円 72,000,000円 収益物件を個人から法人所有にするメリット ~その2 法人税は必要経費の枠が広い~ <所得税の場合> 原則、所得に係る経費と収入が直接関連していなければならない! (具体例) 賃貸マンション、アパートの修繕費は、物件の価値を高め入居率を高めるための費用であるか ら必要経費として認められる。 しかし、 所有物件の状況確認をするために出向いた自動車のガソリン代、電車賃、タクシー代等の交通 費は、全てを必要経費にできるわけでない。 交際費、水道光熱費、通信費等も同様である。 <法人税の場合> 所得税で認められなかった必要経費が広範囲で認められる! 収益物件を個人から法人所有にするメリット ~その3 親族間での給与支払いについて(必要経費枠の違い)~ <所得税の場合> 青色事業専従者給与の活用! (要件) 不動産所得が事業的規模(5棟10室基準)であり 、実際に不動産貸付けの事業に従事してい る青色事業専従者でなければならない。 <法人税の場合> 配偶者、子を役員(取締役)にすれば、その役員報酬は必要経費(損金)と して認められる。 ※ただし、定期同額給与や役員の員数等には留意する必要あり。 収益物件を法人所有にした場合のイメージ図 建物のみを売却 建物は法人所有 個人所有 (土地) (土地) 土地は個人所有 賃料収入は役員報酬として親族に 支払う ちなみに・・・オーナー(被相続人)を株主にしないことにより(役員になることはOK)、相続税対策 に繋げることが可能となる。 (理由)法人化は、相続税対策として被相続人の財産を分散させるためでもあるから! 知っておきたい個人から法人への建物譲渡についてのポイント ~その1~ 建物のみを売却 個人所有 (土地) 建物は法人所有 (土地) 土地は個人所有 (論点) 譲渡所得として譲渡益は課税対象となる (例えば・・・) 建物購入時:1億円 売却価格:1億3000万円の場合 1億3000万円-1億円=3000万円←この3000万円に譲渡税が発生してしまう。 ただし、売却価格が1億円以下であれば譲渡税は当然発生することはない! そこで 建物売却時の売却金額は、帳簿価格で建物を売却する! (理由)帳簿価格で売却すれば取得価格から減価償却された未償却部分の価格となるから →帳簿価格での売却ならば毎年価格は必ず下がっているので、物件が建てたときより高くなるこ とはない! 知っておきたい個人から法人への建物譲渡についてのポイント ~その2~ ・譲渡建物の建築年数は長ければ長いほど有益である →(理由)減価償却により帳簿価格が下がっているから ・譲渡対象となる建物は、借入残高の少ない物件を! 借入金:1億円 帳簿価格:5000万円 借入残高:6000万円 の場合で検証 法人には5000万円で売却すると、個人には1000万円の借入が残ってしまう。 この1000万円を一括で返済できない場合、法人への売却が困難な状況になる可能性 がある。 ・法人名義による新築物件の取得は、収益利回りがすべてを決める! →借入金と収益の割合を綿密に計画し計算する必要あり! 知っておきたい個人から法人への建物譲渡についてのポイント ~その3~ 「土地は個人」「建物は法人」の関係についての留意事項 底地権と借地権の問題が発生する! 建物は法人所有 →原則として税務上、借地人(法人)は、権利金 に支払う必要がある。 を地主(個人) ちなみに権利金の額はどのくらいになるのか・・・ (土地) 土地は個人所有 借地権割合:70% 土地価格:1億円 の場合 1億円×70%=7000万円 権利金をゼロにすると、法人には受贈益として法人税が課税される。 そこで 税務署へ「土地の無償返還に関する届出書」を提出しておくことがポイント! →無償返還することになるので、建物を所有している法人には借地権が発 生しな いことになる。 その効果は、財産評価において「一律20%の借地権」として処理することができる。 相続開始直前の建物譲渡だけは注意しておかなければならない! 売却した場合 固定資産税評価額:7000万円で売却した場合 売却債権:7000万円を相続することになる (土地) 相続人 建物売却直後に相続が発生 売却してなければ・・・ 固定資産税評価額:7000万円で売却した場合 建物(貸家)の相続税評価額:7000万×(1-30%×100%※)=4900万円 ※賃貸割合100%とした場合 (土地) 相続発生 相続人 不動産賃貸事業における事業承継対策 ~密接に関連してくる相続税①~ <生前贈与について> 予想される相続税額と生前贈与した場合の贈与税額を比較検証してみる! 平成27年1月1日~ 贈与税 税率表(一般税率) 区分 税率 控除額 課税標準 税率 200万円以下 10% ‐ 1000万円以下 10% 0円 300万円以下 15% 100,000円 1000万円超 ~ 3000万円以下 15% 50,000円 400万円以下 20% 250,000円 3000万円超 ~ 5000万円以下 20% 2,000,000円 600万円以下 30% 650,000円 5000万円超 ~ 1億円以下 30% 7,000,000円 40% 1億円超 ~ 2億円以下 40% 17,000,000円 1000万円以下 1,250,000円 2億円超 ~ 3億円以下 45% 27,000,000円 1500万円以下 45% 1,750,000円 3億円超 ~ 6億円以下 50% 42,000,000円 3000万円以下 50% 3000万円超 55% 2,500,000円 4,000,000円 6億円超 55% 控除額 72,000,000円 不動産賃貸事業における事業承継対策 ~これまた知らなきゃ損する新築物件の贈与②~ ①一括貸し (一括借上方式) 不動産管理会社 ②贈与 子 (土地) <現金贈与との比較検証> ①現金1億円を贈与した場合の贈与税額 (1億円-110万円)×50%-225万円=4,720万円 ②建物を贈与した場合の贈与税額(建物の固定資産税評価額6,000万円、賃貸割合100%とした場合) 建物の財産評価:6,000万円×(1-30%×100%)=4,200万円 (4,200万円-110万円)×50%-225万円=1,820万円 不動産賃貸事業における事業承継対策 ~法人化からの相続税対策~ 法人成り 所得税 法人税 (不動産所得) 所 得 分 散 相続税 オーナー (被相続人予定者)の個人財産 法人所有に転換 株式を推定相続人の財産にすることにより、贈与税を発生させることなく賃貸物 件の収益を推定相続人へ移転することができる 不動産賃貸事業における事業承継対策 ~法人化後は相続までの期間が重要ポイント~ 建物のみを売却 個人所有 (土地) 建物売却代金 (土地) (論点) 建物売却代金(帳簿価格)>相続税評価額 法人所有になれば賃料収入は推定相続人に分散される オーナー(被相続人予定者)の現金貯蓄が抑制される 「現金+(建物)相続税評価額」と「売却時の建物帳簿価格+地代収入」の比較検証が重要! 「個人所有」と「法人所有」の相続財産比較シミュレーション事例 相 続 財 産 (法人所有の場合) 売却時の帳簿価格+地代収入=6,000万円 6,000万円 3,000万円 (個人所有の場合) 相続税評価額(3,000万円)+毎年の賃料収入 0 1 年 目 2 年 目 3 年 目 4 年 目 5 年 目 6 年 目 7 年 目 8 年 目 期間 法人の建物支払い債務について 建物のみを売却 個人所有 建物売却代金 (土地) (土地) ・売却代金を一括で支払うことができる法人は、まれである ・オーナー個人への支払いは長期の分割払いとなってしまう ・被相続人予定者には法人に対する金銭債権が残ってしまう そこで ・法人への金銭債権を複数の相続人へ贈与していく ただし、ここでも「生前贈与による贈与税額」と「対策前の相続税額」の比較検証は必須! 法人税対策① 「大規模修繕」 ・法人所有の建物を大規模修繕する ↓ ・法人に欠損金を生じさせる ↓ ・法人税対策となる 大規模修繕をすることにより、物件の空室リスクを減 らすことにも繋がる! 法人税対策② 「生命保険」 ・長期平準定期保険は、通常の定期保険と比べ高額な解約返戻金が発生し、 さらに支払い額の1/2を経費にできるという特徴がある ↓ ・そこで、この解約返戻金を利用して大規模修繕費用を積みたてていく! <長期平準定期保険を利用した大規模修繕費用の捻出方法イメージ> 役員給与 解約返戻金を修繕 費用に充当する 経費 法人利益 1/2 1/2 経費計上 資産計上 長期平準定期保険料 法人税対策③ 死亡保険金の処理 ・法人に死亡保険金が支払われれば、その死亡保険金には法人税が課税される ↓ ・そこで、法人に入ってきた死亡保険金は死亡退職金で遺族に支払う (メリット) ・死亡退職金には、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がある ・死亡退職金は相続税の納税資金にあてられる ※ただし、過大な死亡退職金は経費にできないので注意! <参考> 適正な役員退職金=「役員の最終月額報酬×在任年数×功績倍率」 ちなみに、功績倍率は2.5倍~3.0倍で検討した方が無難・・・
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