宮崎大学でのほぼ完全自作のMicromegas製作の試み - SAGA-HEP

宮崎大学でのほぼ完全自作の
Micromegas製作の試み
-失敗作の話宮崎大学工学部材料物理工学科
松田達郎、池本尚之、末武智希
1.過去にうまく動作したMicromegasについて
2.ちょっと新しいMicromegasのアイディアとその動機
3.その結果と教訓
4.さらに悪あがき
5.まとめ。過去に回帰か
6.おまけ
第3回マイクロパターンガス検出器研究会@佐賀大学、2007年1月27日
1.過去にうまく動作したMicromegasについて
過去2回のMPGD研究会で報告したもの
Micromegasの肝のプリント基板と支柱
KEK E248で開発したMGWC用の基板と支柱を流用し、
支柱の上にマイクロメッシュを被せてMicromegasを製作した
オリジナルの
Micro Gap Wire Chamber
(プリント基板および支柱の構造)
銅ストリップライン
NIM A 418(2002) pp.166-173
0.9mm幅、50μm厚、1mmピッチ
支柱(フォトレジスト)
150μm幅、 50μm厚
フォトレジストをストリップラインの隙間
をまたいで設置
銅ストリップライン
フォトレジスト
マイクロメッシュ
2.ちょっと新しいかもしれないMicromegasの
アイディアとその動機
(これまでの基板の問題)
• 製作はプロが行う(キーコム(株)に製作を依頼)
• 新しい基板をテストするにもお金(軽く数十万円)と手間が掛かる
(新しい思いつきか?)
• レーザー加工(篠崎製作所)で、数十μm単位でカプトン(ポリイミド)
シートを加工できることを知った。
→ このポリイミドシートをマイクロメッシュとプリント基板の間に支える
支柱にできないか?
• プリント基板を製作できるプリント基板加工機(ミッツ製)を購入した。
→ 比較的簡単にプリントパタンを製作できる。
→ プリント基板、支柱、マイクロメッシュを分離することで、いろいろな
バリエーションのMicromegasのテストが可能ではないか?
レーザー加工したポリイミドメッシュ
50μm厚ポリイミドシートに
50μm線幅ラインを加工した。
ラインのピッチは1mm。
(拡大写真)
加工した“ポリイミドメッシュ”
にマイクロメッシュを重ねた
ところ
(拡大写真)
プリント基板の加工
• プリント基板加工機は
パソコンでデザインした
プリントパタンを簡単に
加工できる。
プリント基板加工機
加工したプリント基板の上に
“ポリイミドメッシュ”載せた
組み上げて実際にテストをする
3.その結果と教訓
(結果)
• 空気中でのテストで、数十ボルトの印加で放電し、“ポリイミ
ドメッシュ”のラインの一部が炭化した。
• 炭化してしまうと絶縁も壊れ、リーク電流が流れる。
• その後、幾つかの穴の開い
たポリイミドシートを自作テスト
したが、リーク電流を抑制でき
ず。
(微小な放電で一部が炭化
しているのではないか?)
(教訓)
→この“アイディア”は無理か?!
ポリイミドは燃えるとと別の物質(炭)になる? 黒く焦げている
4.さらに悪あがき
• “過去”のMicromegasでは、フォトレジストやソルダーレジ
ストを絶縁材として、うまくマイクロメッシュとプリント基板
を支持してくれた。
• フォトレジストは感光性樹脂で、プリント基板のエッチング
工程の際の保護材(エッチングレジスト材)となる。
• ソルダーレジストは、プリント基板への半田付け際の半
田の飛び散りなどから保護する耐熱性コーティング材。
• サンハヤトからホビー用に感光性樹脂でできたソルダー
レジストセットというものが販売されている。
• これをプリント基板に手で50μm程度の厚さに塗布し、パ
タンを作り、支柱とできないか?
ソルダーレジストの塗布と現像
紫外線感光性ネガタイプ
ソルダーレジスト溶剤
マスクパタン
紫外線ライト
紫外線が照射されたところだ
けレジスト材が硬化する。炭
酸ナトリウム溶液で“現像”す
る。50μm厚を目標とした。
→ 放電、リーク電流はかなり抑制できた。 作品(3作目)
しかし、うまく信号は見えず。厚すぎるのか?
厚さを一様に塗るは難しい。
5.まとめ。過去に回帰か
• ポリイミド(カプトン)支柱は難しい。(放電が起こると、そ
の部分が炭化し、絶縁が悪くなるのかと推定)
• 手作業でソルダーレジストを塗布し、加工するのも数十
μmでは容易ではない。(熟練すればある程度のものは可
能かも?今後の練習に期待)
• 旭化成エレクトロニクスから、プリント基板にフィルム状の
フォトレジストをラミネートしたサンプル
をもらった。これはとても綺麗である。やはり、フィルム状
のフォトレジストあるいはソルダーレジストが最も有力に
思える。
• しかし、フィルムのラミネート、マスクの貼り付け、感光は
プロに委ねざるを得ない。
• 当初の比較的簡単にMicromegasを作成するという目標
は難しい?
旭化成エレクトロニクスのドライフィルムレジスト
”サンフォート™” をプリント基板にラミネートしたもの。
フィルムの厚さは50μm、120μmなどがある。
6.おまけ(絶縁材の素材の検討)
フォトレジスト、ソルダーレジストはアクリル樹脂であり、
従って、ポリイミド(カプトン)、フォトレジスト、ソルダーレジスト、
すべて有機物であり、すべて燃える。
Wikipediaでポリイミドを見ると、次のような記述がある。
「通常の高分子に比べて破格の高強度、耐熱性を有する。電
気絶縁性も優れており、電子回路の絶縁材料として用いら
れる。」
とすると、ポリイミドの方がアクリル樹脂より優れているように
思えるのに、我々の現在までの試みでは、Micromegasに使
用する絶縁材としては、アクリル樹脂の方は使えたが、ポリ
イミドは使えないという状況である。
なぜか?ガス検出器は、通常の電気回路とは違うからか?炭
化のし易さ、燃焼速度の問題?
GEMではこのような問題はないのか?
MicroMEGAS(MiroMEsh Gaseous Structure)の原理
・プリント基板技術
・工業用金属メッシュ板
を使用。
今回使用したMicro-Meshはどんなものか?
• ニッケル製
• 500ワイヤー/インチ
• 透過度60%
• ワイヤー径 0.00045インチ
• 穴のサイズ0.00155インチ
一般にはフィルターとして使
われるもののようだ。
テスト実験の構成