産業集積の動態的視点に関する一考察 ~ライフサイクルと産業集積の衰退

企業間の競争と協調による
地域ブランドづくり
明治大学政治経済学部
助教
木村元子
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目次
1.日本における地域ブランドへの注目
2.岡山県児島地域の事例から
3.児島ジーンズストリートの効果―競争と協調
4.地域のブランド化へ向けて
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1.日本における地域ブランドへの注目

地域ブランドが注目される背景
・都市への一極集中
・グローバル化による産業空洞化
・少子高齢化による人口減少
・地方自治体の財政難
・ライフスタイルの変容 など

地域の持続的発展のために
・地域をブランド化する
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買いたい
住みたい
訪れたい
地域ブランドの体系
地域ブランド
買いたい
訪れたい
観光
文化・環境
住みたい
地域資源
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観光資源(観光者向けの
景観、自然環境、農林水
産物、郷土料理など)
歴史、文化、景観、自然環
境、インフラ、コミュニティ
など
商品
サービス
農林水産物、加工食品、
伝統工芸品、温泉、郷土
料理など
地域ブランドの概念図
①地域発の商品・
サービスのブランド化
商品
サービス
地域イメージを強化
②地域イメージの
ブランド化
新たな商品
サービス
新たな商品
サービス
付加価値
地域イメージ
資料)中小企業基盤整備機構(2005)『地域ブランドマニュアル』
ブランド化することによって、地域と人々のあいだに持続的・永続的な関係をつくる
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2.岡山県児島地域の事例から

岡山県倉敷市児島地域

日本最大のアパレル産地
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児島地域における産業の歴史
学生服
作業服 カジュアル・
ジーンズ
高級ジーンズ
足袋
綿花
1800年代~
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現在
ジーンズ産地としての児島(現在)

学生服からジーンズへの転換
・中小規模の学生服メーカーの市場退出
・新規分野への参入(作業服、カジュアルウェア、ジーンズ)
→ 生産に必要な技術、材料、職人の存在

日本初の国産ジーンズとしてブランド確立
・量産ジーンズが伸び悩む中で、高級ジーンズの台頭
・ファッション性、多品種少量生産
産地内での競争による差別化促進
企業間の協調による販売促進
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日本ジーンズ市場におけるポジショニング
広いターゲット
低価格
高価格
児島
ジーンズ
狭いターゲット
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産地内での差別化戦略
桃太郎ジーンズ
(有限会社藍布屋)
・もともとは生地メーカーであるため、Made
in Japanの生地にこだわったジーンズを開
発。
・縫製も児島で行っている。
・自社の藍染め工房を持ち、藍染め体験も
できる。
DANIA JAPAN
・日本の美や形をテーマにしている。
・商品には1点ものが多い。
・デニム生地を使った小物を開発している。
・世界のデザイナーやセレクトショップとの
コラボレーションに積極的。
SAIO(三野産業株式会社)
有限会社キャピタル
・もともとは学生服や作業服の大量生産を
行っていたが、新たにカジュアルウェアへ
進出。
・柔らかくデザインに凝ったジーンズを製造、
販売。
・店舗ではジーンズ以外にも多数のボトム
を扱っている。女性用も多い。
・直営店で自社製品の販売が中心。直営店
は東京や名古屋などの都市にある。
・ジーンズだけでなく、デニム生地を使った
様々な製品を開発している。
・ブラスト加工などの新しい技術を開発し、特
許を取得している。
→ 同業他社を意識した店舗経営、商品開発が行われている
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児島ジーンズストリート
商工会議所を中心として観光拠点
としての「ジーンズストリート」の整備

・2009年にシャッター商店街であった
味野商店街を改装し、ジーンズメーカー
の直営店が入居開始
・現在、ジーンズ関連の店舗が約20
ある
・児島ジーンズストリート協同組合
の発足
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児島ジーンズストリートの効果
企業
 直営店を持つことによる販売チャネルの増加
 知名度の向上
 集客
 情報のスピルオーバー(イノベーションの促進)
→中小企業の弱点克服
地域
 個性豊かなジーンズメーカー・関連産業の集積
 雇用創出
 観光資源としての魅力上昇
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4.地域のブランド化へ向けて

地域資源に基づいた商品・サービス、文化・環境、観光
を組み合わせたブランドづくり

一過性ではなく、永続性をもたせるために、イノベーショ
ンを生み出し続けること

イノベーション創出のため、企業間の競争を促進しつつ、
協調による相互扶助を行うこと
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ご静聴、ありがとうございました
Thank you for your attention.
木村元子
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