10章 協働的情報デザインの実践 ーシアトルの「モダンオデュッセイア」プロジェクト ジュディ・アンダーソン 2005/12/7 担当 篠原義隆 導入 ﻪジュディ・アンダーソン ﻩワシントン大学芸術学部教授 ﻩパブリックアートの仕事を多数手がける ﻩ作家、建築家、音楽家、ビデオアーティスト、 都市デザイナー、etcなど協同参加プロジェクト のリーダーをたびたび務める ﻩデザインコンサルタントとして、出版物や情報 システムの製作にも携わる 導入 「 ﻪPRは何をする必要があるかを,広告は何 をすべきかを人々に伝える。芸術は,人々 が自分の考えに基づいて何かをするエネ ルギーとインスピレーションを与える」 ージョン・コバール『モダン・オデュッセイア』 導入 ﻪ10章のテーマ ﻩ情報デザイナーは情報を伝える過程でどんな 役割を果たすのか? ﻯ情報の単なる伝達者? ﻯ情報デザインを通じてコミュニケーションプロセス の活性化、知識・考え・感情の共有を促すことがで きるのか? コミュニケーションプロセス 適切で実行可能な解決を創出 メッセージ 記号化 定義 受け手 形にする クライアント 聴衆 デザイ ナー 情報 関わる 情報 コミュニケーションプロセス ﻪ解決の例 ﻩ2次元、3次元の事物 ﻯポスター ﻯ書籍 ﻩ時間的拘束のある媒体 ﻯラジオ ﻯテレビ ﻯライブ公演 コミュニケーションプロセス ﻪ企業的環境では クライアント 優先 デザイナーと聴衆の声 は限られたものに・・・ デザイナー 聴衆 コミュニケーションプロセス ﻪしかし、公共的環境では 協働的な役割を 果たす可能性 デザイナー クライアント 聴衆 ≒ 協働的作業 ﻪ協働作業はさまざまな形を取り得る ﻩ ﻩ ﻩ ﻩ クライアントとデザイナー デザイナーと創作チーム 聴衆とクライアント 聴衆とデザイナー ﻪしかし・・・ ﻩ混乱、対立、不愉快になることもしばしば 協働的作業 ﻪ最善の場合 ﻩ創作プロセスを充実させ、協働的作業形態を 促し、各参加者の貢献によってよりよいものが できあがる ﻪ最悪の場合 ﻩ感情的対立を促し、目標達成の障害となる デザインの仕方で、参加者の協働的関係を支え、 作業の邪魔になるような障害をなくすような協働 的プロセスは作れないだろうか? ビジネスの中の協働 ﻪビジネスの中での協働はよくある ﻩ関連分野のプロが集まり、ニーズ解決のため に協力 ﻩ特に建築家と芸術家の協働は利点が高い ﻯここでの芸術家はデザイナー、イラストレータ、工 芸家なども含めた広い意味でのもの ﻯビジネスにおける協働のメリットに触れた本も出版 されている 公共部門における協働 「 ﻪ1割を芸術のために」 ~ ﻩ社会資本増強的性格を持つプロジェクトへ の公共投資はすべて、1名ないしそれ以上の 芸術家を参加させなくてはならず、そのために 必要な資金的援助をしなければならない~ 芸術家やデザイナーが持つ情報、コミュニケーション 上の考え・意見が企画の早い段階で取り入れられる 協働作業の形態 技師 芸術家 政府 自治体 プランナー 建築家 都市計画 デザイ ナー 協働作業の形態 ﻪチームによる作業 ﻩ動きの遅いプロセスになりがちではある ﻩ想像性豊かな解決をもたらすことも・・・ ﻩ形にまとまった場合の効果が見えやすく、チー ムの貢献がわかりやすい しかし、物理的な形にまとまらない場合もある 情報デザイナーの役割 ﻪ知識、考え、感情など「情報」を伝える ﻩ情報の構成要素を定義 ﻩ物理的な製品にまとめる このほかに、協働的プロセスに情報デザイナーが 貢献できる道はないのだろうか? お互いの知識・考え・感情を共有できるような解決 案をもたらす道は? モダン・オデュッセイア ﻪモダン・オデュッセイアー毎日が冒険の旅 ﻩ交通システムに関する思考と討論を大衆の間 に起こすようにデザインされた協働的作業 ﻯワシントン州の3つの都市が共同で手がけた計画 ﻯより速く、効率的で、信頼できる地域輸送システム ﻯ実現すれば、アメリカ最大規模の公共事業 モダン・オデュッセイア ﻪ当初は広告やパンフレットに入れる図版を作る 予定だったが、すでに他のデザイナーがやって いた メトロ 非常に専門的で地図、図表、 統計が五万と入っていた 理解しにくい 面白くない おもしろみがあり、一分の隙 もなかった 大衆をおだて て利用させよ うとする内容 広告代理店 モダン・オデュッセイア ﻪ生活の中で交通手段を使う経験を大衆に わかりやすく伝え、大衆も議論に進んで参 加するように促す ﻪPRの専門家や広告代理店がしていること を変えてやってみてもダメ ﻪさらに「芸術作品」でなくてはならない モダン・オデュッセイア 「 ﻪ芸術家たちの地域 交通プロジェクト (ARTP)」 ﻩロゴマークとテーマ ミュージックの作成 ﻩ今後の作品すべてに ロゴとミュージックをつ ける モダン・オデュッセイア ﻪ街角、ショッピングモール、 学校などでのライブパ フォーマンス モダン・オデュッセイア 「 ﻪみんなの声」サービス ﻩバス停に旅に関する短い 物語と電話番号をつける ﻩ芸術家のメッセージを聞く ﻩ自分のメッセージを残す ﻩ他人のメッセージを聞く ﻩ期間中何度も更新 モダン・オデュッセイア ﻪ ﻪ ﻪ ﻪ ﻪ テレビ、ラジオで放送 芸術家と一緒に共同作品 大衆へのインタビュー ビデオアートの作成 などなど モダン・オデュッセイア テレビ放送用のビデオと新聞に挟み込むタブロイド モダン・オデュッセイア さまざまなビデオアート 芸術的協働を促す ﻪどんな協働的プロセスにおいても、参加者は全 体の一部になるためには何かを諦めないといけ ない ﻩ最善のケース ﻯ一人一人の貢献を統合する一貫性、雄弁性、明確 さが反映 ﻩ最悪のケース ﻯ参加者の妥協によってここの作品が中途半端 ﻯしかも全体として統合性のかけるものに・・・ 芸術的協働を促す 「 ﻪモダン・オデュッセイア」の手法は、一人 一人の芸術家の声を維持することだった ﻩ全体は個々の声の集合 ﻩその多様性と複雑性の中に一貫性が創出 芸術的協働を促す 「 ﻪモダン・オデュッセイア」がうまくいった理 由は? ﻩ芸術家にテーマにつながる視覚的・音声的 「マーク」を含めることを要求 ﻩしかし作品的には妥協させない ﻩコミュニケーションプロセスを明らかにし、知 識・考え・感情の共有を促進 まとめ ﻪARTPは経験としてのー目的ではなく、手段とし てのー情報デザインへの1つのアプローチ ﻪ聴衆はプロジェクトにまつわる問題を理解し議論 に参加することができた ﻪ情報デザイナーがより大きな果たす道があること を示唆 ﻪ単なる情報の発信者ではなく、コミュニケーション プロセスと、知識・考え・感情の共有をリードし、 促進する役割が果たせる
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