地方公営企業会計勉強会

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第6回 リース会計
1.リース会計導入の必要性
1.リース取引
日本での設備調達の1つの手法。物件管理、事務負担の簡便性、購入時に多額の資金調達を必要としない、
保険料などの軽減、設備の陳腐化に対する弾力的な対応などのメリットから、広く普及している。
2.法的形式
3.経済的実態
リース会社
リース契約
毎月 支払リース料/現金
金銭消費
貸借契約
購入
購入時 有形固定資産/債務
毎月 元利/現金
減価償却費/有形固定資産
4.リース会計はなぜ必要か?
(1)貸借対照表の適正表示
固定資産と企業が負担するリース債務が適切にBS計上されていない。
(2)損益計算の適正性
保有する固定資産の減価償却計算が計上されない。
支払リース料の中の利息分が適正に表示されない。(営業外費用)
(3) 企業会計など他会計基準との調和
事務負担を考慮して、
中小規模の公営企業には、
軽減措置あり。
2.リース取引の分類とその判定基準
リース取引
特定の物件の所有者(貸手)が、借手に対して、合意した期間にわたって、当該物件を使用収益する権利を
与え、借手は、貸手に合意した使用料を支払う取引をいう。
①リース契約期間中の解約が実質的に不能で、②借手がリース資産の使用からもたらされる経済的便益を実質的に享受でき、
かつ、使用に伴って発生するコストを実質的に負担(フルペイアウト)するリース契約か?
もしくは、
現在価値基準:
経済的耐用年数基準:
解約不能リース期間のリース料総額 > リース物件購入額 x 90%
解約不能リース期間 > リース物件の経済的耐用年数 x 75%
YES
の何れかに該当
NO
ファイナンスリース取引
オペレーティング・リース取引
①リース契約上、リース物件の所有権が借手に移転する。
②リース契約上、著しく有利な価額で買い取る権利が付与されている。
③借手の用途にあわせた特別仕様で、第三者への再リースや転売が不可。
YES
所有権移転
ファイナンスリース取引
割賦購入と同様の効果
売買取引
NO
中小規模の企業は、
賃貸借処理も可能。
所有権移転外
ファイナンスリース取引
資金調達、使用する権利の取得
売買取引に準じる。
賃貸借処理
3-1.所有権移転ファイナンス取引の会計処理
【設例1・所有権移転ファイナンスリース取引 利息法】
リース期間5年、期間満了後、所有権移転条項付き。リース料 月額100円、リース料総額6000円。1年分まとめて、年末払い。
リース物件の貸手の購入価額は、4800円。リース総額に含まれる利息相当額は、1200円。
減価償却は、残存価額10%、耐用年数8年、定額法。
1.第X1期首(リース契約締結)
2.第X1期末(リース料支払時)
3.第X1期決算整理(減価償却計算)
利息相当額は、
利息法で配分。
リース資産 4800 / リース債務 4800
リース債務 960 / 現金 1200
支払利息 240
減価償却費 540 / 減価償却累計額 540
減価償却は、自社保有資産と
同様の方法で計算。
(4800 x 0.9 x 1年/8年 = 540)
3-2.所有権移転外ファイナンス取引の会計処理(原則)
【設例2・所有権移転外FL取引 ①原則的処理(利息法)】
1.第X1期首(リース契約締結時)
2.第X1期末(リース料支払時)
3.第X1期決算整理(減価償却計算)
リース資産 4800 / リース債務 4800
リース債務 960 / 現金 1200
支払利息 240
減価償却費 960 / 減価償却累計額 960
(4800 x 1年/5年 = 960)
利息相当額は、
利息法で配分。
減価償却は、契約期間、
残存価額0で計算。
3-3. 所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理(重要性の乏しい場合)
リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合
未経過リース料÷(未経過リース料期末残高+有形、無形固定資産期末残高)<10%
【設例3・所有権移転外FL取引 ②簡便的処理A(定額法)】
利息相当額は、
定額法で配分。
1.第X1期首(リース契約締結時)
2.第X1期末(リース料支払時)
3.第X1期決算整理(減価償却計算)
リース資産 4800 / リース債務 4800
リース債務 960 / 現金 1200
支払利息 240
減価償却費 960 / 減価償却累計額 960
(4800 x 1年/5年 = 960)
減価償却は、契約期間、
残存価額0で計算。
選択適用
【設例4・所有権移転外FL取引 ③簡便的処理B(利息相当額を認識しない方法)】
1.第X1期首(リース契約締結時)
2.第X1期末(リース料支払時)
3.第X1期決算整理(減価償却計算)
リース資産 6000 / リース債務 6000
リース債務 1200 / 現金 1200
減価償却費 1200 / 減価償却累計額 1200
(6000 x 1年/5年=1200)
3-4.所有権移転外ファイナンス・リース取引の会計処理(賃貸借)
一括費用処理するリース契約、短期リース契約(リース期間が1年以内)または、
小額リース契約(企業の事業内容に照らして重要性が乏しく、リース総額300万円以下)など
【設例5・所有権移転外FL ④賃貸借処理】
1.第X1期首(リース契約締結時)
2.第X1期末(リース料支払時)
仕訳なし
支払リース料 1200 / 現金 1200
3.
仕訳なし
//
(減価償却計算時)
中小規模の公営企業については、
所有権移転外リース取引の賃貸借処理が認められる。
ただし、未経過リース料の注記が必要。
3-5.オペレーティング・リース取引の会計処理(賃貸借)
【設例6・オペレーティング・リース ⑤賃貸借処理】
1.第X1期首(リース契約締結時)
2.第X1期末(リース料支払時)
仕訳なし
支払リース料 1200 / 現金 1200
3.
仕訳なし
//
(減価償却計算時)
ただし、中途解約不能で、重要性の高いリース契約については、未経過リース料の注記が必要。
4.その他
1.適用初年度の取り扱い
2.中小規模の公営企業
【原則法】 所有権移転外FLを、賃貸借処理から売買取引に準じた
会計処理に変更した際の影響額は、特別損益として処理する。
公営企業法令で、管理者をおかないことができる基準を
準用する予定。
○水道事業(簡易水道事業を除く)
常時雇用職員数200人以上、かつ
総水戸数5万戸
【認容】 適用初年度の前年度末の未経過リース料残高又は、
未経過リース料期末残高相当額(利息控除後)を取得価額として、
期首に取得したものとしてリース資産の計上することができる。
未経過リース料期末残高相当額(利息控除後)を取得価額とした
場合、利息相当額総額をリース期間にわたって定額で配分すること
ができる。
3.BS表示
原則、固定資産の部にリース資産として一括計上。
ただし、有形固定資産、無形固定資産に含めることも認められる。
たとえば、所有権移転FL物件は、有形固定資産、無形固定資産に
含め、所有権移転外FL物件のみ、リース資産として表示することも
認められる。
5.中途解約の場合
リース資産の未償却残高をリース資産除却損等として処理する。
中途解約に関する違約金などは、リース債務と相殺の上、
残額を損益処理する。
7.再リースの会計処理
原則として、発生時の費用処理とする。
(水道用水供給事業は、給水能力20万M2/日)
○工業用水道事業
常時雇用職員数100人以上、かつ
給水能力50万M2/日
4.不動産賃貸借契約の取り扱い
土地、建物などの不動産賃貸借契約についても、
ファイナンス・リース契約に該当するか、オペレーティング・
リース契約に該当するかの判定を行なう。
ただし土地については、所有権移転条項もしくは
割安購入選択権が付与されている場合を除き、
オペレーティング・リース契約に該当することとする。
6.リース契約期間満了時の会計処理
リース期間終了時には、通常、リース資産の償却は完了し、
リース債務も完済しているため、会計処理は要しない。