はじめに 尾高 茂 KEK 2005.1.7 - 8 アトラス日本 QCD 勉強会 1 Lepton collision に比べて hadron collision は 非常に複雑 2005.1.7 - 8 アトラス日本 QCD 勉強会 2 ある実験屋の苦悩 (1) • 登場人物 – – – • 彼が LHC データ解析のために event generator を動かそうとした – – – – – • 長年 e+e- collider の実験をしてきた実験屋 一応、radiative correction について勉強したことがある "Renormalization Equation" や "MS-bar scheme" などという言葉は聞いたことがあるが実際に計算 したことはない Electron と違って proton は composite なので hadron collision 用 event generator を動かすには、 PDF (Parton Distribution Function) を使わなければならない PDF には CTEQ や MRST と呼ばれるものや、ZEUS や H1 独自のものなどがある。これらの違い は使用している実験データや fit 方法の違いのようだ しかし、同じ CTEQ6 でも CTEQ6L, CTEQ6M, CTEQ6D などといくつかの PDF がある。"L" は LL (LO)、"M" は MS-bar scheme の NLL (NLO)、"D" は DIS scheme の NLL (NLO) ということらしい これは "M" の方が "L" よりも精度が良いということなのだろうか? tree (LO) の matrix element を使うときはどれを選んだら良いのだろう? PDF を選んだら "energy scale" を指定しなければならない。 – – – – – – 2005.1.7 - 8 "energy scale" には "renormalization scale" と "factorization scale" の二つがあるらしい。 しかし、両者を区別していない event generator もある。 manual などを読むと、どちらも反応の "typical energy scale" とある。 Tevatron などの論文を読むと両者を同じ値にして "scale dependence" を評価している。 これらは同じ値にすべきなのか?それとも別々に採っても良い (採るべき) ものなのか? そもそも、"typical energy scale" とは? アトラス日本 QCD 勉強会 3 ある実験屋の苦悩 (2) • どうやら resonance production ではその mass、gluon などの t-channel exchange が dominant な反応では sqrt(|t|) や pT を "typical energy scale" とすれば良いらしい – – – – – – – • 論文にはその 1/2 から 2 倍くらいまで値を変化させて "scale dependence" を評価していることが多 い 何処にとっても良いということなのか? 結果を見てみると、反応によってはこの範囲で倍以上も cross section が違うことがある これで理論の「予言」と言えるのか? W + jets などの複雑な反応の場合には、"typical energy scale" の決め方自体にも不定性があるよ うだ 何を信用したら良いのか? e+e- のときはこんな不定性は無かった。何が違うのか? ちょっと event generator を動かしたいだけなのに、何でこんなに悩まなければならないの か? 2005.1.7 - 8 アトラス日本 QCD 勉強会 4 まだ良く判らないことも多い 2005.1.7 - 8 アトラス日本 QCD 勉強会 5 現在の hadron collider 物理の謎 • B production – – • Lepton tag で測定した cross section が理論計算と全く合わない Fragmentation function に問題? Direct photon – – 昔から gluon PDF の良い測定と言われているが、PDF fit には入っていない Cross section が (N)NLO 計算と合わない; i.e., 他の process の測定と inconsistent • • • • W + jets – 発端は as 測定を目論んだ解析 • – ところが、energy scale の採り方や、jet 定義への依存性の方が大きい 一般的な jet の取り扱い方の問題に発展 • • Low pt (< 10 GeV) で不一致が顕著 実験の難しさもあるが、最近の高精度の測定でもずれは消えない 大きな "intrinsic" pt ? Double-count 問題、CKKW、、、 Underlying event – Hard process に付随して等方的な activity が出てくる • – Tevatron データで tuning が行われているが、LHC でどうなるかは判らない • 2005.1.7 - 8 まともな理論は無い。モデルのみ モデルに依って倍以上の違い (low-pt particle の数) アトラス日本 QCD 勉強会 6 実験屋の立場 • Hadron collision には未だ良く判らないことが多い – これらの問題の多くは QCD の取り扱い方に関係している – 議論に参加するためには QCD の知識が必要 • 実験屋はこの様な問題に対する議論を避ける風潮がある – 面倒な議論は理論屋と MC 専門家に任せておけば良い – 実験屋は言われた通りに解析すれば良い – MC event は専門家が作ってくれたものを使う • これで良いのか? – 生のデータに触れられるのは実験屋だけ – 重大な見落としが出てくる可能性があるのでは? 2005.1.7 - 8 アトラス日本 QCD 勉強会 7 この勉強会の趣旨 • QCD study を目的としたものではない – QCD には実験的に測定すべき parameter は as しかない – その測定可能性も議論したいが、、、 • では、何が目的? – Hadron collider (LHC) での物理現象の理解 • Lepton collider との違い • 何が判っていて、何が判らないのか – 必要な tool (event generator など) の理解 • Simulation の仕組み • 理論的背景 • 適用限界 • その為には QCD の基礎的な知識が必要 – 面倒な計算が出来る必要は無い • 「物理」は理論と実験の相互作用で進歩 – 相互に言語と思考形態の理解が必要 2005.1.7 - 8 アトラス日本 QCD 勉強会 8 謎解きを楽しもう 実験が始まったらもっと謎だらけ、、、かも 半分、期待 正しい知識は無駄にならないはず 2005.1.7 - 8 アトラス日本 QCD 勉強会 9
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