ブレーンワールド

「大学と科学」公開シンポジウム ビッグバン 宇宙の誕生と未来
有楽町朝日ホール 2004年年1月31日
ブレーンワールド
~ 新たな宇宙モデル ~
東京工業大学理工学研究科理工学研究科
基礎物理学専攻
白水徹也
目次
1.膨張宇宙と力の統一
2.アインシュタインの夢から究極理論へ
3.最新宇宙論:ブレーンワールド
4.地上実験でブラックホール
5.まとめ
膨張宇宙と力の統一
膨張宇宙:標準ビッグバン宇宙モデル
アインシュタインの一般相対性理論によって膨張宇宙
は記述される
アインシュタイン方程式
R 
時空の曲がり具合
1
g  R  8GT
2
物質のエネルギー(質量)
アインシュタイン方程式のひとつの解としてフリードマン解
宇宙と物質の進化
 宇宙は過去に向かって収縮
 過去に向かって温度上昇
 物質はバラバラになる。
電子
原子核
陽子
中性子
電子
クオーク
力の種類
ニュートン
地球
アインシュタイン
月
・重力(万有引力)
マクスウエル
・電気力、磁気力(電磁気力)


+電荷 -電荷
・弱い相互作用
陽子
中性子
ニュートリノ
湯川秀樹
・強い相互作用(原子核の中で働く)
ワインバーグ・サラム模型
(電弱統一理論)
力の統一理論
電磁気力
弱い力
強い力
統一理論
重力
10 44 秒
宇宙の創生頃
10 36 秒
インフレーション
10 11 秒
時間
標準宇宙モデルの問題点のひとつ
ホーキングの特異点定理
時間
特異点
・時空が物理法則が破綻する特異点からはじまる
(特異点
密度や圧力が発散している点)
・宇宙の始まりが物理法則で記述できない
アインシュタインの夢
から究極の理論へ
アインシュタインの夢
・重力は一般相対性理論によって幾何学に
よって記述
・他の力も幾何学で重力と一緒に統一的
に理解できないか?
カルツァ・クライン理論
カルツァ
クライン
~ 重力と電磁気力を5次元時空で統一 ~
 5次元時空で重力と電磁力を平等に扱う
 4次元時空は、余分な1次元(余剰次元)を小さくコンパクト化するこ
とで実現される。
10 33 cm ?
重力(時空)についての知見=物質(素粒子)についての知見
加速器の到達最小距離
10 17 cm
これより少なくとも余剰次元は小さくなくてはならない!
4次元時空方向
現在の実験で余剰次元を見ることができない!
余分な次元(余剰次元)
究極の統一理論:紐理論
1. 基本要素は ひも
2. 10次元あるいは11次元で高次元時空でカルツァ・ク
ライン理論の考え方を取り入れている
開いたひも
粒子
閉じたひも
ひも
ところが・・・
最近の進展
開いたひもの端を詳しく調べてみると・・・
ココ
Dブレーンの発見!(ポルチンスキー 1995年)
ひも
ブレーン
ブレーン民主主義
タウンゼント
貼り付ける
貼り付け跡
少し離れてみると
ブレーン
ひも
そもそも紐が特別な存在ではない
ブレーンも紐も基本要素
まとめ
紐とブレーンが基本要素:すべての粒子と力を記述
全体の次元: 11次元 或いは 10次元
時間
1
空間(縦 横 高さ) 3
余剰次元
6 あるいは 7
物質
重力
最新宇宙論:
ブレーンワールド
ブレーン上の世界(宇宙)
物質
重力
物質はブレーン上に張り付いている
我々の3次元宇宙は高次元
空間を運動するブレーン
余剰次元方向
超紐理論から予想される
自然な宇宙像
1998年
ディモポウロス・アルカニハメド・ドゥバリ
ブレーンの存在によって、重力と物質の扱いが平等でない
素粒子についての知見 ≠ 時空についての知見
素粒子実験(加速器)
10 17 cm
重力の検証実験
0.1mm
(逆2乗則の検証)
余剰次元のサイズは最大 0.1mm まで可能!
ただし、余剰次元の数は2以上
1999年
ランダル
ブレーンの自身の作る重力に着目:湾曲した余剰次元
余剰次元は一つでもいい!
宇宙論・ブラックホールへの応用の可能性が開けた!
ブレーン上の重力
0.1mm
・余剰次元の存在が無視できない
・余剰次元の影響なし
・高次元の影響あり
・4次元的
高次元から4次元へ
・観測者はブレーン上にのみ住んでいる
・ブレーン上の宇宙を支配している基本方程式がほしい
これまでの高次元から4次元との関係
(カルツァ・クライン法)
物質と重力は高次元時空で平等に取り扱うことができる。
しかし、ブレーンワールドでは、重力と物質の扱いが平等でない!
特に、ブレーンの存在で余剰次元の構造が均一でなくなる
求む、新しい方法
2000年 幾何学的射影法
佐々木節
前田恵一
私
ブレーン(膜)宇宙を支配する方程式の導出(ブレーン上のアインシュタイン方程式)
ブレーンワールド宇宙論の設定
ブレーン上の理論
白水・前田・佐々木
1
R  g  R  8GT  E  
2
4次元時空のアインシュタイン方程式 + α
E : 高次元時空の情報
・高次元重力の情報を、4次元に投影したもの
・ホログラフィー的な物質項とみなせる
暗黒輻射:ホログラフィー
ブレーン上の宇宙膨張は
物質+背景輻射+暗黒輻射
ブラックホール
暗黒輻射の存在=高次元中にブラックホールが存在
4次元情報(暗黒輻射)が5次元情報(ブラック
ホール)によって表わされる!
2001年~ 新しいビッグバン宇宙創生像
循環宇宙説
2枚のブレーンの衝突
による熱い宇宙
動画:
http://feynman.princeton.edu/~steinh/
シュタインハート、チュロック、コーリー
ブレーン原子と宇宙
我々の3次元ブレーンB
高次元ブレーンA
離れると宇宙は膨張
近づくと収縮
地上でブラックホール
ブラックホールの形成条件
物を狭い領域に押し込む
例) 太陽(半径700000km)を3kmにぎゅっとつぶす
 M 
2GM
 33 km
~
3
2
c
 10 g 
シュバルツシルト半径
物質の広がりが、そのシュバルツシルト半径よりも小さければ、それはブラックホールになる
位置エネルギー
天体の作る位置エネルギー
天体の中心からの位置
この臨界値以下から粒子が
這い上がるためには光の速さ
よりも速くなければならない
しかし、光より速く伝わるものは
存在しない
シュバルツシルト半径
ブレーンワールドでの重力
1032 倍
0.1mm
(逆2乗則)
ブレーンワールドの場合
4次元の場合
(逆2乗則)
逆3乗則
LHC(2007年より稼動開始予定)
ヨーロッパの加速器
1024 kg
10 24 kg ~ 1000陽子質量
 大きさ~ 10-17 cm
もしブレーンワールドでなければシュバルツシルト半径は
10 49 cm
ところがブレーンワールドの場合
10 16 cm
シュバルツシルト半径が大きくなり、ブラックホールが形成される!!
ブラックホールのかたち
重力崩壊
かたちは?
答
回転のない場合
綺麗な球状
【唯一性定理(2002年)】
私
井田大輔
ギボンズ
まとめ
ブレーンの発見
ブレーンワールド宇宙
暗黒輻射、新しい宇宙創生像、ブラックホール生成、ダークエネルギーの起源、
ホフォグラフィー、ブレーン原子・・・
加速器でブラックホールの存在が検証されれば
・人類初の直接検証
・余剰次元の存在検証
究極理論
宇宙論