初年次教育学会2008(南木・西尾)

初年次教育学会第1回大会
2008年11月30日(日)
自由研究発表4
初年次教育における
授業手法改善の効果と限界
ー流通科学大学の事例ー
流通科学大学
教育高度化推進センター 南木睦彦
学習支援センター 西尾範博
本日の発表内容
1.問題意識
2.流通科学大学の「初年次教育」-基礎演習
3.流通科学大学の全学的授業公開制度
4.低年次学生の満足度・理解度の向上と低下
5.1年生の現状
6.卒業時満足度調査
7.流通科学大学初年次教育の課題
1.問題意識
○初年次教育として特別に準備されたプログラ
ムだけでなく、初年次学生が体験する他のプ
ログラムの改善も重要ではないか。
○流通科学大学では、初年次に特化したもの
ではない授業手法の改善により、初年次学
生の理解度や満足度が向上するかに見えた。
○しかし、現在は壁に突き当たっている。
○他大学の取り組みに学び、より充実した初年
次教育を目指したい。
2.「初年次教育」ー基礎演習(1)
2001年より「基礎演習」を実施
当初は半期2単位(1年前期)
2006年度から前・後期合計4単位
単独科目・学習適応・汎用性重視型(濱名2006の類型区分)
統一教科書はなし、全専任教員が担当
1クラス15名程度
キャリア教育、コースガイダンス、必修科目等を受けるク
ラス単位でもあり、学習集団としての機能を持つ
2.「初年次教育」ー基礎演習(2)
72クラス1047人授業改善アンケート結果の平均(2008前期)
満足したか
4.21
(満足を5、不満足を1とした平均、以下同様)
読む力が付いた
3.79
書く力が付いた
3.76
勉強の意識が高まった
3.67
友人作りに役立った
4.23
友人作りには成功しているが、その他の点は不十分のようだ
3.全学的授業公開制度(1)
OCW(オープンクラスウィーク)制度
2003年度後期から実施
各セメスターの3週間、専任教員の全授業を
参観可能とし、参観申し込みがあった授業は
教職員に公開
現在までに全専任教員が公開、大半の教職
員が参観、各セメスターで、延べ130~220
ほどの授業が公開(専任教員数約100人)
授業改善事例の蓄積
3.全学的授業公開制度(2)
参観申し込み
特別事情があれば公開辞退
参観者報告(学んだ点等)
公開者コメント
成果報告公開
システム管理者
参観者 公開者 システム管理者 の使い勝手が良い
3.全学的授業公開制度(3)
「全学的一斉授業公開制度を軸としたFD活動」
で平成19年度特色GPに採択
OCWシステムを他大学でも利用可能な形に汎
用化
12月23日にシンポジウム開催「公開授業の現
状と課題」
詳細ならびに申し込みは流通科学大学HPより
3.0
2008前期
2007後期
2007前期
2006後期
2006前期
2005後期
3.4
2005前期
2004後期
2004前期
2003後期
2003前期
2002後期
基礎演習導入・授
業改善アンケート
結果教職員共有
2002前期
3.2
2001後期
2001前期
2000後期
2000前期
3.8
1999後期
4.0
1999前期
4.2
1998後期
4.4
1998前期
1997後期
1997前期
4.低年次学生の満足度・理解度の
向上と低下(1)全般的動向
OCW制度導入検討
開始、OCW制度導入
変化なし?
3.6
理解度平均値
満足度平均値
アンケート項目変更
4.低年次学生の満足度・理解度の
向上と低下(2)学年別満足度推移
4.40
4.20
4.00
4.40
3.80
4.50
1年
2年
3年
4年
4.20
4.40
4.00
4.30
3.80
1年
2年
3年
4年
4.20
4.10
4.40
4.00
4.20
3.90
4.00
3.80
3.80
1年
1年
2年
3年
4年
3.70
3.60
2年
4.40
3.50
2008前期
2007後期
2007前期
2006後期
2006前期
2005後期
2005前期
2004後期
2004前期
2003後期
2003前期
2002後期
2002前期
4.20
4.00
3.80
1年
2年
3年
4年
3年
4年
4.低年次学生の満足度・理解度の
向上と低下(2)学年別満足度推移
2002年度から2005年度までの学年別満足
度・理解度の推移を見ると、OCW等のFDを
通した授業手法の改善は、低年次の多人数
科目で特に有効であるように思えた。
低年次学生の学習スキルが劣っているのか、
教員の側の、教育スキルが劣っているのか、
どちらなのか?
4.低年次学生の満足度・理解度の
向上と低下(2)学年別満足度推移
4.40
4.20
4.00
3.80
1年
2年
3年
4年
4.50
4.40
4.40
4.20
4.30
4.00
4.20
3.80
4.10
1年
4.00
2年
3年
4年
4.4
3.90
4.2
3.80
4
1年
2年
3年
4年
3.70
3.60
3.8
1年
3.50
2年
3年
4年
2008前期
2007後期
2007前期
2006後期
2006前期
2005後期
2005前期
2004後期
2004前期
2003後期
2003前期
2002後期
2002前期
4.4
4.2
4
3.8
1年
2年
3年
4年
4.低年次学生の満足度・理解度の
向上と低下(2)学年別満足度推移
2006年度から、1年生の満足度・理解度の低下
傾向が見られた。
2008年度には、低下傾向が2年生に拡大して
いる可能性がある。
3年生は一貫して上昇傾向にある。
4年生はもともと高い値を示している。
4.低年次学生の満足度・理解度の
向上と低下(3)入学年度別満足度推移
4.40
4.30
4.20
4.10
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
4.00
3.90
3.80
3.70
4年後期
4年前期
3年後期
3年前期
2年後期
2年前期
1年後期
1年前期
3.60
4.低年次学生の満足度・理解度の
向上と低下(3)入学年度別満足度推移
○2002年度、2003年度入学生は、低年次は低
く、3年後期に大きく上昇する。
○2004年度、2005年度入学生は、低年次から
比較的高く、年次が上がるにつれて、少しづ
つ上昇する。
○2006年度、2007年度入学生は、低年次は低
く、年次進行でどうなるかは不明。
授業方法改善等のFDにより満足度・理解度は
向上したが、低年次の値が低下に転じた
5.1年生の現状
教員の声
私語、教室出入り、授業中の睡眠等がこれまで
の工夫では抑止困難になっている。
基礎学力が低い学生・学習意欲が希薄な学生
の増加。学力・意欲の格差がいっそう拡大。
2006年導入カリキュラムにより、大規模授業、
必修or選択必修科目の増加
5.1年生の現状(2)
学生へのデプスインタビュー
• 2008年入学生52名に6月下旬に実施(入試課)
入学前には学生生活に不安を抱くものが多いが、
大半の学生の充実度は、右肩上がりに上昇。
上昇の要因は「友達が出来た」「新しいことをはじ
めた」「目的が出来た」など
上昇しない要因は、「友達が出来ない、増えない」
「学校に来る目的がわからない」「毎日が同じこ
との繰り返し」
5.1年生の現状(2)
学生へのデプスインタビュー
• 2008年入学生52名に6月下旬に実施(入試課)
勉学意欲は入学前には比較的高いが、そこから下降。
定期試験が近づきやや上昇。
下降の要因は、「授業についていけない、レベルが低す
ぎるなど授業レベルに対する不満」「教え方が早すぎ
る、板書が取れない、専門用語が多い、私語が多いな
ど、教員の教え方や学習環境に対する不満」「そもそ
も不本意入学」「だらけてしまっている」など
上昇の要因は、「資格を取るなどの目標が出来た」「定
期試験が近づいている」など
6.卒業時アンケート
カリキュラム2007
大変満足
カリキュラム2006
満足
カリキュラム2005
ど ち らともい
えない
授業全体2007
不満
授業全体2006
授業全体2005
大変不満
0%
20%
40%
60%
80%
100%
卒業時の授業・カリキュラムに対する満足度は、2007年度
卒業(2004年度入学)では上昇、6割以上が満足、不満足は
1割未満
6.卒業時アンケート
問題や課題を発見し解決してゆく力2007
問題や課題を発見し解決してゆく力2006
問題や課題を発見し解決してゆく力2005
論理的に考える力2007
論理的に考える力2006
論理的に考える力2005
とても実感できる
専門的知識を生かして考える力2007
実感できる
専門的知識を生かして考える力2006
専門的知識を生かして考える力2005
どちらともいえない
視野を広げ、幅広く考える力2007
実感できない
視野を広げ、幅広く考える力2006
視野を広げ、幅広く考える力2005
全く実感できない
生活を楽しむ力2007
無回答
生活を楽しむ力2006
生活を楽しむ力2005
0%
20%
40%
60%
80%
100%
様々な力が身に付いたと実感できるかどうかについて、実感
できるが6割~8割、実感できないは1割未満、2007年度卒
業(2004年度入学)では概して上昇
7.流通科学大学の初年次教育の課題
(1)流通科学大学の学びのマップ
7.流通科学大学の初年次教育の課題
(2)現状と課題
当初の問題意識に対する答え
→初年次学生が体験する他のプログラムの改善も重
要だが、初年次教育特有の工夫も必要。
流通科学大学の課題
○入学学生の「不本位入学」「低学力」「低意欲」の拡
大、能力・意欲格差の拡大
○各種のチャレンジプログラム、能力別クラス編成、
特別クラス等は全て1年後期から配置
○1年前期授業の大規模化の傾向
7.流通科学大学の初年次教育の課題
(3)課題に対する対処(案)
○入学学生の「不本位入学」「低学力」「低意欲」の拡大、能力・
意欲格差の拡大
→入学前教育の充実
→きめ細かい学力把握と学習支援センターとの連携
→各種の学習グループの編成
○各種のチャレンジプログラム、能力別クラス編成、特別クラス
等は全て1年後期から配置
→初年時前期のチャレンジプロジェクトの企画
○1年前期授業の大規模化の傾向
→開講科目・開講コマ数の増加・多人数講義の解消
ご清聴ありがとうございました
初年次教育における
授業手法改善の効果と限界
ー流通科学大学の事例ー
流通科学大学
教育高度化推進センター 南木睦彦
学習支援センター 西尾範博