「京都市明細図」の概要について 福島幸宏(京都府立総合資料館) [email protected] ※昭和初期に大日本聯合火災保険協会が作成した 「京都市明細図」に戦後(1951年頃まで)訂正・ 加筆等を行っていったもの 2011年6月15日 「京都市明細図」ワークショップ 立命館大学歴史都市防災研究センター カンファレンスホール 1 本日の構成 • 京都市明細図とは • 火保図研究のなかで • 建物疎開事業と京都市明細図 • 今後明らかにしたい点 2 京都市明細図とは? 1 公開の経緯 • 2010年秋公開 収集時期/整理の経過 • 以降多くの反響 • 現在の利用方法 3 京都市明細図とは? 2 全体像 • 点数:291枚(図面286枚、表紙・索引図5枚) 3点が欠けている • 縮尺:1/1200 • 1枚の大きさ:平均:38cm×54cm • 1918年(大正7)年の合併後の市域が対象 • ほぼ北山通・東山山麓・十条通・西大路に 囲まれる範囲 4 「京都市明細図」の対象範囲 (立命館大学文学部地理学教室提供) 5 京都市明細図とは? 3 幾度かの作成段階 • • • • • 大日本聯合火災保険協会作成 表紙に1936年10月改正までの9回の記録 部分的に1942年までの青図が貼り込み 旧図の上に新図が重ねて貼附されている場合あり NW67に、以下の記載あり 「火災保険用ニ使用スルノ外一切ノ使用ヲ禁ズ 大阪市住吉区桑津町483-1 著作者 倉田清次郎」 「昭和十七年三月訂正」 6 表紙 (京都市明細図表紙) 1940年6月の青図貼附(京都市明細図SW32) 部分的に貼附された青図(京都市明細図SW33) 京都市明細図とは? 4 幾度かの作成段階 • 1950~1951年段階で集中的に書き込みと彩 色が行われている NE24に、昭和26年3月調査の旨の記載 • 彩色 赤は商店など・青は工場など・黄は社寺など 橙は官公署など・黒は堅牢建築物など 戦時中に建物疎開によって取り壊された 建築物には彩色されていない 9 記載と書き込みの様子 (京都市明細図NE01部分) 10 京都市明細図とは? 5 その特徴 • 京都研究に欠かすことのできない地図資料 • 複数時点(1927~1951)の情報 都市改造、建物疎開などを経て、現在の 京都の街並みが形成される段階 • 空白?の時期 「地籍図」(明治中期)、「京都地籍図」(1912) 「都市計画図」(大正末~)、「住宅地図」(1956~) 11 火保図研究のなかで • 火保図研究の概要 牛垣雄矢2005「昭和期における大縮尺地図としての火災保険特殊地図 の特色とその利用」(『歴史地理学』47-5)がこれまでの代表的成果 東京に集中 都市整図社作成のもののみ検討? (縮尺・標記方法や作成主体自体が異なる) • その課題 多種類の火保図の可能性/どこを捜す? 12 建物疎開事業と京都市明細図 1 建物疎開関係資料から 「第4次建物疎開(堀川)」(昭20-115-1) 疎開空地ごとに「建物評価調書」「見取図」「戸別調書」 「除去家屋調書」「〔住人調書〕」が綴られている ※綴りとの対照:九条国民校地区 第4次戸別調書 第4次戸別調書 第4次戸別調書 第4次戸別調書 第4次戸別調書 :SW26 奉公館 :SW15 南大方 :SW31 堀川高女:NW 2 乾 :NW59 朱雀三 :SW36 13 「奉公館周辺図」(「第4 次建物疎開(堀川)」 (昭20-115-1)より) 14 建物疎開事業と京都市明細図 2 利用のあり方について • 建物疎開の現地調査に使用されている →少なくとも戦時中から戦後直後に府が所有 していた事は確定 →1942年3月~1946年? • 明細図からのトレースでは? • ほかにも明示されていないが写したと考えら れる図あり • やはり都市計画関係の資料か? 15 今後明らかにしたい点 • 京都市明細図自体の検討(貼り込みの処理) • 京都市明細図の成立過程の検討 • 他の関連資料との関係を • コンテンツの豊富化と多角的な利用の促進 16
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