子宮収縮不全による出血

分娩後異常出血
postpartum hemorrhage
定 義:
胎児娩出から24時間後までの出血
量が500 mlを超える時に分娩後の異常
出血
頻度:全分娩の2%-3%
わが国では妊産婦死亡原因の首位
分 類
原因別分類
1、子宮収縮不全による出血
(弛緩出血)
2、軟産道裂傷による出血
3、胎盤の素因
4、血液凝固機能障害による出血
原 因
1、弛緩出血
頻度:もっとも頻度の高い後産期出血で、分娩後異
常出血の70%-80%を占める
原因:子宮筋の収縮および退縮が不十分のため、
生体結札が行わず、主として胎盤剥離面からの出
血である。全身性原因と局所性原因にわけられる。
すべての分娩異常は弛緩出血を招来すると考えて
よい。
(1)全身性原因
深度の深い麻酔(とくにエテール麻酔)
分娩期に鎮静剤の大量使用
精神緊張
全身性疲労 虚弱体質 栄養不良 高度貧血
すべての遷延分娩 難産
妊娠中毒症などを合併する
(2)局所性原因
子宮筋過度伸展:多胎妊娠 巨大児 羊水過多症 ⇒
筋繊維の過度伸展 ⇒ 収縮不良
子宮筋繊維の発育不良:奇形 子宮筋腫 手術瘢痕 ⇒
子宮収縮に影響を及ぼす ⇒ 収縮不良
子宮の病変:頻産婦 高齢産婦
子宮筋水腫:高度貧血 妊娠中毒症 前置胎盤
原因 ⇒ 収縮不良 ⇒ 分娩後不正出血
2、胎盤の原因
胎盤の剥離状態によって下記の分類
(1)胎盤部分剥離
(2)剥離胎盤の残留
(3)胎盤カントン placenta incarerata
(4)付着胎盤 placenta adhacsiva
(5)癒着胎盤 placenta accreta
(6)胎盤片または卵膜片の子宮内残留
(1)胎盤部分剥離
微弱陣痛 不適切な臍体牽引
⇒ 胎盤部分剥離
⇒ 子宮収縮不良
⇒ 胎盤剥離面静脈洞開放
⇒ 出血
(2)剥離胎盤の残留
子宮収縮不全 膀胱の充満
⇒ 剥離後の胎盤排出困難
⇒ 子宮収縮に影響
⇒ 出血
(3)胎盤カントン
胎盤カントン:
胎盤は完全に子宮壁から剥離しているが、子宮口
痙攣や病的収縮のために排出されない場合である
子宮収縮剤の乱用 粗暴な子宮マーサージ
⇒ 子宮筋の一部ことに内口は痙攣性狭窄が起こる
⇒ 剥離後の胎盤排出困難
⇒ 子宮収縮に影響
⇒ 出血
(4)付着胎盤
胎盤の一部または全部は子宮壁に粘着して
自然剥離できない
子宮内膜炎 人工流産などの原因
⇒ 内膜損傷
⇒ 胎盤付着 ⇒ 完全性
出血しない
⇒ 局在性
出血
(5)癒着胎盤
床脱落膜の海綿層の形成不全または欠如
のため、絨毛が子宮筋層に侵入し胎盤と筋
層が癒着するものを癒着胎盤という。
分類:
全癒着胎盤:癒着は全面にわたるもの。
出血しない
一部癒着胎盤 :癒着は一部分のみ
出血
(6)胎盤片または卵膜片の
子宮内残留
胎盤片 卵膜片
⇒ 子宮収縮に影響
⇒ 出血
3、軟産道裂傷による出血
先進部の過大:過大児
会陰伸展生不良:急産 過強陣痛
拙劣な会陰保護、助産術
⇒子宮下部、頚部、膣、外陰、会陰など
の裂傷のため、該部の血管破綻から出
血するもの。
4、血液凝固障害による出血
血液凝固線溶系異常のため、出血傾向、出血
性素因を呈して出血するもの
特発性血小板減少性紫斑病 白血病 再生不
良性貧血 妊娠中毒症 胎盤早期剥離 羊水
栓塞症
⇒ DIC
臨床症状及び診断
分娩後の多量出血
⇒ 出血性ショック
貧血
感染
1、弛緩出血機転
特 徴:
(1)出血状態:胎児娩出後に発作性に流出する
外出血
(2)血液性状:暗赤色の静脈血である
(3)子 宮:収縮不良で腹壁上触診により軟らかい体
部を触れる。輪郭ははっきりしない。子宮底は上昇す
る。
(4)全身症状:出血が多量になると出血性ショックが発
現する。自覚的には脱力感、あくび、冷感、冷汗、悪
心、嘔吐、不安感、苦悶、呼吸困難、他覚的には顔面
蒼白、チアノーゼ、頻脈、血圧低下などがみられる。
診
断:
(1)原因、素因がある
(2)胎児娩出後の多量出血
(3)子宮収縮不良
(4)急性貧血、ショック
2、胎盤素因による分娩後異常出血
胎盤娩出する前の異常出血はまず胎盤素
因によると考えてよい。
特徴:胎盤娩出および子宮収縮改善にな
ると、出血は止まる。
3、軟産道裂傷による出血
特 徴:
子宮収縮良好
分娩直後からの持続性鮮血出血
損傷が確認される
会陰裂傷
会陰裂傷は程度によって次の3種に分類される
第一度会陰裂傷:損傷が会陰の皮膚及び粘膜
の一部に限られ、筋層に達していないものであ
る。
第二度会陰裂傷:第一度から筋層(球海綿体筋、
浅会陰体筋)に及ぶが肛門括約筋は損傷されて
いない。
第三度会陰裂傷:肛門括約筋、直腸腔中隔、直
腸前壁まで損傷された場合をいう。
4、血液機能障害による出血
特 徴:
子宮収縮良好
出血血液は凝固性に乏しい
頑固な出血傾向
妊娠前、妊娠期に出血傾向
処 置
原 則:
止血
ショック
貧血の治療
感染の予防
1、子宮弛緩出血の処理
原則:子宮収縮を促進すること
(1)子宮体部のマッサジ
(2)子宮収縮剤
(3)子宮腔強填タンポン法
(4)子宮動脈結さつ
(5)腸骨動脈栓塞術
(6)子宮摘出術
2、胎盤素因による出血
(1)剥離胎盤の残留:
膀胱充満の場合
⇒ カテーテルで導尿する
⇒ 子宮マッサジ
(2)胎盤部分剥離または付着胎盤
による出血:
用手剥離によって胎盤を娩出させる
2、胎盤素因による出血
(3)癒着胎盤:
子宮摘出術を行うか
アミノプてリンを投与するか
確認方法:用手剥離を行うときに子宮壁と胎
盤の間に境がない、剥離し難い、臍帯を牽
引すると子宮体に凹状変化が感じられる.
2、胎盤素因による出血
(4)胎盤片または卵膜片の遺残
内容除去を行う
(5)胎盤カントン
エテール麻酔を行い、痙攣を直せ、用手
的に胎盤を娩出させる
3、軟産道裂傷による出血
裂傷を縫合する
4、血液凝固機能障害による出血
妊娠早期
妊娠中期
妊娠中絶術
発病の治療