今年、日本の不動産市場はマイナス金利で延命

リサーチ TODAY
2016 年 6 月 27 日
今年、日本の不動産市場はマイナス金利で延命
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
日本の不動産市場は、住宅地・商業地の地価が3年連続で上昇するなど回復基調を続けている。こうし
たなか、不動産投資市場では過熱感への懸念が根強く生じている。みずほ総合研究所は毎年日本の不
動産市場の定点観測を行ってきた。振り返れば、株式市場同様、不動産市場もアベノミクスとともに2013年
から回復の流れに入り、2014年には一部に天井感が生じ始め、2015年は引き続きピーク感が意識され、予
兆管理が話題になっていた。2016年は、こうしたピーク感への警戒モードを引きずりながら、マイナス金利も
含めた異例の金融緩和で相場が延命されていると認識してある。今日、不動産市場では一部に過熱の兆
候が確認されるようになったものの、ミニバブル期に比べ投資市場は依然として冷静であると当社は考えて
いる。
下記の図表は、キャップレートの要因分解を行い、2004年~2007年にかけてのミニバブル期と足下の回
復局面を比較したものだ。ミニバブル期のキャップレート低下は、賃料上昇の期待とリスクプレミアムの大幅
な低下によるものだった。一方、今回のキャップレート低下は専ら、金利低下によるものだ。つまり、今回の
相場の支えはマイナス金利も含めた金利低下である。
■図表 キャップレートの要因分解(丸の内・大手町エリア)
0.4
(%Pt)
0.2
リスクフリーレート
リスクプレミアム
期待成長率(逆符号)
キャップレート
0.0
-0.2
-0.4
-0.6
一方、今回のキャップレートの
低下は専ら金利低下による
-0.8
-1.0
-1.2
ミニバブル期は賃料上昇期待(逆符号)と
-1.4
リスクプレミアムの大幅低下が寄与
-1.6
ミニバブル期
(2004/10→2007/10)
今回
(2013/4→2016/4)
(注)期待成長率はエリアごとの 10 年後の想定賃料から算出した年平均成長率。
リスクフリーレートは 10 年国債利回りを使用。
(資料)日本不動産研究所「不動産投資家調査」よりみずほ総合研究所作成
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この価格のバリュエーションは収益還元法によるものであり、その考え方は次の式で示される。
■図表:不動産価格の収益還元による考え方
価格=賃料/キャップレート
キャップレート=リスクフリーレート + リスクプレミアム + 期待成長率
(資料)みずほ総合研究所
下記の図表は、キャップレートや期待成長率から算出されるリスクプレミアム(インプライド・リスクプレミア
ム)である。ここで、ミニバブル期にはリスクプレミアムが大幅に低下し、市場が過熱していたことがわかる。
一方、今回はほぼ横ばいの推移で、過熱感は感じられない。
■図表:インプライド・リスクプレミアム推移
(%)
今回はほぼ横ばい
5.5
5.0
4.5
4.0
3.5
上野
3.0
港南(品川駅周辺)
六本木
ミニバブル期は
2.5
丸の内・大手町
リスクプレミアムが大きく低下
2.0
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16 (年)
(資料)日本不動産研究所「不動産投資家調査」よりみずほ総合研究所作成
この図表に示されたように、リスクプレミアムの水準は安定している。この背景には、金利低下がある。今
回の不動産の相場を延命させている要因は、マイナス金利を含めた金利低下にあるのは、先述の式から
導出された結論である。それは、キャップレートは低下したものの、イールドギャップが高止まりしていること
と同義である。ただし、金利低下によって延命された相場の持続性については様々な見方もある。ミニバブ
ル期と比べてリスクプレミアムの低下度合から見た過熱感は確かに乏しいが、賃料上昇等の期待成長率の
上昇も限られる。そのために、金利低下に依存したバリュエーションにはやや不安がある。また、賃料も含
め、成長率に盛り上がりがないのも気がかりだ。引き続き、変化の予兆には留意が必要であろう。同時に、
政策面から考えて、不動産市場の維持の観点から、金利低下の状況を長期化させる必要も生じやすい。
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