特集 責任能力を 巡る諸問題 Ⅰ 責任能力は責任に依存する Ⅱ 責任能力の意義 安田拓人 Ⅲ 責任能力と精神 鑑定 野章五郎 Ⅳ 原因において自由な行為 石井徹哉 Ⅴ 精神 障害犯 罪者の処 遇 太田達也 6 6 法 法学 学教 教室 室 JJuullyy 22001166 N Noo..443300 瀧川裕 英 責責任能力を巡る諸問題 任能力を巡る諸問題 特 特 集 集 責任能力の問題は,古くて新しい問題であ 石井徹哉「原因において自由な行為」は,判 り,医療観察法の施行や裁判員裁判の開始な 例の状況を検討して,裁判所が,殺人・傷害に どを契機として,近時注目を集めている。本特 代表されるいわゆる刑法犯の領域では,原因 集は,このような責任能力を巡る諸問題に関す において自由な行為の法理の適用に消極的で る論考を集めたものである。 あることを示した上で,学説の状況を,①行為 瀧川裕英「責任能力は責任に依存する」は, と責 任 の同 時 存 在の原 則,② 実 行の 着手 時 法哲学の観点からの論考であり,責任能力の理 期,③正犯性の帰属の各問題について検討し, 解が刑事責任の理解に依存することを指摘し 最後に,注目すべき自説を展開している。 た上で,責任能力の理解と刑罰の正当化根拠の 太田達也「精神障害犯罪者の処遇」は,精 関係を,脳神経科学の議論にも言及しながら, 神障害者による犯罪の概況を説明した後,医 検討している。 療施設での処遇について,精神保健福祉法上 安田拓人「責任能力の意義」は,責任能力の の対応,諸外国における保安処分,心 神喪失 意義について2つの理論モデルを示した上で, 者等医療観察制度の仕組みと運用状況を紹介 裁判例を素材として実務を支える基本的発想 し,次に,刑務所における処遇について現状と を理論モデルとの関係で読み解く作業を行い, その問題点を紹介し,最後に,出所後の支援事 最後に,精神障害の類型ごとに実務における責 業と起訴猶予裁定の前後における支援の試み 任能力の判断を検討している。 を紹介している。 野章五郎「責任能力と精神鑑定」は,精神 刑法の魅力は,法解釈の問題だけでなく,哲 鑑定が実際にどのように行われているかを,公 学的問題,実証的問題,政策的問題など,幅広 判鑑定を中心に簡易鑑定なども含めて紹介し い領域に渡っていることにある。責任能力は, た上で,裁判所による責任能力の判断に対する 精神鑑定の拘束力の問題について,最高裁平成 20年判決と平成21年決定の位置づけを再検討 している。 瀧川裕英/立教大学教授 主要著作:「『他者への自由』と共和主義の自由」『逞しきリベラリストとそ の批判者たち――井上達夫の法哲学』〔共編〕 (ナカニシヤ出版,2015年), 『法哲学』〔共著〕 (有斐閣,2014年), 『責任の意味と制度――負担から応 答へ』 (勁草書房,2003年) 野章五郎/桐蔭横浜大学専任講師 主要著作:「精神鑑定の拘束力について」新報121巻11・12号(2015年), 「精神の障害にもとづく錯誤の場 合の医療 観察法における『対象行為該当 性』判断」刑事法ジャーナル41号(2014年), 「責任能力判断における裁判 官と鑑定人の関係」新報118巻11・12号(2012年) 太田達也/慶應義塾大学教授 まさにそのような刑法の魅力が詰まった問題 である。この問題を多面的に扱った本特集に よって,読者の皆さんに刑法の魅力を感じてい ただけると幸いである。 (佐伯仁志) 安田拓人/京都大学教授 主要著作:「一般予防論の現在と責任論の展望」法時88巻7号(2016年), 「故 意・責任能力について」刑法雑誌 5 5 巻2号(2016年), 『ひとりで学ぶ 刑法』〔共著〕 (有斐閣,2015年), 『刑事責任能力の本質とその判断』 (弘 文堂,2006年) 石井徹哉/千葉大学教授 主要著作:「個人的法益において侵害される利益の内実」『野村稔先生古稀 祝賀論文集』(成文堂,2015年), 「保護客体としての情報」川端博ほか編 『理論刑法学の探究(8)』 (成文堂,2015年), 「正当業務行為の正当化にお けるリスク概 念 の 意 義 」『 曽 根 威 彦先 生・田口 守 一 先 生 古 稀 祝 賀 論 文 集 (上)』 (成文堂,2014年) 主要 著 作:『リーディングス刑事政 策 』〔共 編 〕(法 律文化 社 ,2 016 年), 『刑の一部執行猶予 ――犯罪者の改善更生と再犯防止 』(慶應義塾大学出 版会,2014年), 『いま死刑制度を考える』〔共編〕 (慶應義塾大学出版会, 2014年) u ll yy 2 20 01 16 6 N No o .. 4 43 30 0 JJ u 法学教室 7 7
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