みずほリポート 2016年6月30日 最近の不動産市場について ―過熱感の検証と当面の展望 ◆過熱感が懸念される一方、マイナス金利による下支えに期待する 声もある最近の不動産市場について、定量的な分析も交えながら 検討した ◆オフィス市場ではリスクプレミアムの低下はみられず、キャップ レートへの過度の懸念は不要。賃料には当面上昇圧力がかかるが、 生産性対比上振れており、供給増をきっかけに下落する可能性 ◆住宅市場では、マイナス金利の下支えがあるとはいえ、価格の高 騰が家計の購買力を毀損しており、調整は避けられず。在庫率の 上昇は、少なくとも来年にかけて供給の下押し要因に ◆J-REIT市場では、物件レベルでは過熱感や質の低下がみられる。 もっとも、レバレッジは低く、負のショックが生じたとしても大 幅な調整に陥る可能性は低い ◆なお、東京の商業不動産市場を世界の主要都市と比べると、収益 性やボラティリティという観点から優位性が高い。海外投資家に とって引き続き一定の魅力を有する市場と言える 経済調査部主任エコノミスト 0 3- 35 91- 12 89 市川雄介 y usu ke .i ch ika wa @m izu ho -ri .c o. jp ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではあり ません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確性、 確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあ ります。 目 次 1. はじめに ·································································································· 1 2. オフィス市場の健全性 ················································································ 2 (1) リスクプレミアムは安定的 ································································· 2 (2) 生産性から上振れる賃料 ···································································· 3 3. 住宅市場の評価 ························································································· 4 (1) 価格の高騰と家計の購買力 ································································· 4 (2) 注意を要する在庫率の上昇 ································································· 5 4. J-REIT 市場の動向 ···················································································· 5 (1) 高まる J-REIT のプレゼンス ······························································ 5 (2) J-REIT を巡る警戒感と安心感 ···························································· 6 BOX 海外投資家からみた日本の不動産市場························································ 7 5. まとめ ····································································································· 8 補論 自然空室率の推計 ··················································································· 9 1. はじめに 不動産市場の緩やかな回復が続いている。今年 1 月時点の公示地価をみると、都市部では住宅地・ 商業地とも 3 年連続で上昇し、商業地ではそのペースが加速した(図表 1) 。地方圏では依然としてマ イナスが続いているが、商業地の下落率(前年比▲0.5%)がバブル崩壊後最小となるなど、中核都市 がけん引役となり地価は下げ止まりつつある。 こうした回復局面は、少なくとも経験則的に見れば、当面続く可能性が高い。横軸に土地の取引件 数、縦軸に地価変動率をとった土地循環図をみると(図表 2) 、2014 年は消費増税もあって取引件数 が落ち込んだが、直近では取引増と地価の上昇が進む回復局面の初期に循環が若返りしたことがわか る。足元の局面が 2006~07 年のような回復局面の末期でないとすれば、地価の上昇はなお数年単位で 続くと考えることができる。 一方で、市場の過熱感を指摘する声も増えている。それを端的に象徴するのが、キャップレート(還 元利回り)の低下だ。不動産投資家が期待するキャップレートの推移をみると、足元ではあらゆる物 件タイプにおいて、2000 年代半ばからサブプライム危機前までの過熱局面(以下、 「ミニバブル期」 ) を下回る水準まで低下している(図表 3) 。日銀のマイナス金利政策を背景に、長期金利との差をとっ たイールドギャップはミニバブル期ほど低下していないが(後述) 、市場ではキャップレートの低水準 に対し警戒感が強まっている 1。 以上のような状況を踏まえ、本稿では不動産市場の現状を定量的に評価するとともに、今後を展望 する。第 1 節では、オフィス市場について分析した。キャップレートの要因分解からは現時点では過 熱と言えないこと、賃料は需給面からは上昇圧力が当面かかりやすいものの、供給ショックなどをき っかけに下落に転じる可能性が高いことを示す。第 2 節では価格高騰の続くマンション市場にフォー カスし、新築市場の調整が本格化しつつあることを示す。第 3 節では、今回回復局面のメインプレー ヤーである J-REIT の動向を分析し、一定の注意が必要であるものの、総崩れの可能性は低いことを指 摘する。末尾のBOXでは、最近存在感を増しつつある海外投資家に関連し、海外から見た東京の不 動産市場の競争力について簡潔にまとめる。 1 複数の不動産関係者に対して行ったヒアリングでは、市場の過熱感や売買される物件の「質の低下」を指摘しつつも、 マイナス金利政策によって市場が下支えされているという声が多く聞かれた。一方で、マイナス金利をどのように捉え ればよいか(単純にイールドギャップだけを見ていればいいのか)、実務家の間で必ずしも消化しきれていない様子も 明らかとなった(ヒアリング実施時期:2016 年 5 月下旬~6 月上旬)。 1 2. オフィス市場の健全性 (1) リスクプレミアムは安定的 オフィス市場で注目を集めているのが、キャップレートの動向だ。キャップレートは、投資家が物 件に対して期待する利回りであり、収益(≒賃料)をキャップレートで割ることによって不動産の評 価額が求められる。すなわち、キャップレートを低く設定するということは、物件価格を高めに評価 していることになる。 不動産価格 = 純収益 キャップレート (1) 地区別に標準的なAクラスビルの想定キャップレートをみると、都内では軒並みミニバブル期を下 回る水準まで低下している(図表 4 上) 。地方都市ではまだ当時よりも高い水準にあり、その意味で 一定の選別の視点は維持されているが、少なくとも都心部については過熱感があると言う声が多い。 一方、投資収益という観点からみれば、例えば高インフレとデフレの時期に要求される利回りは異 なると考えるのが自然だろう。そこで、キャップレートと長期金利(10 年国債利回り)との差を測っ たイールドギャップをみると、地方都市だけでなく、都心部でもミニバブル期を下回っているエリア は見当たらない(図表 4 下) 。イールドギャップからは、オフィス市場に対する警戒感は一切不要と いう見方もできる。 過熱感を図る上では、キャップレートとイールドギャップのいずれかが優れているということでは なく、それぞれの変動が何によってもたらされているかを見ることが重要だ。ここで、キャップレー トは次の 3 つの要因に分解することができる 2。 キャップレート=リスクフリーレート+リスクプレミアム-期待成長率 (2) リスクフリーレートは長期金利である。期待成長率は今後期待される賃料の伸びであり、高ければ高 いほどキャップレートは押し下げられる。リスクプレミアムは投資家が安全資産(国債)などに比べ て許容するリスクの度合いを表しており、低いほどリスク選好的な動きが強まっていることになるた め、 過熱感を検証する上で一つの有力な指標となりうる。 リスクプレミアムは直接観測できないため、 キャップレートから他の 2 つの要因を控除して残差として求めることになる。なお、定義上、 「リスク プレミアム-期待成長率」がイールドギャップとなる。 (2)式に沿って算出したリスクプレミアムを、都内の主要エリアごとにプロットしたのが図表 5 だ。 これをみると、ミニバブル期ピークの 2007 年頃にかけては、どのエリアもリスクプレミアムが大きく 低下していたが、足元では当時より高い水準にある上、方向感としても今のところ横ばいで推移して 2 不動産価格を𝑃、純収益(≒賃料)を𝑅、純収益の成長率を𝑔、割引率を𝛽𝛽とすると、 𝑅 𝑅(1 + 𝑔) 𝑅(1 + 𝑔)2 𝑅 𝑃= + + +⋯= . (1 + 𝛽𝛽)3 1 + 𝛽𝛽 (1 + 𝛽𝛽)2 𝛽𝛽 − 𝑔 分母がキャップレートである。不動産はリスク資産であるから、𝛽𝛽 = リスクフリーレート+リスクプレミアムとなる。 2 いる。これは、ミニバブル期には拡大志向の強い独立系不動産企業が台頭するなど、リスク選好度の 高い投資家が増えていたのに対し、足元ではそうした投資家が限られるということが影響していそう だ。また、オフィス立地としての競争力が最も高く、 「指標銘柄」とも言うべき丸の内・大手町エリア と比較して、 現局面では各エリアで一定のスプレッドが維持されていることもみてとれる。 すなわち、 相対的に競争力が劣ると考えられる品川駅周辺や上野エリアのキャップレートが、ミニバブル期には 丸の内エリアと同等の水準まで低下したのに対し、足元では 1%ポイント近く高い水準にあり、都内 でも選別の視点が維持されていることが示唆される。 図表 6 は、(2)式に従って、丸の内エリアのキャップレートの変化を要因分解したものだ。ミニバ ブル期のキャップレートの低下は、リスクプレミアムが大きく低下したことに加え、賃料上昇期待が 大きく高まったことが寄与した。他方、今回の局面では、キャップレートの低下は専ら長期金利の低 下がもたらしたものだとわかる。なお都心部の賃料上昇期待については、丸の内に限らず多くのエリ アでミニバブル期よりも低く、投資家が当時と比べて広く慎重化した様子がうかがわれる(図表 7) 。 以上のように、リスクプレミアムが安定的に推移していることから、現時点ではオフィス市場の過 熱感を懸念するほどではないと言えよう。もっとも、マイナス金利政策が長期化すれば、今後リスク テイクが活発化する可能性は十分にある。今まで以上に先行きのリスクプレミアムの動向に注意が必 要だ。 (2) 生産性から上振れる賃料 続いて、(1)式の分子の中核を占める賃料について検討する。オフィス市場の需給を改めてみると、 全国的に空室率の低下が顕著に進んでいる(図表 8)。大阪や名古屋では大規模な新規供給の影響に より、空室率は一時的に上昇したものの、その後は再び低下トレンドに復している。需給の改善が進 む中、ミニバブル期よりは緩やかなものの、都心部の募集賃料は2013年末から10%強上昇した3(図表 8)。 賃料の上昇は今後も続くのだろうか。図表 9は、マクロ経済学におけるNAIRU(インフレ率を加速 も減速もさせない失業率)の概念を援用して、賃料上昇率を加速も減速もさせない自然空室率を推計 したものだ(推計方法は補論を参照)。想定する自然空室率のボラティリティの大きさによって水準 感は変わってくるため、幅を持ってみる必要があるが、足元の4%程度の空室率は、5%台前半と推計 される自然空室率を大きく下回っている。需給面からは、当面賃料に上昇圧力がかかりやすい状況に あると言える。 しかし、こうした賃料の上昇は、持続可能でない可能性が高い。マクロ経済では、長期的な賃金の 変動にとって重要なのは循環的な労働需給ではなく、投入量当たりの付加価値を表す労働生産性の動 向である。それとのアナロジーで言えば、オフィス賃料の水準は、短期的には需給の影響ではなく、 中長期的なオフィスの「生産性」によって評価されるべきであろう。 3 なお、募集賃料ではなく成約ベースでみても、東京 23 区の賃料は同期間に 10%強上昇している(ザイマックス不動産 総合研究所のデータによる)。 3 実際、オフィスの生産性と賃料を並べてみると、多くの期間でパラレルに動いていることがわかる (図表 10)。かい離がみられるのは2000年代半ばからリーマン・ショック後にかけてだが、この時 期はまさにミニバブル期である。生産性と比較することは、賃料上昇が健全なものかバブルなのかを 判別する目安にもなりそうだ。足元については、生産性の下落に歯止めがかかり、ほぼ横ばいとなる 中、賃料は明確に上向いている。その結果、ミニバブル期ほどでないものの、賃料は生産性から再び 上振れしている状況だ。いずれは賃料の調整が避けられないことが示唆される。 賃料が下落に転じる時期を見通すことは難しいが、きっかけとして蓋然性が高いのはやはり供給の 増加だろう。都内の大規模オフィスの供給は、2018年以降に増加する見通しである(図表 11)。大 量供給の影響が懸念された2003年や2012年時ほどではないが、3年間にわたって一定量の供給がなさ れることで、需給は緩和しやすくなる。結果として、生産性が示唆する程度の水準まで賃料が下落し ても不思議ではない。マイナス金利政策という追い風があるとはいえ、遅くとも2018年には市場の潮 目が変わる可能性が高い。 なお、中期的には、働き方の変化という大きな流れにも目を向ける必要がある。オフィスワーカー 一人当たりの床面積は、今回の回復局面でも減少傾向をたどっている(図表 12)。在宅勤務の拡大 やオフィス内におけるフリーアドレス制の広がりといった動きは、中期的なオフィス需要の下押し要 因となるだろう。こうしたトレンドが継続すれば、市場が従来ほど供給の増加を消化できなくなる可 能性もある。 3. 住宅市場の評価 (1) 価格の高騰と家計の購買力 次に、住宅市場についてみてみよう。新築マンション市場を特徴づけるのは、何より発売価格の高 騰である。特に首都圏の新築価格は、2012 年半ば頃から騰勢を強め、足元ではミニバブル期を大きく 上回り、1990 年代初頭以来の高水準に達している(図表 13)4。急ピッチの価格上昇を背景に、新た に売り出した物件のうち売却に至った割合を表す初月契約率は、千葉・埼玉といった郊外エリアを中 心に、このところ低迷が目立っている(図表 14) 。 マイナス金利政策の導入を受けて、住宅ローン金利は大きく低下しており、今後需要が刺激される 可能性はある(図表 15) 。しかし、家計からすれば、金利低下の恩恵は価格の高騰によって相殺され ることになりそうだ。借り入れや貯蓄によって家計(勤労者世帯)が調達できる金額と新築発売価格 との比率を測った「住宅取得能力」は、金利の低下にもかかわらず、2012 年以降下落が続いている(図 表 16 左) 。マンション価格と住宅ローン金利のみを反映させて足元の取得能力を計算すると、一段と 低下することになる。指数の変動の内訳をみると、金利低下が一定の下支え要因とはなっているもの の、価格の高騰がそれを上回る押し下げ要因となっていることがわかる(同右) 。マイナス金利の導入 4 単位面積当たりの発売単価でみても同様の傾向である。 4 後、住宅ローンの借り換え件数が大きく増える一方、新規購入にそれほど目立った動きがないのは、 こうした家計の取得能力の低下が背景にあると言える。価格面を中心に、首都圏における新築マンシ ョン市場は今後調整が本格化するだろう。 (2) 注意を要する在庫率の上昇 販売不振を受けて、足元では在庫が大きく積み上がっている。マンション在庫率を「月末全残戸数 ÷総販売戸数」として計算すると、やはり首都圏で上昇が鮮明となり、足元では 2 カ月を上回って推 移していることがわかる(図表 17) 。明確な閾値があるわけではないが、平成バブル崩壊後の局面で 在庫率が 2 カ月を継続的に上回ったのはミニバブル期のみであることを踏まえれば、注意を要する水 準と言える。 こうした在庫の積み上がりは、当面、新規供給の重石となるだろう。時系列分析の手法を用いて首 都圏の発売戸数と在庫率のダイナミックな関係を抽出すると、在庫率の予期しない上昇は 2 年近くに わたって発売戸数を有意に押し下げるという結果が得られた(図表 18)5。2015 年頃から上向いた在 庫率は、少なくとも来年にかけての発売を抑制する要因となりそうだ。 なお、中古市場も2013年頃から価格上昇が鮮明となっているが(図表 19) 、取引件数は上向き基調 を維持しており、需要に陰りはみられない(図表 20) 。新築市場は調整が本格化する一方、中古市場 では引き続き回復局面が続きそうだ。 4. J-REIT 市場の動向 (1) 高まる J-REIT のプレゼンス 今回の不動産市場の回復局面は、J-REIT がメインプレーヤーであるというのが一つの特徴だ。ミニ バブル期は独立系の新興不動産企業が隆盛を極めたが、崩壊後は多くの新興企業が退出を迫られた。 例えば金(2013)によれば、90 年代から 2000 年代半ばにかけて上場した新興の分譲マンションデベ ロッパー、流動化プレーヤー、独立系アセットマネージャー主要 60 社のうち、35 社が法的・私的整 理や他社による救済に直面したほか、11 社は破綻こそ免れたものの長期低迷などに陥った。一方、 J-REIT の銘柄数はミニバブル期に急増した後、数年間の停滞が続いたが、アベノミクスの開始後の時 期は再び増勢が鮮明となっている(図表 21) 。 証券化の対象となった不動産の取得額をみても、ミニバブル期は不動産の流動化を主目的とした新 興企業が多かったこともあり、J-REIT 以外のプレゼンスが高かったが、今回の局面では J-REIT のシ ェアが高く、全体の金額が減少する中でも J-REIT が一定の資産取得を続けていることがわかる(図表 22) 。J-REIT の保有資産額(ストック)は 14 兆円程度と、ミニバブルの崩壊後に倍増し、かつては資 5 試算にあたっては、発売ショックは在庫率に直ちに影響を与える一方、在庫率ショックの発売戸数への影響は翌期以 降に表れるという想定に基づいて在庫率ショックを識別した(コレスキー分解)。発売戸数への影響が統計的に有意か どうかは、破線で表される 2 標準偏差の信頼区間に 0 が含まれていないかどうかで判断される。 5 産規模で大きく水をあけられていた私募ファンドを上回る勢いである(図表 23)6。 なお、図表 24にあるように、近年は私募REITの拡大も顕著である。資産規模はJ-REITと比べまだ 小さいが、低金利に悩む地域金融機関などの運用マネーの受け皿となり7、拡大ペースは著しい。デー タのアベイラビリティから、本節ではJ-REITに焦点を当てるが、今後は私募REITの動向にも目を向け る必要性があろう。 (2) J-REIT を巡る警戒感と安心感 東証 REIT 指数は、2015 年初までアベノミクスの恩恵を受ける形で、株価と同様に上昇が続いた。 夏場以降は新興国経済の減速に対する懸念を背景に金融市場が不安定化する中、REIT 指数も軟調な展 開となったが、2016 年入り後はマイナス金利政策の導入もあって再び上向いている(図表 25) 。この 間、配当利回りは安定的に推移しており、長期金利に対するスプレッドもほぼ横ばいにとどまってい る(図表 26) 。イールドスプレッドが 1%を下回る水準まで低下していたミニバブル期とは異なり、 全体としてみれば過熱感は見られない状況だ。 もっとも、J-REIT 市場に関しては、銘柄数の急増に対する警戒に加え、物件レベルで「質の低下」 を指摘する声もある。都心部におけるAクラスの大規模オフィスビルといった優良物件が不足してい ることを背景に、従来は投資対象として検討されにくかった物件が取得されるケースや、従来の基準 からすれば割高な価格で取得する例が出てきているという 8。そのような取引事例を全て挙げること は難しいが、その傾向はデータからも一定程度読み取れる。例えば投資物件の所在地をみると、足元 では東京以外の割合が過去最高となっており、J-REIT の投資対象が都心部から地方都市へにじみ出て いる様子がうかがわれる(図表 27) 。取得物件のキャップレートも、全体的に低下傾向が続く中で、 直近では 2%台の案件が登場するなど(図表 28) 、やや「無理をしている」ケースもあるようだ。 過熱感や質の低下がみられる一方、財務面の不安は少ない。 「有利子負債÷総資産」で算出する Loan to Value(LTV)は、最近上場した新興 REIT も含めて総じて 50%前後と、レバレッジは低水準に とどまっている(図表 29) 。そもそも J-REIT には運用期間の制限がないことから、不動産市場に負の ショックが生じたとしても、物件の投げ売りが生じる可能性は低い。これは、有期限の私募ファンド や商業不動産担保証券(CMBS、不動産関連ローンを担保にして発行された証券化商品)が主要な投資 商品であったミニバブル期とは異なる点である。 結局、J-REIT 市場を起点とした大規模な混乱は生じにくく、第 2 節や第 3 節で詳述したような、不 動産市場のファンダメンタルズを点検していくことが重要であると言える 9。 6 J-REIT は取引所価格で売買され、運用期間に制限がないのに対し、私募ファンドは鑑定評価額に基づくため株価との 相関が低い一方、中途解約ができず、投資期間の満了時には保有不動産を売却することになる。なお、私募 REIT は、 鑑定評価額に基づくことや非上場である点は私募ファンドと同様だが、J-REIT より流動性は低いものの投資口の払 戻・譲渡が可能であり、投資期間に制限がない(詳細はみずほ総合研究所(2014)参照)。 7 不動産証券化協会によると、私募 REIT に対する出資総額の内訳は、地域金融機関が 40%、年金と中央金融法人が 23% ずつ、事業会社等が 14%となっている(2016 年 3 月末現在)。 8 当社のヒアリングによる(脚注 1 参照)。 9 なお、日銀による J-REIT の買い入れが年間 900 億円ペースで進んでいることも、心理的な効果を含めて市場の下支え 6 BOX 海外投資家からみた日本の不動産市場 国内不動産市場を巡っては、海外マネーの動向が話題になることが多い。国内商業不動産の純取得 額(取得-譲渡)をみると、足元では譲渡超となるなど、海外投資家のプレゼンスは必ずしも大きく ない(図表 30) 。もっとも、これは海外投資家が近年買い手としてだけでなく売り手としても存在感 を高めているためであり、売買両面のシェアはミニバブル期よりも高まっている(図表 31) 。それで もJ-REITのような市場のけん引役となっているわけではないが、海外マネーは象徴的な案件に関わる ことが多く、印象に残りやすいようだ。 こうした海外マネーの動向に関しては、海外投資家からみて国内市場にどの程度の投資妙味がある かを考える必要がある。ここでは、世界の主要都市と比較されることの多い東京のオフィス市場につ いてみてみよう。 グレードAオフィスのキャップレートをみると、東京は他の主要都市に見劣りしている(図表 32) 。 しかし、低金利が続いてることを背景に、調達金利を勘案したイールドギャップは相対的に高い水準 にある(図表 33) 。賃料や空室率の変動をみても、東京は比較的安定しており、市場のボラティリテ ィが小さいという見方もできる(図表 34、図表 35) 。 こうしたオフィス市場の特性を比較したのが図表 36である。これは、横軸にイールドギャップで 表される平均収益性、縦軸に賃料変化率の標準偏差で計測したボラティリティをとり、各都市をプロ ットしたものだ。右下方向に行くほど、ボラティリティが小さく収益性が高いため、投資妙味が大き いということになる。 これをみると、東京の優位性は上位に位置していることが分かる。香港、シンガポール、上海とい ったアジアの都市は、収益性が東京より低い上、ボラティリティが大きい10。またアジアに限らず、 東京の優位性はロンドンやニューヨークなどよりも高い格好だ。投資判断に関しては将来の成長期待 や為替などの要因も大きいため、収益性とボラティリティのみをもって投資マネーの流入が続くとは 言えないが、ここでみたような東京市場の特性は、海外投資家を引き付ける一定の強みとなるだろう。 材料となろう。日銀は 2010 年末から J-REIT の買い入れを行っており、2013 年 4 月の量的・質的緩和の導入に伴い買 い入れペースは年間 300 億円ペースとされたが、2014 年 10 月には年間 900 億円ペースに引き上げられた。また、2015 年 12 月には銘柄別の買い入れ限度額が発行済み投資口総数の 5%から 10%に変更された。2016 年 5 月末現在、日銀の 保有割合が 5%超となっているのは 13 銘柄である。 10 香港・シンガポールの最近の不動産市場については稲垣・玉井(2016)、中国の不動産市場についてはみずほ総合研 究所(2016)を参照。 7 5. まとめ 本稿では、過熱感が懸念される一方、マイナス金利による下支えに期待する声もある最近の不動産 市場について、定量的な分析も交えながら検討した。改めてポイントをまとめれば次のとおりである。 オフィス市場では、リスクプレミアムの低下が今のところ限定的なため、キャップレートに関する過 度の懸念は不要である。都心部の賃料は短期的には上昇圧力がかかりやすい状況だが、オフィス生産 性から上振れ気味で推移していることから、必ずしも持続可能ではなく、供給増をきっかけに下落す る可能性が高い。住宅市場では、マイナス金利の下支えがあるとはいえ、価格の高騰が家計の購買力 を毀損しており、市場の調整は避けられないだろう。また、在庫率の上昇は少なくとも来年にかけて 新規供給の下押し要因になると見込まれる。今回の回復局面のけん引役となっているJ-REITについて は、銘柄数が急増しているほか、エリアやキャップレートといった観点からは物件レベルで過熱感や 質の低下がみられる。一方でレバレッジは低く、仮に調整局面に陥るとしても物件の投げ売りが生じ るような状況ではないだろう。 総じてみれば、新築マンションを除き、不動産市場が早晩ピークアウトする可能性は低いと考えら れる。しかし、マイナス金利政策の長期化が見込まれる中、過度なリスクテイクが活発化しないかど うか、これまで以上に注視していくことが求められる局面にあると言える。 参考文献 稲垣博史・玉井芳野(2016) 「香港・シンガポール不動産価格の下落をどうみるか」みずほインサイ ト、6月2日 金惺潤(2013) 『不動産投資市場の研究』東洋経済新報社 廣瀬康生・鎌田康一郎(2002) 「可変NAIRUによるわが国の潜在成長率」日本銀行 Working Paper Series、 02-8 みずほ総合研究所(2014) 「私募REITについて」年金コンサルティングニュース、2014.4-① みずほ総合研究所(2016) 「みずほ中国経済情報」2016年5月号 8 補論 自然空室率の推計 本稿では、賃料上昇率が加速も減速もしない空室率の水準を自然空室率と定義し、次のモデルを推 計した。 𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑡𝑡 = 𝛽𝛽1 𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑡𝑡𝑡𝑡𝑒𝑒 − 𝛽𝛽2 (𝑉𝑉𝑡𝑡 − 𝑉𝑉𝑡𝑡∗ ) + 𝜀𝜀𝑡𝑡 (A1) ∗ 𝑉𝑉𝑡𝑡∗ = 𝑉𝑉𝑡𝑡−1 + 𝜂𝜂𝑡𝑡 (A2) ここで、𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑡𝑡 は賃料の前年比上昇率、𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑡𝑡𝑡𝑡𝑒𝑒 は期待賃料上昇率、𝑉𝑉𝑡𝑡 は空室率、𝑉𝑉𝑡𝑡∗は自然空室率であ る。オフィスデータは三鬼商事による(都心5区の募集賃料と平均空室率) 。期待賃料は適応的期待を 仮定し、賃料実績値の後方4四半期移動平均値を用いた。 自然空室率は直接観測できないが、(A1)式を観測方程式、(A2)式を状態方程式として状態空間モデ ルを構成すれば、カルマン・フィルターを用いて各種パラメータを推計することができる。推計に当 たっては、自然空室率を固定と仮定(𝑉𝑉𝑡𝑡∗ = 𝑉𝑉 ∗ )した(A1)式を推計し、得られたパラメータを上記モ デルの初期値とした。また、自然空室率がある程度滑らかに変動するように、𝜂𝜂𝑡𝑡 の分散を𝜀𝜀𝑡𝑡 の10分の1 と設定した11。 推計結果は次の通り(推計期間はいずれも1997Q2~2016Q1) 。 (固定モデル) 𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑡𝑡 = 0.83𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑡𝑡𝑡𝑡𝑒𝑒 − 0.49(𝑉𝑉𝑡𝑡 − 𝑉𝑉 ∗ ) + 𝜀𝜀𝑡𝑡 ∗ (12.31) 𝑉𝑉 = 5.76 (9.71) (2.77) ※()内はt値 (可変モデル) 𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑡𝑡 = 0.49𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑟𝑡𝑡𝑡𝑡𝑒𝑒 − 2.18(𝑉𝑉𝑡𝑡 − 𝑉𝑉𝑡𝑡∗ ) + 𝜀𝜀𝑡𝑡 𝑉𝑉𝑡𝑡∗ = (4.39) ∗ 𝑉𝑉𝑡𝑡−1 + 𝜂𝜂𝑡𝑡 (5.89) 𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉(𝜂𝜂𝑡𝑡 ) = 0.14, 𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉(𝜂𝜂𝑡𝑡 ) = 0.1𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉𝑉(𝜀𝜀𝑡𝑡 ) 11 (4.14) ※()内はz値 以上のセットアップは、NAIRU に関する廣瀬・鎌田(2002)を参考にした。 9 図表 1 公示地価変動率の推移 三大都市圏と地方圏 12 (%) 地方中核都市と他の地方圏 三大都市圏・商業地 8 (%) 地方中核都市・住宅地 三大都市圏・住宅地 10 6 地方圏・商業地 8 地方圏・住宅地 6 地方中核都市・商業地 他の地方圏・住宅地 4 4 他の地方圏・商業地 2 2 0 0 -2 ▲2 -4 ▲4 -6 ▲6 -8 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 2011 16 2012 2013 2014 2015 (年) 2016 (年) (資料) 国土交通省「地価公示」 図表 2 土地循環図 全国 東京圏 8 3 取引増加 価格上昇 取引減少 価格上昇 (地価変動率、%) 1 0 4 2015年 2006年 2014年 -1 -2 -3 2010年 -4 -5 -15 -10 -5 2006年 2 2015年 2014年 2013年 0 2010年 -2 -4 -6 取引増加 価格下落 取引減少 価格下落 -6 取引増加 価格上昇 取引減少 価格上昇 6 (地価変動率、%) 2 0 5 -8 -10 10 取引増加 価格下落 取引減少 価格下落 -15 -10 (土地取引件数・前年比、%) -5 0 5 10 (土地取引件数・前年比、%) (注) 地価は翌年 1 月 1 日時点の変動率を表示。取引件数は売買による所有権移転を伴った登記件数。 (資料) 国土交通省「地価公示」 、法務省「法務統計月報」より、みずほ総合研究所作成 図表 3 タイプ別キャップレート (%) 7.0 6.0 5.0 4.0 オフィス 物流施設 ビジネスホテル 3.0 住宅 商業店舗 2.0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注) 各年 4・10 月調査。想定物件は次の通り:オフィスは丸の内・大手町地区の A クラスビル、住宅は東京城南地区のワンルーム、 物流施設は東京湾岸部のマルチテナントタイプ、商業店舗は銀座地区の高級専門店、ビジネスホテルは東京の主要駅周辺物件。 (資料) 日本不動産研究所「不動産投資家調査」より、みずほ総合研究所作成 10 図表 4 オフィスのエリア別キャップレートとイールドギャップ キャップレート (%) ミニバブル期ピーク(2007/10) 直近(2016/4) 名古屋 大阪 神戸 広島 福岡 その他 横浜 名古屋 大阪 神戸 広島 福岡 その他 千葉 横浜 仙台 千葉 札幌 さいたま 仙台 さいたま 札幌 大崎 上野 池袋 渋谷 港南 西新宿 六本木 赤坂 汐留 虎の門 秋葉原 神田 日本橋 丸の内 8.0 7.5 7.0 6.5 6.0 5.5 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 イールドギャップ 8.0 (%) 7.0 6.0 5.0 4.0 3.0 2.0 1.0 大崎 上野 池袋 渋谷 港南 西新宿 六本木 赤坂 汐留 虎の門 秋葉原 神田 日本橋 丸の内 0.0 (資料) 日本不動産研究所「不動産投資家調査」より、みずほ総合研究所作成 図表 6 図表 5 インプライド・リスクプレミアム キャップレート変動の要因分解 (丸の内エリア) (%) 0.4 5.5 (%Pt) 0.2 5.0 期待成長率(逆符号) リスクプレミアム リスクフリーレート 0.0 -0.2 4.5 -0.4 4.0 -0.6 3.5 -0.8 丸の内・大手町 3.0 2.5 六本木 -1.0 港南(品川駅周辺) -1.2 上野 -1.4 2.0 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) キャップレートの変化 -1.6 ミニバブル期 (2004/10→2007/10) 今回 (2013/4→2016/4) (注) 本文(2)式よりリスクプレミアムを逆算。期待成長率はエリアごとの 10 年後の想定賃料から算出した年平均成長率、リスクフリ ーレートは 10 年国債利回りを使用 (資料) 日本不動産研究所「不動産投資家調査」より、みずほ総合研究所作成 11 図表 7 丸の内・大手町 (現在=100) 112 エリア別期待賃料 虎の門 (現在=100) 106 110 105 108 104 106 103 104 102 102 101 2007/10 100 98 100 2016/4 96 2007/10 99 2016/4 98 94 97 現在 1年 2年 5年 10年 六本木 (現在=100) 106 現在 1年 105 104 104 103 103 102 102 101 101 100 2007/10 100 10年 2007/10 99 99 2016/4 98 5年 港南(品川駅周辺) (現在=100) 106 105 2年 2016/4 98 97 97 現在 1年 2年 5年 10年 渋谷 (現在=100) 106 現在 1年 105 104 104 103 103 102 102 101 101 100 2007/10 5年 10年 5年 10年 上野 (現在=100) 106 105 2年 2007/10 2016/4 100 99 99 2016/4 98 98 97 97 現在 1年 2年 5年 10年 現在 (注) 調査時の賃料水準を 100 としたときの、1・2・5・10 年後の予想賃料を表す。 (資料) 日本不動産研究所「不動産投資家調査」より、みずほ総合研究所作成 12 1年 2年 図表 8 オフィス市場の概観 空室率 (%) (%) 16 25 東京 14 札幌 名古屋 20 仙台 大阪 12 福岡 10 15 8 10 6 4 5 2 0 0 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 05 16 (年) 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) 募集賃料 (2005年末=100) (2005年末=100) 130 106 東京 125 名古屋 120 大阪 札幌 仙台 福岡 104 102 115 100 110 98 105 96 100 94 95 92 90 90 85 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 06 16 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (年) (注) 直近は 2016 年 5 月。 (資料) 三鬼商事「オフィスビル市況」 13 図表 9 10 自然空室率の推計 (%) 空室率(実績値) 9 8 7 6 5 4 3 2 自然空室率(推計値) 1 0 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注) 想定するボラティリティによって水準感は変わってくるため、幅を持ってみる必要がある。詳細は補論参照。 (資料) 三鬼商事より、みずほ総合研究所作成 図表 10 生産性とオフィス賃料 140 (2005年=100) オフィス生産性 オフィス賃料 130 120 110 100 90 80 70 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年) (注) 1. オフィス賃料は三鬼商事調べの都心 5 区の募集賃料。オフィス生産性=名目 GDP÷都心 5 区の稼動床面積。 2. 2016 年は 3 月までの値。 (資料) 内閣府、三鬼商事より、みずほ総合研究所作成 図表 11 都内オフィスビルの供給計画 図表 12 一人当たりオフィス床面積 (坪/人) 4.05 (万m2) 250 その他20区 200 見通し 4.00 都心3区 2016-20年平均 150 3.95 2000年代平均 100 3.90 50 3.85 3.80 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 (年) (注) 事務所延べ面積 1 万平米以上のオフィスビル。2015 年末時点。 (資料) 森ビル「東京 23 区の大規模オフィスビル市場動向調査」 14 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年) (注) 東京 23 区。面積は契約上の賃借面積(会議室等含む)。 (資料)ザイマックス不動産総合研究所「1人あたりオフィス 面積調査」 図表 13 新築マンション発売価格(四半期平均) 7,000 (万円) 6,500 6,000 5,500 5,000 首都圏 4,500 4,000 近畿圏 3,500 3,000 90 92 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年) (資料) 不動産経済研究所 図表 14 初月契約率の推移 85 (%) 80 75 70 65 都内 60 神奈川 55 千葉・埼玉 50 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注) 4 四半期移動平均値。 (資料) 不動産経済研究所より、みずほ総合研究所作成 図表 15 住宅ローン金利の推移 (%) 2016/1/29 マイナス金利の導入 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 2010 2011 2012 2013 2014 (注) 返済期間が 21 年以上 35 年以下、融資率が 9 割以下の場合の最低金利。 (資料) 住宅金融支援機構 15 2015 2016 (年) 図表 16 住宅取得能力指数の推移(左)と要因分解(右) 115 (2005年=100) (前年比、%) 8 110 105 6 100 4 95 価格 貯蓄 住宅ローン金利 可処分所得 価格と金利 のみ反映 2 価格と金利のみ反映 0 90 -2 85 -4 80 -6 75 -8 70 -10 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014 2016 (年) 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (年) (注) 1. 住宅取得能力指数=資金調達可能額/マンション価格。資金調達可能額=借入可能額+貯蓄額。借入可能額は、返済額を年収 の 25%以内、返済期間を 30 年として算出(いずれも勤労者世帯) 。価格は首都圏の発売価格。 2. 2016 年の値は、所得と貯蓄を 2015 年から横ばいとし、1~5 月の価格(季節調整値)と住宅ローン金利の平均値を用いて試算。 (資料) 不動産経済研究所、総務省「家計調査」等より、みずほ総合研究所作成 図表 17 在庫率の推移 4.5 (カ月) 首都圏 4.0 近畿圏 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0 94 96 98 00 02 04 06 08 10 12 14 16 (年) (注) ここでは「全残戸数÷総販売戸数(3 カ月移動平均値) 」とした。 (資料) 不動産経済研究所より、みずほ総合研究所作成 図表 18 在庫率の上昇に対する発売戸数の反応 6 (%) 4 2 0 -2 -4 -6 -8 -10 -12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 (四半期) (注) 発売戸数(対数値)と在庫率(いずれも四半期値)を変数とするベクトル自己回帰(VAR)モデルを推計し、1 標準偏差の在 庫率ショックを与えた時の発売戸数の変化を図示(推計期間:2000Q1~2016Q1、ラグ数=4。外生変数として季節ダミーを含む) 。 破線は 2 標準偏差。 (資料) 不動産経済研究所より、みずほ総合研究所作成 16 図表 19 中古マンション価格 (2010=100) 135 東京都 130 大阪府 125 全国 120 115 110 105 100 95 90 07 08 09 10 11 12 14 13 15 16 (年) (注) 品質調整済みの価格指数。全国平均は 2008 年 4 月以降。 (資料) 国土交通省「不動産価格指数」より、みずほ総合研究所作成 図表 20 中古マンション取引件数 14,000 (件) 東京都 南関東(東京除く) 13,000 京阪神 その他 12,000 11,000 10,000 9,000 8,000 7,000 6,000 09 10 11 12 13 (注) 4 四半期移動平均値。 (資料) 国土交通省「不動産価格指数」より、みずほ総合研究所作成 17 14 15 16 (年) 図表 21 J-REIT 銘柄数の推移 図表 22 証券化対象不動産の取得額 (兆円) 55 10 50 9 45 (件) JREIT 8 40 2000 件数(右目盛) 7 35 6 30 1500 5 25 4 20 1000 3 15 500 2 10 1 5 0 0 0 98 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 00 02 04 06 08 10 12 14 (年度) (年) (資料) 国土交通省「不動産証券化の実態調査」 (資料)東証より、みずほ総合研究所作成 図表 23 J-REIT と私募ファンドの資産額 20 2500 JREIT以外 図表 24 私募 REIT の資産額 (億円) 18,000 (兆円) 18 16,000 資産規模 16 14,000 投資法人数(右目盛) 14 18 16 14 12,000 12 10,000 10 12 10 8 6 4 プライベートファンド J-REIT 2 8,000 8 6,000 6 4,000 4 2,000 2 0 0 07 08 09 10 11 12 13 14 2010 15 2011 2012 2013 2014 (年) (注) 各年 6・12 月調査。 (資料) 三井住友トラスト基礎研究所 0 2015 (年) (資料) 不動産証券化協会 図表 25 東証 REIT 指数の推移 図表 26 J-REIT のイールドスプレッドの推移 (Pt) 2500 (円) 25000 20000 2000 10 (%) 8 予想配当利回り(①) 6 15000 1500 4 10000 1000 5000 0 500 日経平均株価 東証REIT指数(右目盛) 0 11 12 13 14 15 16 10年国債利回り(②) -2 0 10 イールドスプレッド (①-②) 2 (年) (注) 月中平均。 (資料) Bloomberg より、みずほ総合研究所作成 05 06 07 08 09 10 11 12 13 (注) 月末値。 (資料) Bloomberg より、みずほ総合研究所作成 18 14 15 16 (年) 図表 27 J-REIT の投資物件所在地 100% 90% その他 80% 70% 60% 50% 40% 30% 20% 東京 10% 0% 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注) 金額ベース。2016 年は 4 月末時点。 (資料)J-REIT 公表資料より、みずほ総合研究所作成 図表 28 J-REIT 取得物件のキャップレート (直接還元利回り) 7.5% オフィス 7.0% 商業 6.5% 6.0% 5.5% 5.0% 4.5% 4.0% 3.5% 3.0% 2.5% 01/04 04/01 06/10 09/07 12/04 14/12 17/09 (取得年月) (資料)J-REIT 公表資料より、みずほ総合研究所作成 図表 29 J-REIT の LTV(直近決算期) (LTV、倍) 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0 2001/4 2004/4 2007/4 2010/4 (上場時期) (資料) J-REIT 公表資料より、みずほ総合研究所作成 19 2013/4 2016/4 図表 30 商業用不動産の純取得額(投資セクター別) (億円) 20,000 J-REIT 15,000 10,000 SPC・私募REIT等 5,000 建設・不動産 0 -5,000 事業法人・公共 等・その他 -10,000 外資系法人 -15,000 -20,000 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年度) (注) 金額ベース。 (資料) 都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」より、みずほ総合研究所作成 図表 31 商業用不動産の売買シェア 譲渡 取得 100% 90% 90% 80% 80% 70% 70% 60% 60% 50% 50% 40% 40% 30% 30% 20% 20% 10% 10% 0% 0% 外資系法人 事業法人・公共 等・その他 建設・不動産 SPC・私募REIT等 J-REIT 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 100% (年度) (年度) (注) 金額ベース。 (資料) 都市未来総合研究所「不動産売買実態調査」より、みずほ総合研究所作成 20 図表 32 主要都市のプライムイールド 7 図表 33 主要都市のイールドギャップ (%) 5.0 (%) フランクフルト ニューヨーク 香港 東京 4.5 6 4.0 5 ロンドン 上海 シンガポール 3.5 3.0 4 2.5 3 2.0 2 1 1.5 ロンドン 上海 シンガポール フランクフルト ニューヨーク 香港 東京 1.0 0.5 0 2012 2013 2014 2015 0.0 2016 (年) 2012 (注) グレードAオフィスの利回り。 (資料)JLL より、みずほ総合研究所作成 (前年比、%) 25 20 2014 2015 2016 (年) (資料)JLL より、みずほ総合研究所作成 図表 34 主要都市のオフィス賃料 フランクフルト 上海 東京 2013 ロンドン 香港 図表 35 主要都市のオフィス空室率 ニューヨーク シンガポール フランクフルト 上海 東京 (%) 16 ロンドン 香港 ニューヨーク シンガポール 14 15 12 10 5 10 0 8 -5 6 -10 4 -15 2 -20 2012 2013 2014 2015 0 2016 2012 2013 2014 (年) (資料)JLL より、みずほ総合研究所作成 図表 36 主要都市のオフィス市場比較 25 モスクワ ボラティリティ 15 優位性大 シンガポール 香港 10 上海 パリ ロンドン ムンバイ ニューヨーク 5 シドニー 東京 フランクフルト 0 0 2016 (年) (資料)JLL より、みずほ総合研究所作成 20 2015 1 2 3 収益性、% (注) 2011Q2~2016Q1 のデータを用いて算出(ただし、ムンバイは 2012Q1~) 。 収益性はイールドギャップの期間平均値。ボラティリティは各都市の賃料変化率から計算。 (資料) JLL より、みずほ総合研究所作成 21 4
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