自動車部品メーカーのグローバル格付手法

CORPORATES
JUNE 24, 2016
RATING
METHODOLOGY
自動車部品メーカーのグローバル
格付手法
Global Automotive Supplier Industry
目次:
概要
1
格付対象について
2
格付手法について
3
本格付手法は、2013 年 5 月発行の格付手法 "Global Automotive Supplier Industry "
(ムーディーズ・ジャパン版「自動車部品メーカーのグローバル格付手法」2013 年 8
月)を代替するものである 1。無効のリンクや一部の発行体固有の情報が削除された。
本変更に伴う格付への影響はない。
格付マッピング表の前提と限界、
およびその他の格付上の考慮事項に
ついての議論
10
他の格付上の考慮事項
11
付録 A: 世界の自動車部品業界の
格付マッピング表
13
関連リサーチ
15
コンタクト:
東京
03.5408.4100
概要
本格付手法は、ムーディーズが世界の自動車部品メーカーの信用リスクを評価する
際のアプローチを説明するものである。本稿は、発行体、投資家、およびその他の市
場参加者に、自動車部品メーカーが抱える主要な定性・定量リスク要因が個々の格
付にどう影響を与えるかを理解する一助となることを目的としている。本稿は、ムーデ
ィーズの格付に反映されるすべての要因を網羅しているわけではないが、この業界の
格付において、通常、最も重要と考えられる定性的な考慮事項、財務情報及び財務
指標の理解に役立つと考える。
本稿には、自動車部品メーカーの信用力の推定に用いる参照ツールとして、詳細な
格付マッピング表が掲載されている。格付マッピング表は、自動車部品メーカーに格
付を付与するあたり、通常、最も重要とされる要因を示しているが、格付上の全ての考
慮事項を含んでいるわけではない。マッピング表の各要因のウエイトは格付の決定にお
ける重要性の推定を示しているものであり、実際の重要性は大きく異なることがある。
また、実際の格付には将来の予測が織り込まれており、過去の実績とは異なることもあ
る。従って、マッピング表により推定された格付が、実際の格付と一致しない例がある。
1
本格付手法は、一定の規制要件が充足されるまでは効力を発しない法管轄域もある。
ムーディーズ・ジャパン株式会社
CORPORATES
マッピング表は以下の 5 つの要因を重視している。
1.
事業規模
2.
競争上の地位
3.
収益性とキャッシュフロー
4.
財務方針
5.
カバレッジとレバレッジ
主要要因は複数のサブ要因で構成される。
本格付手法は、自動車部品メーカーに対する格付において、考慮すべき全ての要因を網羅したもの
ではない。格付分析では、詳細には記述していないが全ての業種に共通する要因(株主構成、経営
陣、流動性、企業の組織構成、コーポレート・ガバナンス、カントリーリスクなど)や、特定の企業におい
て重要となりうる要因も考慮している。ムーディーズの格付には、これ以外の格付マッピング表に明
確に示すことができない定性的な考慮事項や要因が織り込まれる。本格手法で用いるマッピング表
は、それにより推定される格付が実際の格付により近いものとなるような複雑性の高いものではなく、
多くの場合、このセクターの格付において最も重要な要因をより簡潔かつ透明な形で示すものとした。
本稿の主な内容は次の通りである
»
格付対象企業の概要
»
格付手法の概説
»
信用力を左右する要因の説明
»
格付マッピング表に含まれない格付上の考慮事項を含む、格付手法の前提と限界についての
コメント
付録 A には格付要因およびサブ要因を含む格付マッピング表を掲載した。
本格付手法では、信用格付に用いられる分析のフレームワークを紹介する。場合によっては、業種
に固有ではない分析上の考慮事項(短期債務格付、様々な債務クラスやハイブリッド証券の相対的
な格付、ソブリン債の格付が他の発行体に及ぼす影響、他の事業体からの信用サポートの評価な
ど)に対するレポートを発行している。こうした全てのセクターに適用する格付上の考慮事項について
は、ムーディーズ・ジャパンのウェブサイト上のクロスセクター格付手法を参照されたい。
格付対象について
本格付手法を適用するのは、売上高もしくは EBITDA の 50%以上を乗用車メーカー、商用車メーカ
ー、補修部品市場(アフターマーケット)向けに自動車部品の製造、組み立て、販売、物流、サービス
提供から生み出している企業である。他の自動車部品メーカーが製造した製品のアフターマーケット
での流通・物流を主要な事業とする企業は、小売や消費財、物流企業としての属性も持ち合わせて
おり、上記に定義した自動車部品メーカーに関連した格付要因に必ずしも合致しないため、本稿の
分析対象とはしない。
本件は信用格付付与の公表で
はありません。文中にて言及され
ている信用格付については、
ムーディーズのウェブサイト
(www.moodys.com)の発行体の
ページの Ratings タブで、最新の
格付付与に関する情報および
格付推移をご参照ください。
2
JUNE 24, 2016
本格付手法の対象となる自動車部品メーカーには、事業規模、市場地位、地理的範囲が様々な発
行体が含まれる。対象となる発行体の大半は投機的等級である。2009 年に業界が不振に陥って以
来、事業および貸借対照表の思い切った再構築により、自動車部品セクターの信用力は改善した。
米国企業の多くは倒産法を申請して再編を行った。しかし、依然として業界は平均よりも高いリスクを
抱えており、投機的等級企業の比率が高い。主な要因は業績変動性の高まりが見込まれる点であ
る。大手自動車メーカーとの供給契約を確保するために行う多額の先行投資は、新車需要の定期
的な変化や特定車種の売れ行き不振により必ずしも回収できるわけではない。加えて、供給契約に
定期的な値下げ条項が盛り込まれている場合には、利益率の縮小に直面することになる。また、財
務レバレッジが高い企業も多く、信用プロファイルは投機的等級がふさわしい状況である。
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
格付手法について
本稿では、以下 7 つのセクションにおいて、自動車部品メーカーの格付手法を説明する
1. 格付マッピング表の構成要因の特定と検討
本格付手法のマッピング表は、5 つの主要格付要因に焦点を当てる。主要要因には、さらに詳細を
示すためのサブ要因が含まれる 2。
図表 1
世界の自動車部品メーカー
格付要因
要因のウエイト サブ要因
サブ要因のウエイト
事業規模
10% 売上高
10%
競争上の地位
10% 競争上の地位
10%
収益性とキャッシュフロー
25% 収益性 (EBITA マージン)
15%
事業サイクルを通した FCF 生成能力
10%
財務方針
20% 財務方針
20%
カバレッジとレバレッジ
35% EBITA / 支払利息
10%
RCF / 純有利子負債
5%
有利子負債/EBITDA
10%
資本構造: 純有利子負債 / 純キャピタリゼーション
合計
100% 合計
10%
100%
2. 格付要因の測定と推定
以下に、各格付要因のスコアリングについての全般的なアプローチを説明し、格付マッピング表で用
いるウエイトを示す。また、これらの要因が信用力の指標として重要な理由も説明する。サブ要因の
評価に用いる情報は通常、各社の財務諸表を用いるか、またはその他の情報から導くか、あるいは
ムーディーズのアナリストが推定する 3。
ムーディーズの格付は将来を見据えたものであり、将来の財務や業績についての予想を織り込んで
いる。ただし、過去の実績は、企業および比較対象企業の実績のパターンやトレンドを把握するうえで
有益である。本稿では、格付マッピング表の適用例の透明性を高めるため、過去のデータ(多くの場
合、報告された実績の過去 12 カ月のデータ)を用いる。定量的信用指標はいずれも、損益計算書、
キャッシュフロー計算書、貸借対照表に対し、事業再編、資産の毀損、オフバランス取引、売掛債
権証券化取引、年金積み立て不足、オペレーティング・リースなどを考慮したムーディーズの標準的
調整を適用している 4。
ムーディーズが発行したレポートには、発行体の過去 12 ヵ月の財務データを使用したマッピング表を
掲載することもあるが、格付マッピング表の要因の全てに適用しているわけではない。例えば、格付
委員会が過去の実績に加え、向こう数年間の予想業績分析が有用と考える場合もある。
3
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2
通常、マッピング表から導出される格付は、投機的等級発行体の場合はコーポレート・ファミリー・レーティング (CFR) 、
投資適格等級発行体の場合はシニア無担保債務格付である。親会社のサポート、政府出資、制度上のサポートにより
格付がアップリフトされる発行体については、マッピング表が示唆する格付はベースライン信用リスク評価と一致する。
ベースライン信用リスク評価の説明については、ムーディーズの格付手法「政府系発行体」を参照されたい。個々の債
務証券に対する格付には、支払優先順位および担保に応じたノッチングも織り込まれる。ノッチングの決定における全
般的なガイダンスを示したレポートは、投機的等級の事業会社のデフォルト時損失にかかる格付手法、および担保や請
求権優先順位に基づく企業の債務格付の調整に関する手法である。これらのクロスセクター格付手法のリンクについて
は、本稿の関連リサーチのセクションを参照されたい。
3
ムーディーズが通常用いる指標の定義については、本稿の関連リサーチのセクションに掲載されている個別のリンクを
参照されたい。
4
クロスセクター格付手法「事業会社の分析における財務諸表の調整」を参照されたい。すべてのクロスセクター格付手
法については、本稿末尾の関連リサーチにあるリンクから入手されたい。
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
3. 格付カテゴリーへの要因別マッピング
各サブ要因を推定または特定した後、各サブ要因の評価結果をムーディーズの格付カテゴリー(Aaa、
Aa、A、Baa、Ba、B、Caa、Ca)にマッピングする。
4. 格付手法の前提と限界、格付マッピング表に織り込まれていない格付上の考慮事項
各要因の詳述に続くこのセクションでは、実際の格付に対し、格付マッピング表を用いる限界につい
て説明する。格付マッピング表には含まれないが格付を決定する際に重要となりうる追加的要因や、
格付手法全般における限界と主な前提について説明する。
5. 格付マッピング表から推定される格付の決定
格付マッピング表から推定される格付を決定するにあたり、ムーディーズは、サブ要因の格付を次の
格付スケールに基づいて数値に変換する。
Aaa
Aa
A
Baa
Ba
B
Caa
Ca
1
3
6
9
12
15
18
20
各サブ要因の数値スコアには、当該サブスコアのウエイトが乗じられ、それらが合計されてウエイト適
用後のスコアが決定される。次に、ウエイト適用後の合計スコアが、次の表に基づいて数値付加記号
付き格付にマッピングされる。
格付手法から推定される格付
格付手法から推定される格付
ウエイト適用後の合計スコア
Aaa
x < 1.5
Aa1
1.5 ≤ x < 2.5
Aa2
2.5 ≤ x < 3.5
Aa3
3.5 ≤ x < 4.5
A1
4.5 ≤ x < 5.5
A2
5.5 ≤ x < 6.5
A3
6.5 ≤ x < 7.5
Baa1
7.5 ≤ x < 8.5
Baa2
8.5 ≤ x < 9.5
Baa3
9.5 ≤ x < 10.5
Ba1
10.5 ≤ x < 11.5
Ba2
11.5 ≤ x < 12.5
Ba3
12.5 ≤ x < 13.5
B1
13.5 ≤ x < 14.5
B2
14.5 ≤ x < 15.5
B3
15.5 ≤ x < 16.5
Caa1
16.5 ≤ x < 17.5
Caa2
17.5 ≤ x < 18.5
Caa3
18.5 ≤ x < 19.5
Ca
x ≥ 19.5
例えば、加重平均スコアが 11.7 の発行体の場合、格付マッピング表では Ba2 となる。
4
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格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
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6. 付録
付録 A には格付要因およびサブ要因を含む格付マッピング表を掲載した。
主要格付要因
自動車部品メーカーのマッピング表では、次の 5 つの主要格付要因に焦点を当てる。
1.
事業規模
2.
競争上の地位
3.
収益性とキャッシュフロー
4.
財務方針
5.
カバレッジとレバレッジ
マッピング表に用いられる財務実績は通常、ムーディーズの標準的調整を加えたものである。
格付要因 1:事業規模 (ウエイト 10% )
この要因を重視する根拠
自動車部品メーカーの収益規模と市場地位は、事業の強さと経営柔軟性の主要決定要因と考えら
れる。当該企業の収益規模を主要競合企業と比較することで、業界の事業トレンドへの影響力や価
格決定力を測定する。また、事業規模は市場地位を下支えし、安定した収益の維持を促す。さらに、
持続的な利益とキャッシュフロー生成を提供する。事業規模は、製品への需要変化に対する耐性、
地理的分散性、コスト吸収力、研究開発能力、顧客である自動車メーカーや原材料・従属部品メー
カーとの交渉力など、他の主要検討事項にも直接的な影響を及ぼす。
マッピング表での評価基準
事業規模の主要指標としては、連結ベースの年間売上高実績(将来の予測も使用)を用いる。
要因1
事業規模 (10%)
サブ要因
売上高 (10 億米ドル)
ウエイト
Aaa
Aa
A
Baa
Ba
B
Caa
Ca
10%
≥ $65
$40 - $65
$14 - $40
$6 - $14
$2 - $6
$0.75- $2
$0.2 - $0.75
< $0.2
格付要因 2: 競争上の地位 (ウエイト 10% )
この要因を重視する根拠
自動車部品業界では、技術主導力、強力な製品開発力、持続的な研究開発投資といった特徴を
持つ企業は、一般的な製品や汎用品を製造する企業よりも競争上の脅威に対する脆弱性が低いと
考えられる。例えば、高燃費のイグニッションシステムメーカーは、車体のシートメタルプレス加工メー
カーに比べて競争リスクは低いだろう。認められた技術主導力を有する企業は、自動車メーカーと共
に車両設計段階から新製品開発に携わり、問題解決を行う。そのため、自動車メーカーとの長期的
な取引関係を強化することが可能となる。部品を供給するだけでなく、技術と能力を提供することで、
競合他社の参入を困難にすることができる。
顧客分散性は自動車部品メーカーに重要なバランスをもたらす。顧客を分散させることにより、一部
の顧客の債務あるいは事業リスクのプロファイルやプラットフォーム需要の変化に対するリスクを軽減
する。また、各地域の規制、環境、製造物責任、安全上の問題からの影響を低減することができる。
自動車部品メーカーの多くは、売上高の一部を自動車製造とは無関係の事業活動から生み出して
いる。乗用車・商用車向けの製品構成が多角化していても、景気循環の影響は免れない。事業の
分散化により、自動車産業の停滞期の影響を軽減することができる。この点で、補修市場事業や乗
5
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格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
用車・商用車以外の事業へのエクスポージャーにより、顧客基盤が分散化するため、利益率は安定
し、景気循環の影響は低減される。
評価基準
競争リスクに関する分析は、企業の技術主導力、革新性、研究開発投資により顧客との関係を安定
的に維持する能力、価格決定力などの定性分析に基づいて行われる。高度な最新技術や将来性
のある技術が用いられた製品ポートフォリオは、景気循環や競争の影響を軽減するため、この要因
での高い格付につながる。一方、技術水準が低く、代替可能な製品を製造する企業は、格付表での
評価が低くなる可能性がある。
競争上の地位を評価する場合、売上高に対する顧客の集中度や同じ製品分野で競合する企業の
数も考慮する。景気循環の影響を受けにくい補修市場や商用車用部品の販売に注力している企業
もある。これはある程度の事業分散化にはなるが、他の強みがなければ格付表のスコアはやはり低く
なる。
要因 2
競争上の地位 (10%)
競争上の
地位
ウエイト
Aaa
Aa
A
Baa
Ba
10%
技術的リー
ダーシップに
より、価格改
定で市場を
主導できる
能力を有し、
市場浸透率
が上昇。
製品ポートフ
ォリオの技
術内容が高
く、他製品に
代替されるリ
スクは低く、
参入障壁は
非常に高
い。
製品ポートフ
ォリオの技
術内容が高
く、他製品に
代替されるリ
スクは限定
的で、参入
障壁は高
い。
製品ポートフ
ォリオの技
術内容によ
って、他製品
に代替され
る中程度の
リスクがあ
り、参入障壁
も中程度。
汎用タイプ
の製品がポ
ートフォリオ
に占める比
率が高いた
め、他製品
に代替され
るリスクが極
めて高く、参
入障壁は限
定的。
製品分野で
の競合他社
の数は少な
い。
B
Caa
汎用タイプ 非常に高い
の製品がポ 水準の競争
ートフォリオ
環境。
を構成して
いるため、他
製品に代替
されるリスク
が極めて高
く、参入障壁
は低い。
Ca
競争上の区
別なし。
製品分野で
の競合他社
の数は多
い。
格付要因 3: 収益性とキャッシュフロー(ウエイト 25% )
この要因を重視する根拠
収益性は企業の経営能力を測るひとつの指標である。技術的優位性を維持するための研究開発投
資を続けるためには、適切な利益率を維持することが求められる。技術的優位性を維持するために
必要な研究開発投資に向け、妥当な利益率を保つ必要がある。また、前回の景気サイクルで見ら
れたように、十分な利益がなければ、企業のキャッシュフロー生成によって運転資本、設備投資、債
務返済を賄えない可能性がある。
自動車部品業界では、OEM 供給契約の大半に契約期間を通じた値下げ要求が含まれている。部
品メーカーが資本コストを償却し、特定の部品生産で学習曲線により増加する利益の一部を、自動
車メーカーは部品価格の値下げを通じて共有することを期待している。従って、部品メーカーは継続
的にコスト削減を強いられ、値下げに対応可能なメーカーの収益性は高く、自動車メーカーに対する
値下げを業績改善で相殺できずに利益率の悪化を招く同業他社よりも最終的に優位になる。コスト
削減が可能な分野としては、調達、人員、製造工程、生産能力などがあげられる。2008-2009 年の
停滞期、米国の自動車部品メーカーの多くは倒産法の申請や大胆なコスト構造の改革によって再
編を果たし。しかしながら、事業効率を継続的に改善することが極めて重要である。
供給する製品の種類にもよるが、自動車部品メーカーの利益率はコモディティ価格の変動にも左右
され、これは製造原価や運転資本の増減にも反映される。原材料費変動の影響は、ヘッジあるいは
購買契約の有無を含むメーカーの主要な投入コストを特定することで推定することができる。原材料
価格の上昇をタイミング良く製品価格に転嫁できるかどうかは、収益性や運転資本サイクルにおける
現金の収入/拠出に大きな影響を与える。
6
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格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
キャッシュフロー生成は、債務返済と株主への利益還元にとって極めて重要である。自動車部品メ
ーカーのキャッシュフローは、製品サイクルや新たな契約獲得に左右され、年毎に大きく異なる。例
えば、複数の新車両の部品供給契約を獲得したメーカーは、固定資産および運転資本に投資を行
う必要があるため、1~2 年間はフリー・キャッシュフローが低迷する可能性がある。しかし、一旦、想
定生産水準に達すれば、フリー・キャッシュフローは大きく改善する。一方で、確立された供給契約
のポートフォリオを有する部品メーカーは、自動車生産がピークの時期には新しい事業機会への投
資を制約することで非常に強力なフリー・キャッシュフローを生み出す可能性がある。しかし、持続的
な投資抑制は将来のキャッシュフロー生成に悪影響を及ぼす。
2008-2009 年の低迷期に一部の発行体が示したように、一時的に運転資本を縮小してキャッシュフ
ローを維持することは可能である。しかし、事業環境が改善すれば、売上拡大や新車両発売に向け
て後れを取り戻す投資を行う必要がある。従って、ムーディーズは企業のキャッシュフローを、ビジネ
スサイクルを通して評価している。投資のピーク時や自動車販売の低迷時に強力なフリー・キャッシ
ュフロー生成を維持できる企業は、キャッシュフローがマイナスで債務が増加している企業よりも強力
な事業および財務基盤を持つことになる。
評価基準
EBITA マージン
格付マッピング表で使用する収益性の指標は利払い・税金・償却前利益率(EBITA マージン)である。
経常的な性質を示す一時的支出については考慮する。特別費用の計上につながるリストラなどのイ
ベントがあった企業については、継続事業の基本的な動向を把握するため、EBITA マージンはリストラ
費用計上前のベースで評価する。しかし、毎年リストラ費用を計上し、継続的にリストラを行っている
企業については、それらの費用は継続的なコストとみなし、EBITA マージンはリストラ費用を含めて評
価する。全般的に、原材料価格の上昇と自動車メーカーによる値下げ要請を考え、リストラ費用は
EBITA に含めることにする。
フリー・キャッシュフロー:
ムーディーズは営業キャッシュフローから設備投資と配当を差し引いたものをフリー・キャッシュフロー
と定義している。フリー・キャッシュフローは、内部の資金源から債務を返済する発行体の能力を示
す指標である。
要因 3
収益性とキャッシュフロー(25%)
ウエイト
Aaa
Aa
A
Baa
Ba
B
Caa
Ca
EBITA マージン
15%
≥ 20%
17% - 20%
14% - 17%
11% - 14%
8% - 11%
5% - 8%
3% - 5%
<3%
事業サイクルを
通したフリー・
キャッシュフロー
生成能力
10%
一貫して高
水準のフリ
ー・キャッシ
ュフローの
黒字を維持
するとみら
れる。設備
投資水準は
極めて高く、
生産設備へ
の投資の延
期もない。
サブ要因
7
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一貫してフリ 一貫してフリ 新製品向け 長期的にフ 長期的にフ フリー・キャ フリー・キャ
ー・キャッシ ー・キャッシ の例外劇な リー・キャッ リー・キャッ ッシュフロー ッシュフロー
ュフローの
ュフローの 設備投資が シュフローは シュフローは は赤字が見 は赤字が見
黒字を維持 黒字を維持 必要となっ 変動が大き 赤字が見込 込まれる。
込まれる。
するとみら
するとみら た年を除き、 いとみられ
まれる。継 継続的な再 再投資の継
れる。設備
れる。設備 大半の年に る。設備投 続的な再投 投資やコスト 続に向け、
投資水準は 投資水準が おいてフリ 資は増減が 資やコスト回 回収を行う 短期的なキ
極めて高く、 突出して高 ー・キャッシ 激しく、極端 収を行うた ために十分 ャッシュ投入
生産設備へ い時期はな ュフローを生 な増加が予 めに十分な な収益規模
が必要。
の投資の延 く、長期的に
成。
想される。 収益規模を を有していな
安定してお
有していな い場合があ
期もない。
り、生産設
い場合があ る。市場地
備への投資
位や効率性
る。
の延期もな
の低下が見
られ、再投
い。
資の遅延
や、十分な
投資が行わ
れていない
傾向が認め
られる。
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
格付要因 4: 財務方針 (ウエイト 20%)
この要因を重視する根拠
経営陣と取締役会の財務リスクに対する許容度は、負債水準、信用力、財務・資本構造が悪化す
るリスクに直接影響を与えるため、重要な格付決定要因である。
ムーディーズは、ムーディーズが認識する取締役会と経営陣の財務リスクに対する許容度と、資本
構造の今後の方向性を評価する。要因として考慮されるのは、財務方針として企業が表明したコミッ
トメント、それらのコミットメントの遵守実績、目標達成能力に対するムーディーズの見解である。
財務リスクの許容度は、投資・資本配分を示す指標である。経営陣が引き続き信用プロファイル改
善にコミットしていくとの予想が、格上げの根拠として必要とされる場合が多い。例えば、格付カテゴリ
ーの基準内で財務の柔軟性を高めた企業が、その柔軟性を戦略的買収、株主への現金配当、スピ
ンオフ、他のレバレッジ上昇につながる取引に用いると予想される場合、格上げされない可能性があ
る。逆に、レバレッジがある程度上昇する可能性のある取引を行っても、経営陣が信用指標を取引
前の水準に回復させることに高い優先度を置き、過去の行動によってそれに対するコミットメントが継
続的に示されてきた場合、格付は維持される可能性がある。
従来、自動車部品メーカーは売上高の拡大、事業ラインの拡充、市場地位の強化、コストシナジー
の向上、新技術へのアクセスなどを求めて、積極的に企業買収を行う傾向がある。買収が格付に与
える影響は、現在の資本構造とそれが買収によりいかに変化するかに左右される。
2008-2009 年の低迷期の後、自動車部品メーカーは財務方針を厳格化した。多くの企業が配当や
自社株買い計画を実施したが、収益性や流動性の改善に比べると規模は小さいものであった。
評価基準
財務方針
ムーディーズは、発行体が目指す資本構造、あるいは目標とする信用プロファイル、過去の行動とコ
ミットメント遵守の実績を評価する。その際に、様々な経済サイクルを通じた経営陣の事業実績やキ
ャッシュフローの使途に注目する。また、信用市場や流動性の環境の変化、訴訟、競争上の課題、
規制圧力といった重要なイベントに対する経営陣の対応も重視する。
経営陣の M&A に対する意欲についても、中核事業に関する買収か、あるいは新規事業の買収かと
いった取引の種類と資金調達方法に着目して評価する。また、買収の頻度や規模、過去の買収で
用いた調達方法も評価する。借入による買収、あるいは信用力の変化を及ぼす買収は、一般的にこ
の要因のスコアを低くする。
最後に、企業とその所有者が、株主還元と債務保有者の利益のバランスをどのようにとってきたかを
検討する。債務保有者の利益より株主還元を優先した実績は、この要因においてネガティブに評価
される可能性がある。
8
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格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
要因 4
財務方針 (20%)
サブ要因
サブ要因の
ウエイト
財務方針
20%
Aaa
Aa
A
Baa
Ba
B
極めて保守
的な財務方
針をとるとみ
られる。安定
した財務指
標。長期にわ
たる極めて
強固な信用
プロファイル
の維持への
コミットメント
を表明。
非常に安定
した保守的な
財務方針をと
るとみられ
る。安定した
経済指標。
格付アクショ
ンにつながる
イベントリス
クはほとんど
ない。長期に
わたる信用
プロファイル
の維持への
コミットメント
を表明。
債権者の利
益を守る予
見可能な財
務方針をとる
とみられる。
ある程度のイ
ベントリスク
はあるが、レ
バレッジへの
影響は小さ
く、信用プロ
ファイルへの
強いコミットメ
ント。
債権者の利
益と株主の
利益を均衡さ
せる財務方
針をとるとみ
られる。借入
調達による
買収、あるい
は株主への
利益還元が
格付を悪化さ
せるリスクが
ある。
債権者より株
主を優先す
る財務方針
をとるとみら
れる。株主へ
の利益配
分、買収、他
の資本構造
の大幅な変
更を要因とし
て財務リスク
が平均を上
回る。
債権者より株
主を優先す
る財務方針
をとるとみら
れる。株主へ
の利益配
分、買収、他
の資本構造
の大幅な変
更を要因とす
る高い財務リ
スク。
Caa
Ca
経済環境が 良好な経済
変化した際 環境下でも、
に、債務再編 債務再編リ
リスクの高ま スクの高まり
りにつながる につながる
財務方針をと 財務方針をと
るとみられ
るとみられ
る。
る。
格付要因 5: カバレッジとレバレッジ (ウエイト 35% )
この要因を重視する根拠
レバレッジとカバレッジは、企業の財務の柔軟性と長期的な事業継続の可能性を示す指標である。
自動車部品メーカーにとって、財務の柔軟性は新車両や計画に対応するために極めて重要である。
研究開発投資に加え、新車両発売に対応するための重要な技術の獲得や車種計画の拡充に向け
た戦略的買収のためには資金が必要である。
本要因は以下の 4 つのサブ要因により構成される。
インタレスト・カバレッジ
利払い・税金・償却前利益(EBITA) /支払利息は、営業活動から利息や他の固定費用を支払う能力
の評価に用いる。
キャッシュフロー
リテインド・キャッシュフロー (RCF) / 純有利子負債は、債務残高の元本を返済する能力を示す指標
である。債務残高と関連して、運転資本増減前、および配当支払い控除後のキャッシュフロー生成
を測定する。
レバレッジ
有利子負債/EBITDA は、債務返済能力とレバレッジの指標であり、自動車部品メーカー間の財務力
を比較するために広く用いられている。
資本構造
純有利子負債/純資本は、企業の資本構造がどれだけ負債および負債類似契約で構成されている
かを示す。ムーディーズの標準的調整は未積立年金債務、オペレーティング・リース、証券化取引、
ファクタリングラインやその他のオフバランスシートの形での資金調達手段などを織り込んでいる。格
付表で使われている比率は、純有利子負債/純キャピタリゼーションであり、キャッシュバランスに反
映される。
9
JUNE 24, 2016
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
評価基準
EBITA / 支払利息
マッピング表では、連結 EBITA /連結支払利息で表す。
リテインド・キャッシュフロー(RCF) / 純有利子負債
マッピング表では、運転資本項目前の営業キャッシュフロー(FFO)から配当金を差し引いた額を純有
利子負債で除したもので表す。
有利子負債 / EBITDA:
マッピング表では、総有利子負債/ EBITDA で表す。
純有利子負債/純キャピタリゼーション
マッピング表では、純有利子負債/純資本(少数株主持分と繰延税金資産を含む)で表す。
要因5
カバレッジとレバレッジ (35%)
ウエイト
Aaa
Aa
A
Baa
Ba
B
Caa
Ca
EBITA/支払利息
10%
≥18x
11x - 18x
6x - 11x
4x - 6x
2.5x - 4x
1.5x - 2.5x
0.5x - 1.5x
<0.5x
RCF / 純有利子負債
5%
≥ 90%
65% - 90%
45% - 65%
25% - 45%
15% - 25%
10% - 15%
5% - 10%
<5%
有利子負債 / EBITDA
10%
< 0.5x
0.5x - 1x
1x - 1.5x
1.5x - 2.5x
2.5x - 3.5x
3.5x - 5.5x
5.5x - 7.5x
≥7.5x
純有利子負債 /
純キャピタリゼーション
10%
<7.5%
7.5% - 15%
15% - 25%
25% - 35%
35% - 55%
55% - 75%
75% - 100%
≥100%
サブ要因
格付マッピング表の前提と限界、およびその他の格付上の考慮事項についての
議論
格付手法に基づくマッピング表には、透明性を向上させるために簡便性を重視しており、マッピング表
が複雑化することを避けている。 ただし、マッピング表を複雑化すれば実際の格付により近くなる。
従って、格付マッピング表で用いられる 5 つの主要格付要因は、自動車部品メーカーの格付で重視
されるすべての考慮事項を網羅したものではない。また、ムーディーズの格付は将来のパフォーマン
スの予想を織り込んでいるが、本稿のマッピング例では主に過去の財務情報を用いている。一部の
ケースでは、開示できない機密情報に基づいて将来のパフォーマンスを予測している。過去のパフォ
ーマンス、業界トレンド、競合他社の動向、他の要因に基づいて将来の業績を推定する場合もある。
いずれにせよ、将来の予測は相当に不正確なものになるリスクがある。
ムーディーズの予想は、マクロ経済環境や金融市場全般の状況、業界内の競争状況、新たな技術、
規制・法的措置といった想定外の変化によって不正確なものになりうる。
本セクターに適用する主要な格付上の想定としては、ソブリン債リスクと国内発行体のリスクの相関
性が極めて高い点、訴訟問題を優先することによる複数の債務クラスの返済に対する影響(債務ク
ラスごとの格付が異なる場合がある)、流動性へのアクセスが信用リスクをかなり高めることなどがあ
る。
本格付手法のマッピング表で用いる指標を選択するにあたり、経営陣の質と経験、コーポレート・ガバ
ナンス評価、財務報告と情報開示の質など、あらゆる業界の企業に共通するいくつかの重要な要因
を明示的な形では含めなかった。したがって、それらをマッピング表に基づいて格付カテゴリーでラン
キングすれば、他の様々なセクターの格付対象発行体に対して特定の発行体の相対的ランキング
が緻密になりすぎる場合もある。
格付には、定量化が難しいが、特定の場合に限り信用力の差別化に有効となる追加要因が含まれ
ることもある。具体的には、財務管理、不透明な特許制度に関するリスク、一部諸国における政府介
入の可能性などである。規制リスク、訴訟リスク、流動性リスク、技術リスク、風評リスクに加え、個
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JUNE 24, 2016
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
人・企業の支出パターンの変化、競合他社の戦略、マクロ経済トレンドなども格付に影響を与える。こ
れらは重要な考慮事項ではあるが、このリスク要因を格付マッピング表で正確に表現しようとすれば、
過度に複雑になり透明性が低下するのは避けられない。格付は、特定の要因のウエイトが格付マッピ
ング表で用いるウエイトとは大きく異なる状況を反映している場合もある。
格付での考慮事項としてのこのようなウエイトの変更は、格付マッピング表には含めなかった要因にも
適用されるケースがある。たとえば、流動性は格付に極めて重要な影響を与えうる要因であるが、状
況によっては、類似した信用プロファイルの発行体の差別化に実質的な影響を与えないこともある。
デフォルト・リスクを高めるような極めて低い流動性は、格付に大きく影響する。しかし、2 社の信用プ
ロファイルが全く等しく、唯一の違いが、一方は流動性が良好であり、もう一方が「極めて」良好な場
合、両社の格付は同じになることがある。
他の格付上の考慮事項
ムーディーズは、本稿で考察した要因以外も考慮しているが、ここで述べた分析上の考慮事項を理
解すれば、ほとんどの場合、自動車部品メーカーの信用力についてのムーディーズの見解をほぼ推
定できると考えられる。格付にあたっては、経営陣の質、コーポレート・ガバナンス、財務管理、流動
性管理、イベントリスク、季節性などの要因も考慮している。こうした要因の分析は、格付プロセスに
不可欠である。
経営戦略
経営陣の質は、企業の信用力を支える重要な要因である。長期的な事業計画の実行状況の評価
は、経営陣の事業戦略・方針・哲学を評価する一助となり、競合他社のパフォーマンスやムーディー
ズの予想と比較した経営陣のパフォーマンスの評価となる。経営陣の質の一貫性が一旦確立され
れば、将来のストレス状況下での経営陣のパフォーマンスについての知見が得られ、設定した計画
や指針から大きく逸脱する傾向を示す指標となり得る。
コーポレート・ガバナンス
コーポレート・ガバナンスにおいて注目する分野は、監査委員会の財務に関する専門知識、上級幹
部の報酬制度が提供するインセンティブ、関連当事者間取引、外部監査人との交流、所有構造な
どである。
投資および買収戦略
信用評価において、ムーディーズは経営陣の投資戦略を考慮している。買収戦略は競合他社と比
較し、一貫性を証明する。買収は事業強化に役立つ。格付を付与している企業の買収に対する許
容度については、中期的な買収をも見据えた経営陣のリスク選好度、自社株買戻し、レバレッジ目
標に対するコミットメント、自社および買収した企業の事業の変動性を評価する。通常、買収後の格
付はレバレッジが容認される水準を一時的に超えたとしても維持される。しかし、これは戦略の妥当
性、買収後のプロフォーマ基準の資本/レバレッジ、短期的な信用指標の改善に対するムーディーズ
の確信に左右される。
財務管理
ムーディーズは、監査済み財務諸表の正確性を信頼して、格付の付与とモニタリングを行っている。
こうした正確性は、業務の一元化、経営陣の適切な方針、会計方針と手続きの一貫性といった厳格
な内部統制によって可能になる。
全体的な財務報告プロセスの弱点、財務諸表の修正や規制当局への提出遅延は、内部統制の潜
在的な機能不全を示すものと考える。
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JUNE 24, 2016
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
流動性管理
流動性管理はすべての自動車部品メーカーにとって重要な格付要因であり、事業および財務の柔
軟性が一般に低い投機的等級発行体にとってはとりわけ重要である。ムーディーズは、現金の源泉
と使途の両面から企業の短期的な流動性需要に関する意見を形成する。また、銀行コベナンツとコ
ベナンツ遵守のための財務クッションをモニタリングし、業界がたとえ緩やかでも下降局面に差しかか
った場合や、発行体固有の要因で業績が悪化した場合に、コベナンツの変更が必要となるかどうか
を評価する。
イベントリスク
予想外のイベントの発生により、発行体のファンダメンタルな信用力が突然、大幅に低下する可能性
もある。イベントの例としては、買収・合併、資産売却、スピンオフ、資本再編計画、訴訟、株主への
利益配分などが挙げられる。
12
JUNE 24, 2016
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
付録 A: 世界の自動車部品業界の格付マッピング表
サブ要因の
ウエイト
Aaa
Aa
A
Baa
Ba
B
Caa
Ca
10%
≥ 65
$40 - $65
$14 - $40
$6 - $14
$2 - $6
$0.75 - $2
$0.2 - $0.75
< $0.2
10%
技術的リーダー
シップにより、価
格決定で市場を
主導できる能力
を有し、市場浸
透力が上昇。
製品ポートフォリ
オの技術内容が
高く、他製品に
代替されるリスク
は低い。参入障
壁は極めて高
い。
製品ポートフォリ
オの技術内容が
高く、他製品に
代替されるリスク
は限定的。参入
障壁は高い。
製品ポートフォリ
オの技術内容に
よって、他製品
に代替される中
程度のリスクが
ある。参入障壁
も中程度。
汎用タイプの製
品がポートフォリ
オに占める比率
が高いため、他
製品に代替され
るリスクが極め
て高く、参入障
壁は限定的。
汎用タイプの製
品がポートフォリ
オを構成してい
るため、他製品
に代替されるリ
スクが極めて高
く、参入障壁は
低い。
非常に高い水準
の競争環境。
競争上の区別な
し。
製品分野での競
合他社の数が少
ない。
製品分野での競
合他社の数が多
い。
要因 1:事業規模 (10%)
売上高 (10 億米ドル)
要因 2:競争上の地位 (10%)
競争上の地位
要因 3:収益性とキャッシュフロー (25%)
EBITA マージン
15%
≥ 20%
17% - 20%
14% - 17%
11% - 14%
8% - 11%
5% - 8%
3% - 5%
<3%
事業サイクルを通した
フリー・キャッシュフロー
生成能力
10%
一貫して高水準
のフリー・キャッ
シュフローの黒
字を維持すると
みられる。設備
投資水準は極め
て高く、生産設
備への投資の延
期もない。
一貫してフリー・
キャッシュフロー
の黒字を維持す
るとみられる。設
備投資水準は極
めて高く、生産設
備への投資の延
期もない。
一貫してフリー・
キャッシフローの
黒字を維持する
とみられる。設備
投資水準が突出
して高い時期は
なく、長期的に安
定しており、生産
設備への投資の
延期もない。
新製品のための
例外的な設備投
資を行う場合を
除き、大半の年
においてフリー・
キャッシュフロー
を生成するとみ
られる。
フリー・キャッシ
ュフローの変動
性は高いとみら
れる。設備投資
の水準が長期的
に安定していな
いため、投資水
準が急増するこ
とがある。
大半の年でフリ
ー・キャッシュフ
ローは赤字にな
るとみられる。継
続的な再投資や
コスト回収のた
めに必要な収益
規模を有してい
ない場合があ
る。
フリー・キャッシ
ュフローの赤字
が見込まれる。
継続的な再投資
やコスト回収の
ために必要な収
益規模を有して
いない場合があ
る。市場地位や
効率性の低下が
みられ、再投資
の遅延や十分な
投資が行われて
いない傾向が認
められる。
フリー・キャッシ
ュフローの赤字
が見込まれる。
継続的に再投資
を行うためには、
近い将来、資金
注入が必要。
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JUNE 24, 2016
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
サブ要因の
ウエイト
Aaa
Aa
A
Baa
Ba
B
Caa
Ca
極めて保守的な
財務方針をとる
とみられる。極め
て安定した指
標。長期にわた
り非常に堅固な
信用プロファイル
の維持へのコミ
ットメントを表明。
非常に安定した
保守的な財務方
針をとるとみられ
る。安定した指
標。格付アクショ
ンにつながるイ
ベントリスクはほ
とんどない。長期
にわたる強固な
信用プロファイル
の維持へのコミ
ットメントを表明。
債権者の利益を
守る予見可能な
財務方針をとる
とみられる。ある
程度のイベントリ
スクはあるが、レ
バレッジへの影
響は小さく、一時
的なものとみら
れる。強固な信
用プロファイルへ
の強いコミットメ
ント。
債権者の利益い
と株主の利益を
均衡させる財務
方針をとるとみら
れる。借入調達
による買収、ある
いは株主への利
益配分が格付を
悪化させるリスク
がある。
債権者より株主
を優先する財務
方針をとるとみら
れる。株主への
利益配分、買
収、他の資本構
造の大幅な変更
を要因として財
務リスクは平均
を上回る。
債権者より株主
を優先する財務
方針をとるとみら
れる。株主への
利益配分、買
収、他の資本構
造の大幅な変更
を要因とする高
い財務リスク。
財務環境が変化
した際に、債務
再編リスクの高
まりにつながる
財務方針をとる
とみられる。
良好な経済環境
下でも、債務再
編リスクの高まり
につながる財務
方針をとるとみら
れる。
要因 4: 財務方針 (20%)
財務方針
20%
要因 5:カバレッジトとレバレッジ(35%)
EBITA/支払利息
10%
≥18x
11.0x - 18.0x
6x - 11x
4x - 6x
2.5x - 4x
1.5x -2.5x
0.5x - 1.5x
<0.5x
RCF /純有利子負債
5%
≥ 90%
65% - 90%
45% - 65%
25% - 45%
15% - 25%
10% - 15%
5% to 10%
<5%
有利子負債 / EBITDA
10%
<0.5x
0.5x - 1x
1x - 1.5x
1.5x - 2.5x
2.5x - 3.5x
3.5x - 5.5x
5.5x - 7.5x
≥7.5x
資本構造: 純有利子負債 /純
キャピタリゼーション
10%
<7.5%
7.5% - 15%
15% - 25%
25% - 35%
35% - 55%
55% - 75%
75% - 100%
≥100%
100%
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JUNE 24, 2016
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
関連リサーチ
本セクターにおいて付与される信用格付は基本的に本信用格付手法によって決定される。また、幅
広い格付手法(1 つ以上の副次的に適用される格付手法またはクロスセクター格付手法)における
考慮事項が、本セクターの発行体および債券の信用格付の決定時に重要となることもある。
副次的に適用される格付手法およびクロスセクター格付手法となりうるものについては、ムーディー
ズ・ジャパンのウェブサイトを参照されたい。
本稿で参照されたムーディーズの格付手法は、同ウェブサイトからアクセス可能である。
本格付手法を用いて付与された信用格付の過去の精緻度および予測能力をまとめたデータは、
link に掲載されている。
ムーディーズが通常用いる指標の定義については、"Moody's Basic Definitions for Credit Statistics
(User's Guide), June 2011"を参照されたい。
さらなる情報については、「格付記号と定義」を参照されたい。
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JUNE 24, 2016
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法
CORPORATES
ムーディーズ・ジャパン株式会社
〒105-6220
東京都港区愛宕 2 丁目 5-1
愛宕グリーンヒルズ MORI タワー 20F
Report Number:
著者
Timothy L. Harrod
190637 (Japanese)
190355 (English)
プロダクション・アソシエイト
渡邉 エリ
著作権表示(C)2016 年 Moody' s Corporation、Moody's Investors Service, Inc.、Moody’s Analytics, Inc. 並びに(又は)これらの者のライセンサー及び関連会社(以下、総称して「ムーディーズ」といい
ます)。無断複写・転載を禁じます。
Moody's Investors Service, Inc.及び信用格付を行う関連会社(以下「MIS」といいます)により付与される信用格付は、事業体、与信契約、債務又は債務類似証券の相対的な将来の信用リス
クについての、ムーディーズの現時点での意見です。ムーディーズが発行する信用格付及び調査刊行物(以下「ムーディーズの刊行物」といいます)は、事業体、与信契約、債務又は債務
類似証券の相対的な将来の信用リスクについてのムーディーズの現時点での意見を含むことがあります。ムーディーズは、信用リスクを、事業体が契約上・財務上の義務を期日に履行で
きないリスク及びデフォルト事由が発生した場合に見込まれるあらゆる種類の財産的損失と定義しています。信用格付は、流動性リスク、市場価値リスク、価格変動性及びその他のリスク
について言及するものではありません。信用格付及びムーディーズの刊行物に含まれているムーディーズの意見は、現在又は過去の事実を示すものではありません。ムーディーズの刊行
物はまた、定量的モデルに基づく信用リスクの評価及び Moody’s Analytics, Inc.が公表する関連意見又は解説を含むことがあります。信用格付及びムーディーズの刊行物は、投資又は財
務に関する助言を構成又は提供するものではありません。信用格付及びムーディーズの刊行物は特定の証券の購入、売却又は保有を推奨するものではありません。信用格付及びムー
ディーズの刊行物はいずれも、特定の投資家にとっての投資の適切性について論評するものではありません。ムーディーズは、投資家が、相当の注意をもって、購入、保有又は売却を検
討する各証券について投資家自身で研究・評価するという期待及び理解の下で、信用格付を付与し、ムーディーズの刊行物を発行します。
ムーディーズの信用格付及びムーディーズの刊行物は、個人投資家の利用を意図しておらず、個人投資家が何らかの投資判断を行う際にムーディーズの信用格付及びムーディーズの刊
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ここに記載する情報はすべて、著作権法を含む法律により保護されており、いかなる者も、いかなる形式若しくは方法又は手段によっても、全部か一部かを問わずこれらの情報を、ムーディ
ーズの事前の書面による同意なく、複製その他の方法により再製、リパッケージ、転送、譲渡、頒布、配布又は転売することはできず、また、これらの目的で再使用するために保管すること
はできません。
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ディーズはこれらの情報をいかなる種類の保証も付すことなく「現状有姿」で提供しています。ムーディーズは、信用格付を付与する際に用いる情報が十分な品質を有し、またその情報源が
ムーディーズにとって信頼できると考えられるものであること(独立した第三者がこの情報源に該当する場合もあります)を確保するため、すべての必要な措置を講じています。しかし、ムー
ディーズは監査を行う者ではなく、格付の過程で又はムーディーズの刊行物の作成に際して受領した情報の正確性及び有効性について常に独自に確認することはできません。
法律が許容する範囲において、ムーディーズ及びその取締役、役職員、従業員、代理人、代表者、ライセンサー及びサプライヤーは、いかなる者又は法人に対しても、ここに記載する情報
又は当該情報の使用若しくは使用が不可能であることに起因又は関連するあらゆる間接的、特別、二次的又は付随的な損失又は損害に対して、ムーディーズ又はその取締役、役職員、
従業員、代理人、代表者、ライセンサー又はサプライヤーのいずれかが事前に当該損失又は損害((a)現在若しくは将来の利益の喪失、又は(b)関連する金融商品が、ムーディーズが付与
する特定の信用格付の対象ではない場合に生じるあらゆる損失若しくは損害を含むがこれに限定されない)の可能性について助言を受けていた場合においても、責任を負いません。
法律が許容する範囲において、ムーディーズ及びその取締役、役職員、従業員、代理人、代表者、ライセンサー及びサプライヤーは、ここに記載する情報又は当該情報の使用若しくは使用
が不可能であることに起因又は関連していかなる者又は法人に生じたいかなる直接的又は補償的損失又は損害に対しても、それらがムーディーズ又はその取締役、役職員、従業員、代理
人、代表者、ライセンサー若しくはサプライヤーのうちいずれかの側の過失によるもの(但し、詐欺、故意による違反行為、又は、疑義を避けるために付言すると法により排除し得ない、その
他の種類の責任を除く)、あるいはそれらの者の支配力の範囲内外における偶発事象によるものである場合を含め、責任を負いません。
ここに記載される情報の一部を構成する格付、財務報告分析、予測及びその他の見解(もしあれば)は意見の表明であり、またそのようなものとしてのみ解釈されるべきものであり、これに
よって事実を表明し、又は証券の購入、売却若しくは保有を推奨するものではありません。ここに記載する情報の各利用者は、購入、保有又は売却を検討する各証券について、自ら研究・
評価しなければなりません。
ムーディーズは、いかなる形式又は方法によっても、これらの格付若しくはその他の意見又は情報の正確性、適時性、完全性、商品性及び特定の目的への適合性について、(明示的、黙
示的を問わず)いかなる保証も行っていません。
Moody's Corporation (以下「MCO」といいます)が全額出資する信用格付会社である Moody's Investors Service, Inc.は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を
含みます)及び優先株式の発行者の大部分が、Moody's Investors Service, Inc.が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、1500 ドルから約 250 万ドルの手数料を Moody's
Investors Service, Inc.に支払うことに同意していることを、ここに開示します。また、MCO 及び MIS は、MIS の格付及び格付過程の独立性を確保するための方針と手続を整備しています。MCO
の取締役と格付対象会社との間、及び、MIS から格付を付与され、かつ MCO の株式の 5%以上を保有していることを SEC に公式に報告している会社間に存在し得る特定の利害関係に関す
る情報は、ムーディーズのウェブサイト www.moodys.com 上に"Investor Relations-Corporate Governance-Director and Shareholder Affiliation Policy"という表題で毎年、掲載されます。
オーストラリアについてのみ:この文書のオーストラリアでの発行は、ムーディーズの関連会社である Moody's Investors Service Pty Limited ABN 61 003 399 657(オーストラリア金融サービス認可
番号 336969)及び(又は)Moody's Analytics Australia Pty Ltd ABN 94 105 136 972(オーストラリア金融サービス認可番号 383569)(該当する者)のオーストラリア金融サービス認可に基づき行わ
れます。この文書は 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「ホールセール顧客」のみへの提供を意図したものです。オーストラリア国内からこの文書に継続的にアクセスした場合、
貴殿は、ムーディーズに対して、貴殿が「ホールセール顧客」であるか又は「ホールセール顧客」の代表者としてこの文書にアクセスしていること、及び、貴殿又は貴殿が代表する法人が、直
接又は間接に、この文書又はその内容を 2001 年会社法 761G 条の定める意味における「リテール顧客」に配布しないことを表明したことになります。ムーディーズの信用格付は、発行者の
債務の信用力についての意見であり、発行者のエクイティ証券又はリテール顧客が取得可能なその他の形式の証券について意見を述べるものではありません。リテール顧客が、ムーディ
ーズの信用格付に基づいて投資判断をするのは危険です。もし、疑問がある場合には、ご自身のフィナンシャル・アドバイザーその他の専門家に相談することを推奨します。
日本についてのみ:ムーディーズ・ジャパン株式会社(以下、「MJKK」といいます。)は、ムーディーズ・グループ・ジャパン合同会社(MCO の完全子会社である Moody’s Overseas Holdings Inc.の
完全子会社)の完全子会社である信用格付会社です。また、ムーディーズ SF ジャパン株式会社(以下、「MSFJ」といいます。)は、MJKK の完全子会社である信用格付会社です。MSFJ は、全
米で認知された統計的格付機関(以下、「NRSRO」といいます。)ではありません。したがって、MSFJ の信用格付は、NRSRO ではない者により付与された「NRSRO ではない信用格付」であり、
それゆえ、MSFJ の信用格付の対象となる債務は、米国法の下で一定の取扱を受けるための要件を満たしていません。MJKK 及び MSFJ は日本の金融庁に登録された信用格付業者であり、
登録番号はそれぞれ金融庁長官(格付)第 2 号及び第 3 号です。
MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)は、同社が格付を行っている負債証券(社債、地方債、債券、手形及び CP を含みます。)及び優先株式の発行者の大部分が、MJKK 又は MSFJ(のうち該
当する方)が行う評価・格付サービスに対して、格付の付与に先立ち、20 万円から約 3 億 5,000 万円の手数料を MJKK 又は MSFJ(のうち該当する方)に支払うことに同意していることを、ここ
に開示します。
MJKK 及び MSFJ は、日本の規制上の要請を満たすための方針と手続も整備しています。
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JUNE 24, 2016
格付手法:自動車部品メーカーのグローバル格付手法