【教授の研究紹介】 ᢎ㙃 ߩ ߚߨ 西南学院大学の教授が日々研究している専門分野を私たちの「暮らし」に触れて紹介。教授の研究内容をより身近なものにしてみよう。 法学部国際関係法学科 や ま も と たけし 山本 健 教授 史料の海を泳ぎ、 物語 (Histoire)を 紡ぐ 一橋大学大学院法学研究科修士 課程 (国際関係専攻) 修了。 ロンドン・ スクール・オブ・エコノミックス・アンド・ ポリティカル・サイエンス (LSE)国際 関係史学部博士課程修了。Ph. D. (International History)。専門は、 ヨーロッパ国際関係史、冷戦史、 ヨー ロッパ統合の歴史研究。主著は、 『同 盟外交の力学―ヨーロッパ・デタント の国際政治史 1968-1975』 (勁草 書房、 2010年) 。 多くの人 私 たちはどうやって昔のことを学ぶのでしょう。 は、学校の授業や歴史の教科書、あるいは歴史の本か ツの外交文書を集め、読み、分析し、新事実を発掘したり、既 存の「事実」を検証したりしつつ歴史の論文を書いています。 らではないでしょうか。でも、誰が歴史の教科書を書いている 研究テーマは大きく二つ。冷戦、特にヨーロッパにおける冷 のか、考えたことありますか?教科書の後ろに執筆者一覧が 戦の歴史と、現在のヨーロッパ連合(EU)につながるヨーロッ 載っていますが、たいていはどこかの大学の教授であり歴史研 パ統合の歴史です。どちらも、第二次世界大戦後の20世紀後 究者です。むろん、彼ら・彼女らが一から全て調べて書いてい 半の時代にあたります。現在は、1970年代後半から80年代初 るわけではありません。数多くいる歴史家の、膨大な研究成果 頭について調べています。わずか3∼40年前の、歴史としては の、いわばエッセンスを凝縮したものが教科書になっています。 非常に新しい時代です。 で、僕は、そんな歴史家の端くれです。中高の歴史教科書を執 当時の軍縮問題に絞っても膨大な量の文書があるので、せっ 筆するほど偉くはありませんが。 せと史料を読むという地味な作業が研究の「現場」ということ 歴史と言っても、政治の歴史、経済の歴史、社会や思想の歴 になるでしょうか。でも、普通の人が見ることはあまりない史料 史など様々な歴史があります。僕が専門としているのは外交あ を読みながら当時の歴史に思いをはせることは楽しく、 「極秘」 るいは国際関係の歴史です。そし 史料館を訪れ、外交文書の実物を 手にすると、まさに歴史に触れている という感じがしてワクワクします。しか し何といっても、史料の断片がつな がり、歴史のストーリーが浮かび上 がってくる瞬間が最高です。 と書かれた文書を読むときなどはテンションも上がります。 て特にヨーロッパを歴史研究の さらに大きなテーマも持っています。数百年にわたる国際社 フィールドにしています。実際 会の変化の歴史を描くことです。これは、多くの研究を参照し に何をしているかというと、 つつ、取り組んでいきたいと思っています。ライフワークみたい 主にイギリスやフランス、ドイ なものですね。 『もの食う人びと』 辺見 庸(角川書店、1994年) せっかくなので、多くの人に興味を持ってもらえそうな 本を紹介したいと思います。やや古いが、今でもめっぽう 面白い。 ジャーナリストが世界を旅して、 様々なものを食うルポター ジュです。 といってもグルメ本ではありません。 ダッカの残飯から、内戦最中 の国の食べ物まで。人と会い、食い、様々な場所のリアルを活写しています。 No.197 13
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