2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 28 日 資料 10 Ⅴ.運送(続) 11.旅客運送(江頭 350-360 頁) 11.1.総説 運送契約に関する私法的規律と経済法・消費者保護法的規制 Ex.締約強制、安全性規制、参入・運賃規制等 11.2.旅客運送人の責任(国際航空旅客運送を中心に) (1)旅客の生命・身体の損害 国際航空旅客運送の場合 航空機上または乗降作業中の事故による旅客の人損(モントリオール条約 17 条 1 項) 11 万 3100SDR までは無過失責任(同 21 条 1 項) それを超える分については責任限度額のない過失推定責任(同 21 条 2 項) 損害賠償の範囲は法廷地国際私法による準拠法による 懲罰的損害賠償の排除(同 29 条第2文) ワルソー条約からの責任限度額の推移 改正議定書・補充条約による限度額引上げとアメリカの反応 1992 年:ジャパニーズ・イニシアティブ 1999 年:モントリオール条約 その他の旅客運送の場合 商法 590 条 1 項:過失推定責任、法定の責任限度額なし、ただし任意規定 Cf. 約款上の責任限度額の効力:大阪地判昭和 42 年 6 月 12 日判時 484 号 21 頁 改正案 旅客の生命・身体の侵害による責任の免除・軽減の禁止 例外:災害発生時、通常の運送によって重大な危険が及ぶおそれがある者 危険性の高いレジャーは? (2)手荷物の損害 国際航空運送の場合 託送手荷物:航空機上・運送人管理下の事故につき厳格責任(条約 17 条 2 項 1・2 文) 機内持込手荷物:過失責任、立証責任は旅客側(同 17 条 2 項第 3 文) 手荷物の延着:過失推定責任(同 19 条) 責任限度額は各旅客につき 1031SDR(同 22 条 2 項) 1 2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 28 日 資料 10 その他の旅客運送の場合 託送手荷物・延着:過失推定責任(商法 591 条・577 条) 持込手荷物:過失責任、立証責任は旅客側(商法 592 条) 責任限度額はなし (3)旅客の延着による損害 国際航空運送の場合 過失推定責任(モントリオール条約 19 条) 責任限度額は各旅客につき 4694SDR(同 22 条 1 項) その他の旅客運送の場合 過失推定責任(商法 590 条) 「延着」の有無と時刻表の意義 Cf.東京高判平成 22 年 3 月 25 日判例集未搭載 航空機の遅延・欠航・オーバーブッキング時の対応 払戻し、代替交通手段の提供、飲食物の提供、ホテルの提供等 (4)裁判管轄 旅客の居住地にも裁判管轄あり(モントリオール条約 33 条2項) 12.補論:観光関連産業 12.1.旅行業 12.1.1.旅行業者(旅行代理店)の行う業務 旅行業法 2 条 1 項:「旅行業」の定義 ①旅行の目的地及び日程、旅行者が提供を受けることができる運送又は宿泊のサービス (以下「運送等サービス」という。)の内容並びに旅行者が支払うべき対価に関する事 項を定めた旅行に関する計画を、旅行者の募集のためにあらかじめ、又は旅行者から の依頼により作成するとともに、当該計画に定める運送等サービスを旅行者に確実に 提供するために必要と見込まれる運送等サービスの提供に係る契約を、自己の計算に おいて、運送等サービスを提供する者との間で締結する行為 ③旅行者のため、運送等サービスの提供を受けることについて、代理して契約を締結し、 媒介をし、又は取次ぎをする行為 ④運送等サービスを提供する者のため、旅行者に対する運送等サービスの提供について、 代理して契約を締結し、又は媒介をする行為 2 2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 28 日 資料 10 ⑤他人の経営する運送機関又は宿泊施設を利用して、旅行者に対して運送等サービスを 提供する行為 企画旅行契約(旅行業法 2 条 4 項→1 項 1 号 2 号) 募集型企画旅行契約(平成 16 年改正前旅行業法:主催旅行契約) 受注型企画旅行契約 手配旅行契約(旅行業法 2 条 5 項→1 項 3 号 4 号) 標準旅行業約款(旅行業法 12 条の 3)http://www.mlit.go.jp/common/000993888.pdf 12.1.2.募集型企画旅行契約における旅行業者の義務(江頭 226 頁注 4) (1)企画旅行契約の法的性質 代理・媒介・取次ぎの委任か運送・宿泊サービスの提供の請負か 旅行業法 2 条 1 項 1 号の意義 「当社は、募集型企画旅行契約において、旅行者が当社の定める旅行日程に従って、運送・ 宿泊機関等の提供する運送、宿泊その他の旅行に関するサービス(以下「旅行サービス」 といいます。)の提供を受けることができるように、手配し、旅程を管理することを引き受 けます。」(標準旅行業約款 3 条) (2)旅行中の事故についての旅行業者の責任 東京地判平成元年 6 月 20 日判時 1341 号 20 頁(Ⅲ-26 事件、百選 103) 旅行業者の特別補償責任(標準旅行業約款 28 条) 旅行業者の情報提供義務 東京地判平成 18 年 11 月 29 日判タ 1253 号 187 頁 (3)旅行業者の手配債務と旅程管理債務 手配債務と旅程管理債務(標準旅行業約款 23 条) 京都地判平成 11 年 6 月 10 日判時 1703 号 154 頁(百選 104) 契約内容の変更(標準旅行業約款 13 条) 旅行業者の旅程保証責任(標準旅行業約款 29 条) 3 2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 28 日 資料 10 (4)高速ツアーバス・シェアリングエコノミーと旅行業 高速ツアーバス 乗合バス(路線バス)と貸切バス 旅行商品としての「高速ツアーバス」の普及 関越自動車道事故(2012 年)を受け高速乗合バスに一本化、規制緩和 (http://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_002069.html) UBER(https://www.uber.com/legal/terms/jp/) 「本契約は標準旅行業約款(一般諸条件)に準拠した「特別契約」とみなされるものと します。」 「アプリケーションまたはサービスの利用を通じて要請される輸送サービスの品質につ いては、最終的にユーザーに輸送サービスを提供する輸送業者の責任となります。Uber は、いかなる場合にも、輸送業者が提供する輸送サービス 、または輸送業者の側の作 為、行為、行動、言動、過失に関連する、および/またはこれに起因する損害に対して 責任を負いません。輸送業者が提供する輸送サービスに関する苦情については、輸送 業者に提出するものとします。」 airbnb(https://www.airbnb.jp/terms) 「本サイト、本アプリケーション及び本サービスは、ホストが本宿泊施設をリスティン グ(掲載物件)に掲載し、ゲストが当該宿泊施設の情報を取得し、ホストに対して直 接当該宿泊施設の予約を行うオンラインプラットフォームを提供します。お客様は、 Airbnb がホストとゲストとの間の契約の当事者ではなく、不動産仲介業者、代理店又 は保険業者でもないことを理解し、同意するものとします。Airbnb は、ホスト、ゲス ト、その他本サイト、本アプリケーション及び本サービス又は本宿泊施設のユーザー の行為をコントロールすることはできず、法令に反しない限り、これらに関する責任 は免責されるものとします。」 12.2.場屋営業・ホテル 営業の範囲内で寄託を引き受けた商人の責任(商法 593 条) 場屋営業者の責任(商法 594-596 条) 客から寄託を受けた物品(商法 594 条 1 項):不可抗力のみ免責 客から寄託を受けていない物品(同 2 項):主人・使用人の不注意による責任 告示による免責の禁止(同 3 項) 高価品免責(595 条)と 1 年の消滅時効(596 条) 4 2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 28 日 資料 10 Cf.ホテル事業者の責任 宿泊客の所持品についてのホテル事業者の責任に関する条約(1962 年) 商法 594 条の意義 「場屋」の意義 大判昭和 12 年 11 月 26 日民集 16 巻 1681 頁 東京高判平成 14 年 5 月 29 日判時 1796 号 95 頁 ホテルの免責約款の効力 最判平成 15 年 2 月 28 日判時 1829 号 151 頁(Ⅲ-25 事件、百選 108) 貴重品ロッカー等の設置者の責任(江頭 361 頁) 東京高判平成 16 年 12 月 22 日金法 1736 号 67 頁 秋田地判平成 17 年 4 月 14 日金判 1220 号 21 頁 東京地裁八王子支判平成 17 年 5 月 19 日金判 1220 号 19 頁 【参考文献】 鹿野菜穂子「役務契約(2)旅行契約」内田貴=大村敦志編『民法の争点』254 頁(2007 年) 5
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