ナレッジマネジメント

東京大学 JEITA講座 電子情報学特論Ⅰ
ナレッジマネジメント
~イノベーションはどのように生まれるのか~
2016年 6月 27日
研究開発センター 研究企画部
技術統括部 技術企画室
中山
康子
Copyright 2016, Toshiba Corporation.
目 次
Ⅰ.イノベーションとは
Ⅱ.東芝の概要・東芝のDNA
Ⅲ.イノベーション創出のステップ
Ⅳ.ナレッジマネジメント
V. 将来に求められる人財
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イノベーションとは
イノベーションとは、科学や技術そのものではな
く価値である。
組織のなかではなく、組織の外にもたらす変
化である。イノベーションの尺度は、外の世界
への影響である。
ピーター・ドラッガー
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イノベーションの事例
• 東芝発のイノベーション
– 郵便物自動処理装置
– 日本語ワードプロセッサ
– ノートPC
– NANDフラッシュメモリー
– 新型二次電池(SCiBTM)
本講義のテーマ
企業の中でイノベーションを生み出すために必要な
知識とは何か?またそれをいかにマネジメントするのか?
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目 次
Ⅰ.イノベーションとは
Ⅱ.東芝の概要・東芝のDNA
Ⅲ.イノベーション創出のステップ
Ⅳ.ナレッジマネジメント
V. 将来に求められる人財
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東芝の概要
創
業: 明治8年(1875年)7月
2016年7月 創業141周年
本 社 所 在 地: 東京都港区芝浦1-1-1
資
総
本
資
売
従
金: 4,399億円(連結)
(2016年3月末)
産
上
業
額: 5兆4,211億円(連結)
(2016年3月末)
高: 5兆6,701億円(連結)
2兆8,753億円(単独)
(2015年度)
員
数:
18万8千人(連結)
(2016年3月末)
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東芝の歴史
創業者から続く“飽くなき探究心”と“情熱”
1963年
1930年
1875年
攪拌式電気洗濯機
家庭用電気冷蔵庫
(国内初)
田中久重、東京・新橋に
電信機工場を設立
2008年
1996年
CT「Aquilion
OneTM」 商品化
12.5MW原子力
タービン発電機
(国内初)
ABWR柏崎刈羽
6号機運転開始
(世界初)
新型二次電池
「SCiBTM」 開発
田中製造所
芝浦製作所
1904年創設
1939年
発足
東京芝浦電気
1984年
社名変更
東芝
1899年創設
東京電気
1985年
白熱舎
白熱舎
1978年
1956年
日本語ワードプロセッサ
電気自動炊飯器
1890年
藤岡市助、三吉正一、
東京・京橋に白熱舎
を創設
(国内初)
ラップトップPC
(世界初)
2010年
グラスレス
3Dテレビ(世界初)
(国内初)
1989年
ノートブックPC
(世界初)
2001年
HDD DVDレコーダ
(世界初)
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創業者 田中久重 ~からくり儀右衛門~
・ 1799年(寛政11年) 久留米に生まれる
・ 1875年(明治8年) 田中製造所創設
(後の芝浦製作所)
<夢を実現したい>
久留米市教育委員会所蔵
・幼少時代の「茶運び人形」との出会い
・「弓曳童子」 感性までをも表現する究極の
からくり人形
<世の中の役に立ちたい>
・「無尽灯」 を考案、商品化
・「万年時計」の製作
2005年 名古屋 愛・地球博にてレプリカ展示
東芝未来科学館所蔵
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田中久重の“おもい”
に考万
応案般
ずのの
依機
頼械
東芝の操業は、明治8年(1875年)7月1日。
久重は現在の東京・銀座8丁目に、新しい工場
兼店舗を構え、「万般の機械考案の依頼に応ず」
との看板が掲げた。
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もう一人の創業者 藤岡市助 ~日本のエジソン~
・ 1857年(安政4年) 岩国に生まれる
・ 1884年(明治17年) 政府の使節として訪米、
エジソンと面会
・ 1890年 白熱舎創立(後の東京電気)
<光の文明を開く>
・日本で初めての電灯点灯(アーク灯)に
立ち会う
・藤岡らの提唱で
東京電燈会社設立(後の東京電力㈱)
・ 1890年 日本初の白熱電球生産
電気を利用して至善至便の光線を
作為し暗夜を白昼たらしむ
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藤岡市助の「至善」
至善
「至善」は「最高の善」を意味し、
一生を通じての市助の信条であった。
彼の才能や性格、容貌や振舞いなどは、
この一言によく現れているという。
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身近にある「世界初」、「日本初」の東芝製品
「世界初」、「日本初」の原点は優れたコンセプト
日本初の
白熱電球
(1890)
日本初の
電気洗濯機
(1930)
日本初の
電気冷蔵庫
(1930)
日本初の
自動式電気釜
(1955)
IEEEマイルストーン認定※
世界初のDVDプレーヤー
(1996)
日本初の日本語ワープロ
(1978)
世界初のラップトップPC
(1985)
※IEEEマイルストーン認定・・・電子・情報・通信分野で画期的なイノベーションの中で、開発から25年以上経過し、社会や産業の
発展に多大に貢献したと認定される歴史的な業績を表彰する制度。日本では18件が受賞
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東芝グループの事業(Business Domains)
2016年3月期事業別売上高実績
5兆6,701億円(連結)
その他
0.5兆円
ライフスタイル
0.6兆円
電力・社会インフラ
2.0兆円
電子デバイス
1.6兆円
コミュニティ・ソリューション
1.4兆円
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東芝の目指す姿
人と、地球の、明日のために。
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目 次
Ⅰ.イノベーションとは
Ⅱ.東芝の概要・東芝のDNA
Ⅲ.イノベーション創出のステップ
Ⅳ.ナレッジマネジメント
V. 将来に求められる人財
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すでに起こった未来
人口、社会、政治、経済、産業、経営、文化、知識、意識が変
化する。その変化が次の変化をもたらす。ただちにではない。そこに
は、タイムラグがある。それらの変化を“すでに起こった未来”と呼ぶ。
20年後、25年後には労働力人口に重大な影響をもたらす。
市場を変え、経済と社会を変える。変化はすでに起こってしまった。
ピーター・ドラッカー 「創造する経営者」
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善き社会を創る
未来を予測する最善の方法は、
それを創り出すことだ
アラン・ケイ
(アメリカの計算機科学者)
ただ、誰にも負けなかったのは「世のため人のため」
「よきことをする」という根源的な思いです。
それは「共通善」(コモングッド)ともいうべきものです。
野中 郁次郎 「イノベーションの知恵」
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イノベーション創出のステップ
メガトレンド
地域・顧客
ローカルフィット
新たな価値の
創出
潜在ニーズ
商品開発
市場投入・普及
ビジョン
商品・サービス
コンセプト
応用・実用化
研究開発
基礎研究
科学・技術
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研究開発から事業化までの流れ
ニーズ探索
•経営方針説明会
→メガトレンド
→市場ニーズ
•カンパニー連絡会
•技術成果展
→事業部門ニーズ
•中長期検討会
•企画グループ
ニーズ探索
将来ビジョン策定:
→将来ニーズ
テーマアップ支援
新規研究テーマ
事業化
社内カンパニーで
事業化
•アンダー・ザ・テーブル
•大型プロジェクト提案
グループ会社で
事業化
•領域横断ワーキング
グループ
提携他社に
ライセンシング
•アイディア創出
•ポスター発表会
ベンチャー企業
としてスピンオフ
実現支援
ファンディング
• スタートアップファンド
• コーポレートファンド
• カンパニーファンド
テーマ管理
• ポートフォリオ
• ステージゲート
見守り・助言
• 事業部との橋渡し
•大型専門家による
コンサル
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ステージゲート管理による集中と選択
ゲート
研究
テーマ
ゲート
投資
ゲート
投資
ゲート
投資
ゲート
ゲート
投資は増大
投資
投資
リスク
リスク
リスク
Stage0
アイディア
発見
利益から
投資捻出
Stage1
コンセプト
明確化
リスク
Stage2
実現可能性
検証
リスク
リスク
リスク
リスクは減少
Stage3
開発
Stage4
事業化
トライアル
と検証
Stage5
事業化
Stage
6
安定
事業化
ゲートキーパー
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アンダー・ザ・テーブル制度
研究者の自由裁量でリソースの10%を非公認のテーマに
使える制度。40年以上の歴史がある。
二次電池SCiBTM
日本語ワープロ
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イノベーション事例:日本語ワードプロセッサ
良い日本語タイプライターを作りたい
森
<コンセプト>
・ 手書きより早い
・ ポータブル型、持ち運びができる
・ どこからでもアクセス、転送可能(通信機能)
健一 氏
コンセプト 1971年 三つとも実現 1995年
新しい日本語文化の創造
・キーボード文化普及
・PC、インターネットへの
しきい低減
2006年度文化功労者
Rupo(1985年)
JW-10(1978年)
200kg 630万円
3.5kg 99,800円
新しい応用への波及
・音声合成/認識
・知識処理
・機械翻訳
・・・
ノートPC DynaBook
(1989年)
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コンセプト創造
<商品コンセプト創造の7ステップ>
1.マジカルナンバー 7±2(開発リーダーの使命感・夢に共感する同志)
2.未来顧客を定義 (誰が、いつ、何のために買うのか)
3.アイディア・ブレーンストーミング (顧客の立場に立って考える)
4.アイディアのグループ化 (KJ法でアイデアを整理)
5.最も重要な3つの中核的なメリットを選択
(顧客の立場に立って考える。膠着状態になったらしばらく放置、
再開後知的興奮の場で目から鱗が落ちる)
6.顧客に話して反応により検証し、実現すべき順に並べ替え
7.技術的な実現性のチェック
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人に代わって答える秘書エージェント(1997年)
専門家の知識を共有
誰でも自分の知識を簡単に公開
マルチモーダルインタフェースできめ細かく検索
質問者
秘書エージェント
最新の水処理技術に
ついて教えて
言語/意図
理解
組織知識
イントラネット
情報検索
自然言語
音声
ジェスチャ
テキスト
音声
映像
個人
ノウハウ
専門家
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人に代わって答える秘書エージェント
中山の秘書エージェントが
代わりにお答えします。
本人との直接対話
音声とジェスチャによるマルチモーダル対話
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人工知能の研究
第一次AIブーム(1956~1960年代):探索・推論の時代
- ダートマス会議でジョン・マッカーシーが“Artificial Intelligence (人工知能)”
という言葉を使った
- チェス、迷路
第二次AIブーム(1980年代):知識の時代
- エキスパートシステム
感染症診断システムMYCIN(スタンフォード大)等
- 第5世代コンピュータプロジェクト(通産省が570億円投資)
第三次AIブーム(2013年~):機械学習の時代
- 考え方は昔からあった
- 計算機能力の向上で精度が格段に上がった
- ウェブとビックデータの発展により学習データが格段に増えた
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エキスパートシステムの問題
専門家の経験則を定式化
知識が定式化しきれない
自分の知識をすべて語ることはできない。直感は語れない。
最後は直感で判断します。瞬間的にこれが正しいと感じるというのは、要するに、
それまでの経験の積み重ねから脳がそう判断したということですから、ああでもない、
こうでもないと理屈で考えた結果よりも、よっぽど信頼できます。実際、あとで振り
返っても、直感で指した手が間違っていたというケースはあまりないのです。
羽生善治
概念を人が定義しなければならない
常識を定義しきれない
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機械学習 Deep Learning
日経ビジネス2013年4月15日号
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Deep Learningが期待されるわけ
モラベックのパラドクス※を崩した
2015年にマイクロソフト、Googleが人間の精度を超える画像認識
プログラムを開発
※ モラベックのパラドクス・・・大人ができることより子供ができることの方が
コンピュータで実現するのが難しい
データから特徴量を抽出し、概念を生成できる
従来の人工知能では概念を人が表現しなければならなかった
機械やロボットが労働力不足を解決できる可能性がある
人間と同じような画像認識ができ、動作が上達・熟練する
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技術の発展と社会への影響
東京大学大学院工学研究科 準教授 松尾豊
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目 次
Ⅰ.イノベーションとは
Ⅱ.東芝の概要・東芝のDNA
Ⅲ.イノベーション創出のステップ
Ⅳ.ナレッジマネジメント
V. 将来に求められる人財
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 31
知識を創り出すプロセスが企業活動を支える
知識創造こそが企業活動の本質だ。
野中郁次郎、竹内弘高
「知識創造企業」(1996)
知識は今日唯一の意義ある資源である。
知識創造を行う企業にとって最大の資産は
知識労働者(Knowledge Worker)である。
ピーター・ドラッカー
「ポスト資本主義社会」(1993)
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ナレッジマネジメントとは
企業内に存在する価値ある知識や情報を戦略的に活用する
ことにより、最大限の価値を創造する経営手法
生み出される価値とは・・・
新商品やサービスの創出
設計品質向上(品質トラブルの低減)
組織能力高度化・個人のスキル向上
製品開発速度の向上・顧客対応力強化
意思決定の迅速化
など
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知識活用による価値創造プロセス
価値創造プロセスは顧客価値を生み出すプロセス
組織活動を構成する4つの要素(知識資産、人間、やり方、
仕組み)により、組織に最適な価値創造プロセスを設計
設計する対象
効率
組織
・知識資産
・人
・やり方
・仕組み
顧客
具体的な
業務
フィードバック プロセス
商 品
サービス
満足
<価値
>
利益
ブランド
フィードバック
業務プロセスを支える
組織の能力
:新たな知識のフロー
:知識のストック領域
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知識資産の4分類
経験知識資産
共有化された暗黙知
・個人のスキル、ノウハウ
・愛、信頼、安心感
・エネルギー、情熱、緊張
コンセプト知識資産
イメージ、シンボル、言語に
より明確にされた形式知
・製品コンセプト
・デザイン
・ブランド・エクイティ
ルーティン知識資産
ルーティン化された行動
に埋め込まれた暗黙知
・日常業務でのノウハウ
・組織ルーティン、組織文化
・共有された知の作法
システム知識資産
システム化、パッケージ化
された形式知
・ドキュメント、スペック、マニュアル
・データベース
・特許、ライセンス
Nonaka, Konno and Toyama, 1998
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知識の種類(知識継承の視点)
特 性
内 容
継承の方法
・形式知
・教育、研修
・標準/汎用
・マニュアル、テキスト
定型的
知識
・専門技術、関連技術
・規格、標準、ルール
・研究開発プロセス
・品質管理
・他社動向、ベンチマーク
・会社の戦略
・普及
・知識データベース
・暗黙知
経験的
知識
・技術の応用、使い方
・成功、失敗体験
・見積り力、洞察力、見極め力
・全体を見渡す力
・プロジェクト管理
・危機管理力
・事例や現象を理解する認知モデル
・暗黙知
・OJT
・マンツーマン教育
・PJ振返り
・レビュー
・職場活動
品質会議、技術道場等
・人材の投入
・設計の世界観、センス
・個人資質に依存
・徒弟制度
・発想力、判断力、
・ある程度先天的
・実務研修
・使命感、情熱
・高度な伝承
感覚的
知識
ノウハウ集、ルール集等
・コンテクスト依存
・経験により獲得
・伝承
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 36
知識を誰に伝えるのか?
畑村洋太郎編著
「実際の設計 技術を伝える」から引用
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 37
知識をどうやって伝えるのか?
経験を共有する
経験をデザインする
経験をくぐり、対話をおこない、仕事を振り返るという
内省行為によって、大人も成長し続けるのだ。
神戸大学大学院経営学研究科 教授
金井 寿宏
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経験学習モデル
Experiential Learning Model (Kolb, 1984)
Concrete
Experience
経 験
成功体験
失敗体験
Reflective
Observation
省 察
学び方を学ぶ
Active
Experimentation
実 践
現場のさまざまな
状況に即興的に
対応する
その後の活動で
役立ちそうな
エピソードの抽出
Abstract
Conceptualization
概念化
独自の知見を
紡ぎ出す
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 39
組織的知識創造プロセス SECIモデル
共同化
Socialization
行動を通じた形式 知
の具現化による新たな
暗黙知の理解、体得
(実践化)
表出化(E)
Environment
E
暗黙知
Individual
I
内面化( I )
G
I
E
形式知
O
I
O
I
I
表出化
Externalization
I
Group
I
I
E
G
G Org.
G
G
形式知
対話・思索・比喩によ
る概念・図像の創造
(概念化)
連結化
連結化(C)
Combination
形式知
内面化
Internalization
共同化(S)
暗黙知
(共感化)
暗黙知
形式知
身体・五感の直接経
験による暗黙知の獲
得、共有、創出
暗黙知
形式知の組み合わ
せによる情報と概念
の体系化
(理論化)
I = 個人
G = 集団
O = 組織
E = 環境
Nonaka I. , H. Takeuchi & N. Konno
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 40
学習する組織づくり
暗黙知
暗黙知
共同化(S)
表出化(E)
暗黙知
Individual
I
内面化( I )
I
E
形式知
I
I
Group
I
I
振返り分析
知識発見・蓄積
連結化(C)
E
G
G Org.
G
形式知
プロジェクト
O
レビュー G
I
O
I
暗黙知
知識活用
E
形式知
Environment
G
形式知
I = 個人
G = 集団
O = 組織
E = 環境
Nonaka I. , H. Takeuchi & N. Konno
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 41
プロジェクト振返り会議
ファシリテータ
会議参加者の意識共有を
図り、会議を円滑に進める。
中立的な立場でメンバーの
意見を引き出す。
前向きな議論ができるよう
にメンバーを導く。
リーダー
研究テーマ開始から終了
までの経緯を振返り、語る。
書記
議論の内容を記録して
メンバーで共有する。
チームメンバー
研究開発の経緯で良か
ったこと、うまくいかなか
ったことを洗い出し、
その要因を議論する。
若手研究者
先輩の体験を聴き、
追体験して学ぶ。
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 42
振返り分析の意義
自らの経験を振り返り、重要な知識を整理する
人は自ら気づくことでしか変われない。
他者の経験を共有することにより、経験知を増やす
人が自ら経験できることは限られている。他者の経験の追体験に
より経験知を増大し、結果として組織能力が向上する。
気づき力を磨く
複数の人で分析することにより、さまざまな観点で気づきが得られる。
他者の観点を学習することにより、気づき力が向上する。
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 43
研究開発の成功・失敗のポイント
4つの視点
・ 技術の視点:
技術は競合他社に対して十分優位か?
事業化にあたって技術的な弱点をクリアで
きるか?
・ 市場の視点:
市場が将来的に十分大きいか?
市場は変化点にあるか?
・ 事業の視点:
自社の事業との整合性は良いか?
自社のリソースを活用できるか?
・ 人・組織の視点:
プロジェクトを推進する人やチームに問題
はないか?強力なサポーターはいるか?
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
大分類
技術
技術
技術
技術
技術
技術
技術
市場
市場
市場
市場
市場
市場
事業
事業
16
事業
17
18
19
20
21
22
事業
人・組織
人・組織
人・組織
人・組織
人・組織
中分類
強いコア技術の存在
コア技術のロバスト性
必要なシステム化技術の存在
必要なプロセス技術の存在
標準化・各種規制(法律)への対応
明確なキラーアプリの存在と柔軟性
既存の常識に囚われない
将来の大きな市場
市場の変化へのタイミング
真のニーズ把握
コンペティタへの対応
代替技術の対応
市場の個別事情への運用
技術の事業化部門が明確
事業化部門の戦略との整合性
事業化部門資産の有効活用/制約
(技術、人材、顧客、パートナー)
事業化目標・課題の明確化と共有
ステークホルダー間のコミュニケーション
強力なリーダーシップ
事業化部門キーマンのサポート
外部リソース・ネットワークの活用
リソース&リスクマネジメント(段取りの上手さ)
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 44
プロジェクトレビューのためのステージゲート法
Stage0
アイディア
発見
ステージiで実施すべき
アクティビティj
Gate1
Stage3
開発
3
ゲートi通過時に満たすべきゲート充足条件j
参考文献:
Robert G. Cooper, Winning at New Products: Accelerating
the Process from Idea to Launch, Basic Books, 2001
Gate
2
Stage2
実現可能
性検証
Gate
Gate
Stage1
コンセプト
明確化
4
Stage4
事業化
トライアルと
検証
Stage5
事業化
Stage6
安定
事業化
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 45
プロジェクトレビュー会議
関係事業部門
プロジェクトレビュー会議
研究所
マネージャー
技術
専門家
商品
企画
営業
フィードバック
説明
プロジェクト
リーダー
設計
製造
メンバー
メンバー
メンバー
メンバー
メンバー
メンバー
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 46
プロジェクトレビューの意義
研究開発プロジェクトの品質管理を行い、各ステージに
おける質を一定レベルに保つ
ステージの早い段階でリスクを予測し、問題を未然に回避する。
研究開発の早いステージでステークホルダーのコミットを得る
顧客の要望を早期に反映させ、後戻り作業を削減する。
研究開発プロセスの知識を継承する
成功体験のないリーダーにとって羅針盤の役割を果たす。
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 47
目 次
Ⅰ.イノベーションとは
Ⅱ.東芝の概要・東芝のDNA
Ⅲ.イノベーション創出のステップ
Ⅳ.ナレッジマネジメント
V. 将来に求められる人財
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 48
産学官連携によるイノベーション創出
メガトレンド
新たな価値の
創出
地域・顧客
ローカルフィット
潜在ニーズ
ビジョン・
コンセプト共有
商品開発
市場投入・普及
ビジョン
商品・サービス
応用・実用化
コンセプト協業のデザイン
研究開発 産学連携
役割分担
先端科学・技術の
可視化、共有
基礎研究
大学
科学・技術
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 49
産学官連携による新たな社会価値創出
ビジョン・ロードマップの共有
先端科学・技術の
可視化、共有
協業のデザイン
役割分担
新しい科学・技術の創造
(長期基礎研究)
新たな社会価値創造
(応用研究・実用化)
産学官の共同チーム
イノベーション・リーダーが
シーズとニーズのマッチング、
知の統合
企業
大学
・共同研究
・人財流通
・インターンシップ
官
・国家プロジェクト、成果の資産化
・資金支援(設備、人件費等)
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 50
研究開発部門に求められる人財
求められる2つの人財の型
(1)マイスター型人財
新しい科学技術を創造
高い志
ビジョン・コンセプト創造力
社会的信頼力
対人関係力
行動・実現力
(2)テクノプロデューサ型人財
科学技術で事業・社会価値を創造
真のイノベーションを創出する
テクノプロデューサ型人財の強化
Copyright 2016, Toshiba Corporation. 51
イノベーションリーダーとしての人財への期待
複数の専門領域を持つ
基礎、学びの作法はしっかり修得
将来システム思考で仕事をすることを意識し、
必要な広さと深さの専門性を修得
専門
知識
専門
知識
優れた想像力、直感力、洞察力を持つ
社会への関心、社会の要請の理解、
領域の専門知識
高い倫理観
志、価値創出への強いおもい
基礎知識・学びの作法・研究スキル
人間力
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共通善の追求がイノベーションを起こす
価値創造においては、人間とは何か、何が真善美であるかと
いう価値判断が問われる。トップからミドルのリーダーまで全員
が「世のため、人のため、こういう価値を創っていこう」という想い、
哲学を提案していく組織がイノベーションを遂行できる。
また、現実の背後にある本質を直観し、言語化するときの基
礎となるのも教養だ。良識に満ちた価値判断、つまり実践知
の基礎や哲学は、教養や古典から習得できる。
野中郁次郎/紺野登「知識創造経営のプリンシプル」
東洋経済(2012)
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リベラル・アーツの薦め
深く考えるための技術・知識
ギリシャに始まる学問、自然人たるものが身につけなければ
ならない基礎的な教養「自由7科」
初級3科 文法 修辞学 弁証法(論理学)
上級4科 算術 天文学 幾何学 音楽(学)
豊かな人間性の醸成
幅広い好奇心と探求心
大局的判断
価値観・思想の軸
深い信頼
尊敬・敬愛される人格
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ご清聴ありがとうございました。
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