2024 年以内には中央区の人口 24 万人超え、月島地域には人口 10 万人が集中 伊藤久雄(認定NPOまちぽっと理事) ≪中央区が人口ビジョンを策定、公表≫ 中央区は、「まち・ひと・しごと創生法」に基づき、国の「まち・ひと・しごと創生長期 ビジョン」および「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を勘案した「中央区人口ビジョン」 を策定した(対象期間:平成 29 年から平成 58 年までの 30 年間)。 ◎ 中央区人口ビジョン- 人口動向分析及び 将来人口推計 -(概要版) ◎ 同 上 ⇒PDF -(本文) http://www.city.chuo.lg.jp/kusei/keikaku/sonotanokeikaku/zinkouvision.files/zinkouvi sion.pdf 主な内容は以下のとおり。 ■ 総人口 ・区人口は、自然増減、社会増減、開発などの傾向が今後も続いた場合、平成 36 年(2024 年)内に人口 20 万人を突破する見込みである。 今後 10 年間の地域別人口 ■ ・今後 10 年間については、3 地域(京橋地域、日本橋地域、月島地域)全てで人口増加 が見込まれる。 ・特に東京 2020 オリンピック・パラリンピック競技大会後、選手村から住宅に転用され る予定の晴海 5 丁目や、高層マンションを中心とする大規模開発事業を抱える月島地 域の増加が著しい。 ・月島地域は、平成 37 年(2015 年)には、人口 100,000 人を超えると見込まれる。 今後 10 年間の年齢区分別人口 ■ ・今後 10 年間については、年齢 3 区分全てで人口増加が見込まれる。特に年少人口の増 加が著しく、全体に占める割合も増加する。高齢人口も増加するが、高齢化率は低下 が見込まれている。 ■ 0歳児数 ・今後 10 年間について、区全体では 0 歳児の増加が見込まれている。 ・京橋地域は平成 31 年、日本橋地域は平成 32 年に出生数がピークになると見込まれる ものの、選手村跡地を抱える月島地域はその後も増加し、平成 37 年は出生数のピーク を迎える見込みである。 ■ 課題及び今後の方向性 ・今後も住宅開発事業等が計画され、本区の人口は、平成 40 年代頃までは増加していく ものと見込まれており、増大する行政需要に的確に対応していく必要がある。 ・長期的には、日本や東京の人口減少の影響を受け、本区の人口も減少局面に入ると見 込まれており、地域経済や区財政への影響、将来人口を見据えた公共施設の整備方針・ 適正配置の検討等を進めていく必要がある。 ・中央区人口ビジョンによる将来人口動向を見据え、現在策定中の新たな基本構想や今 後策定予定の基本計画において、本区の将来展望や施策の方向性を示していく必要が ある。 ≪野放図な人口増を放置しておいてよいのか≫ 都政新報(6 月 10 日付、6 日に開かれた区議会企画総務委員会に報告された内容を受け た記事。ただし公表されたものと同じ)は、解説記事で次のように指摘している。 ◎ 都政新報(2016 年 6 月 10 日) ⇒PDF ・ 区幹部は「義務教育の小学校のスペースなどを考えると、無尽蔵に人口を増やせない」 としながらも、 「人口 20~23 万人に行政体に向かってかじ取りは始まっている」とし、 20~23 万人程度を適正人口とする方向性を示唆した。 ・ とりわけ、周りを川と運河に挟まれ、下町の人情や風景が残る月島地域で、24 年には 区人口の 5 割を超える 10 万人前後が居住するという推計は衝撃的だ。単に学校や保育 所といった需要に限らず、自主防災力の向上や地域コミュニティの維持などソフト面 のまちづくりも大きな課題となってくる。 ・ 月島地域の急激な人口増加は東京一極集中のたまものだが、それによる弊害に基本構 想審議会がどんな処方縁を示すのか期待している。 この都政新報記事(解説)はいま一つ歯切れが悪い。なぜなら、現在検討している基本 構想審議会の会長職務代理である市川宏雄明治大学公共政策大学院ガバナンス研究科長の 著書を紹介しているからである。市川氏が自著の『東京一極集中が日本を救う』の中で主 張した次の一説である。『一極集中是正を金科玉条として東京の集積を否定すると、結局、 東京の国際競争力の失速を招く』。 都政新報が、 「東京一極集中による弊害に基本構想審議会がどんな処方縁を示すのか」と 期待を表明しても、それは叶わぬ夢というものではなかろうか。市川氏のような主張はか つて石原元都知事も主張していた。そしてそれが都市再生・東京再生として、現在の醜悪 かつ大災害に無防備な超高層ビル群の林立を招いている。かつまた、無防備な超高層ビル 群の林立がどれだけ都民の生活向上に貢献したかを考えると、むしろ格差社会の象徴にし っか思えない。市川氏のように主張をする人を会長職務代理に選んでいることからみると、 中央区に「弊害是正」を期待することは無理なのだと思う。 ≪晴海再開発の構想撤回と東京 23 区の住宅の総量規制を≫ 今年(2016 年)3 月、東京都は「東京 2020 大会後の選手村におけるまちづくりの整備計 画」を公表した。 ◎ 東京 2020 大会後の選手村(イメージ) ⇒PDF ■ 整備計画の主な内容 建物配置 •住宅戸数 約 5650 戸(分譲・賃貸) •階数 板状棟 14~18 階、高層棟 50 階(高層棟 2 棟は東京大会後整備) 基盤整備 道路・盛土、ライフライン(水道、下水道、水素パイプラインなど) スケジュール 平成 28 年 4 月 市街地再開発事業に着手(基盤整備工事に着手) 平成 28 年 5 月 特定建築者(住宅棟等の建築の実施者)の公募 平成 28 年 7 月 特定建築者の選定 平成 29 年 1 月 建築工事に着手 平成 31 年 12 月(目途) 大会時に必要な部分の整備完了 平成 32 年 7 月~ 東京 2020 大会 大会後改修工事 平成 36 年度 事業完了 さらに中央区は、「晴海地区 将来ビジョン(中間取りまとめ)」を公表している。2014 年 5 月にまとめられた「晴海地区 将来ビジョン(中間取りまとめ)、晴海地区 将来ビジョ ン検討委員会)は、現在人口(2014 年 3 月)7,300 人を、将来人口 43,000 人と、6 倍近い 人口増加を見込んでいる。 ■ 晴海地区 将来ビジョン(中間取りまとめ案) ◎晴海地区 将来ビジョン https://www.city.chuo.lg.jp/kusei/kohokotyo/press/puresuheisei26/141226press.files/h arumi-bijon.pdf 晴海地区 将来ビジョン(中間取りまとめ案)によれば、晴海地区の骨格となる年構造は 以下のとおり。 ○地区中央の東西の幹線道路沿いは、建物低層部を中心に商業、文化交流、文化教育、 医療施設などが集積するエリアとする。(晴海の中心軸、賑わいのあるエリア) ○中心軸の周辺は、住宅等を中心とした居住エリアとする。(静けさのあるエリア) ○水辺は、公園・緑地エリアと歩行者のプロムナード(散策路)とする。(海を感じるエ リア) このように、東京都の「東京 2020 大会後の選手村におけるまちづくりの整備計画」と中 央区の「晴海地区将来ビジョン」は、実現するとしたら「ニュータウン」である。日本全 体ばかりでなく、東京都も近い将来人口減少に向かうとき、このようなニュータウンは時 代錯誤である。 中央区の人口ビジョンは、このような東京都、中央区それぞれの計画をなぞったものに 過ぎない。本来は、東京都が中央区をはじめとした都心区の人口膨張を抑制する政策をす すめるべきだと考えるが、石原、猪瀬、舛添と続いたここ 10 数年の都政では実現不可能な 政策であった。 22 日、知事選が告示された。新知事がだれになるにしても、東京政策の大転換が必要で ある。国とともに、23 区、とりわけ都心部の住宅抑制(総量規制)と人口抑制は急務であ ると考える。
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